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【展覧会】池上秀畝展@中村橋・練馬区立美術館(2024/4/7・9 鑑賞)

よろコンです。

 

本ブログでは見て来た展覧会の個人的な感想を書いています。

 

今回は、2024年4月7日(日)と9日(火)に見て来た展覧会
池上秀畝展@中村橋・練馬区立美術館
です。

 

「高精細画人」

横山大観らと活躍した「朦朧体」菱田春草、と同郷で同じ年の池上秀畝。
あまり聞かない、というか今回初めて知りましたが、当時の文展では三年連続特選受賞、帝展では無鑑査、審査員を務めるなど輝かしい実績を誇ります。展覧会だけではなく、屏風絵などにも数多の名作が。
生誕150年、これまであまり知られていなかった池上秀畝とは果たしてどのような画家だったのでしょうか。

今回も最後までお読みいただけますと幸いです。

 

【目次】

 

※ 以下の記述は展覧会の解説、パンフ、図録、その他WEB上の資料等を参照の上、記述しております。また、図録の写真を掲載しています。

 

1. 展覧会情報

(1) 開催概要

・会場:練馬区立美術館@中村橋

・期間:開催中(2024/3/16(土)) - 2024/4/21(日) ※ あと一週間(4/14記述時点)

   ※ 展示替えあり(4/2(火)から一部展示替え)

・時間:10:00~18:00(入館は閉館30分前まで)
   ※ ナイトュージアム:なし

・休館日:月曜日

・チケット:一般 1000円、高校・大学生および65~74歳800円、中学生以下および75歳以上 無料(リピート割で前回の半券を持参すると一般で300円引き) ※ 電子決済(PaypayやQuick Pay)など利用可能

・作品数:前後期+巡回の長野展のみの作品含め全106点(4/2~は84点)

・写真撮影:NGでした

・関連リンク:

   1) 展覧会

生誕150年 池上秀畝―高精細画人― | 展覧会 | 練馬区立美術館

 

(展覧会チラシ)

(作品リスト)

 

   2) 美術館

練馬区立美術館

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(黄色は練馬区立美術館、ピンクは巡回先の長野県立美術館、ごみ入れは次の展覧会ポスター)

 

(2) 訪問日・混雑状況

訪問日:2024/4/7(日) 16:00頃、4/9(火) 15:00頃の2回訪問

鑑賞時間:合計120分くらい(一回目諸事情により40分、二回目は年休で80分)

混雑状況:日曜日も、火曜日も観覧の人は多いですが混雑はしていません。ゆっくり見られました。

 

(3) どんな展覧会?

池上秀畝(いけがみしゅうほ、1874年-1944年)、長野県伊那郡高遠町(現・伊那市)出身

明治22年(1889)、本格的に絵を学ぶため上京。まだ無名の荒木寛畝(あらきかんぽ)の最初の門人・内弟子となります。師匠から受け継ぐ伝統を守る秀畝たちは「旧派」と呼ばれ、文展・官展でも評価が高く、屏風などの注文も殺到します。

一方、同郷で同じ年、上京の時期も同じころではないかと言われる菱田春草。東京美術学校(現・東京藝大)に入学、岡倉天心の影響を受け、横山大観らと新しい日本画を模索します。日本画の伝統に反した輪郭線のない描き方は「朦朧体」と世間から揶揄されることも。彼らは「新派」と呼ばれます。

今でも展覧会などで目にする機会の多い「新派」。それに対し、今ではあまり目にしなくなった「旧派」。その旧派の中心にいた秀畝。徹底的な写生に基づくその作品。秀畝生誕150年にあらためて見直す展覧会です。

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2. 会場へ

(1) 構成

プロローグ 池上秀畝と菱田春草 日本画の旧派と新派

第1章 「国山」から「秀畝」へ

第2章 秀畝の精華-官展出品の代表作を中心に

第3章 秀畝と写生 師・寛畝の教え、"高精細画人"の礎

第4章 秀畝と屏風 画の本文

エピローグ 晩年の秀畝、衰えぬ創作意欲

 

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(2) 気になる作品

まずは「プロローグ」

「旧派」秀畝と「新派」春草の作品比べ

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池上秀畝「劉女」大正4年(1915)

 

中国の仙人「劉女」。ガチョウに乗ってすまし顔


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菱田春草「羅浮仙」明治34年頃(1901)

 

こちらは梅の精「羅婦仙」。衣の白い輪郭線+輪郭線を廃した没線描法。新派「朦朧体」の試み

 

次は「『国山』から『秀畝』へ」上京の頃の作品

上京前は本名・國三郎から「國山」と名乗っていました。上京後「秀畝」と名乗るようになります。


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池上秀畝・画、池上秀花・書「猩々」明治29年(1896)

 

池上家は高遠町の名家で伊能忠敬の測量隊に宿を貸したこともあったとか。
その三代・休柳、秀花、秀畝は有名で秀畝の祖父、父も絵や歌に精通していました。
「秀畝」は父・秀花、師匠、寛畝から一字ずつもらった号。この作品は書と画を親子で分担した珍しい合作です。

 

続いては官展で活躍していた頃「秀畝の精華」から


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池上秀畝「四季花鳥」大正7年(1918)から右「春」左「夏」

 

展覧会では「秋」「冬」と四幅が展示されています。同門の荒木十畝の「四季花鳥」に影響を受けた作品とか。十畝の方は今、山種美術館の「花 flower 華 2024」(~5/6)で展示されています。(きっと、その作品だと思います。山種は4/6に見たので確かに影響を受けていると思いました)

 

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池上秀畝「桃に青鸞」昭和3年(1928)

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池上秀畝「牡丹に孔雀」制作年不詳

 

いずれも東京の三田にあった旧大名家、蜂須賀侯爵邸の杉戸絵。現在はオーストラリア大使館所蔵。青鸞が描かれるのはかなり稀なこと。秀畝圧巻の描写力

 

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池上秀畝「翠禽紅珠」昭和4年(1929)

 

翡翠の鳥・孔雀と紅い珠・ザクロの取り合わせ

孔雀の首の透明感に目を引かれました。

 

続いては「秀畝と写生」
師の教えを従う画家の礎

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池上秀畝「火喰鳥」明治23年(1890)


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秀畝には「匣書手扣」(はこがきてびかえ)という大正6年(1917)から昭和19年(1944)までの27年間におよぶ膨大な作品の記録が残されています。時には秀畝が注文を受ける際のカタログともなっていたようです。

そこに記録された作品の一つ

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池上秀畝「避邪之図」明治43年(1910)

 

逃げる邪鬼、睨む鐘馗。コミカルで動きのある一品

 

「秀畝と屏風」では

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池上秀畝「桐に鳳凰図」大正12年(1923)

 

会場では六曲一双の屏風の前に畳のエリアが設けられ、靴を脱いで座って、いかにも座敷で屏風を味わえるように展示の工夫がなされています。畳に座って見る屏風、ゆっくりした気持ちになります。

 

最後、エピローグです。

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池上秀畝「飛蝶」昭和12年(1937)

 

目黒雅叙園に飾られていた作品。展示では横に並べられており、蝶が波を打つように飛んでいる姿が優美です。


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池上秀畝「神風」昭和18年(1943) 左隻

 

秀畝最晩年。戦勝を祈念し、元寇を描いた大作。燃えるは金の炎、神の怒り

 

  最晩年でも描こうという意欲は衰えなかったことが見て取れます。

 

「旧派」と呼ばれ、やがてその作品を目にする機会も少なくなってしまった秀畝。
いずれの作品も圧巻の描写に圧倒されました。また、是非、展覧会で見ることができればと思います。

 

ということで、展覧会場を後にしました。

 

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チケット販売受付で図録・書籍なども売っています。今回も図録を買いました。

 

3. さいごに

「僕は新派でも旧派でもない」

明治45年、新派のとある画会の機関誌に寄稿した際の秀畝の言葉です。

「新派でも、旧派でもよい作品がよいのである」

文展の審査員を巡り新派か旧派かの対立が先鋭化した時代。この言葉こそ、秀畝芸術に一貫として流れる精神なのでしょう。そして、この孤高の精神こそ秀畝の芸術を高みへと連れて行ってくれたのではないか、そう思いました。

今、新派の作品を目にすることが多い現代で、あらためて旧派の地に足の着いた凄みのある作品に触れられた貴重な展覧会だったと思います。

そして、「高精細画人」秀畝の神髄に触れるためには是非とも展覧会で生の作品を見て頂ければと思います。

 

本展の巡回情報は次の通りです。

【巡回情報】

・長野県立美術館 2024/5/25~6/30

トップページ | 長野県立美術館

 

関連リンクです。

2024年の展覧会情報はこちら

www.suki-kore.tokyo

  ということで、今回は以上です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

また、次もよろしくお願いいたします。

 

※ ご意見、ご感想、大歓迎です。是非コメントかメール(yorocon46@gmail.com)まで。ツィッターは@yorocon46です。

 

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(中村橋駅南の桜。もう、散ったでしょうね・・・)

 

私の月報(展覧会等)・2024年3月(2024/4/8)

よろコンです

 

  今年も3月はあっという間でした。そして、なかなか咲かなかった桜も気づけば、あっという間に満開。気づけば、あっという間に次は・・・

 

  今月も前月の活動(展覧会・コンサート等)と今月の予定を未来の私へ「月報」として提出します。ただただ自分のための趣味ブログですが、何か気になるものが1つでもありましたら幸いです。しばし、お付き合いください。なお写真はすべて撮影OKだった作品等です。

 

【目次】

 

1. 2024年3月の活動記録

(1) 行ってきた展覧会

3/9

◎「『シュルレアリスム宣言』100年 シュルレアリスムと日本」@西高島平・板橋区立美術館 開催中(3/2)4/14(日)

板橋区立美術館

www.suki-kore.tokyo

※ 日本のシュールレアリスムもいよいよ今週末まで。多様で自由な作品に出会えて、おもしろいです。次は三重県立美術館(4/27~6/30)に

 

3/14

◎「生誕270年 長沢芦雪 - 若冲、応挙につづく天才画家」@太宰府・九州国立博物館 2/6 - 3/31(終了)

https://www.kyuhaku.jp/exhibition/exhibition_s71.html

九州国立博物館 - トップページ

※ 今月は久々の出張で博多に。仕事が終わり帰りまでの時間、九州国立博物館で応挙の弟子、奇想の絵師、ゆるかわもありの芦雪作品を見て来ました。

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あわせて常設展も
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3/19

○「没後50年 福田平八郎」@大阪中之島・中之島美術館 3/9(開催中) - 5/6

没後50年 福田平八郎 | 大阪中之島美術館

※ こちらも久々の大阪出張、帰りまでの時間に立ち寄ってきました。大分が誇る「写生」に生きた画家。作風の変転も見て取れます。


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「漣」

 

3/22

◎「印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵」@上野・東京都美術館 1/27 - 4/7(終了)

https://www.tobikan.jp/

※ 会社の午前休を取って見て来ました。アメリカでも花開いた印象派。モネの「睡蓮」を世界で初めて買った美術館の印象派展。この後は郡山、八王子、大阪と廻ります。


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展覧会・美術館は以上です。

(2) コンサートなど

3/23 落語

18:00開演@銀座ブロッサム中央会館(銀座)

「われらの時代」

出演:柳亭小痴楽、蝶花楼桃花、桂二葉 with ロケット団

※ 日曜劇場で芦田愛菜さんの役が大ファンだったという小痴楽師匠、笑点の林家木久扇師匠の次と噂されていた桃花師匠、探偵ナイトスクープなど出演多数、今をときめく関西の星・桂二葉さんの落語会でした。桂二葉さんの出番でちょっとしたハプニングもありましたが、それも含め、大変、楽しい会でした。ロケット団さんのスパイスの効いた漫才も大いに笑いました。

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2. 2024年4月の活動予定

(1) 行きたい展覧会

◎「マティス 自由なフォルム」@乃木坂・国立新美術館 開催中(2/14) - 5/27

国立新美術館 THE NATIONAL ART CENTER, TOKYO

※ もう開催中。これは先週見て来ました。マティスの切り絵などの作品を中心にした展示はマティスの作品の幅広さを感じさせます。こちらは、また次回

 

