すきコレ

好きなものをコレクションする。そんなコンセプトのブログです。旅にアートに、それからそれから...

【展覧会】モネとマティス もうひとつの楽園@箱根・ポーラ美術館のレポート(2020/10/3訪問)

自称アート・レポーターこと、よろコンです。

 

本ブログでは過去に見た展覧会も含め、好きな展覧会をレポートしていきます。

 

今回は、ひさびさに訪問しましたこちら

 

モネマティス もうひとつ楽園 @ 箱根・ポーラ美術館

 

のレポートです。

 

ポーラ美術館のコレクションを中心に、モネのコレクションで有名なパリのマルモッタン・モネ美術館、吉野石膏やアーティゾン美術館、ひろしま美術館などのコレクションからも出展されています。

自然豊かな箱根の緑に包まれた美術館。そこで見る数々の名画。とっても清々しい気分になれます。

今回も、最後まで、お読みいただけますと幸いです。

 

【目次】

 

※ 以下の記述は展覧会、パンフ、図録、その他WEB上の資料などの説明を参照の上、記述しております。なお、作品の写真は購入した図録を撮影しています。

 

1. 展覧会概要

(1) どんな展覧会か

モネマティス もうひとつの楽園

 

クロード・モネ。1840年11月14日フランス・パリ生まれ。言わずと知れた印象派の創始者で代表する画家。後年は白内障で視力が低下する中でも意欲的に創作活動を続け、1926年12月5日、その生涯を閉じます。86歳。

 

このモネが作り出した"楽園”こそ、かの有名なジヴェルニーの庭。その生涯を閉じたのも楽園・ジヴェルニーでした。

 

このころのフランスは産業革命が進み、パリから郊外へと移動もしやすくなっていました。モネは1883年、このジベルニーの地に移り住み、モネの最高傑作ともいわれる庭を作り上げていきます。そしてその庭で生まれたのが睡蓮などの名作です。

 

さて、本展覧会のもう一人の主役

アンリ・マティス。モネが生まれた約30年後の1869年12月31日、北フランスのル・カトー=カンブレジ生まれ。言わずと知れたフォーヴィスム(野獣派)のリーダー。ただフォーヴィスムの活動は3年ほどで、その後、心地よい作品を目指し1954年11月3日、84歳でその生涯を閉じるまで創作活動を続けます。

 

そんなマティスが作った"楽園"は南仏のニースに。

北フランス出身のマティスが目にしたことのない光あふれる街、青い海。1917年に初めて訪れたニースで以降、アトリエを構え、その室内に自らの"楽園"を作り上げていきます。そして、晩年はやはりニースのヴィクトリア女王滞在のために建てられた建物で当時の高級アパルトマン「レジナ・ホテル」のアトリエで過ごします。

 

  作風はそれぞれ異なるように、作り上げた"楽園"もそれぞれですが、フランスを代表するふたりの巨匠の"楽園"をめぐる作品を展示した展覧会です。

 

(2) 開催概要

 ・期間:2020/4/23(木) - 11/3(火・祝)

 ・時間:9:00 - 17:00 ※ 入館は閉館30分前まで。時間指定制ではありませんが、入館時はマスクに、手の消毒も。美術館サイトで混雑情報も確認できます。

 ・会場:ポーラ美術館(箱根)

    ※ 車で行った場合、駐車場は一日500円です。箱根登山鉄道・強羅駅、箱根湯本駅そして小田原駅からもバスがあります。今回、車で行きました。

 ・チケット:一般1800円、シニア(65歳以上)1600円、大学・高校生1300円、中学生以下無料。コンビニで前売りが売られていたり、美術館では箱根ラリック美術館等、ほかの美術館との共通券等もあります。

 ・作品数:展示期間の違いはありますが、100点くらいです。

 ・写真撮影:NGです。(企画展とは別のコレクションの展示室はOKでした)

 ・Webサイト:

(展覧会サイト)

www.polamuseum.or.jp 

(美術館サイト)

www.polamuseum.or.jp

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(美術館・入口に向かって)

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(展示会場入口です)

 

(3) パンフレット

(表面)

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パンフレット下のマティス「トルコの椅子にもたれるオダリスク」(1928、パリ近代美術館)は出展中止でした。COVID-19の影響ですね。 残念。

 

(見開き・左面)
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(見開き・右面)
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(裏面)
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(4) 行くきっかけ

iPhoneの「チラシミュージアム」を見ていて、行きたくなりました。今年はCOVID-19の影響もあって西洋美術の展覧会が中止になったりして、無性にこの展覧会に行きたくなりました。感染対策(マスク・手洗い等)をして、ドライブもかねて行ってきました。久々に我が家の奥様も一緒でした。(あまり、展覧会とか行きたがらないのですが、レストランでご馳走するとかなんとかそそのかして(^^;)連れ出しました)

 

2. 展覧会の中へ

(1) 訪問日・混雑状況

訪問日:2020/10/3(土) 雲り。9:00到着

鑑賞時間:コレクション展と合わせて約100分くらい

混雑状況:開館と同時に入りましたので、最初は空いていましたが、次々と人が増えていく感じでした。食事をして12:00に美術館を出るころには駐車場は満杯に近い状態でした。ただ、展示室も広いので、混雑するように感じではありません。ゆっくり見られます。

 

では美術館に入ります。

 

(2) 展覧会の構成

会場は1階、地下1階の会場に分かれています。

 

1階の会場に入ってすぐの部屋では資料映像が流れています。

 

それから

・モネ 1章 ツール・ド・フランス-モネのフランス周遊紀行 Monet 1 Monet's "Tour de France"

・マティス1章 東方からの啓示-マティスにおける異国趣味 Matisse 1 Revalations from the Orient

・モネ2章 ジヴェルニー-地上の楽園 Monet 2 Giverny: Earthly Paradise

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地下1階の展示室に移って

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・マティス2章 ニース-銀色の光 Matisse 2 Nice: Silver Light

・モネ3章 <睡蓮>-循環する自然 Monet 3 "Water Lilies": Cycle of Nature

・マティス3章 楽園の創出-絵画を越えて Matisse 3 Beyond Painting: New Visions of the Ideal

 

それでは、作品を見て行きましょう。

 

(3) 気になる作品

さて今回の気になる作品です。すべて、購入した図録を撮影しています。

 

まずは、

・モネ 1章 ツール・ド・フランス-モネのフランス周遊紀行 Monet 1 Monet's "Tour de France"

から

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クロード・モネ「サン=ラザール駅の線路」1877 油彩/カンヴァス 60.5×81.1cm ポーラ美術館

 

汽車や駅は産業革命が生み出した時代の「最先端」

それを印象派の「最先端」の画法がとらえます。

 

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クロード・モネ「花咲く堤、アルジャントゥイユ」1877 油彩/カンヴァス 53.8×65.1cm ポーラ美術館

 

近景のダリアと遠景に見える工場。この時代ならではの近代的モチーフ。ですが、都市や産業の喧騒から遠ざかろうとするモネのこのころ態度がうかがえる作品とのこと。個人的には、かなり好きな作品でした。

 

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クロード・モネ「セーヌ河の日没、冬」1880 油彩/カンヴァス 60.6×81.1cm ポーラ美術館

 

1879年は記録的な寒波でセーヌ河が凍結したとか。自然の見せる思いがけない表情に感銘を受けて描かれた作品。


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クロード・モネ「ポール=ドモワの洞窟」1886 油彩/カンヴァス 65.0×83.0cm 茨城県近代美術館

 

岩場の迫力がすごいですが、海の青さが鮮明で美しい。

 

さて、続いては

・マティス1章 東方からの啓示-マティスにおける異国趣味 Matisse 1 Revalations from the Orient

から

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アンリ・マティス「室内:二人の音楽家」1923 油彩/カンヴァス 61.3×73.2cm ポーラ美術館

 

マティスは「私には啓示が東方からやってきた」と言っていたようで、イスラム美術や日本などからも影響を受けています。この絵にも背景の文様やテーブルクロス、女性の服の柄など、オリエンタルの影響が色濃く表れています。

 

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アンリ・マティス「オダリスク」1926 油彩/カンヴァス 55.5×46.8cm アーティゾン美術館

 

マティスは1910年頃にはモロッコやアルジェリアにも訪れています。そこで実際に見たと言う「オダリスク」(トルコの後宮に仕える女奴隷)をモチーフにした絵を1920年代に集中して描いています。この絵は様々な布を用いて空間を演出していることから親交の深かったルノワールの影響を受けているとのこと。


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アンリ・マティス「石膏のある静物」1927 油彩/カンヴァス 52.0×64.0cm アーティゾン美術館

 

この絵は、どう見てもセザンヌの影響を受けた作品ですよね。ただ、背景や静物が置かれた布の柄などにマティスらしさがあるように感じます。

 

さて、次はモネに

・モネ2章 ジヴェルニー-地上の楽園 Monet 2 Giverny: Earthly Paradise

から

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クロード・モネ「ジヴェルニーの積みわら」1884 油彩/カンヴァス 66.1×81.3cm ポーラ美術館

 

このコーナーも雪化粧の風景画や朝のセーヌ河など、素晴らしい作品がそろっていますが、こちらをご紹介。モネの中でも有名な連作のモチーフ「積みわら」

この積みわらはとても明るく、背景の緑の木々とのコントラストも鮮やかに感じます。

 