☆「春の江戸絵画まつり ほとけの国の美術」@府中・府中市美術館 開催中(3/9) - 5/6

春の江戸絵画まつり ほとけの国の美術 東京都府中市ホームページ

※ 恒例の春の江戸絵画まつり

 

☆「生誕150年 池上秀畝-高精細画人-」@中村橋・練馬区立美術館 開催中(3/16)4/21

生誕150年 池上秀畝―高精細画人― | 展覧会 | 練馬区立美術館

※ こちらも見て来ました。朦朧体ともいわれた横山大観、菱田春草が「新派」なら、師匠に弟子入りして絵を修めた「旧派」ともいわれる池上秀畝。その精緻な絵は生で間近で見てこそ伝わるものがあります。こちらも、また次回

 

☆「北欧の美術 -ノルウェー・スウェーデン・フィンランドの絵画」@新宿・SOMPO美術館 開催中(3/23) - 6/9

SOMPO美術館(新宿駅 徒歩5分)|この街には《ひまわり》がある。

 

☆「大吉原展 江戸アメイヂング」@上野・東京藝術大学大学美術館 開催中(3/23) - 5/19

東京藝術大学大学美術館 The University Art Museum, Tokyo University of the Arts

 

☆「ブランクーシ 本質を象る」@京橋・アーティゾン美術館 開催中(3/30) - 7/7

アーティゾン美術館 Artizon Museum, Tokyo

 

☆「開館記念展 皇室のみやび -受け継ぐ美-」@大手町・皇居三の丸尚蔵館 開催中(2023/11/23) - 6/23

皇居三の丸尚蔵館 The Museum of the Imperial Collections, Sannomaru Shozokan

 

このへんはGWの予定も踏まえ、見に行く計画を立てます。(GWもあっという間に来るなぁ)

 

(2) コンサートなど

今月はお休み

 

3. まとめ

先月は久々に出張があり、行った先で、ちょっと足を伸ばしてみました。

ということで、その時を振り返ります。

 

まずは、福岡太宰府
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仮殿の上には春の花も

 

大阪中之島。安藤忠雄さんのこども本の森

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青春の青りんご

 

最後は中之島美術館から二つのオブジェ

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巨大!

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巨大!!

 

  なかなか忙しかった3月でした。

 

さいごに関連リンクです。

 

【美術館情報】

東京都の展覧会|展覧会スケジュール|美術館・アート情報 artscape

 

www.suki-kore.tokyo

ということで今月の報告は以上です。

ここまで、お読みいただき、ありがとうございました。

また、よろしくお願いいたします。

 

※ ご意見、ご感想、大歓迎です。是非コメントかメール(yorocon46@gmail.com)まで。ツィッターは@yorocon46です。

 

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(三月の最後。武蔵小金井駅付近で撮った巨大な紫の花)

【展覧会】「シュルレアリスム宣言」100年 シュルレアリスムと日本@西高島平・板橋区立美術館(2024/3/9 鑑賞)

よろコンです。

 

本ブログでは見て来た展覧会の個人的な感想を書いています。

 

今回は、2024年3月9日(土)に見て来た展覧会
「シュルレアリスム宣言」100年
シュルレアリスムと日本

@西高島平・板橋区立美術館
です。

 

シュルレアリスム=超現実主義

1924年、フランスのアンドレ・ブルトンの「シュルレアリスム宣言」が発表されてから100年目の今年。シュルレアリスムと言えば、ダリ、マグリット、マックス・エルンスト、キリコと言った名だたる画家が思い起こされますが、イタビでは日本におけるシュルレアリスムに焦点を当てた展覧会が開催されています。春・日本のシュルレアリスムも咲き誇っています。

今回も最後までお読みいただけますと幸いです。

 

【目次】

 

※ 以下の記述は展覧会の解説、パンフ、図録、その他WEB上の資料等を参照の上、記述しております。また、図録の写真を掲載しています。

 

1. 展覧会情報

(1) 開催概要

・会場:板橋区立美術館@西高島平

・期間:開催中(2024/3/2(土)) - 2024/4/14(日)

   ※ 展示替えあり(前期~3/24(日)、後期3/26(火)~)

・時間:9:30~17:00(入館は閉館30分前まで)
   ※ ナイトュージアム:なし

・休館日:月曜日

・チケット:一般 650円、高校・大学生450円、小・中学生200円
                     (土曜日は小中高校生は無料。また支払いはすべて現金)

・作品数:前後期で115点+参考資料多数

・写真撮影:NGでした

・関連リンク:

   1) 展覧会

www.city.itabashi.tokyo.jp

(展覧会チラシ)

https://www.city.itabashi.tokyo.jp/artmuseum/_res/projects/project_artmuseum/_page_/004/001/747/syuruchirashi.pdf

 

(作品リスト)

https://www.city.itabashi.tokyo.jp/artmuseum/_res/projects/project_artmuseum/_page_/004/001/747/syurulist.pdf

 

(ミニガイド)

https://www.city.itabashi.tokyo.jp/artmuseum/_res/projects/project_artmuseum/_page_/004/001/747/hpminiguide.pdf

杉全美帆子さんのイラストによるミニガイドです。イタビのミニガイドは分かりやすくておもしろくて予習・復習にもなります。

 

   2) 美術館

www.city.itabashi.tokyo.jp

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(2) 訪問日・混雑状況

訪問日:2024/3/9(土) 11:00頃訪問

鑑賞時間:約120分

混雑状況:鑑賞されている方は多かったですが、絵はゆっくりと見られました。その後、3月末にEテレ・日曜美術館のアートシーンで紹介されていたので、今はもっと人が多いかもしれません。

 

(3) どんな展覧会?

「シュールレアリスム。男性名詞。心の純粋な自動現象(オートマティスム)であり、それにもとづいて口述、記述、その他あらゆる方法を用いつつ、思考の実際上の働きを表現しようとくわだてる。理性によって行使されるどんな統制もなく、美学上ないし道徳上のどんな気づかいからもはなれた思考の書きとり」
アンドレ・ブルトン「シュルレアリスム宣言」より(巌谷國士 訳)

思考の解放、自由を求めたシュルレアリスムは詩の世界からはじまり、絵画など幅広い芸術運動へと発展していきます。日本でも詩の世界から取り入れられ、そのほかの分野へと発展していきます。

戦時中、「危険思想」として監視対象にされるといった困難な時代がありましたが、様々な団体が立ち上がり、東京のみならず日本各地に展開していった日本のシュルレアリスムをその作品と豊富な資料でたどる展覧会です。

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2. 会場へ

(1) 構成

序章 シュルレアリスムの導入

第1章 先駆者たち

第2章 衝撃から展開へ

第3章 拡張するシュルレアリスム

第4章 シュルレアリスムの最盛期から弾圧まで

第5章 写真のシュルレアリスム

第6章 戦後のシュルレアリスム

 

(2) 気になる作品

 

まずは日本のシュルレアリスムの先駆者の作品


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東郷青児「超現実派の散歩」1929年 SOMPO美術館 第16回二科展

 

SOMPO美術館のアイコンにもなっている作品。当の東郷は自らの作品を「超現実派」と呼ばれることを嫌っていたとか

 

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古賀春江「鳥籠」1929年 石橋財団アーティゾン美術館 第16回二科展

 

日本のシュルレアリスムのさきがけ、古賀春江の作品

 

シュルレアリスムの衝撃から展開の時代では

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高井貞二「煙」1933年 和歌山県立近代美術館 第1回新油絵展

 

この頃は日本各地で前衛的絵画グループが展覧会を開催していきます。

 

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三岸好太郎「海と射光」1934年 福岡市美術館 第4回独立展

 

31歳で夭折した天才画家の独立展最後の出品作品

 

展開から拡張したシュルレアリスムでは

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福沢一郎「人」1936年 東京国立近代美術館 第7回独立展

 

日本のシュルレアリスムの兄貴的存在・福沢は自宅で絵画研究所を開き、多くの後進を育てます。

 

さらにシュルレアリスムの最盛期、そして弾圧の時代へ


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寺田政明「生物の創造」1939年 北九州市立美術館 第9回独立展

 

先日、亡くなられた俳優・寺田農さんのお父さん。池袋モンパルナスに参加し、板橋区にも在住していた板橋とも所縁ある画家です。


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浅原清隆「多感な地上」1939年 東京国立近代美術館 第9回独立展

 

この展覧会のチラシの作品です。画学生たちの前衛運動が活発化した時代の中心的、象徴的存在だったとのこと。残念ながら戦地でその短い生涯を終えます。

 

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渡辺武「風化」1939年 板橋区立美術館 第4回ジュンヌ・オム展

 

帝国美術学校最後の前衛グループの作品


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靉光「眼のある風景」1938年 東京国立近代美術館 第8回独立展

 

画面中央のリアルな眼とそれを取り巻く得体の知れない塊は木の根?獅子?それとも・・・
描いては削り作り上げた唯一無二の世界

※ この写真は以前、東京国立近代美術館の常設展の展示(撮影可能)を撮りました。

 

これまで日本各地に展開し、様々なグループが展覧会を開催してきた日本のシュルレアリスムは戦争へと突き進む軍事政権から危険思想と捉えられ1941年、治安維持法の疑いで日本シュルレアリスムの「兄貴」福沢一郎と詩人で評論家の瀧口修三が逮捕・監禁されることに。この後、軍部への協力を余儀なくされ、影を潜めます。

 

そして、戦後。再び活動を再開


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岡本太郎「憂鬱」1947年 一般財団法人草月会(東京都現代美術館帰寄託) 第32回二科展

 

フランスでのシュルレアリスム活動に参加した唯一の日本人、岡本太郎の作品

 

日本のシュルレアリスムは世界の衝撃を受け止め、全国的な広がりを見せ、若い画家たちの前衛的な挑戦の場となりましたが、戦争の抑圧を受け、その影を潜めるしかありませんでした。それでもその精神の自由を求める活動は戦後へと受け継がれていくのでした。

 

普段、そこまで目にしない日本のシュルレアリスムの確かな歩みを見ることができる興味深い展覧会でした。

 

ということで、充実感を持って展覧会場を出ました。

 

チケット販売受付で図録・書籍なども売っていますので、今回は図録を買いました。

こちらも現金のみなのでご注意を

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3. さいごに

個性的、独創的な作品にあふれていた日本のシュルレアリスムは、あの戦争がなかったら、どのように展開し、発展していったのだろうか?そんなことも思わせます。
自由な芸術活動がいつまでも続く世界であること、平和がいちばんということも併せて考えさせられました。それでも「シュルレアリスムは終わらないっ!」ですね。

 

ここでは、今回の展覧会では展示されていませんが、過去に見た関連作品を少しご紹介。いずれも撮影可能な作品でした。

 

日本シュルレアリスムのさきがけ、古賀春江の作品から

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古賀春江「海」1929年 東京国立近代美術館

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古賀春江「素朴な月夜」1929年 アーティゾン美術館

 

日本シュルレアリスムの「兄貴」福沢一郎の作品から

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福沢一郎「牛」1936年 東京国立近代美術館

 

最後は花の季節、シュルレアリスム的日本画

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船田玉樹「花の夕」1938年 東京国立美術館

 

本展の巡回情報は次の通りです。

【巡回情報】

・三重県立美術館 2024/4/27~6/30

※ 京都文化博物館では2023/12/16~2024/2/4まで開催されていました

 

関連リンクです。

今月末は東京都美術館で世界的シュールの巨匠の展覧会が

dechirico.exhibit.jp

 

2024年の展覧会情報はこちら

www.suki-kore.tokyo

  ということで、今回は以上です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

また、次もよろしくお願いいたします。

 

※ ご意見、ご感想、大歓迎です。是非コメントかメール(yorocon46@gmail.com)まで。ツィッターは@yorocon46です。

 

(展覧会を見た頃はまだ3月上旬。梅が早く咲き、いよいよ桜か?という時期でした。でも、今年の桜はここからが長かった・・・ということで、まだ少し残っていたイタビ前の板橋区立赤塚溜池公園の梅です。

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今は桜ですね)

私の月報(展覧会等)・2024年2月(2024/3/5)

よろコンです

 

今週のお題「大発見」

もう一つのブログでも大発見を書きました。こちらのブログでも大発見を書きます!
(さほど発見のない日々ですが、見つけてみればありました)

 

  前月の活動(展覧会・コンサート等)と今月の予定を未来の私へ「月報」として提出します。ただただ自分のための趣味ブログですが、何か気になるものが1つでもありましたら幸いです。しばし、お付き合いください。なお写真はすべて撮影OKだった作品等です。

 

【目次】

 

1. 2024年2月の活動記録

(1) 行ってきた展覧会

2/10

○「サムライ、浮世絵師になる!鳥文斎栄之展」@千葉・千葉市美術館 1/6 - 3/3(終了)

千葉市美術館

※ サムライ出身の栄之の作品を見て来ました。海外から里帰り作品もあり、十分に堪能しました。ライバル歌麿との違いも分かり「大発見」でした。

www.suki-kore.tokyo

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(座り姿も美しい)

 

2/11

○「坂本龍一トリビュート展 音楽/アート/メディア」@初台・NTTインターコミュニケーション・センター(ICC) 2023/12/163/10(今週末まで)

NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]

※ 生前、音楽だけではなくアートの世界でも精力的に活動していた坂本龍一。ここまで先進的なアートとのつながりがあったことを知れて「大発見」でした。

www.suki-kore.tokyo

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(AI+坂本龍一=?)

 

2/24

「特別展 本阿弥光悦の大宇宙」@上野・東京国立博物館 1/23 - 3/10(今週末まで)

特別展「本阿弥光悦の大宇宙」

※ 本阿弥光悦、よく知りませんでした。この展覧会、危うく見逃すところでした。その才能の多彩さ、斬新さ、正に天才観測。特に音楽を奏でるような書に驚きました。何から何まで「大発見」でした。

www.suki-kore.tokyo

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(線を呼吸だと思って見てください)

 

「建立900年 特別展 中尊寺金色堂」@上野・東京国立博物館 1/23 - 4/14(開催中)

東京国立博物館 - Tokyo National Museum

※ この日、トーハクについた16:00頃は30分待ちでした。ナイトミュージアムではそこまで混んでません。見に行かれる方は早めにご覧ください。

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(ミニチュア。これだけ撮影可能でした)

 

併せて見て来たコレクション展からです。

まずは千葉市美術館から

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戸張孤雁「麻の葉」

 

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山本鼎「ブルトンヌ」

次はトーハク

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佐藤朝山「龍頭観音像」

 

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佐藤朝山「シャクンタラ姫とドウシャンタ王」

展覧会・美術館は以上です。


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(2) コンサートなど

2/17 コンサート

14:00開演@サントリーホール(溜池山王・六本木一丁目)

ショスターコーヴィチ:交響曲第9番

バーンスタイン:交響曲第3番「カディッシュ」(語り:ジェイ・レディモア、ソプラノ:冨平安希子、合唱:新国立劇場合唱団、自動合唱:東京少年少女合唱隊)

指揮:エリアフ・インバル

東京都交響楽団

※ 88歳のマエストロのタクトは健在。ウェスト・サイド・ストーリーを作曲し、著名な指揮者でもあるバーンスタインが作曲した交響曲はミュージカルのような、オペラのような鮮烈な作品でした。

www.tmso.or.jp

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2/29 講談・落語

19:00開演@なかのZERO(中野)

小春志・桃花・貞鏡 合同真打昇進披露公演「三魅一体」

出演:立川小春志、蝶花楼桃花、一龍齋貞鏡、林家けい木 [ゲスト]春風亭昇太

※ 三人の女性の新真打の披露公演。いずれも個性際立ち、芸も際立ち、本当におもしろい会でした。いろいろな「大発見」のある公演。潤う閏日でした。

www.yorocon46.com

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(数々の大発見はもう一つのブログで)

 

2. 2024年3月の活動予定

(1) 行きたい展覧会

◎「印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵」@上野・東京都美術館 開催中(1/27) - 4/7

https://www.tobikan.jp/

※ 今月中にぜひとも行きたい展覧会(◎)です。これはもう行かないと。

 

◎「マティス 自由なフォルム」@乃木坂・国立新美術館 開催中(2/14) - 5/27

国立新美術館 THE NATIONAL ART CENTER, TOKYO

※ もう開催中。これも行かないと

 

◎「『シュルレアリスム宣言』100年 シュルレアリスムと日本」@西高島平・板橋区立美術館 開催中(3/2) - 4/14

板橋区立美術館

※ 巡回:2/4までは京都文化博物館で開催中。三重県立美術館(4/27~6/30)

     こちらも開催中に。

 

☆「春の江戸絵画まつり ほとけの国の美術」@府中・府中市美術館 3/9 - 5/6

春の江戸絵画まつり ほとけの国の美術 東京都府中市ホームページ

※ 恒例の春の江戸絵画まつり、開幕です。

 

 

☆「生誕150年 池上秀畝-高精細画人-」@中村橋・練馬区立美術館 3/16 - 4/21

生誕150年 池上秀畝―高精細画人― | 展覧会 | 練馬区立美術館

※ こちらの高精細画も素晴らしいです。

 

☆「北欧の美術 -ノルウェー・スウェーデン・フィンランドの絵画」@新宿・SOMPO美術館 3/23 - 6/9

SOMPO美術館(新宿駅 徒歩5分)|この街には《ひまわり》がある。

※ 巡回:松本市美術館(7/13~9/23)

 

☆「大吉原展 江戸アメイヂング」@上野・東京藝術大学大学美術館 3/23 - 5/19

東京藝術大学大学美術館 The University Art Museum, Tokyo University of the Arts

 

☆「ブランクーシ 本質を象る」@京橋・アーティゾン美術館 3/30 - 7/7

アーティゾン美術館 Artizon Museum, Tokyo

 

☆「開館記念展 皇室のみやび -受け継ぐ美-」@大手町・皇居三の丸尚蔵館 開催中(2023/11/23) - 6/23

皇居三の丸尚蔵館 The Museum of the Imperial Collections, Sannomaru Shozokan

※ 今は第三期

 

☆「企画展 邨田丹陵 時代を描いたやまと絵師」@立川・たましん美術館 開催中(1/13) - 3/31

企画展「邨田丹陵 時代を描いたやまと絵師」

※ 歴史の教科書の「大政奉還」を描いた絵師。2/23に見に行ったら、なんと展示替えの休館中。やってしまった・・・

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(リベンジしたい)

 

(2) コンサートなど

3/23 落語

18:00開演@銀座ブロッサム(中央会館)

~われらの時代~

出演:柳亭小痴楽、蝶花楼桃花、桂二葉、ロケット団 ほか

※ 関西の桂二葉さんは初めて聴くので楽しみです。

 

3. まとめ

先月は坂本龍一展、本阿弥光悦展とテレビで紹介されたのを見て、急いで見に行ったということが多かったです。これも何かの発見があったからですね。今月は地域の美術館(板橋、練馬、府中)の展覧会がおもしろそうです。あと「三魅一体」本当におもしろかったです。今月の落語も楽しみです。今月も忙しくなりそうです。

 

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(久々に見ました)

 

さいごに関連リンクです。

 

【美術館情報】

東京都の展覧会|展覧会スケジュール|美術館・アート情報 artscape

 

www.suki-kore.tokyo

 

ということで今月の報告は以上です。

ここまで、お読みいただき、ありがとうございました。

また、よろしくお願いいたします。

 

※ ご意見、ご感想、大歓迎です。是非コメントかメール(yorocon46@gmail.com)まで。ツィッターは@yorocon46です。

 

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(渋谷のスクランブル交差点。この光景を一生懸命、写真に収めている海外からの旅行者がかなり多い。これも大発見)

【展覧会】特別展 本阿弥光悦の大宇宙@上野・東京国立博物館(2024/2/24 鑑賞)

よろコンです。

 

本ブログでは見て来た展覧会の個人的な感想を書いています。

 

今回は、2024年2月24日(土)に見て来た展覧会
特別展 本阿弥光悦の大宇宙

@上野・東京国立博物館(平成館)
です。

 

「始めようか、天才観測。」

マルチなタレント本阿弥光悦。教科書にも載っていました。でも、具体的に何をした人?正直、ほとんど知りませんでした。「天才観測」・・・はて??

そして、今回、まさにその宇宙にドはまりしてきました。まさに「天才観測」

皆さんも一緒に観測しに行きましょう!

今回も最後までお読みいただけますと幸いです。

 

【目次】

 

※ 以下の記述は展覧会の解説、パンフ、図録、その他WEB上の資料等を参照の上、記述しております。また、展覧会の撮影可能な箇所で撮影した写真および図録・絵はがきの写真を掲載しています。

 

1. 展覧会情報

(1) 開催概要

・会場:東京国立博物館・平成館@上野

・期間:開催中(2024/1/16(火)) - 2024/3/10(日) ※ あと一週間

   ※ 展示替えあり(8期にわたって部分的に展示替えあり)

・時間:9:30~17:00(入館は閉館30分前まで)
   ※ ナイトュージアム:2/16(金)以降の金曜・土曜日は19:00まで。

・休館日:月曜日

・チケット:一般 2,100円、大学生1,300円、高校生900円、小・中学生以下無料

・作品数:のべ110点

・写真撮影:NGでした。(一部映像の部屋で撮影がOK)

・関連リンク:

   1) 展覧会

www.tnm.jp

koetsu2024.jp

   2) 美術館

www.tnm.jp

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(この日は二月の三連休で唯一、天気の良い日でした)

 

(2) 訪問日・混雑状況

訪問日:2024/2/24(土) 16:00頃訪問

鑑賞時間:約120分

混雑状況:お客さんは多く混んではいましたが、ゆっくり見て来ました。

 

(3) どんな展覧会?

本阿弥 光悦(ほんあみ こうえつ・1558-1637)

刀剣を鑑定する本阿弥家に生まれた光悦。本阿弥家の刀剣の鑑定書「折紙」は「折紙付き」の語源にも。その審美眼が書、陶芸、蒔絵と様々な美へと広がっていきます。また、江戸幕府から京都鷹峯の地を与えられ職人や芸術家たちを集めた「光悦村」を築いた光悦。その活動の根底には日蓮宗への篤い信仰がありました。

「一生涯へつらい候事至てきらひの人」であり「異風者」(本阿弥行状記)

そんな天才・光悦の全貌に「刀」「信」「漆」「書」「陶」といったあらゆる角度から迫る展覧会です。

 

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2. 会場へ

(1) 構成

第1章 本阿弥家の家職と法華信仰 -光悦芸術の源泉

第2章 謡本と光悦蒔絵 -炸裂する言葉とかたち

第3章 光悦の筆線と字姿 -二次元空間の妙技

第4章 光悦茶碗 -土の刀剣

 

(2) 気になる作品

 

光悦の「漆」の世界

会場に入るとまず目に飛び込んでくるのがこちらの蒔絵

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本阿弥光悦「舟橋蒔絵硯箱」(国宝) 江戸時代17世紀(※ 図録より)

 

ふくらみを持った硯箱。硯箱をふくらませる必要はないのですが、敢えてこのフォルムを選んでいます。金箔に鉛。鉛は漆器ではあまり使われない素材とのこと。ですが、敢えて選んでいます。そして散らされた銀板の書。光悦の宇宙が詰まった作品

 

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(展示会場の映像スペースから。こちらは撮影可能でした)

 

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伝本阿弥光甫「本阿弥光悦坐像」江戸時代17世紀(※ 図録より)

 

光悦の孫が作成したと言われる像。光悦を知る人物による像はその姿を最も的確に捉えているのかもしれません。

 

最初の章は本阿弥家本職「刀」の世界

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志津兼氏「短刀 銘 兼氏 金象嵌 花形見」  鎌倉~南北朝時代14世紀(※ 図録より)

 

光悦唯一の指料(自分が腰に差した刀)
花形見は想いの成就をテーマにした謡曲「花筐」に由来されるとのこと

 