さて、地下に移ってまたマティス

・マティス2章 ニース-銀色の光 Matisse 2 Nice: Silver Light

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アンリ・マティス「中国の花瓶」1922 油彩/カンヴァス 34.0×55.0cm ポーラ美術館

 

あまり大きくない絵ですが、色鮮やかながら、とてもくつろいだ雰囲気が伝わってくる好きな一枚です。オダリスクのモデルとして活躍したアンリエットがモデルとか。


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アンリ・マティス「窓辺の婦人」1935 パステル/厚紙 60.1×49.0cm ポーラ美術館

 

窓の向こうに広がるのはニースの海。婦人の青い服に青い壁。観葉植物の緑。そしてカーテンと机の黄色。それぞれの色がさわやかな光に包まれた世界を構成しています。窓はマティスにとって異なる空間をいかにひとつの画面に再構成するかという課題に向き合うための格好の主題だったとのこと。

 

続いてはいよいよモネのあの連作が。

・モネ3章 <睡蓮>-循環する自然 Monet 3 "Water Lilies": Cycle of Nature

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クロード・モネ「睡蓮」1906 油彩/カンヴァス 81.0×92.0cm 吉野石膏株式会社(山形美術館に寄託)


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クロード・モネ「睡蓮」1907 油彩/カンヴァス 90.0×93.0cm アサヒビール大山崎山荘美術館

 

ポーラ美術館所蔵の作品も展示されていますが、こちらの二点をご紹介。

定点観測をするように同じ場所から同じモチーフを描いたモネ。その連作の中で、移ろう時間、移ろう季節、移ろう光をとらえ続けていきます。この2枚の絵も、同じ場所から同じ睡蓮を描いたのでしょう。それぞれに水面の光の鮮やかさ、睡蓮の輪郭の明瞭さ等に違いがあり、モネが挑み続けた"実験"が分かるような展示でした。

 

この2枚。それぞれ、昨年訪問した京都は山崎のアサヒビール大山崎山荘美術館、今年の年始に訪問した三菱一号館美術館の吉野石膏コレクション展で見た作品。それをここ箱根の地で並べて見ることができるなんて、とても嬉しくなりました。

 

そして展覧会の最後はマティス

・マティス3章 楽園の創出-絵画を越えて Matisse 3 Beyond Painting: New Visions of the Ideal

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上:原画=アンリ・マティス、テキスタイル制作=アッシャー社「オセアニア 空」1946 シルクスクリーン/リネン 165.0×355.0cm 滋賀県立近代美術館

下:原画=アンリ・マティス、テキスタイル制作=アッシャー社「オセアニア 海」1946 シルクスクリーン/リネン 165.0×376.5cm 滋賀県立近代美術館

 

1940年以降、体調を崩したマティスは切り絵を制作。終生、その創作意欲は衰えることがなかったとのこと。この作品は1930年のタヒチ旅行がモチーフに。図録を写したのでページがまたがっていますが、実際は大きな壁紙が並んで展示されています。うちの奥様がとても気に入った作品。


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アンリ・マティス「リュート」1943 油彩/カンヴァス 60.0×81.5cm ポーラ美術館

 

最後はこちら。この絵に描かれている服の展示もあります。また、この絵を基にモーリス・コシが1947~1949年に170.0×213.0cmのサイズで、J.コシェリが1949-1950に158.5×212.0cmのサイズでそれぞれタペストリーを制作しています。そのタペストリの展示もありました。

J.コシェリの作品は原画の報酬としてマティスに贈られ、現在はマティスの故郷ル・カトー=カンブレジのマティス美術館に収蔵されているとのこと。タペストリの色は絵画の色とも少し異なり、比較して見るのも、とても面白かったです。

 

  モネとマティス。それぞれの巨匠のそれぞれの作品。それを生み出す源泉となった

 "楽園"

とても面白い企画の展覧会でした。

 

  そして、展覧会場を後にします。

  

(4) ミュージアムショップ

  今回の企画展のみならずコレクションに関連するグッズなどを販売しているミュージアムショップがあります。今回は図録(2,500円)とコレクション展で展示されていた作品の絵ハガキを購入です。

 

(図録表紙)

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(図録裏表紙)

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作品の写真はこちらの図録に掲載されているものを写しました。

 

3. さいごに

マティスの言葉です。

「私は人を癒す肘掛け椅子のような絵を描きたい」

 

フォーヴのリーダー・マティスが最後まで目指した絵は「肘掛け椅子」のような癒しを与える絵でした。そのような理想の絵を描くために作り上げたアトリエという楽園。

 

そして、モネも都会の喧騒を離れたジヴェルニーで理想の芸術を生み出すために作り上げた庭という楽園。

それぞれの楽園は違いますが、そこから生み出された数々の作品はこれからも私たちを楽園の世界へと誘いつづけるのでしょう。これからも二人の楽園の世界を味わいたいと思います。

 

なお、ポーラ美術館の次の展覧会は

「コネクションズ - 海を越える憧れ、日本とフランスの150年」2020/11/14(土)~2021/4/4(日)

また、来たいですねぇ。箱根。

 

それでは、関連リンクです。

 

去年のポーラ美術館

www.yorocon46.com

オルセー美術館のサン=ラザール

www.suki-kore.tokyo

 

   今回のレポートは以上です。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

また、次のレポートもよろしくお願いいたします。

 

※ ご意見、ご感想、大歓迎です。是非コメントかメール(yorocon46@gmail.com)まで。ツィッターは@yorocon46です。

 

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(ポーラ美術館の遊歩道。絵画鑑賞の後は森林浴です)

 

【展覧会】 2020 イタリア・ボローニャ国際絵本原画展@西高島平・板橋区立美術館のレポート(2020/9/22訪問)

自称アート・レポーターこと、よろコンです。

 

本ブログでは過去に見た展覧会も含め、好きな展覧会をレポートしていきます。

 

今回は、またまた板橋からこちら

 

2020 イタリア・ボローニャ国際絵本原画展 @ 西高島平・板橋区立美術館

 

のレポートです。

 

板橋区立美術館の毎年恒例、板橋区立美術館と言えばこれっ!といった展覧会。

今年はCOVID-19の影響を受け、この展覧会が作品の世界初公開の場に。

子どもから大人まで、誰でも楽しめて、思わぬ発見があるかもしれない、そんな展覧会です。

今回も、最後まで、お読みいただけますと幸いです。

 

【目次】

 

※ 以下の記述は展覧会、パンフ、図録、その他WEB上の資料などの説明を参照の上、記述しております。なお、作品の写真は購入した図録を撮影しています。

 

1. 展覧会概要

(1) どんな展覧会か

イタリア・ボローニャ国際絵本原画展(ボローニャ展)

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(展覧会図録より)

イタリア・ボローニャで毎年・春に開催される児童書専門の見本市「ボローニャ・チルドレンズ・ブックフェア」、このブックフェアが主催する児童書のイラストレーション・コンクール。

今年は66か国、2,574組の作品が応募されました。その中から、75組の作品を選出。日本人在住作家5人を含め、24か国と地域の作品が含まれています。

板橋区立美術館での開催は40回目。

 

今年のボローニャ展。審査は1月半ばに終わるも、その後、COVID-19の脅威が。3月~5月にかけてイタリア全土がロックダウン。3/30~開催予定だったブックフェアは5/4~の開催に延期され、最終的には中止に。オンラインイベントへと変わりました。

日本も緊急事態宣言により美術館は休館に。第一会場であった西宮大谷記念美術館での開催はできませんでしたが、第二会場の板橋区立美術館の展覧会は開催に。

世界で初めてボローニャ展入選作品が公開される場となりました。

 

(2) 開催概要

 ・期間:2020/8/22(土) - 9/27(日) ※ 明日までです。

 ・時間:9:30 - 17:00 ※ 入館は閉館30分前まで。時間指定制ではありませんが、入館にマスクは必須、手の消毒も。

 ・会場:板橋区立美術館(西高島平)

    ※ 歩くなら都営三田線・西高島平から13分。東武東上線・成増、都営三田線・高島平からも1時間に1・2本バスも。パンフ裏面左下に時刻表があります。(ちょっと小さいですが)

美術館の前のリパーク(20分100円、入庫12時間500円、16台)他、近くに有料駐車場もあります。


 

 ・チケット:一般650円、高校・大学生450円、小・中学生200円

 ・作品数:?(入選作は75点なので、それくらい。情報を抑えていません。すみません)

 ・写真撮影:NGです。

 ・Webサイト:

(展覧会サイト)

bologna2020.art

(美術館サイト)

www.city.itabashi.tokyo.jp

(美術館・外観)

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左のフラッグのコメント。

「2年目です。これからというころなのに・・・(°_T)

さすが、板橋区立美術館

 

(入口です)

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マスクです。

 

(3) パンフレット

(表面)

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Mayumi Oonoさんのイラストです。

 

(見開き・左面)
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(見開き・右面)
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(裏面)
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今回は、展覧会チケットも凝っています。

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チケットを折ると


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飛び出る絵本のように(分かりますかね^^;)

 

(4) 行くきっかけ

板橋区立美術館の展覧会「狩野派学習帳」を見たときに、今年も開催されることを知り、見に行くことにしました。今回で見に来るのは通算3回目くらいですかね。毎年の恒例にしたいと思います。実家に帰るついでに来れますので。

 

2. 展覧会の中へ

(1) 訪問日・混雑状況

訪問日:2020/9/22(火・祝) 雲り。14:30前到着

鑑賞時間:約70分くらい

混雑状況:結構、人はいました。お子さんも多かったですし、駐車場も車が多かったです。でも、作品は十分にゆっくり見られました。

 