続いては「信」の世界

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本阿弥光悦「立正安国論」元和5年(1619年)(※ 図録より)

 

日蓮上人執筆の。時の執権、北条時頼に提出され、他宗派を批判し、幕府を諫める内容から日蓮迫害のきっかけともなった文書。書体は楷書・行書・草書が入り交じり、墨の濃淡、線の肥痩(太い・細い)など、ただの写経の枠を超えた作品。7月5日は母妙秀の忌日のため供養のため寄進されたとのこと。

 

さらに「書」の世界

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本阿弥光悦筆/俵屋宗達下絵「鶴下絵三十六歌仙和歌巻」(重要文化財) 江戸時代17世紀(※ 図録より)

 

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「鶴下絵三十六歌仙和歌巻(部分)」(※ 絵はがきより)


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「鶴下絵三十六歌仙和歌巻(部分)」(※ 絵はがきより)

 

書体の変化、墨の濃淡、線の肥痩は言うまでもなく、字の塊が三角形⊿でリズムを刻んだ散し書き。宗達の下絵とも相まって豪華で革新的な作品です。

 

ちょっと前、音楽の話で「書に共通するなぁ」と思いながら聞いた話があります。
Eテレの「クラシックTV」でバイオリニスト・松田理奈さんがカンニング竹山さんにバイオリンのレッスンをしているとき「息を吐くときに音を出す」と言われていました。その時の竹山さんは息を止めて音を出していたようです。

これ、書道とまったく同じです。書道も息を吐きながら線を書く。呼吸が大切と教えられます。(私も趣味で書道を習っていますが息が止まっているとよく言われます^^;)

 

そうすると音楽は音で、書道は線で演奏者・作者の呼吸が感じられることになります。そこには早い、遅いもあり、息継ぎもある。書道の場合、太く濃い線は比較的、運筆が遅くなり、流れるような線は早くなります。これが呼吸で生み出される。また、筆に墨を付けると墨色が濃く出ますが、これは息継ぎにも似た作業になります。さらに光悦の散し書きはリズムも刻まれる。この書は、絵に書の組み合わせですが、そこに音楽をも重ねた総合芸術だと思いました。
書を介して作者本人と対峙する、そこに本人がいるかのような感覚を覚えます。

 

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本阿弥光悦「書状 ちゃわん吉左殿宛」江戸時代17世紀(※ 図録より)

 

京都の陶芸で有名な樂家二代吉左衛門常慶に宛てに茶碗四つ分の土を持ってきてほしいと頼んだ手紙。最初の行の真ん中の「四」の位置が少し右にずれています。

手紙を書き始めて右の余白が大きいのが気になって自然とバランスをとったのではないか、「間抜け」にならないように配慮されているとのこと(Eテレ「日曜美術館」より)
正にその通りだと思いました。こういうバランス感覚は意図してできるものではなく、自然と生み出された美なのだと感じます。

 

後年、光悦は筋気(筋肉が痙攣して痛む病気)や中風(脳血管疾患による後遺症)による腕の震えに悩まされたと言われます。書にも小刻みな震えの跡が残っています。そのような状態でも、おおらかな書の作品を残しています。天才の新境地。

 

最後は「陶」の世界

先ほどの手紙のとおり親交のあった京都・樂茶碗の樂家とのつながりの中から鷹峯を拝領した人生の後半に陶芸を本格化させます。

 

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本阿弥光悦「黒楽茶碗 銘 雨雲」江戸時代17世紀(※図録より)

 

茶碗の淵のあたりは薄く、刀剣のよう。ひびを入れた意匠。

岩をも思わせる質感。その光沢は宇宙に輝く星をも思わせます。

陶芸の革新となる作品

 

ということで、本阿弥光悦の宇宙探索を終え、展覧会場を出ました。

 

特設ミュージアムショップで今回はいろいろと買いました。

・図録
・特製筆ペン(御筆・あかしや。とても書きやすいです)
・書道練習用のマット(水で書くと黒い線が現れ、乾くと消える優れもの)
・手ぬぐい


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(こちらは手ぬぐいです)

 

色々な作品に出会い、とっても楽しい展覧会でした。

 

3. さいごに

マルチな才能の本阿弥光悦。最初に書いたようにあまり知らずこの展覧会、スルーしようとしていました。が、書の作品が多いようだったので見てみようと思ったことがここに来るきっかけでした。危うく見逃すところでした。

今回の展覧会で、かなりその実像をうかがい知ることができたと思います。特に個人的にも趣味でやっている書道については、その変幻自在、自由な発想、美しい線に墨色の変化、もう「すごい」と言うよりほかないと思いました。楷書・行書・草書を混ぜて書くこと自体、あまりないことです。書はその人の息遣いであり、音楽であり、リズムである。その人そのものがそこにいた証である。と思って光悦の作品を見ると、これほどまでに躍動感のある書は無いのではないでしょうか?

天才観測、これからも続けていきます。

 

【巡回情報】

 

ということで関連リンクです。

 

トーハクさんの昔の書の展覧会です。

www.yorocon46.com

2024年の展覧会情報はこちら

www.suki-kore.tokyo

  ということで、今回は以上です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

また、次もよろしくお願いいたします。

 

※ ご意見、ご感想、大歓迎です。是非コメントかメール(yorocon46@gmail.com)まで。ツィッターは@yorocon46です。

 

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(帰りの月夜、西洋美前。右奥に見えるはスカイツリー。木の葉が覆い茂ったらここからは見えないですね)

 

【展覧会】坂本龍一トリビュート展 音楽/アート/メディア@初台(東京オペラシティ内)・ICC(2024/2/12 鑑賞)

よろコンです。

 

本ブログでは見て来た展覧会の個人的な感想を書いています。

 

今回は、2024年2月12日(月・振替休日)に見て来た展覧会
坂本龍一トリビュート展 音楽/アート/メディア

@初台(東京オペラシティ内)・NTT インターコミュニケーション・センター(ICC)
です。

 

YMO、ラストエンペラー、リゲインEB錠のコマーシャル曲(energy flow)
日本を代表する音楽家の一人・坂本龍一 (以下、敬称略)
2023年3月28日、残念ながらこの世を去りました。あれから一年
テクノ、ポップ、映画音楽等々、音楽家として知られていますが生前から創作活動の一環としてアートにも積極的に取り組まれていました。
そんな、坂本龍一を偲ぶアーティスによる展覧会です。

今回も最後までお読みいただけますと幸いです。

 

【目次】

 

※ 以下の記述は展覧会の解説、パンフ、その他WEB上の資料等を参照の上、記述しております。また、撮影可能な作品について展覧会で撮影した写真を掲載しています。

 

1. 展覧会情報

(1) 開催概要

・会場:NTT インターコミュニケーション・センター@初台(東京オペラシティ内)

・期間:開催中(2023/12/16(土)) - 2024/3/10(日)

・時間:11:00~18:00(入館は閉館30分前まで)
   ※ ナイトュージアム:ないです。

・休館日:月曜日(月曜日が祝休日の場合は翌日)

・チケット:一般 800円、大学生600円、小・中学生・高校生無料
   ※ 来場予約があります。(当日券購入も可能ですが予約優先)

・作品数:12点

・写真撮影:可能です

・関連リンク:

   1) 展覧会

www.ntticc.or.jp

   2) 美術館

www.ntticc.or.jp

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(入口)

 

(2) 訪問日・混雑状況

訪問日:2024/2/12(月・振替休日) 16:40頃訪問

鑑賞時間:約50分

混雑状況:若い方を中心に見に来られた方は多かったですが、スペースがゆったり取られているので、ゆっくり見られました。

 

(3) どんな展覧会?

"教授"の愛称でも親しまれた坂本龍一(1952-2023)

アカデミー作曲賞を受賞、数多くのヒット曲を世に出し、クラシックな楽曲も制作。(私もアルバム「1996」は買いました)
音楽だけをとってもマルチな活動が印象に残りますが、その坂本は、東京都現代美術館の「アートと音楽」展の総合アドバイザー就任や山口県の山口情報芸術センター(YCAM)での展覧会開催等、アートの世界でも活躍していました。
アートを、「既成概念を壊し、新しいものを創造する」ことと位置づけ、音楽・美術もアートの一手段として取り込んでいった坂本龍一

その"坂本芸術"をオマージュするアーティストたちによる展覧会です。

 

2. 会場へ

(1) 構成

3つの部屋に別れて展示されています。

(特に章立てはありません)

 

(2) 気になる作品

まずは、会場に入ってすぐの部屋。

 

坂本龍一+真鍋大度 「センシング・ストリームズ2023 -不可視・不可聴」(ICCバージョン)"Sensing Stream 2023 - invisible, inaudible" [ICC version]

 

暗闇の中にラジオの周波数を併せるような装置(今のラジオにはないですかね^^;)

目の前に電波を可視化した映像が浮かび、可聴化した音が鳴ります。

真鍋大度はパフュームの舞台装置なども手掛けるライゾマティックスを設立し、今回の共同キュレーターの一人

作品は2014年の札幌国際芸術祭での発表作品をICCバージョンとしたもの

現代社会において必要不可欠なのに五感で感じられない電波を目で見え、耳で聴こえるようにして存在を明らかにした作品

 

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148.5Mhz

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5180.0Mhz

 

次の部屋に入ります。
真っ先に目に飛び込んできたのは

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毛利悠子「そよぎ またはエコー」"Breath or Echo"

 

札幌国際芸術祭2017での発表作。楽曲を坂本が提供し、本展ではその曲が自動演奏されています。紙が動き、弦に触れると音が微妙に変化します。そして紙の振動をセンサーが感知し、別のオブジェを動かし、新たな音を生み出します。


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李禹煥「祈り」2022年

 

坂本の病気平癒を祈って描かれた作品。李から坂本へのメッセージには、
時計回りの反対に描いたので見るときも左回りに目をまわしながら見ると力が湧いてくる
とあります。病気になる前に時を戻すということなのでしょうか?

 

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ダムタイプ+坂本龍一(Dumb Type)「Playback 2022」[2022/23]

 

1984年に京都市立芸術大学の学生中心に結成されたマルチメディア・パフォーマンス・アーティスト集団「ダムタイプ」によるアナログ・レコードを使ったサウンド・インスタレーション作品。レコードに世界の各都市を中心とした世界地図が浮き上がる特殊カッティングが施されています。

 

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(東京)

 

そして、最後・三番目の部屋では音楽を映像化した世界


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ストレンジループ・スタジオ「レゾナント・エコーズ」Strangeloop Studios "Resonant Echoes"から

 

坂本の楽曲を映像化した作品。「レゾナンス」は「共鳴」

坂本の音楽を通じて、いかにリスナーが時間を横断することを可能にするかを探求した作品とのこと


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フォーオーフォー・ドットゼロ(=404.zero=クリスティーナ・カールプリシェヴァ、アレクサンドル・レツィウス)「The Sheltering Sky - remodel」2023

 

ロシア出身のジェネラティブアート(コンピュータのアルゴリズムによって生成されるアートの総称とのこと)・デュオの作品

 

最後は

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真鍋大度+ライゾマティクス+カイル・マクドナルド「Generative MV」

 

会場に設置されたタブレットに言葉を入力すると坂本の演奏姿の背景をAIが超高速で生成。音楽においてもシンセサイザーなどの最新テクノロジーを積極的に活用した坂本へのオマージュということでしょうか。

 

いろいろな作品を見ながら、坂本龍一というアーティストがアートという世界においても多大なる影響を与え、そしてこれからも多くのアーティストにインスピレーションを与え続けていくであろうことを感じ、美術館を後にしました。

 

3. さいごに

私個人としては生前、坂本龍一の音楽は多少聴くことはありましたが、アートの活動の方はほとんど知りませんでした。ただ、今回のトリビュート展を見て、かなり関心が高まりました。

本展の共同キュレーターである真鍋氏、ICC主任学芸員の畠中氏はそれぞれが出演された別々の番組で、今回のような試みが批判を浴びることがあるかもしれないという趣旨のことを言われていました。それでも、坂本龍一は今回のような取り組みを大歓迎したのではないかと個人的には思います。坂本龍一もまた実験的な挑戦をし続けたアーティストだったと思いますので。

最後に坂本龍一が好んだ一節です

「Ars longa, vita brevis」(芸術は長く、人生は短し)

 

【巡回情報】

 

ということで関連リンクです。

www.mot-art-museum.jp

今年の年末、東京都現代美術館(MOT@清澄白河)で日本初の大規模個展があるようです。ちょっと先の話になりますが、今から楽しみです。(一年なんて早いですから)

 

2024年の展覧会情報はこちら

www.suki-kore.tokyo

  ということで、今回は以上です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

また、次もよろしくお願いいたします。

 

※ ご意見、ご感想、大歓迎です。是非コメントかメール(yorocon46@gmail.com)まで。ツィッターは@yorocon46です。

 

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(個人的に特に印象に残っていたのは「戦メリ」と「い・け・な・いルージュマジック」忌野清志郎も今はいません。あらためてご冥福をお祈りします)

 

【展覧会】サムライ、浮世絵師になる!鳥文斎栄之展@千葉・千葉市美術館(2024/2/11 鑑賞)

よろコンです。

 

本ブログでは見て来た展覧会の個人的な感想を書いています。

 

今回は、2024年2月11日(日)に見て来た展覧会
サムライ、浮世絵師になる!鳥文斎栄之展

@千葉・千葉市美術館
です。

 

「ちょうぶんさい・えいし」と読みます。

歌麿、北斎、広重、写楽に国芳

数多のスター絵師がいる中で、あまり聞いたことがない名前かもしれません。個人的には好きな浮世絵師No1、2といった存在。サムライから絵師という異色の経歴。数多くの作品が海外流出。実はすごい絵師・栄之の"世界初"大回顧展。同時開催「武士と絵画」およびコレクション展の作品の一部もあわせてご紹介します。

今回も最後までお読みいただけますと幸いです。

 

【目次】

 

※ 以下の記述は展覧会の解説、パンフ、図録、その他WEB上の資料等を参照の上、記述しております。また、撮影可能な作品について展覧会で撮影した写真を掲載しています。

 

1. 展覧会情報

(1) 開催概要

・会場:千葉市美術館@千葉

・期間:開催中(2024/1/6(土)) - 2024/3/3(日)

   ※ 展示替えあり・前期1/6 - 2/4(終了)、後期2/6-3/3

・時間:10:00~18:00(入館は閉館30分前まで)
   ※ ナイトュージアム:金曜・土曜日は20:00まで。

・休館日:1/9、1/15、2/5、2/13 ※ 第1月曜日は全館休館日

・チケット:一般 1,200円、大学生800円、小・中学生・高校生無料

    ※ ごひいき割:本展チケット半券提示で2割引き
        ナイトミュージアム割:金・土曜の18:00以降は観覧料半額

・作品数:前期・後期合わせ160点、現在は約110点

・写真撮影:写真可能のマークがある作品(数点)のみOK(ほぼNG)

・関連リンク:

   1) 展覧会

www.ccma-net.jp

※ 同時開催「武士と絵画」

www.ccma-net.jp

   2) 美術館

www.ccma-net.jp

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/Y/YoroCon/20240216/20240216074540.jpg

(美術館エレベータのドア)

 

(2) 訪問日・混雑状況

訪問日:2024/2/11(日) 15:30頃訪問

鑑賞時間:約120分(栄之展+武士と絵画で90分、コレクション展30分くらい)

混雑状況:お客さんは多かったですが、混んではいません。ゆっくり見られました。

 

(3) どんな展覧会?

鳥文斎栄之(1756-1829)

禄高500石、旗本細田家の長男。祖父は勘定奉行。自分も絵を好んだ将軍家治の絵具方として勤め、「栄之」の号も「上意に依る」ものとか。御用絵師の狩野栄川院典信(みちのぶ)に絵を学びます。

時は老中・田沼意次の頃、浮世絵全盛の天明~寛政期。意次の失脚という時代の変わり目に、浮世絵師として本格的に活動開始。武士の身分を離れます。楚々とした長身の美人画で歌麿と拮抗する存在に。しかしながら、二人の歩みは違ったものに

明治以降、多くの作品が海外に流出したため他の絵師に比べ、少し影が薄く感じますが、今回はボストン美術館、大英博物館から作品が里帰り。栄之の画業をたどり魅力に迫る展覧会でした。

なお、8階→7階と展示会場がありますが、7階展示会場の後半は「武士と絵画 -宮本武蔵から渡辺崋山、浦上玉堂まで-」です。(同一チケットで鑑賞できます)

 

2. 会場へ

(1) 構成

プロローグ 将軍の絵具方から浮世絵師

第1章 華々しいデビュー隅田川の絵師誕生

第2章 歌麿に拮抗-もう一人の青楼画家

第3章 色彩の雅-紅嫌い

第4章 栄之ならではの世界

第5章 門人たちの活躍

第6章 栄之をめぐる文化人

第7章 美の極み-肉筆浮世絵

エピローグ 外国人から愛された栄之

 

(2) 気になる作品

ここでは会場で撮影OKだった3作品を紹介します。

いずれもボストン美術館からの里帰りの作品です。

 

「第1章 華々しいデビュー隅田川の絵師誕生」から


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鳥文斎栄之「川一丸舟遊び」(かわいちまるふなあそび)寛政8-9年(1796-97年)

 

同時代に活躍した喜多川歌麿(?-1806年)も葛飾北斎(1760-1849)もデビュー当初は細版で画面が小さく賞味期限も短い役者絵からスタート。

一方、栄之はいきなりの浮世絵界初であろう大判錦絵五枚続の作品を次々と制作。武家出身ということから絵師としても恵まれたスタートを切っています。

大判錦絵五枚続は高価なので、大衆相手というより、裕福な富裕層をターゲットに売り出されたものと想像されます。これも武士という出自を「売り」にした"戦略"なのでしょう。

 

それでは右から一枚一枚見て行きます。


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長身で楚々とした女性たちの立ち姿に、どことなく品を感じます。

 

この頃の美人画の雄、喜多川歌麿と比較してみると

 

・版元

   栄之=老舗の版元・西村屋与八からの出版が多い

   歌麿=もとは吉原の本屋で新興の蔦屋重三郎が見出し育てる

 

・画風

   栄之=立ち姿や座り姿の全身像が多い

   歌麿=美人画初の大首絵で一世を風靡

 

当時、流行った大首絵を栄之が描いたのは蔦屋が亡くなった頃とのこと。歌麿とはすみ分けがあったようです。

 

さらに、当時の浮世絵の華やかさ・鮮やかさを彩った色は「紅」の赤。

一方で、この赤を敢えて使わない「紅嫌い」(赤に替わって紫を使うため「紫絵」とも言う)で古典主題を描いた栄之。

実際の作品を見て見ると派手な浮世絵に比べ、かなり色が抑えられた世界。その落ち着いた色遣いから優雅な世界が広がります。富裕層を相手にした栄之ならではの作品でした。

 

「第5章 門人たちの活躍」では

 

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鳥文斎栄昌「郭中美人競 大文字屋内 本津枝」(かくちゅうびじんくらべ だいもんじやうち もとつえ) 寛政9年(1797年頃)

 

ネコがかんざしにじゃれています。

栄之の門人、栄昌(えいしょう)の作品。

この絵、きれいな状態で残された世界で一点物の作品とか。ネコと笑顔が作品に明るい魅力を添えています。

栄之とは逆に栄昌は大首絵を描いています。栄之とは版元も違いますので、やはりすみ分けがあるようです。

 

その後、寛政の改革からの出版規制もあり、寛政10年頃から栄之は錦絵出版から肉筆画に集中します。武家出身の栄之は歌麿のような反抗的態度は取れず、肉筆画へと移行していったのでしょう。栄之の肉筆画も美しく、上流階級に好まれたようです。

 

そして「エピローグ」に展示されていますが、さきほどの

「第1章 華々しいデビュー隅田川の絵師誕生」

の一枚

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鳥文斎栄之「新大橋橋下の涼み船」寛政2年(1790年)頃

 

やはり大判錦絵五枚続。

こちらも一枚一枚見ていきます。

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何艘もの舟で盛り上がっています。主役はすべて女性たち

穏やかで華やかで楽しそうです。

 

鳥文斎栄之

これまで、一堂に集結した作品を見ることはなかったのですが、展覧会での作品を通じて栄之の個性があらためて伝わってきたように思います。これからもこのような展覧会で栄之の作品に出会えることを期待しています。

 

さて、ここからは同時開催「武士と絵画」から

 

宮本武蔵や浦上玉堂、そして江戸琳派・酒井抱一らの作品が並ぶ中から撮影可能でした

渡辺崋山「佐藤一斎像画稿 第三~第七」

をご紹介します。

 

渡辺崋山は(私の頃は)教科書にも出てくる蛮社の獄(1839年 鎖国政策を批判した者に対する江戸幕府の言論弾圧事件)で切腹した三河田原藩の武士。佐藤一斎は渡辺崋山の儒学の師とのことです。

 

完成図はこのようになります。

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これを描くに至るまでの画稿です。

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左から
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第三、第四


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第五

 

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第六、第七

 

試行錯誤のあと、作品の写実性がうかがえます。

 

さらに5階の「コレクション展」から今回の鳥文斎栄之に関係する浮世絵を

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鳥居清長「美南見十二候六月(茶屋の遊宴)」天明4年(1784年)頃

 

栄之にも多大な影響を与えた浮世絵師

 

最後はライバル喜多川歌麿の2作品

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喜多川歌麿「鞠と扇を持つ美人」寛政9年(1797年)頃


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喜多川歌麿「見立邯鄲」寛政7-8年(1795-96年)頃

 

いかがでしたでしょうか?


鳥文斎栄之の作品から同時代の武士・絵師の作品も見て来ました。

海外に作品が流れたため、今、忘れられた画家は他にもいます。今後も、このような展覧会でよりよく知る機会をいただけたらと思いました。

 

この日は図録を買って、美術館を後にしました。

 

3. さいごに

鳥文斎栄之は武士出身という異色の絵師です。そして恵まれていた絵師です。

一方で歌麿のような絵師とは上手くすみ分けられていて、作品の購買層のターゲットも違う。画力に加え、その人の持つ出自なども含めた「個性」を最大限に生かした販売「戦略」がその人の作風をも決めている。江戸の浮世絵業界(?!)というか出版業界のしたたかさに驚かされます。江戸の人、たくましい。

 

【巡回情報】

 

ということで関連リンクです。

 

www.suki-kore.tokyo

栄之の師匠・狩野典信の作品も一枚あります。是非、探してみてください。

 

2024年の展覧会情報はこちら

www.suki-kore.tokyo

  ということで、今回は以上です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

また、次もよろしくお願いいたします。

 

※ ご意見、ご感想、大歓迎です。是非コメントかメール(yorocon46@gmail.com)まで。ツィッターは@yorocon46です。

 

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(珍しい美術館併設の居酒屋さん。飲みながらのアート談義、良いですよねぇ)

 

【展覧会】キース・へリング展 -アートをストリートへ-@六本木・森アーツ・ギャラリー(2024/1/14 鑑賞)

よろコンです。

 

本ブログでは見て来た展覧会の個人的な感想を書いています。

 

今回は、2024年1月14日(日)に見て来た展覧会

キース・へリング展 -アートをストリートへ-

@六本木・森アーツ・ギャラリー
です。

 

地下鉄の広告板からアートを発信

私には、この頃のニューヨークはとってもカッコよく写っていました。ニューヨークをカッコいい街にしていた一人、キース・へリング。その作品は明るくて、ポップで、パワーがあります。そんなキース・へリングがアートを通じて発信し続けたものとは?