では美術館に入ります。

 

(2) 展覧会の構成

会場は左の部屋、中央、右の部屋と流れて作品が展示されています。

なお、作品は一作家で5枚一組の作品が展示されます。物語一場面であったり、それぞれが独立した場面であったり。どの作品も、個性的です。

 

また、今年は出口手前の部屋で

特別展「視る」を越えて  触って「視る」ボローニャ展

という企画展示があります。ボローニャ展の作品を木で触って分かるようにしたり、イタリアの布などが貼られた絵本「さわる絵本」の展示があります。残念ながら、実際に触ることはできなかったのですが、視覚障害がある子たちが初めて「視る」絵本の世界。ここからどのような世界が広がっていくのかを想像すると、少しドキドキ、ワクワクするような感じです。


それでは、作品を見て行きましょう。

 

(3) 気になる作品

ここからは、単純にどこか気になる作品をどんどん掲載します。

すべて、購入した図録を撮影しました。

 

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あきこ屋(日本) 「遠野物語」(柳田国男作)

「鳥御前(とりごぜん)と山の神:これは、ほんとの人ではないかもしれない、と鳥御前は思いました」

マーカー、カラー筆ペン


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ミカエル・バルデッジヤ(イタリア)「オズの魔法使い」

上「旅の途中」、下「深い眠り」

パントーンフェルトペン、ペン、色鉛筆


f:id:YoroCon:20200926162318j:imageマッテオ・ベルトン(イタリア)「ギルガメッシュと不死の秘密」

左「王座のギルガメッシュ」、右「エンリルの神殿にやってきたエンキドゥ」

デジタルメディア

 


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キム・カウォン(韓国)「朝市」

上「魚に値段を付けます。」、下「せりが始まります。」

グアッシュ、オイルパステル、鉛筆


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ラム・キンチョイ(香港)「未来を夢見て」

「卵と壁」

モノプリント、デジタルメディア


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オ・セナ(韓国)「氷山」

1枚目)左上~右上~左下~右下+2枚目「一枚のティッシュはまるでひとかけらの氷山のようです」

デジタルメディア


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エレーナ・レぺトゥール(ロシア)「友だちのほしかったアジッセイヤー」

「やっと会えたね!」

鉛筆、水彩

 

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ジュンリー・ソング(アメリカ)「しっぽのある町の物語」

「ワン・オクロック・ジャンプ」

シルクスクリーン


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ファン・クリストバル・ベラ=ヒル(スペイン)「街はだんだんよくなる」

「都会のオリンピック」

色鉛筆

 

本当にここでは紹介しきれない作品の数々。懐かしさを感じるものもあれば、新しさを感じるものも、中にはシュールなものまで、いろいろな作品が楽しめます。いろいろな作品に出会えて、とても気分転換になる展覧会でした。

 

  そして、展覧会場を後にします。

  

(4) ミュージアムショップ

  今回、販売エリアがありました。展覧会に展示された作家の絵本の数々や絵ハガキなどのグッズもあります。今回は図録(2,500円)を購入です。

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(図録表紙)

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(図録裏表紙)

 

3. さいごに

今年も無事、展覧会が開催されました。世界が一変してしまったかのようなCOVID-19の猛威。毎年、当たり前に行われていたことが次々と中止になり、再開のめども立たず・・・一時は、もう、あきらめるしかないのかと思いました。でも、徐々にこういう恒例の展覧会も開催され、うれしい限りです。きっと、これまで見られることのなかった作品たちも、ようやく公開の場を得て本来の魅力を取り戻したのではないでしょうか?

 板橋では明日までですが、これから巡回展もあるようなので、近くにいらっしゃる方、是非、見てみてください。

 

【巡回先】

・三重県:四日市市立博物館 2020/10/3(土)~11/1(日)

・石川県:七尾美術館 2020/11/6(金)~12/13(日)

・群馬県:太田市美術館 2021/1/5(土)~1/24(日)

 

ちなみに板橋区立美術館の次の展覧会も絵本

「だれも知らないレオ・レオーニ展」202010/24(土)~2021/1/11(月・祝)

あの「スイミー」で有名なレオ・レオーニ。その作品が板橋区立美術館に大量寄贈決定。多数の初公開作品もあるようなので、また見に行きたいと思います。

 

それでは、関連リンクです。

 

去年のボローニャ展

www.yorocon46.com 

板橋区立美術館の前の展覧会www.suki-kore.tokyo

  今回のレポートは以上です。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

また、次のレポートもよろしくお願いいたします。

 

※ ご意見、ご感想、大歓迎です。是非コメントかメール(yorocon46@gmail.com)まで。ツィッターは@yorocon46です。


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(この朝、実家で咲いていた朝顔。今年見るのは最後かも。ゆく夏を惜しんで・・・)

【展覧会】 近代日本画の華@虎ノ門・大倉集古館のレポート(2020/8/10、9/19訪問)

自称アート・リポーターこと、よろコンです。

 

本ブログでは過去に見た展覧会も含め、好きな展覧会をレポートしていきます。

 

今回は、8月、9月と2回行きましたこちらの展覧会から

 

1930ローマ展開催90年 近代日本画の華ローマ開催日本美術展覧会を中心に @ 虎ノ門・大倉集古館

 

のレポートです。

 

90年前、日本美術の素晴らしさを世界に知らしめんとする画家たちの気概と、それを後押しする実業家の気持ちが実現させたローマでの展覧会。その出品作を中心に展示されています。今回も、最後まで、お読みいただけますと幸いです。

 

【目次】

 

※ 以下の記述はパンフレット、展覧会の解説、今回購入した大倉集古館の図録、その他WEB上の資料を参照の上、記述しております。また、絵画の写真も大倉集古館の図録を撮影しています。

 

1. 展覧会概要

(1) どんな展覧会か

1930年(昭和5)年にローマで開催された「日本美術展覧会」(通称:ローマ展)

岡倉天心を中心に結成された日本美術院。一度、経営に行き詰まりますが、天心の死後、大正3年、横山大観が中心となって再興します。この大観が団長となり、日本美術院でともに研鑽を積んだ菱田春草、下村観山、さらには官展系の川合玉堂、竹内栖鳳らの画家たちを含む総勢80名が参加した日本画壇の一大プロジェクトがこのローマ展です。

ローマ展はヨーロッパの各地から開催期間の1か月で7万6千人以上が来場。開会式にはイタリア首相のムッソリーニも出席しました。

そして、この事業に惜しみない支援を提供したのが大観のパトロンでもあったホテルオークラそして大倉集古館の創始者・大倉喜七郎です。現代の金額で100億円ともいわれる私財を投じたとのこと。(桁が違います)

 

そんな、日本美術が世界へ飛び立とうとする熱い思いが詰まった展覧会です。

 

(2) 開催概要

 ・期間:2020/8/1(土) - 9/27(日) ※ まもなく終了です。

 ・時間:10:30 - 16:30 ※ 入館は閉館30分前まで。時間指定制ではありませんが、入館にマスクは必須、手の消毒も。

 ・会場:大倉集古館

    ※ 歩くなら銀座線の虎ノ門、溜池山王、日比谷線の虎ノ門ヒルズからでしょうか。ホテルオークラのビルを目指してください。私は溜池山王13番出口から桜坂を上がっていきますが、どこの駅からも、けっこうな坂は上りますね(^^;)

 ・チケット:一般1000円(リピートの方は前回チケットを見せると800円のようです)、大学生・高校生 800円、中学生以下無料

 ・展示数:32点(1点、入れ替えのため期間中33点)

 ・写真撮影:NGです。

 ・Webサイト:

(美術館サイト)

公益財団法人大倉文化財団

 

(展覧会チラシ)

https://www.shukokan.org/Portals/0/images/exhibition/history/2020/20200801_kindai_flyer.pdf


(美術館・外観)

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溜池山王から坂を上がってアメリカ大使館前から見た大倉集古館

 

(入口です)

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(3) パンフレット

(表面)

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(裏面)

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(4) 行くきっかけ

今回は、アートスケープさんの展覧会スケジュールで「東京」を検索して見つけました。パンフのPDFや出品作をみて面白そうと思っていきました。

artscape.jp

 

2. 展覧会の中へ

(1) 訪問日・混雑状況

訪問日:1回目は2020/8/10(月・祝) この日は基本的に曇りで蒸し暑かったです。訪問時刻は14:30過ぎ。2回目は9/19(土) この日も曇りで、涼しくなっていました。訪問時刻は11:00頃

鑑賞時間:8/10は約60分。そこまで人は多くなかったです。9/19は40分くらいでしょうか。NHK日曜美術館アートシーンでも紹介された後だったので、8月より人は多かったです。ただ、混雑というまでではありません。

 

では美術館に入ります。

 

(2) 展覧会の構成

会場は建物中央の入口から入り、チケットを買ってから建物の右半分の展示を見ます。

その後、2階に上がり会場全体の展示を見ていきます。さらに1階にもどり、入口から入って建物の左半分の展示を見ます。

なお、地下1階は、中国の仏像や器などの展示が数点とミュージアムショップ、トイレなどがあります。ここは直接企画展に関連した展示はありませんでした。

 

展覧会の構成は

・描かれた山景I :1階 入口からみた右半分の展示会場。川合玉堂たちが描いた山の光景、それと展覧会関連資料の展示。大観がデザインしたローマ展ポスターの富士山は華やかな富士でした。

 

・描かれた山景II:2階会場に上がって前半部。玉堂や大観の水墨画で山を描いた作品が中心に。

 

・美の競演:2階会場の後半部。花卉や美人画。大観の「夜桜」もここに。

 

・動物たちの姿:竹内栖鳳や小林古径らの描く動物画。


それでは、作品を見て行きましょう。

 

(3) 気になる作品

今回、企画展の図録はありませんでしたの「大倉集古館所蔵 名品図録百選」の中から展覧会で展示されていた作品をご紹介します。

 

入口を入って

描かれた山景I

を見た後、2階に上がります。

 

描かれた山景IIからは

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川合玉堂「高嶺の雲」六曲一双 絹本墨画 各151.5×343.6cm 1909(明治42)

 

淡いタッチで理想郷の世界が描かれそうな水墨画で、上の右隻に描かれた切り立つ峰はとてもリアルに描かれています。一方、下の左隻では白く広く広がる雲海が下界を覆い隠します。この対照が実際に高嶺に立っているかのような臨場感を与えてくれます。このリアリティ、これまでの水墨のイメージを覆すようで斬新な作品だと感じました。

 

続いて2階の後半部、美の競演では

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伊藤深水「小雨」一幅 絹本著色 80.0×99.0cm 1929(昭和4)

 

ローマ展出品のために描かれた作品です。外は小雨、一人、三味線の稽古にいそしむ娘。どこか物憂げな感じ。着物、帯などは細部まで描写されています。背景のはらはらと落ちる花びらも風情があって良い感じです。

 

再び、1階に降りる手前、こちら本展のハイライトのコーナー

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(右隻)

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(左隻)

鏑木清方「七夕」六曲一双 絹本著色 各171.0×378.0cm 1929(昭和4)

 

右隻の髪を梳く女性、針に糸を通そうとする女性、左隻の歌舞伎の団扇を持ちながら左上の天の川を見上げます。着物の色や柄もとても繊細で美しく、七夕の風情が伝わる作品です。

 

そして、8月のお目当てで見に行った清方の作品と入れ替わりで9月に展示された作品がこちら。

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横山大観「夜桜」六曲一双 紙本著色 各177.5×376.8cm 1929(昭和4)

 

ローマ展の団長・大観がこの展覧会のために描いた渾身の一作。

こちらは、私のもう一つのブログでも紹介したので、そのまま、抜粋してご紹介。

 

(以下、【東京・町歩き】虎ノ門そして銀座~京橋。シルバーウィーク初日は歩いて歩いて(2020/9/19) - よろこんで!**してみました。 から)

東京国立近代美術館(竹橋)の2018年の横山大観展でも展示されていたかと思いますが、間近にこの対策を見ることができます。大変、華やかで幻想的な作品です。解説に「右隻の松林の連続が左隻の夜桜をより一層際立たせる大観が作り出したイリュージョン」という趣旨のことが描かれていました。(記述は、原文通りではなく記憶に任せて書いてます)

そこで右隻から左隻に向けて山の夜道、桜を鑑賞するつもりで屏風の前を歩いてみると、確かに確かに。右隻の桜を後にし、松林に入り、そこを抜けると一気に周囲が明るくなり、満開の夜桜が輝くように咲き誇る、そんな風に見えました。まるで、本当にそこに光が満ちあふれているかのよう。

屏風の全体を見渡すだけではなく絵の世界観に入り込み、歩くという体験を通じて鑑賞するのも、とても面白いなぁと思った次第です。

(抜粋、以上)

 

・・・本当に、良い作品でした。

 

さて、1階に降りて展覧会の最終コーナー

 

動物たちの姿

 

ここからは、3点。

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竹内栖鳳「蹴合」一幅 絹本著色 114.7×132.2cm 1929(昭和4)

 

二羽の軍鶏が戦う闘鶏のワンシーン。一瞬を切り出した緊張感と躍動感にあふれた作品です。

 

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橋本関雪「暖日」一幅 絹本著色 54.0×72.0cm 1929(昭和4)

 

ペルシャ猫の白い毛並みがとても柔らかそうですが、凛々しい顔に気品を感じます。存在感たっぷり。作者の橋本関雪は兵庫生まれで栖鳳の画塾に入り四条派風の写実的動物画を多く描いたとのこと。

 

そして会場で最後に目にする作品

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小林古径「木菟図」一幅 紙本著色 69.5×106.5cm 1929(昭和4)

 

こちら、古径がローマ展のために制作した作品。背景は金泥に薄墨。みみずくのふんわりとした羽の色と桃色の紅梅の色が対照的、また、きりりとはっきり描かれたみみずくの目がとても印象的な作品です。

昭和4年の古径は形態の単純化、色彩の平面化を進め、新古典様式を確立しようとしていた頃。その後、写実と装飾の融合による象徴的画面を作り上げてゆくようになったとのことで、まさに、その岐路に立った作品のようです。(図録解説より)

 

   「古径の色遣いが印象的だったなぁ・・・」

なんてことを思いながら、展覧会場を後にします。

 

(4) ミュージアムショップ

地下1階です。8/10訪問時「大倉集古館所蔵 名品図録百選」(3,300円)を購入しました。このほかにも絵ハガキや、ほかの図録、関連グッズなどいろいろとあります。カード利用可能でした。(なお、入館料はカード利用不可です)

購入した図録です。

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3. さいごに

展示作品数は多くはないのですが、優品ぞろいです。今、展示されている「夜桜」は、まさに大観の気迫あふれる作品です。

そして、当時から日本画壇発展のため惜しみない支援をした大倉喜七郎の先見の明とその偉大さを感じます。今では絶対に真似できないよなぁ、と思います。

大倉集古館、図録を見ると、このほかにも数多の優品がコレクションされています。また、見に来ようと思います。

 

  今回のレポートは以上です。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

また、次のレポートもよろしくお願いいたします。

 

※ ご意見、ご感想、大歓迎です。是非コメントかメール(yorocon46@gmail.com)まで。ツィッターは@yorocon46です。

 

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(大倉集古館2階バルコニーから)

【展覧会】 ピーター・ドイグ展@竹橋・東京国立近代美術館のレポート(2020/8/1訪問)

自称アート・リポーターこと、よろコンです。

 

本ブログでは過去に見た展覧会も含め、好きな展覧会をレポートしていきます。

 

今回は、こちら

 

ピーター・ドイグ展 @ 竹橋・国立近代美術館

 

のレポートです。

 

「画家の中の画家」と評されるピーター・ドイグ。ロンドンのテート美術館、パリ市立近代美術館、ウィーン分離派会館と世界の名だたる美術館で個展を開催。世界で最も重要なアーティストの一人と言われる画家の日本初個展です。

今回も、最後まで、お読みいただけますと幸いです。

 

【目次】

 

※ 以下の記述は展覧会の解説、パンフレット、その他WEB上の資料を参照の上、記述しております。なお、今回の会場内は全作品撮影可能でした。

 

1. 展覧会概要

(1) どんな展覧会か

ピーター・ドイグは1959年、スコットランドのエジンバラ生まれ。幼少期にトリニダード・トバコ、カナダで育ちます。その後、ロンドンに戻り、1990年にチェルシー・カレッジ・アート・アンド・デザインで修士号取得。1994年にターナー賞にノミネートされることにより注目を集めます。(ターナー賞は美術館・テートが組織する賞で、顕著な活躍をしている50歳以下のイギリス人またはイギリス在住の美術家4名をノミネートし、ターナー賞展を開催。開催中に受賞者の発表されるとのこと。なお1994年の受賞者は彫刻家アントニー・ゴームリー。賞の名前はあの「ターナー」が由来。Wikipedia調べ)

 

「ゴーギャン、ゴッホ、マティス、ムンクといった近代画家の作品の構図やモチーフ、映画のワンシーンや広告、彼が過ごしたカナダやトリニダード・トバゴの風景など、多様なイメージを組み合わせて絵画を制作」してきたピーター・ドイクの作品は「ロマンティックかつミステリアスな風景」で「不思議と魅せられる」、それは「誰もがどこかでみたことのあるイメージを用いながらも、見たことのない世界を見せてくれるから」なのでしょう。(「」内はパンフレットからの引用)

 

私は、今回の展覧会で初めて知りました。どんな作品か、興味津々です。

さて、それではさっそくピーター・ドイグの世界をのぞいてみましょう。

 

(2) 開催概要

 ・期間:2020/2/26(水)(2/29~6/11休館、6/12再開) - 10/11(日) ※ 会期延長。

 ・時間:10:00 - 17:00 ※ 入館は閉館30分前まで。時間指定制

     ※ 8/1以降、金曜・土曜はナイトミュージアムで20:00まで。

         (ただし、予定は行く前に必ず美術館サイトでご確認ください)

 ・会場:東京国立近代美術館(竹橋) ※ 東京メトロ東西線・竹橋駅1b出口から3分

 ・チケット:一般 1700円、大学生 1100円、高校生 600円

    ※ 常設展も鑑賞できます。

    ※ 8/1~8/30(日)は大学・高校生は入場無料

       (その他各種割引は美術館サイトをご確認ください)

    ※ チケットは時間指定制ですが、空きがあれば美術館でも購入可能です。

 ・作品数:72点

 ・写真撮影:OKです。

 ・Webサイト:

(展覧会サイト)

peterdoig-2020.jp

(美術館サイト)