今回も最後までお読みいただけますと幸いです。

 

【目次】

 

※ 以下の記述は展覧会の解説、パンフ、その他WEB上の資料等を参照の上、記述しております。また、撮影可能な作品について展覧会で撮影した写真を掲載しています。

 

1. 展覧会情報

(1) 開催概要

・会場:森アート・ギャラリー@六本木ヒルズ

・期間:開催中(2023/12/9(土)) - 2024/2/25(日)

・時間:10:00~19:00(入館は閉館30分前まで。事前予約制)
   ※ ナイトュージアム:金曜・土曜日は20:00まで。

・休館日:会期中無休

・チケット:一般 、大学生、専門学校生2,200円、中高生1,700円、小学生700円

・作品数:約150点

・写真撮影:基本的にOK(最後の「キース・へリングと日本」の展示箇所のみNG)

・関連リンク:

   1) 展覧会

kh2023-25.exhibit.jp

   2) 美術館

 macg.roppongihills.com

 

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(キースと言えば、この赤ちゃん)

 

(2) 訪問日・混雑状況

訪問日:2024/1/14(日) 17:20頃訪問

鑑賞時間:約60分

混雑状況:お客さんは多かったですが、ゆっくり見られました。

 

(3) どんな展覧会?(個人的に)

キース・へリング(1958年-1990年)。アメリカ・ペンシルバニア州出身

1980年代、地下鉄の広告版にチョークでドローイング。人種・宗教・性別・職業・・・様々な人々が集まるニューヨークで様々な人々が交差する地下鉄。ここからアートを発信し始めたキース・へリングはあらゆる人に作品を見てもらえるように、アートの力は人の心を動かし世界を平和にできると信じて活動を続けてきました。

一方、彼の言葉からは死と隣り合わせに生きてきたことがうかえます。当時、蔓延し始めていたエイズに感染したへリングは1990年、エイズによる合併症により31歳という若さでこの世を去ります。

実質の活動期間10年。この短い間に発信し続け、今なお輝き続けるへリングの作品の魅力にせまる展覧会です。

 

なお、展覧会ではキース・へリングの言葉が紹介されていました。当ブログでもご紹介します。

 

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(入口)

 

2. 会場へ

(1) 構成

第1章:Art in Transit  公共のアート

第2章:Life and Labyrinth  生と迷路

第3章:Pop Art and Culture  ポップアートとカルチャー

第4章:Art Activism  アート・アクティビズム

第5章:Art is for Everybody  アートはみんなのために」

第6章:Present to Future  現在から未来へ

SPECIAL TOPIC:Keith Haring and Japan  キース・へリングと日本 ※ このエリアのみ撮影NG

(2) 気になる作品

ここでは会場で撮影OKだった作品から紹介します。

 

「第1章:Art in Transit  公共のアート」から

 

キース・へリングの写真
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1980年開始の貴重なサブウェイ・ドローイング(5点出品)から

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1981-83年「無題」

 

有名になると剥がされて売買されるようになり、1985年にこの活動は終了しました。

 

 

「第2章:Life and Labyrinth  生と迷路」から

 

1986年7月7日のキースの言葉

「人生は儚い  それは生と死の間の細い線

ぼくはその細い線の上を歩いている

ニューヨークに住んで  飛行機で飛び回っているけれど

毎日死と向き合っている」

 

キースは1988年エイズ感染と診断されました。

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「ピラミッド」1989年


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「フラワーズII」1990年

 

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「スリー・リトグラフス」1985年

 


「第3章:Pop Art and Culture  ポップアートとカルチャー」から

 

アメリカのスター、ミッキーマウスとアンディ・ウォーホールの融合

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「アンディ・マウス」1986年

 

 

「第4章:Art Activism  アート・アクティビズム」から

 

へリングがダイレクトにメッセージを発信したポスターから


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「南アフリカ解放」1985年


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「無知は恐怖、沈黙は死」1989年

 

エイズと戦うキース・へリングのメッセージ

正しく知り、正しく伝える。「見ざる、聞かざる、言わざる」はNo!


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「ナショナル・カミングアウト・デー」1988年


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「ヒロシマ  平和がいいに決まってる!!」1988年

 

 

「第5章:Art is for Everybody  アートはみんなのために」から

 

アートを一部の富裕層や知識人のためだけではなく、子どもから大人まで、より多くの人に身近なものとして届けようとしたへリング。ストリートで活動を始めたキース・へリングの根底にあるものなのでしょう。


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「赤と青の物語」1989年

 

赤と青の抽象的な図形に線を加えて生み出されたキャラクター

何が出るのか?子どもの頃、こういう絵は無意識のうちに描いていたような。大人になってもこの絵は楽しい。

 

キース・へリングの言葉です。

「子どもたちは  僕たちが忘れてしまっている「なにか」を知っている

子どもたちは毎日生きていることに満足している

それは本当はとても大切なことで

そのことを理解して尊重することができたら  大人たちは救われるんだ」

1986年7月6日

 

「第6章:Present to Future  現在から未来へ」から


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「イコンズ」1990年

 

へリングが亡くなる年に描かれた「イコンズ」

へリングの重要なモチーフ「ラディアント・ベイビー(Radiant Baby)」
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キリストの子供時代の暗示とも

 

SPECIAL TOPICはキース・へリングが来日した時の活動が写真や作品で紹介されていました。また会場を出たところにミュージアム・ショップのエリアもあります。

 

「アーティストは  与えられた歴史のひとこまにおける社会の代弁者だ

ぼくたちが生きるこの世の中のことを  どう捉えているのか」

1984年10月30日 キース・へリングの言葉

 

キースが捉えた1980年代ニューヨーク。どのように写りましたか?

 

 

3. さいごに

ちょっと気弱そうにも見えるへリングですが、その作品からはアートをすべての人に届けようという強い意志、アートで世界を変えられるという強い信念が伝わってくるようです。ポップだけど残虐なモチーフが描かれていたり、と複雑性も秘められていますが、力強い太い線とシンプルな形からストレートにメッセージが伝わってくる。亡くなってから30年以上経た今。正にキースの作品に込められたメッセージが響く時代なのではないでしょうか?

 

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やっぱり、いつまでもカッコいいです。

 

【巡回情報】

・兵庫県立美術館ギャラリー棟3階ギャラリー 2024年4月27日-6月23日

・福岡市美術館 2024年7月13日-9月8日

・名古屋会場 2024年9月-11月(予定)

・静岡会場 2024年11月-2025年1月予定

・水戸会場 2025年2月-4月予定

 

ということで関連リンクです。

今回の展覧会でも多くの作品が展示されています。

www.nakamura-haring.com

山梨の自然に囲まれた美術館です。私も一度訪れましたが、とっても楽しい空間でした。ぜひともまた行きたい!

 

2024年の展覧会情報はこちら

www.suki-kore.tokyo

  ということで、今回は以上です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

また、次もよろしくお願いいたします。

 

※ ご意見、ご感想、大歓迎です。是非コメントかメール(yorocon46@gmail.com)まで。ツィッターは@yorocon46です。

 

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(六本木ヒルズ52階から)

 

私の月報(展覧会等)・2024年1月(2024/2/4)

よろコンです

 

今週のお題「元気を出す方法」

もう一つのブログでは年に一度の元気を出す方法を書きましたが、こちらのブログでは普段の元気を出す方法です。それは展覧会にコンサート等々

 

  今月から、前月の活動(行ってきた展覧会等)と今月の予定(行きたい展覧会等)を未来の私への「月報」としてまとめます。ただただ自分のための趣味のブログですが、何か気になるものが1つでもありましたら、幸いです。しばし、お付き合いください。なお、写真はすべて撮影OKだった作品等です。

 

【目次】

 

1. 2024年1月の活動記録

(1) 行ってきた展覧会

1/3

☆「パリ ポンピドゥーセンター キュビズム展-美の革命」@上野・国立西洋美術館 2023/10/3 - 2024/1/28(終了)

cubisme.exhn.jp

今年、最初に見て来た展覧会。すでに東京展は終わりましたが3/20~7/7京都市京セラ美術館で開催されます。

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パブロ・ピカソ「輪を持つ少女」1919年春


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ファン・グリス「ギターを持つピエロ」1919年5月

この展覧会についてはこちらも

www.suki-kore.tokyo

続けて西洋美の常設展

☆「もうひとつの19世紀 ブーグロー、ミレイとアカデミーの画家たち」@上野・国立西洋美術館 2023/9/19 - 2024/2/12(開催中)

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ウィリアム・アドルフ・ブーグロー「純潔」1893年


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ジョン・エヴァレット・ミレイ「あひるの子」1889年

 

1/14

☆「癒しの日本美術 -ほのぼの若冲・なごみの土牛-」@恵比寿(広尾)・山種美術館 2023/12/2 - 2024/2/4(終了)

日本画の専門美術館 山種美術館(Yamatane Museum of Art)

 

ポスターの伊藤若冲「伏見人形図」(左上)のゆるさがたまらず見に行きました。右下の若冲の「布袋図」もデフォルメが素晴らしいゆるさです。

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そして最近、注目度の高い絵師のゆるい絵も

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長沢芦雪「菊花子犬図」

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この日も続けてf:id:YoroCon:20240205002127j:image

 

☆「キース・へリング展 アートをストリートへ」@六本木・森アーツセンターギャラリー 2023/12/9 - 2024/2/25(開催中)

森アーツセンターギャラリー - MORI ARTS CENTER GALLERY

 

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アートの力を純粋に信じ続けたキース・へリングだからこそのパワー漲る展覧会でした。

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キース・へリングが敬愛するアンディ・ウォーホールならぬ「アンディ・マウス」

クールです。

 

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☆「マリー・ローランサン -時代をうつす眼」@東京(八重洲)、京橋・アーティゾン美術館 2023/12/92024/3/3(開催中)

アーティゾン美術館 Artizon Museum, Tokyo

 

キュビスム、エコール・ド・パリ、強烈な個性が渦巻くパリで独自の個性で輝いたマリー・ローランサンの展覧会。キュビスムはじめ同時代の画家の作品も見ものです。

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マリー・ローランサン「シェシア帽を被った女」1938年

 

この展覧会はこちらも

www.suki-kore.tokyo

もちろん続けてコレクション展へ

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パウル・クレー「双子」1930年

新収蔵品です。

 

昨年、102歳で天寿を全うされた福岡県出身の画家・野見山暁治

野見山のパリ留学を支援した石橋正二郎。アーティゾン美術館が所蔵する野見山作品を一堂に展示します。

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野見山暁治「あしたの場所」2008年

大作の並ぶ、迫力のある展示でした。関連画家の作品もコレクションから展示されています。こちらも3/3まで

 

1/21

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☆「うるおうアジア -近代アジアの芸術、その多様性-」@武蔵小金井・はけの森美術館 2023/12/2 - 2024/1/28(終了)

展覧会 うるおうアジア | はけの森美術館

 

福岡の福岡アジア美術館の所蔵作品が家から近くのはけの森美術館に。散歩がてら見に行ってきました。アジアの芸術、うるおっています。

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バングラディッシュのリキシャ


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カムルル・ハサン「女性」1972年

こちらもバングラディッシュ


この展覧会もこちらとあわせて

www.suki-kore.tokyo

(2) コンサートなど

1/20 コンサート

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15:00開演@文京シビックホール(後楽園)

響きの森クラシック・シリーズVol.78

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番(ピアノ:松田華音)

ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」

指揮:小林研一郎

東京フィルハーモニー交響楽団

 

※ 昨年末の第九から続けて炎のマエストロ・コバケンのタクトで新年・新世界を聴きました。松田さんのラフマニノフと、素晴らしい「コンサート始め」になりました!