ピーター・ドイグ展 | 東京国立近代美術館


(美術館・外観)

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(3) パンフレット

(表面)

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(見開き・左面)
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(見開き・右面)

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(裏面)
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(4) 行くきっかけ

「日経おとなのOFF」2020年1月号(臨時増刊)の付録の「2020美術展100ハンドブック」を見て、パンフレット表面の石垣のカラフルな色が気になりました。私自身は、この時、初めてピーター・ドイグを知りました。見に行く候補に入れました。その後、NHK・Eテレの日曜美術館でも放送されているのを見て、やっぱり見に行くこう!と決定しました。

 

2. 展覧会の中へ

(1) 訪問日・混雑状況

訪問日:2020/8/1(土) 晴れ。15:45頃(訪問時は雲が多かったですが)。溜池山王のサントリーホールで日フィルの「運命」の演奏会を聴いて、こちらを訪問しました。

鑑賞時間:約60分。この後、常設展も60分くらい鑑賞して、美術館を出たのは18:00前でした。ナイトミュージアムを利用して鑑賞してきました。

混雑状況:人はいましたが、混んではいません。三密を避けて、ゆっくり見ることができると思います。

 

なお、美術館に入るときはマスク着用、検温、手の消毒チェックがあります。

 

では展覧会場に入ります。

 

(2) 展覧会の構成

ピーター・ドイグの活動拠点や作品テーマなどから次の構成となっています。

 

第1章 森の奥へ 1986年~2002年

第2章 海辺で 2002年~

第3章 スタジオの中で-コミュニティとしてのスタジオフィルムクラブ 2003年~

 

第1章は、1992年にイギリスの美術雑誌「フリーズ」で作品が取り上げられ、1994年にはターナー賞にノミネートされ、ロンドンのアートシーンで注目を浴び始めたころの作品。YBAs(ヤング・ブリティッシュ・アーティスト)の大型で派手なインスタレーションが注目を浴びる中、絵画という時代遅れとみられたメディアにおいて歴史と視覚文化に向き合い、まだ見ぬ光景を作り上げる真摯な姿が極めて新鮮なものとして評価されたとのこと。

 

第2章は、2002年に活動拠点をロンドンからトリニダード・トバゴの首都、ポート・オブ・スペインに移したのちの作品。作品も海辺の作品が多くなり、油絵具も厚塗りからキャンパス地が分かるほどの薄塗りに変化していきます。

 

第3章は、ドイグがトリニダード・トバゴ出身の友人のアーティスト、チェ・ラブレスと始めた映画の上映会「スタジオ・フィルム・クラブ」の宣伝のため、描かれたドローイングのポスターから。ドイグのスタジオで開催された上映会は無料で、上映会の後は作品について話したり、音楽会になったりと、一種文化的なサロンのような役割を果たしていたとか。ドイグの映画への理解もわかる作品群です。

 

(以上、会場・Web解説参照)

 

それでは、作品を見て行きましょう。

 

(3) 気になる作品

まずは、第1章「森の奥へ」から。

ドイグが育った、カナダを思わせる作品が多く集まります。

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(会場の様子)


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「天の川」(1989-90 油彩、キャンバス)

 

画面上が現実世界、画面下が水面に映る世界。でも、現実世界と水面に投影された世界は必ずしも一致せず、むしろ水面に映る世界の方が色鮮やかで現実的。水に浮かぶ小舟が重石となって、かろうじて世界の上下が維持されています。

ベックリンの「死の島」にも通じる作品とか。

 

  ドイグは小舟(カヌー)をモチーフにした作品を残していますが、これは映画「13日の金曜日」(1980年)の最後のシーンに由来しているとのこと。

(「13日の金曜日」見たことないです・・・というか怖くて、一生見ません(^^;))


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「ブロッター」(1993 油彩、キャンバス)

 

ブロッター(Blotter)は万年筆や押印時の余分なインクを吸収性の良い紙などを当てて吸い取る文房具、吸取器のこと。中央にいる人物は何かを吸い取っているのか、吸い取られているのか。人物の周りの波紋が水が凍っていないことを意味し、浅瀬を歩いているのか、氷から水が染み出ているのか、どことなく漂う不安の中、いろいろな想像が掻き立てられます。


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「スキージャケット」(1994 油彩、キャンバス)

 

トロントの新聞に掲載された日本のスキーリゾートの写真を参照しながら描いた作品。元の写真は白黒、縦長だったところ、描いていくうちに左右のパネルに広がったとのこと。実際の写真を見ながら描かれた想像世界。

白い絵の具の塊が、ブリューゲル(父)の絵画と同じように絵自体に雪が降り積もるように見える効果を出しているとのこと。いかがですか?

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さて、これから紹介する作品は左右に並んで展示されています。

まずは、左の作品

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「エコー湖」(1998 油彩、キャンバス)

 

湖畔に警察の車が止まり、誰かがこちらを見ています。よく見ると・・・


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頭を抱えている?耳をふさいでいる?どことなく、ムンクの「叫び」のような・・・

 

その先にある光景は、これでしょうか?

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「カヌー=湖」(1997-98 油彩、キャンバス)

 

カヌー=13日の金曜日のラスト?(すみません。見ていないので・・・)

ちなみに、こちらの絵の方が先に描かれています。

どちらも、静かな自然の中、大きな不安に包まれる感じがします。

 

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「若い豆農家」(1991 油彩、キャンバス)

 

手前の枝木の向こうに広がる畑と農夫。農夫の姿は、ゴッホの種をまく人を髣髴とさせる感じがします。

 

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「コンクリート・キャビンII」(1992 油彩、キャンバス)

 

奥の白い建物はフランス北西部、ブリエ=アン=フォレにル・コルビュジェが建てたユニテ・ダビタシオンという集合住宅。直線的で白の基調にカラフルな色が点在する近代的建物を鬱蒼とした原始林を思わせるような林からのぞき込むような構図。画面の奥行きの中に光と影が存在する、なにか象徴的な作品です。今回の展覧会では、いちばん好きな作品でした。


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「ガストホーフ・ツァ・ムルデンタールシュペレ」(2000-02 油彩、キャンバス)


ドイツのダム湖の白黒写真を参照しながら描かれた作品。

登場する人物の左は作者自身、右は作者が学生時代に英国国立歌劇場の衣装係の時に撮影した写真に由来。それぞれ異なる時代、場所の光景を一体化させ創造された世界。

ダムの奥の入り江の広がり、右に大きく湾曲する道がこの絵画の世界に広がりを与えています。


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(左がドイグ?!)

 

 

続いて、第2章「海辺で」から。

トリニダード・トバゴに移ってからの作品です。

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(会場の様子)


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「ピンポン」(2006-08 油彩、キャンバス)

 

まず、目に留まったのはこちらの作品。背景に積まれたのはビール・ケース。壁の模様・パネルともとれるくらいに抽象化され装飾的です。さらにピンポン台の白い直線が抽象化された世界を際立たせます。ピンポンの相手をしている人が見えない(または一人?)というところも、絵の空間に広がりを持たせています。ピンポンをしている人の表情は結構、真剣に見えますが・・・


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「ラペイルーズの壁」(2004 油彩、キャンバス)

 

トリニダード・トバゴは首都ポート・オブ・スペインの墓地の壁沿いを歩く男性。その表情をうかがうことはできません。この作品はドイグが撮影した写真をもとに描かれていますが、さらに小津安二郎の「東京物語」の静けさを念頭に描かれているとのこと。


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「無題(肖像)」(2015 油彩、麻)

 

こちらは、あまり大きくない作品です。少しゴーギャンを思わせるように感じました。こちらも好きな作品でした。


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「ポート・オブ・スペインの雨(ホワイトオーク)」(2015 水性塗料、麻)

 

黄色の壁に緑の扉。こちらはイギリス植民地時代にポート・オブ・スペインの中心に建てられた監獄。そして、ライオンはアフリカを出自に持つ人の地位向上を目指すラスタファリ運動の象徴「ユダの獅子」のイメージとか。ジャマイカ発祥でカリブ海諸国に広がったこの運動。抑圧の歴史からの自由の象徴を描いたものなのでしょうか?


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「壁画家のための絵画(プロスペリティ・ポート・オブ・スペイン)」(2010-12 水性塗料、麻)

 

  様々な旗に獅子のマークも。ポート・オブ・スペインの「繁栄」をあらわした姿なのでしょうか。左はラスタファリ運動の旗が左右反転しているようにも。

 

 

ラストは、第3章「スタジオフィルムクラブ」から。

毎週、自分のスタジオに人を集めて映画会。それに自分でポスターまで描いてしまうとは、なんだかうらやましいような世界です。全72展示作品のうち40作品がこちらのポスターです。

 

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(会場の様子から)

 

ここでは、3点ほど。

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「気狂いピエロ」(2004 油彩、紙)

 

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「熱いトタン屋根の猫」(2011 油彩、紙)

 

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「座頭市」(2004 油彩、紙)

 

  3枚目は北野武監督、"金髪"の座頭市でしょう。北野作品ではこのほかにHANABIのポスターもありました。ドイグの映画への理解もわかるポスター群でした。

 

  第1章、第2章の大きな作品、第3章の映画ポスターと、様々な作品をとおしてピーター・ドイグのこれまでの作品の流れが一望できる展覧会だと思います。

 

  そして、展覧会場を後にします。

  

(4) ミュージアムショップ

  展覧会場出口に特設ショップがあります。図録や絵ハガキ、クリアファイル、ノートなど各種グッズが販売されています。東京国立近代美術館さんには併設するミュージアムショップもありますが、こちらではピーター・ドイグ展の品は置いてなさそうなので、会場出口の特設ショップで関連グッズはお買い求めください。


3. さいごに

展覧会場で撮影した写真を中心にご紹介してきましたが、専用サイトでも3DVRで会場内の作品を鑑賞することができます。ただ、特に第1章、第2章の作品は大きな作品ばかりです。せっかくであれば、会場で生の作品を鑑賞されたほうが、より面白さをかんじられると思います。懐かしくも新しい、落ち着きながら、どこか不安、現代アートの最前線の世界を是非、その目で確かめてください。

 

それでは、関連リンクです。

チケットのコラボがあります。今東京で見られる現代アートの世界。

www.suki-kore.tokyo

  暑い日が続きますが、熱中症にもCOVID-19にも最新の注意をして、また、展覧会を楽しみたいと思います。

 

  今回のレポートは以上です。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

また、次のレポートもよろしくお願いいたします。

 

※ ご意見、ご感想、大歓迎です。是非コメントかメール(yorocon46@gmail.com)まで。ツィッターは@yorocon46です。


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(美術館4F休憩室「眺めのよい部屋」からの光景、大手町方面を望む)

 

【展覧会】 狩野派学習帳@西高島平・板橋区立美術館のレポート(2020/8/2訪問)

自称アート・リポーターこと、よろコンです。

 

本ブログでは過去に見た展覧会も含め、好きな展覧会をレポートしていきます。

 

今回は、出身地・板橋からこちら

 

館蔵品展 狩野派学習帳 今こそ江戸絵画の正統に学ぼう @ 西高島平・板橋区立美術館

 

のレポートです。

 

板橋区立美術館は、これまでも狩野派展を開催していますが、今回初めて見ました。板橋区立美術館にこれだけのコレクションがあるとは知りませんでした。都心から少し外れた板橋の中でも、お世辞にもアクセスが良いとは言えない場所の美術館(^^;)。ですが、見る価値十分の展覧会だと思いますので、是非とも紹介したいと思います。

今回も、最後まで、お読みいただけますと幸いです。

 

【目次】

 

※ 以下の記述は展覧会の解説、その他WEB上の資料を参照の上、記述しております。なお、今回の会場内は全作品撮影可能でした。

 

1. 展覧会概要

(1) どんな展覧会か

狩野派。室町時代から江戸時代を通じて活躍した日本史上最大の漢画系絵師集団。

室町幕府の御用絵師・狩野正信(かのうまさのぶ)を始祖とし、中国の漢画とやまと絵を融合した和漢融合様式を完成。永徳(えいとく)の時代は信長・秀吉の庇護の下、金碧障屏画(きんぺきしょうへいが)の全盛期を作ります。江戸時代になると幕府に仕えるため本拠地を江戸に。永徳の孫・探幽(たんゆう)が幕府御用絵師となり、その後、明治の芳崖(ほうがい)、橋本雅邦(がほう)まで続いていきます。本家・分家ともそれぞれが繁栄し、多様な画家を輩出していている江戸の正統(メインストリーム)です。

 

展覧会パンフレットの説明には、個人の才能による「質画」より模写を重ね伝統を伝える「学画」を重視。強烈な個性より確かな実力による安定した筆づかいに魅力あり、とありますが、屏風絵、掛け軸、絵巻、花鳥画、人物、武者絵に風景と多種多様な作品を通じて確かな実力に裏打ちされた狩野派絵師のそれぞれの個性が感じられる展覧会です。

 

(2) 開催概要

 ・期間:2020/7/11(土) - 8/10(月・祝) ※ まもなく終了です。

 ・時間:9:30 - 17:00 ※ 入館は閉館30分前まで。時間指定制ではありませんが、入館にマスクは必須、手の消毒も。

 ・会場:板橋区立美術館(西高島平)

    ※ 歩くなら都営三田線・西高島平から13分とありますが、東武東上線・成増、都営三田線・高島平からも1時間に1・2本バスも出ています。パンフ裏面左下をよく見てると時刻表があります。(ちょっと見にくいですが)

美術館の前に大きくないですが駐車場・リパーク(20分100円、入庫12時間500円、16台)もあります。


 

 ・チケット:無料

 ・作品数:33点

 ・写真撮影:OKです。

 ・Webサイト:

(美術館サイト)

www.city.itabashi.tokyo.jp
(美術館・外観)

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(入口です)

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(3) パンフレット

(表面)

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(表は狩野惟信(これのぶ)「菊慈童図」 55.8cm×118.8cm)

 

(裏面)

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(4) 行くきっかけ

NHK・Eテレの日曜美術館・アートシーンの最後で丁寧に紹介されているのを見ました。板橋区立美術館であるということもあり、見に行きました。

 

2. 展覧会の中へ

(1) 訪問日・混雑状況

訪問日:2020/8/2(日) 晴れですが、訪問時は雲多め(梅雨明け翌日)。15:00過ぎ

鑑賞時間:約80分(写真撮影OKなのと、各作品に絵師・作品の解説があるので、33点ですが、ゆっくり見てきました)

混雑状況:結構、人はいましたが、混んではいません。三密を避けて、ゆっくり見ることができました。

 

では美術館に入ります。

 

 

(2) 展覧会の構成

会場は入って右(前半)、左奥(後半)、左手前(新収蔵品)と3つの展示室があります。まずは右の部屋へと入ってください。年代を追って狩野派絵師の作品が展示されています。


それでは、作品を見て行きましょう。

 

(3) 気になる作品

板橋区立美術館は展覧会名「狩野派学習帳」もユニークですが、作品や絵師に関する説明も凝っているので、それも踏まえてご紹介。(以下、<< >>の中は板橋区立美術館の付けた絵の説明の見出しです)

 

・狩野 正信(まさのぶ) 「蓮池蟹図」(97.1×45.4cm)
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<<狩野派の始祖・正信の中国画学習>>

狩野派の始祖・正信。中国の虫草画を模した可能性が高いとのこと。元・外務大臣、大蔵大臣を歴任した井上馨旧蔵品。水につかった蓮の葉に一生懸命、蟹がしがみついています。

 

・狩野 探幽(たんゆう) 「富士山図屏風」(各159.6×356.8cm)

(右隻)

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(左隻)

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<<伝統とはひと味ちがう>>

富士山図は雪舟周辺の富士山、三保松原、清見寺を組み合わせる構図が有名なところ、この絵の中央のお寺は久能山東照宮とのこと。やはり、ひと味ちがう。

なお、探幽は江戸狩野派の基礎を築き、様式統一などに尽力しました。この富士山の絵も狩野派の手本となったようです。かなり簡素にデザイン化された富士山です。

 

・狩野 尚信(なおのぶ) 「富士見西行・大原行幸図屏風」(各155.8×363.4cm)

(右隻)
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(左隻)
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<<探幽兄さんよりも大胆に!>>

右隻に富士山を眺める西行法師、左隻に後白河法皇が京都・大原は寂光院の建礼門院を訪れる場面が描かれています。尚信は兄・探幽の余白を活かした画風をさらに推し進め、軽妙な人物表現をしています。右隻ではお兄さんと同じように描かれた富士山を左下で肩を出した西行法師が見上げています。かなり大胆な構図に軽妙さが加わります。

 

西行法師に目線を合わせて見ると・・・

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遥か彼方に聳える富士は雄大なり。

 

・英 一蝶(はなぶさ いっちょう) 「茶挽坊主悪戯図」(30.5×52.0cm)

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<<ドッキリ!気付くかな?>>

本家からはなれますが、この人も狩野派。

以前、東京都美術館のボストン美術館展で大きな「涅槃図」を見て、その画力に感嘆しました。先日、大倉集古館でも布袋様の絵がかわいらしく、生き生きと描かれていました。一時は島流しにもなった謎の絵師。この絵は二人の人物が坊主の頭に布を垂らしてからかっている様子。画面上部の霞や頭に手をやる坊主の姿などから古典絵巻を参照した絵とのことです。

 

さて、今度は探幽が描いた本当の狩野派学習帳

探幽筆「倣古名画巻模本」

から、「雪舟」の絵

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そして自分の富士山。

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これは絵巻でしたが、こういう手本を見て、模写をして学習したんですね。

 

さて、部屋を移りまして入口左側奥の展示室へ。

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(会場の様子)

 

続いては狩野派改革を目指した、こちらの方

・狩野 典信(みちのぶ) 「大黒図」(96.0×197.0cm)

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<<力強い筆の勢いで改革、はじめ!>>

畳一畳を越える絵絹に描かれた、どっしりとした大黒様。力強い線、勢いのある筆さばきが江戸狩野派を改革しようという意気込みの表れとか。かなり迫力あります。

木挽町(今の東銀座・歌舞伎座あたり)にあった田沼意次邸一角に屋敷を拝領したので「木挽町狩野家」と呼ばれ、その後、一派は隆盛していきます。

 

でも、その息子は・・・

・狩野 惟信(これのぶ) 「四季花鳥図屏風」(各167.3×353.2cm)

(右隻)
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(左隻)
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<<安定の御用絵師、安心の花鳥図>>