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2. 2024年2月の活動予定

(1) 行きたい展覧会

◎「サムライ、浮世絵師になる!鳥文斎栄之展」@千葉・千葉市美術館 開催中(1/6) - 3/3

千葉市美術館

※ 2月中にぜひとも行きたい展覧会(◎)です。世界初の栄之展にボストンや大英博物館から里帰りの作品もあるとのこと。楽しみです。

 

◎「坂本龍一トリビュート展 音楽/アート/メディア」@初台・NTTインターコミュニケーション・センター(ICC) 開催中(2023/12/16) - 3/10

NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]

※ これも2月中にぜひ行きたいです。BSフジ土曜日13:30~13:55の「アートフルワールド」で紹介されていたのを見て、行こうと思いました。音楽をつきつめてアートにたどり着いた坂本龍一の世界。ライゾマティクスの作品にも注目しています。

 

☆「印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵」@上野・東京都美術館 開催中(1/27) - 4/7

https://www.tobikan.jp/

※ こちらはチケットを買いました。アメリカの印象派の作品に魅かれます。

 

☆「建立900年 特別展 中尊寺金色堂」@上野・東京国立博物館 開催中(1/23) - 4/14

東京国立博物館 - Tokyo National Museum

※ 会期末になると混みそうなので早めに行きたいですね。8KCGによる金色堂の原寸大の再現。どうなるのかとても興味あります。

 

☆「マティス 自由なフォルム」@乃木坂・国立新美術館 2/14 - 5/27

国立新美術館 THE NATIONAL ART CENTER, TOKYO

※ 今月から開催です。

 

☆「開館記念展 皇室のみやび -受け継ぐ美-」@大手町・皇居三の丸尚蔵館 開催中(2023/11/23) - 6/23

皇居三の丸尚蔵館 The Museum of the Imperial Collections, Sannomaru Shozokan

※ 第二期が3/3まで。大観の大作「日出処日本」等、注目です。

 

(2) コンサートなど

2/17 コンサート

14:00開演@サントリーホール(溜池山王・六本木一丁目)

都響スペシャル

ショスタコーヴィチ:交響曲第9番

バーンスタイン:交響曲第3番「カディッシュ」(語り:ジェイ・レディモア、ソプラノ:冨平安希子、合唱:新国立劇場合唱団)

指揮:エリアフ・インバル

東京都交響楽団

www.tmso.or.jp

※ 2/16に88歳の誕生日を迎えるマエストロ・インバル。学生時代、インバル指揮のCDを買ってショスタコーヴィチを聴いていました。バーンスタインは指揮者としても有名ですが、この交響曲を聴くのは初めてです。今から楽しみにしています。

 

2/29 落語

19:00開演@なかのZERO(中野)

小春志・桃花・貞鏡 合同真打昇進披露公演「三魅一体」

出演:立川小春志、蝶花楼桃花、一龍斎貞鏡、林家けい木 [ゲスト]春風亭昇太

 

※ 今年最初の落語になるかも。(先に寄席に行くかもしれませんが)昨年来、応援している蝶花楼桃花師匠。女性芸人の落語や講談はこれまであまり見てこなかったのですが桃花師匠に新たな扉を開けてもらいました。仕事帰りに大いに笑って息抜きしたいと思います。

 

3. まとめ

先月もいろいろな展覧会に行けました。ふと、思いついて見に行った「うるおうアジア」がなかなか面白かったです。そのほかの展覧会も良かったです。今月は少し遠めの千葉市美術館とICCには是非とも行きたいです。コンサートに加え、そろそろ寄席にも。今月も忙しくなりそうです。

 

さいごに関連リンクです。

 

【美術館情報】

東京都の展覧会|展覧会スケジュール|美術館・アート情報 artscape

 

www.suki-kore.tokyo

 

ということで今月の報告は以上です。

ここまで、お読みいただき、ありがとうございました。

また、よろしくお願いいたします。

 

※ ご意見、ご感想、大歓迎です。是非コメントかメール(yorocon46@gmail.com)まで。ツィッターは@yorocon46です。

 

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(六本木からの夕景。手前の灯は国立新美術館)

【展覧会】マリー・ローランサン -時代をうつす眼-@東京(八重洲・京橋)・アーティゾン美術館(2024/1/19 鑑賞)

よろコンです。

 

本ブログでは見て来た展覧会の個人的な感想を書いています。

 

今回は、2024年1月19日(金)、会社帰りに見て来た展覧会

マリー・ローランサン -時代をうつす眼-

@東京(八重洲・京橋)・アーティゾン美術館

です。

 

金曜日の夕方、東京駅の近く、ゆったり優雅な時間を過ごしました。

20世紀前半、イズム、モードの渦巻くパリで、何者にも染まらないパステルカラーの独自性。そんなローランサンと同時代の画家の作品から、彼女の魅力に迫る展覧会です。

 

今回も最後までお読みいただけますと幸いです。

 

【目次】

 

※ 以下の記述は展覧会の解説、パンフ、その他WEB上の資料等を参照の上、記述しております。また、撮影可能な作品について展覧会で撮影した写真を掲載しています。

 

1. 展覧会情報

(1) 開催概要

・会場:アーティゾン美術館(6階)

・期間:開催中(2023/12/9(土)) - 2024/3/3(日)

・時間:10:00~18:00(入館は閉館30分前まで)
   ※ ナイトュージアム:2/23を除く金曜日は20:00まで。

・休館日:月曜日(1/8、2/12は開館。翌火曜日が休館)

・チケット:一般 (Web予約)1,800円・(窓口販売)2,000円、大学・専門学校・高校生 無料(要Web予約)、中学生以下 無料(予約不要)

・作品数:アーティゾン美術館のコレクション中心にマリー・ローランサン美術館や国内外の作品から85点。キュビスム等、関連作品も展示されています

・写真撮影:基本的にOK(写真撮影・スケッチとNG作品はそれぞれにマークがあるので要注意)

・関連リンク:

   1) 展覧会

マリー・ローランサン ―時代をうつす眼 | アーティゾン美術館

 

   2) 美術館

アーティゾン美術館 Artizon Museum, Tokyo

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(イルミネーションがよく似合う)

 

(2) 訪問日・混雑状況

訪問日:2024/1/19(金) 18:00頃訪問

鑑賞時間:約60分(ほかのコレクション展などと併せてトータル約120分)

混雑状況:ナイトミュージアムでゆっくり見られました。たまたま学芸員さんのギャラリートークもあり、興味深いお話も伺えました。

 

(3) どんな展覧会?(個人的に)

マリー・ローランサン(1883-1956)。フランス・パリ出身

キュビスムの画家として活動を始め、ピカソたちと交流、詩人アポリネールとは恋に落ちます。1914年、ドイツ人男爵と結婚すると第一次大戦では国外に亡命することに。その後、1920年に離婚を決意してパリに戻り、それから1956年72歳で亡くなるまで、そのほとんどをパリで過ごします。

絵画、舞台、文学等々、幅広い世界で活躍したマリー・ローランサン。独自のパステルカラーの作品で時代の寵児となり、彼女に肖像画を描いてもらうことがパリ上流婦人の流行に。20世紀前半のパリを華やかに、艶やかに通り抜けたローランサンの歩みをたどる展覧会でした。

 

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(入口)

 

2. 会場へ

(1) 構成

序 章 マリー・ローランサンと出会う

第1章 マリー・ローランサンとキュビスム

第2章 マリー・ローランサンと文学

第3章 マリー・ローランサンと人物画

第4章 マリー・ローランサンと舞台芸術

第5章 マリー・ローランサンと静物画

終 章 マリー・ローランサンと芸術

 

(2) 気になる作品

「序 章 マリー・ローランサンと出会う」から

ここでは二つの肖像画を

 

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マリー・ローランサン「帽子をかぶった自画像」1927年頃

 

マリー・ローランサンらしい、パステルカラー

 

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マリー・ローランサン「自画像」1905年頃

 

こういう油彩画も描かれていました。

 

「第1章 マリー・ローランサンとキュビスム」から


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マリー・ローランサン「パブロ・ピカソ」1908年頃

 

この頃は洗濯船でキュビスムと交流


この展覧会ではアーティゾン美術館のキュビスムの作品も


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ジャン・メッツァンジェ「円卓の上の静物」1916年


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ロベール・ドローネー「街の窓」1912年

 

「第2章 マリー・ローランサンと文学」からf:id:YoroCon:20240129002648j:image

マリー・ローランサン「椿姫 第2図」1936年


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マリー・ローランサン「椿姫 第10図」1936年


「第3章 マリー・ローランサンと人物画」から


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マリー・ローランサン「二人の少女」1923年


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マリー・ローランサン「手鏡を持つ女」1937年頃


同時代のパリの女性を描いた作品も
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ラウル・デュフィ「ポワレの服を着たモデルたち」1943年


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ケース・ヴァン・ドンゲン「シャンゼリゼ大通り」1924-25年


「第4章 マリー・ローランサンと舞台芸術」から

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マリー・ローランサン「女鹿と二人の女」1923年

 

「第5章 マリー・ローランサンと静物画」から

人物画が有名なマリー・ローランサンの描く花

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マリー・ローランサン「花を生けた花瓶」1950年頃

 

「終 章 マリー・ローランサンと芸術」から

大作のが多いです。

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マリー・ローランサン「プリンセス達」1928年

 

この展覧会のアイコン。大阪中之島美術館から


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マリー・ローランサン「三人の若い女」1953年頃

 

左奥に見える橋はミラボー橋。この橋を詩に読んだかつての恋人アポリネールを暗示しているとか

 

  マリー・ローランサンとその時代を生きた画家たちの作品を通して華やかなりしパリを、そのパリを歩んだマリー・ローランサンの軌跡をたどる展覧会でした。

 

3. さいごに

マリー・ローランサンはキュビスム、エコール・ド・パリ、肖像画家、文学・・・昔、とらえどころがない画家だという印象がありました。ただ、この展覧会をはじめ、マリー・ローランサンの作品に触れる機会が多くなるにつれ、だんだんとその淡い色の優しさだけに収まらない芯の強さ、したたかさを感じるようになってきました。同時代の画家たちの作品と相まっても、そこにはゆるぎないマリー・ローランサンの作品がある。あらためて、すごい画家だなぁと思いました。まだまだ、彼女の作品を見て行きたいと思います。とても面白い展覧会でした。

 

【巡回情報】

 

ということで関連リンクです。

一年前のBunkamuraの展覧会はモード

www.suki-kore.tokyo

2024年の展覧会情報はこちら

www.suki-kore.tokyo

  ということで、今回は以上です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

また、次のレポートもよろしくお願いいたします。

 

※ ご意見、ご感想、大歓迎です。是非コメントかメール(yorocon46@gmail.com)まで。ツィッターは@yorocon46です。

 

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(マリー・ローランサン「アポリネールとその友人たち(第2ヴァージョン)」1909年頃

 こちらは西洋美のキュビスム・レボリューションから。ポンピドゥーから来ました)

 

【展覧会】うるおうアジア -近代アジアの芸術、その多様性-@武蔵小金井・はけの森美術館(2024/1/21 鑑賞)

よろコンです。

 

本ブログでは見て来た展覧会の個人的な感想を書いています。

 

今回は、2024年1月21日(日)、散歩がてら行ってきた近くの美術館の展覧会

うるおうアジア -近代アジアの芸術、その多様性-

@武蔵小金井・はけの森美術館

です。

東京郊外の小さな美術館に集ったアジアのアート。

「西から見たら、みな東である」とはパンフレットから。アジアの一員・日本人にも異国情緒を感じつつも、親しみのある展覧会でした。アジアに浸ります。

 

今回も最後までお読みいただけますと幸いです。

 

【目次】

 

※ 以下の記述は展覧会の解説、パンフ、その他WEB上の資料等を参照の上、記述しております。また、撮影可能な作品について展覧会で撮影した写真を掲載しています。

 

1. 展覧会情報

(1) 開催概要

・会場:はけの森美術館

・期間:開催中(2023/12/2(土)) - 2024/1/28(日) ※今週末まで(1/21現在)

・時間:10:00~17:00(入館は閉館30分前まで)
   ※ ナイトュージアム:ありません。

・休館日:月曜日・火曜日

・チケット:一般 500円、小・中学生 200円、高校生 1,000円(中学生以下無料)

・作品数:福岡アジア美術館から約70点

・写真撮影:OK(展覧会とは別の中村研一さんの作品の展示部屋はNGなので注意を)

・関連リンク:

   1) 展覧会

展覧会 うるおうアジア | はけの森美術館

 

  2) 美術館

はけの森美術館

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(今日は雨上がりで小金井もうるおっていた)

 

(2) 訪問日・混雑状況

訪問日:2024/1/21(日) 16:15頃訪問

鑑賞時間:約40分

混雑状況:遅い時間で人はあまり多くなく、ゆっくりと見られました。

 

(3) どんな展覧会?(個人的に)

「福岡アジア美術館の収蔵作品から約13の国と地域の近代芸術を横断的に紹介する展覧会です。近代絵画、また「周辺の芸術」とも言えるポスター、輸出用絵画などの作品群を、垣根を設けずに紹介することで、美術の概念や価値観などに対する、新鮮な体験をお届けするとともに、アジア美術の多様性、奥深さを感じて頂ければ幸いです。」(チラシの紹介から)

敢えてそのまま書きましたがまさにこのパンフレットの紹介のとおり。ジャンルを問わない作品からアジアの華やかさ、斬新さ、喧騒、カオス、活力・・・そんな多様性を包み込み奥底から溢れ出す"豊かさ"を感じる展覧会でした。

 

2. 会場へ

(1) 構成

(1階展示室)

はじめに / Introduction

洋風表現の登場(西洋との交易によって) / Emergence of Western Expression

民衆に愛されるアート(ポスターとトラフィック・アート) / Art Loved by People

「近代美術」と呼ばれるものたち / What we call "Modern Art"

(2階展示室)

※ ここでは短編アニメの映像が流れています

 

(2) 気になる作品

「洋風表現の登場」から

まずは中国の作品

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作者不詳「貴婦人像」19世紀

「チャイナ・トレード・ペインティング」とよばれ、19世紀前半に中国を訪れた西洋の旅行者たちが記念に買っていったもの。西洋の旅行者のイメージに合わせて誇張した表現の作品もあるとか。展覧会では雪の降らない地方に雪が降っている絵も。広重の東海道五十三次 蒲原 夜之雪みたいな感じ?(ちょっと違うかな^^;)

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/Y/YoroCon/20240121/20240121200029.jpg

(こちらがその絵。広州に雪?!)