桜、紅葉、数々の鳥に花。色鮮やかで、とても好きな絵です。

作者・惟信は先ほどの典信の長男。父が目指した力強い筆さばきは受け継がれず、美しくも繊細な画風。どちらかというと、こちらの方が好きですが・・・

ただ、木挽町狩野家の地位を引き上げるのに、貢献したとのこと。父の思いは通じたか。

 

そして、今回、いちばん注目していた作品

 

・逸見 一信(へんみ かずのぶ) 「源平合戦図屏風」(166.6×348.0cm)

(右隻)

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(左隻)

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<<源氏vs平家 男たちの真っ向勝負>>

増上寺・五百羅漢図を描いた逸見一信も狩野派。「狩野一信」と書かれる場合もありますが、狩野姓は名乗ったことがないとか。

それはさておき、圧巻の合戦図です。平家物語の世界を六曲一双の屏風にまとめ上げています。右隻画面中央の武者は平敦盛、敦盛最期の場面。

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左隻中央は有名な那須与一が弓で的を射る場面。

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どの場面も生き生きしています。

 

そして、この屏風の裏は

・逸見 一信(へんみ かずのぶ) 「龍虎図屏風」(178.3×360.8cm)

(右隻)

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(左隻)

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<<こっちも対決!ドラゴンvsタイガー>>

こちらは、水墨で迫力ある龍と虎。源平の対決に龍虎の対決。趣向も画技も見事です。

 

続いては、ちょっと変わった逸話の持ち主・・・

・狩野 寛信(ひろのぶ) 「桃花西王母図」(各99.5×39.5cm)
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<<「腹切り融川」による血の通った西王母>>

「腹切り融川(ゆうせん)」とは、寛信が描いた屏風を素人の幕閣がケチをつけたところ帰りの籠で腹を切って(または服毒して)死んだという逸話によるもの。融川は寛信の別号で友川の後、融川を名乗ったとか。なお、切腹の逸話も事の真偽は不明。ただ、普通の死に方ではなかったとか。絵は、とても柔和で温かみがありますが・・・

この方、葛飾北斎が狩野派で学んだ時に出入りしていた方のよう。(違っていたらすみません)

 

最後は入口からみて左手前の新収蔵品の部屋に。

 

この方も狩野派

・河鍋 暁斎(かわなべ きょうさい) 「浮世絵大津之連中図屏風」(各135.3×124.6cm)
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<<大津絵のスター揃い踏み>>

二曲一双の小さな屏風絵。大津絵は今の滋賀県大津で売られていた民族絵画で土産物とされていたとのこと。左の三味線を弾く鬼や動物たちは素朴な感じで素早く描かれ、右の若衆と美人は緻密に描かれています。絵の題材も去ることながら、この緩急をつけた表現が面白く、暁斎の力量を感じます。


さて、いよいよ最後にご紹介するのは・・・


・小林 永濯(えいたく) 「神話図」(106.0×35.0cm)

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<<劇画のような神様たち!>>

明治に描かれた作品。小林永濯は狩野派で学び、その後、西洋絵画を研究し、挿絵などで活躍した画家とのこと。ここまでくると今のマンガなどの表現にも通じる新しさを感じます。画面下は男神・須佐之男命、中央の弓を持つのは女神・天照大御神と推測されるよう。

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天照大御神、かなり男前です。(女神ですね。でも、凛々しい)

 

この他に、北斎の弟子・蹄斎北馬(ていさいほくば)が描いた「ぎゅうぎゅうな絵」という面白い絵や、弟子の狩野芳崖から「師は絵を知らない」と言われながらも、芳崖、橋本雅邦を世に送り出した師匠・狩野雅信(ただのぶ)の絵等もありました。

 

展示数は必ずしも多くないですが、時代を追った展示に解説も詳しく、作品の魅力も絵師の魅力も十分に味わえる展覧会でした。

 

  そして、展覧会場を後にします。

 

 

(4) ミュージアムショップ

  今回、ショップはありませんでした。前にボローニャの絵本展で来たときは絵ハガキや図録を売っている部屋がありましたが、COVID-19のためか、閉まっているようでした。展覧会場入り口で板橋区立美術館の所蔵品の図録が販売されていました。


3. さいごに

実家の前にある区の掲示板には、よく板橋区立美術館の展覧会の案内ポスターが掲示されていて、帰るたびに見ていたのですが、なかなか来ることができていませんでした。(今、住んでる小金井からはだいぶ離れていますし・・・)

今回、あらためて収蔵品を見て、素晴らしい作品が数多くあることが分かりました。これからはもっと見に来たいと思いました。

本展も会期は残り少ないですが、機会がありましたら、是非、見てみてください。

狩野派、あらためてすごい集団です。

 

それでは、関連リンクです。

最後の狩野派

www.yorocon46.com

板橋美術館といえば

www.yorocon46.com

  今回のレポートは以上です。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

また、次のレポートもよろしくお願いいたします。

 

※ ご意見、ご感想、大歓迎です。是非コメントかメール(yorocon46@gmail.com)まで。ツィッターは@yorocon46です。


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(惟信の花鳥図屏風から)

 

【展覧会】 オラファー・エリアソン ときに川は橋となる@清澄白河・東京都現代美術館のレポート(2020/7/11訪問)

自称アート・リポーターこと、よろコンです。

 

本ブログでは過去に見た展覧会も含め、好きな展覧会をレポートしていきます。

 

今回は、久々の訪問

 

オラファー・エリアソン ときに川は橋になる @ 清澄白河・東京都現代美術館

 

のレポートです。

東京都現代美術館。通称MOT。ここに来るのも17年ぶりくらいかも・・・

とても楽しい展覧会でした。

今回も、最後まで、お読みいただけますと幸いです。

 

【目次】

 

※ 以下の記述は展覧会の解説、目録、その他WEB上の資料を参照の上、記述しております。なお、今回の会場内は撮影可能でした。

 

1. 展覧会概要

(1) どんな展覧会か

オラファー・エリアソン(Olafur Eliasson)

1967年デンマーク・コペンハーゲン生まれ。アイスランド系の芸術家。

自然現象や建築物に興味を持つ巨大インスタレーション作品が有名。

(インスタレーション=展示空間も含めて作品とみなす現代美術の表現手法) 

ロンドン・テートモダンに2003~2004年に開催された「ウェザー・プロジェクト(The Weather Project)」展では旧火力発電所のタービン・ホールに人口の太陽を作り出す「沈まぬ太陽」を発表し、大きな話題に。その後、2008年ニューヨークの巨大な人工滝のインスタレーションは有名で、2016年にフランス・ヴェルサイユ宮殿にも巨大滝を創出しています。

ちなみに、ニューヨークに出現した滝はこちらから。

ニューヨーク・シティ・ウォーターフォールズ - Wikipedia

ヴェルサイユの滝はこちら。

ベルサイユ宮殿に「滝」!? 実はアート作品 写真11枚 国際ニュース:AFPBB News

 

今回の展覧会は、アートを介したサスティナブル(持続可能)な世界の実現に向け、作家の気候変動、再生可能エネルギーへの関心を軸にした作品で構成されています。

自然現象を彷彿とさせるインスタレーション作品は、見て、感じて、そして自らも作品の一部となるような、興味深い展覧会です。

 

  日本でも原美術館、東京都現代美術館、金沢21世紀美術館で展覧会が開催されてきていますが、私は今回、初めて知りました。なので、"初体験"レポートです。

 

(2) 開催概要

 ・期間:2020/6/9(火) - 9/27(日)

 ・時間:10:00 - 18:00 ※ 入館は閉館30分前まで。時間指定制ではありませんが、混雑時は入場制限がかかるようです。

 ・会場:東京都現代美術館(清澄白河)

    ※ 清澄白河は半蔵門線・大江戸線が停車する地下鉄の駅です。深川江戸資料館の前の通りは下町情緒ある商店街で、そこを抜けて駅から10分程度歩いたところに美術館があります。駅の側には清澄公園、美術館の横は木場公園とゆっくり散策するにも良いところかと思います。ちなみにカフェでも有名な街です。

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 ・チケット:一般 1400円、大学生・専門学校生・65歳以上 1000円、中高生 500円

小学生以下無料

 ・作品数:17点

 ・写真撮影:OKです。1分以内なら動画撮影もOKとのこと。念のため入館時、係の方にご確認ください。

 ・Webサイト:

(美術館サイト)

www.mot-art-museum.jp


(美術館・外観)

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(入口です)

 

(3) パンフレット

※ 今回はパンフレットをGetしていないので、こちらのポスターで。

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(4) 行くきっかけ

NHK・Eテレの日曜美術館で紹介されていました。上白石萌歌さん、松尾貴史さんが案内役で出演されていましたが、一つ一つの作品の仕掛け、その背後に感じられるコンセプトが面白そうだと思い、見に行くことにしました。COVID-19で開催が延期となり、このまま中止になるのではと、ヤキモキしましたが、無事に会期変更で開催となり、満を持して(大げさ^^;)見に行くことにしました。

 

2. 展覧会の中へ

(1) 訪問日・混雑状況

訪問日:2020/7/11(土) 曇り(展覧会を見ている最中ににわか雨も)。16:00入場。

鑑賞時間:約40分(一緒に見られるコレクション展とあわせて75分くらいいました。作品数は多くないので、あまり時間をかけずに回れます)

混雑状況:結構、人はいました。混んでいるという程ではないですが、展示を見るのに並んでいる作品もあります。(1作品、作品の中身をのぞき込む仕組みになっていたので、ここは5分くらい並びました)

 