 

次はインド
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作者不詳(カーリーガート派)「夫をたたく妻」 20世紀初頭

 

いつの世もどの国もこの構造は変わらない・・・我が家もしかり(^^;)

 

「民衆に愛されるアート」から

再び中国
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「月份牌(ユッフェンバイ)広告画」20世紀初頭

 

大衆美術・商業美術として流行したカレンダー付ポスターとのこと。

清朝末期から中華民国期、外資系企業中心に宣伝のため作成し、顧客に贈ったとか。

こういうカレンダーなら欲しいです。

 

次はバングラディッシュ

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「リキシャ」

ラジ・クマール・ダス(絵)、ガッファール工房(車体製作) 1994年

 

これぞ「ザ・アジア」。左奥には日本の新幹線の絵も(キングギドラのような絵もありました。いずれも1994年作)

 

「『近代美術』と呼ばれるものたち」から

 

ベトナム

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ルオン・シュアン・ニー「読書する若い娘」1940年

 

マレー半島

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リュウ・カン(劉抗)「スリッパ」1930年

 

マレー半島で初期の近代美術の担い手だった中華系の代表的人物で指導的な役割を担った人だったとのこと。奥の花も印象的

 

ネパール
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ライン・シン・バンデル「昔を思う」1954-59年

 

まさにピカソの「青青の時代」。ネパールの文豪の叙事詩からネパールの貧しい人の悲哀を描いているとのこと。

 

バングラディッシュ
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カムルル・ハサン「女性」1972年

 

インド

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ジャミニ・ロイ「子鹿」1940年頃

 

色も形もポップ

 

最後にタイ

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キエン・イムスィリ「音楽のリズム」1949年

 

この曲線がアジア

 

アジアのアートの「充実」を感じられる展覧会でした。

 

3. さいごに

福岡アジア美術館は1999年に誕生。

faam.city.fukuoka.lg.jp

この頃、私は仕事で九州・大分に住んでいたので、開館時、福岡に行った際、確か行ったことがあると思います。でも、当時の私は水墨画のような作品以外、アジアの作品に興味がなく、さっと見てしまったような気がします。なんてもったいない。

あれから、アジアに仕事でも旅行でも訪れ、人にも会い、美術を目にすることも増え、その素晴らしさに少しずつ気づいていったと思います。豊かなうるおいを見せるアジアのアート。これからも関心をもって見て行きたいと思います。いつかまた福岡アジア美術館にも。

 

【巡回情報】

ありませんが、作品は福岡アジア美術館でまた見られるかも。

 

2024年の展覧会情報はこちら

www.suki-kore.tokyo

  ということで、今回は以上です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

また、次のレポートもよろしくお願いいたします。

 

※ ご意見、ご感想、大歓迎です。是非コメントかメール(yorocon46@gmail.com)まで。ツィッターは@yorocon46です。

 

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(うるおう小金井の坂道。右側は美術館の森)

 

【展覧会】パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展 美の革命@上野・国立西洋美術館(2024/1/3 鑑賞)

よろコンです。

 

本ブログでは見て来た展覧会の個人的な感想を書いています。

 

今回は、2024年1月3日(水)、今年初めて見に行った展覧会

パリ ポンピドゥーセンター キュビスム美の革命 ピカソ、ブラックからドローネー、シャガールへ

@上野・国立西洋美術館

です。

キュビスム・レボリューション

美の一大革命の発生前夜から、勃発、そして革命以降を丁寧にたどる展覧会でした。

 

今回も最後までお読みいただけますと幸いです。

 

【目次】

 

※ 以下の記述は展覧会の解説、図録、パンフ、その他WEB上の資料等を参照の上、記述しております。また、撮影可能な作品について展覧会で撮影した写真を掲載しています。

 

1. 展覧会情報

(1) 開催概要

・会場:国立西洋美術館

・期間:開催中(2023/10/3(火)) - 2024/1/28(日)

・時間:9:30~17:30(入館は閉館30分前まで)
   ※ ナイトュージアム:金・土曜は20:00(入館は19:30)まで

・休館日:月曜日

・チケット:一般 2,200円、大学生 1,400円、高校生 1,000円(中学生以下無料)

・作品数:パリ・ポンピドゥーセンターの日本初出品50点を含む112点

・写真撮影:大多数の作品がOK(NGの作品もあるので注意を)

・関連リンク:

   1) 展覧会

cubisme.exhn.jp

   2) 美術館

国立西洋美術館

f:id:YoroCon:20240115215512j:image

 

(2) 訪問日・混雑状況

訪問日:2024/1/3(水) 14:00頃訪問

鑑賞時間:約90分

混雑状況:人は多かったです。チケット売り場も並んでいました。Webなどでの事前購入がおススメです。中も混んでいましたが、すし詰めではなかったので、それなりに見ることはできました。(会期末に向けてさらに混みそうですが)

 

(3) どんな展覧会?(個人的に)

いくつもの自分の見た視点を一つの画面にまとめ上げたセザンヌ。

そのセザンヌの影響を強く受けたパブロ・ピカソとジョルジュ・ブラックの下、20世紀の初頭に生まれ出た"キュビスム"

ブラックの風景画が「キューブ(立方体)」と揶揄されたことが由来とのこと。

対象を上下左右、表裏と「多視点」から捉え画面に「再構成」した作品は美術の新たな世界の扉を開きました。

絵画史上最大の"革命"とも言えるキュビスム。50年ぶりの大展覧会です。

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2. 会場へ

(1) 構成

1 キュビスム以前-その源泉 | Sources of Cubism

2 「プリミティヴィスム」 | "Primitivism"

3 キュビスムの誕生 - セザンヌに導かれて | Cezanne as a Role Model

4 ブラックとピカソ - ザイルで結ばれた二人(1909-1914) | The Braque-Picasso "Mountain Rope"(1909-1914)

5 フェルナン・レジェとフアン・グリス | Fernand Leger and Juan Gris

6 サロンにおけるキュビスム | Cubism at the Salons

7 同時主義とオルフィスム - ロベール・ドローネーとソニア・ドローネー | Simultanism and Orphism: Robert and Sonia Delaunay

8 デュシャン兄弟とピュトー・グループ | The Duchamp Brothers and the Puteaux Group

9 メゾン・キュビスト | The Maison Cubiste

10 芸術家アトリエ「ラ・リッシュ」 | La Ruche

11 東欧からきたパリの芸術家たち | Artists from the East in Paris

12 立体未来主義:Cubo-Futurism

13 キュビスムと第一次世界大戦 | Cubism during the Great War

14 キュビスム以降 | After Cubism

 

(2) 気になる作品

1 キュビスム以前-その源泉 | Sources of Cubism から

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/Y/YoroCon/20240115/20240115215525.jpg

ポール・セザンヌ「ポントワーズの橋と堰」1881年

 

この人からキュビスムが芽吹いた?!

 

2 「プリミティヴィスム」 | "Primitivism" から

パブロ・ピカソ「女性の胸像」1907年6-7月

 

キュビスム直前

 

3 キュビスムの誕生 - セザンヌに導かれて | Cezanne as a Role Model から

ジョルジュ・ブラック「レスタックの高架橋」1908年初頭

 

南仏プロヴァンス、セザンヌがたびたび訪れた町

いよいよキュビズム誕生

 

4 ブラックとピカソ - ザイルで結ばれた二人(1909-1914) | The Braque-Picasso "Mountain Rope"(1909-1914) から

パブロ・ピカソ「肘掛椅子に座る女性」1910年

 

この人は前を見ている?横を見ている?どう見えますか?

 

少し進んで

7 同時主義とオルフィスム - ロベール・ドローネーとソニア・ドローネー | Simultanism and Orphism: Robert and Sonia Delaunay から

ロベール・ドローネー「パリ市」1910-1912年

 

高さ267cm、幅406cmの大作。三美神?にパリの街。エッフェル塔も

色も鮮やかに華やかに

 

8 デュシャン兄弟とピュトー・グループ | The Duchamp Brothers and the Puteaux Group から

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フランティシェク・クプカ「色面の構成」1910-1911年

 

色のキュビスム

 

9 メゾン・キュビスト | The Maison Cubiste は・・・

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10 芸術家アトリエ「ラ・リッシュ」 | La Ruche から

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コンスタンティン・ブランクーシ「眠れるミューズ」1910年

 

彫刻のキュビスム

 

11 東欧からきたパリの芸術家たち | Artists from the East in Paris から

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エレーヌ・エッティンゲン「無題」1920年頃

 

心のキュビスム

 

13 キュビスムと第一次世界大戦 | Cubism during the Great War から

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アルベール・グレーズ「戦争の歌」1915年

 

14 キュビスム以降 | After Cubism から

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フェルナン・レジェ「タグボートの甲板」1920年

 

キュビスム以降は純粋な機能性、幾何学的秩序「機械の美学」を求める「ピュリスム」(純粋主義)が起こり、ル・コルビュジエの建築などへとつながっていきます。

そして、現代でも美術のみならずあらゆるところに影響し続けているキュビスム。

この展覧会が世界を見る新しい視点を与えてくれるきっかけになる、かもしれません。

とても興味深く示唆に富んだ展覧会でした。

 

この後、常設展を見て、事前に図録付きチケットを買っていたのでミュージアムショップで図録を受け取り、荻窪の「なごみの湯」へと向かいました。

 

3. さいごに

詩人ギヨーム・アポリネールの言葉

キュビスムは「模倣の芸術ではなく、創造にまで高まろうと目指す概念(コンセプション)の芸術である」

目の前にあるものの形状を多視点から捉え再構築したキュビスムはその後、色を、街を、時代を、顔を、心を、多視点で捉え再構築し、画面へと展開していきます。
一目見てその形状に大きな違和感、もしかしたら少し受け入れにくい距離感を感じるかもしれませんが、よくよく考えると普段の私たちの認識の仕方を絵にしているのかもしれません。そういう意味ではいちばん自然でリアルな絵なのかも。だからこそ今でも強烈に影響を持ち続けられている、展覧会を見てそんなことを思ってみました。

 

【巡回情報】

本展覧会は東京展の後、2024/3/20~7/7まで京都市京セラ美術館で開催されます。

京都市京セラ美術館 | 京都市京セラ美術館 公式ウェブサイト

 

久しぶりに書いた2024年の展覧会情報はこちら

www.suki-kore.tokyo

  ということで、今回は以上です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

また、次のレポートもよろしくお願いいたします。

 

※ ご意見、ご感想、大歓迎です。是非コメントかメール(yorocon46@gmail.com)まで。ツィッターは@yorocon46です。

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(今年も狙いを定めて展覧会へ)