では美術館に入ります。

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(2) 展覧会の構成

会場と作品は以下の通りです。展覧会の目録から。

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それでは、作品を見て行きましょう。

 

(3) 気になる作品

入口を入ると右手に見える作品。(番号は前出の会場案内図・展示位置の番号です)

 

02「クリティカルゾーンの記憶(ドイツーポーランドーロシアー中国ー日本) no.1-12)」2020

(Memories from the critical zone(Germany-Poland-Russia-China-Japan, nos.1-12)

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作品をベルリンから日本に運ぶため、より二酸化炭素を排出しないで運ぶにはどのようにしたら良いか?そんな試行の中、ドイツ・ベルリンからハンブルグまではトラック、そこからポーランド、ロシアを経て中国までは鉄道、その後、中国から日本へは船で運ばれます。この過程を記録したのが、この作品です。どのように記録したか?ここに描かれた線は、旅の過程で球体がそれぞれの円で囲われた画面の上を動いた跡。でも、偶然に出来上がった軌道はすべて地図にも見えますし、天球のようにも見えるのが不思議です。

 

さて、次の部屋は

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03「太陽の中心への探査」2017

(The exploration of the centre of the sun)

光とガラスが織り成す万華鏡のような世界。光が部屋中に乱反射して溢れているようで、その輝きはどこか秩序的で、何かの法則に則って輝いている、そんな感じを抱きました。太陽というより、銀河、星の世界ような。(太陽も星ですが)

 

さて、さらに進みます。

06「あなたに今起きていること、起きたこと、これから起きること」2020

(Your happening, has happend, will happen)

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部屋に入るとカラフルな影が何重にも重なって動きます。自分の体の動きが作品となって完成する作品です。こちらは、下の写真の機械が発する光によって生み出されます。


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さっそく、私も!(このブログでは初登場かも^^;)
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(失礼しました)

 

さらに進んで、次にご紹介する作品は

11「おそれてる?」2004

(Who is afraid?)

 

ゆっくり回転する3つの円形のガラスに光を照らし、その反射が壁にうつされる作品。

光が重なり、いろいろな色が出現します。そして、いろいろなことが想起されていくようです。

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これは明るい昼間の太陽、それとも燃える夕陽。

 

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左の壁に映るのは、冷たい月、海と緑の地球。


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今度は、月食か?

私は天体の動きになぞらえて、作品を見ていましたが、みなさん、どのように見えますか?

 

さらに進んで行くと会場途中に黒い幕が見えます。最初、人の出入りがなく、入っていいものやら分からずに危うくスルーするところでした。是非、黒幕の中に入っていってください。

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幕の真ん中にはこんな装置が

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そして、周りの壁に映るのは

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反射する光。

 

実は、先ほどの装置には実は水が張っていて、水面に波が立つと

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光が動きます。扇に見えたり、縞模様の熱帯魚に見えたり、霧のように広がり、蝶が舞ったり・・・そして、また円に。この円は生命の源、太陽か。それとも夜空をやさしく照らす月か。いろいろと想像が掻き立てられます。

 

この作品は

12「ときに川は橋となる」2020

(Sometimes the river is the bridge)

光のように絶えず変化し、流動する状況はオラファー・エリアソンにとって限界を超えるため欠かせない要素とのこと。世界との新しい向き合い方を提示するこの作品は本展覧会のための新作とのことです。(目録より)

 

  さて、隣にあるもう一つの黒幕に入っていくと、そこには

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虹が・・・

これは

13「ビューティー」1993

(Beauty)

 

ポスターの写真もこの作品ですが、とある空間に突然現れた虹。純粋に美しかったです。なんだか、虹のミニチュア(それとも子ども)を見ているようで、ちょっと不思議な感じでした。

 

さて、展覧会も終盤、写真の作品から。

 

15「溶ける氷河のシリーズ1999/2019」2019

(The glacier melt series 1999/2019)

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1999年にアイスランドの自然を記録したエリアソン。2019年に再び訪れたときには、依然とは変わってしまった世界が。地球温暖化、気候変動が目の当たりに。左に1999年、右に2019年、同じ場所で撮影した写真を並べることで、今、この地球で起きていることを克明に記録します。

 

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20年。地球は確実に変わっています。

 

最後は

16「9つのパブリック・プロジェクトの記録写真」

(Documentation photographs of nine public project)

 

オラファー・エリアソンが9つのパブリック・プロジェクトとして公共空間で撮影した写真の中から一枚。

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 「30秒の鏡」2010

 鏡で分断された世界は現実世界と連続する世界。鏡は存在しながら、存在しない世界。その存在と存在を越えた世界の連続性。今の世界の見え方に一石を投じる世界。

 

  そして、展覧会場を後にします。

 

(4) ミュージアムショップ

  今回、買い物はしませんでしたが、展覧会に関する書籍やMOT関連グッズなどきれいなミュージアムショップがあります。他にも2Fのカフェではサンドイッチなどの軽食も。レストランもあります。次に来たときは食事もしていこうかな。


3. さいごに

「アート作品は価値観とアイデアに形を与え、アーティストの信念を反映します」(展示会場解説より)

現代アート。久しぶりに見ました。若かりし頃はよく見に行きましたが、最近、ちょっと、敬遠していたところもありました。久々に見たアートの世界は、今ある日常に新しい視点を加えるとても刺激的な空間でした。見ているときはとても楽しく、今ある世界の「在り方」を考えさせられる展覧会でした。都内では現代アートの展覧会もいろいろありますので、ちょっと行きたいなぁ、と思いました。東京都美術館のコレクション展では草間彌生の作品等も楽しめます。美術館そのものもとても魅力的なので、また、こちらまで足をのばしたいと思います。今度は、帰りに飲んで帰りたいかなぁ(^^;)

 

  今回のレポートは以上です。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

また、次のレポートもよろしくお願いいたします。

 

※ ご意見、ご感想、大歓迎です。是非コメントかメール(yorocon46@gmail.com)まで。ツィッターは@yorocon46です。

 

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【常設展】上野・国立西洋美術館(2020/6/20訪問)

自称アート・リポーターこと、よろコンです。

 

本日は美術館の「常設展」をレポートします。

 

今回レポートするのは、先日行った

「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」(以下「特別展」)

の後に鑑賞しました、

国立西洋美術館・常設展

www.nmwa.go.jp

松方コレクションを礎に発展した世界に誇る日本の西洋絵画コレクションが展示されている常設展。今回は特別展の構成を少し意識しながらご紹介します。

最後までお読みいただけますと幸いです。

 

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(ル・コルビジェ設計の世界遺産)

 

【目次】

 

※ 以下の記述は美術館の解説、その他WEB上の資料を参照の上、記述しております。また、絵画の写真は常設展で撮影可能な作品を撮影しています。(一部、特別展の図録を撮影し、引用しています)

 

(1) 訪問日・混雑状況

訪問日:2020/6/20(土) 曇り。特別展を見たあとに鑑賞してきました。土曜日のナイト・ミュージアムで19:30頃に入りました。特別展のチケットで常設展も見られます。是非、あわせてご鑑賞ください。

鑑賞時間:約60分

混雑状況:夜間でもあり、人はいましたが混雑はしていませんでした。ゆっくり見られました。

 

(2) 館内図

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西洋美さんの館内図です。(反射が少し見にくいですね^^;)

 

(3) 気になる作品

ロダンの彫刻が並ぶ1Fから2Fに上がるとまず14世紀~16世紀絵画が並びます。右に回ると17世紀絵画、18世紀絵画へと続いていきます。

それでは、最初に書きました通り特別展を意識して、その構成に沿って見て行きましょう。 

ちなみに、ほとんどの作品は撮影OKです。(NGの作品にはカメラNGのマークがついていますので、ご注意ください)

 

それでは、作品の方へ。

I イタリア・ルネッサンス絵画の収集 | Collecting the Italian Renaissance

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(レアンドロ・バッサーノ「最後の審判」1595-96 油彩 / 板)

額縁の天使が印象的な作品。レアンドロ・バッサーノは16世紀のイタリア・ルネッサン、ヴェネツィア派を代表する画家ヤコポ・バッサーノの3番目の息子。肖像画でも名声を極めた画家とのこと。

 

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(グイド・レーニ「ルクレティア」1636-1638 油彩 / カンヴァス)

こちらはイタリア・バロック期に活躍したボローニャ派を代表する画家。カラバッジョのような劇的な作品を残すとともに、ルネッサンス期・ラファエロなどの画家を研究し、古典主義様式の作品も残しています。この絵は、少しティツィアーノに雰囲気が似ているかなぁと思い、こちらにご紹介。

ルクレティアは、ローマが王政から共和制に移行するきっかけとなった女性。ローマ王の息子セクトゥス・タルクィニウスによる陵辱を恥じ、短剣で胸を突いて自殺。この事件が王政に対する反感を盛りあげ、ローマが共和制に移行するきっかけに。美術のテーマ的には、貞節に殉じた女性、悪徳に対する報いの象徴である一方で、キリスト教倫理に反して自殺した女性という、両義的な意味をもって描かれているとのことです。

 

ということで、ちょっと、強引(というか、実際はルネッサンスではない^^;)ですが、このコーナーは以上。

 

さて、続きまして・・・

 

II オランダ絵画の黄金時代 | Dutch Painting of the Golden Age

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(ヤン・スーテン「村の結婚式」油彩 / 板)

ヤン・スーテン(1626-1679)はオランダを代表する風俗画家。特別展でも「農民一家の食事(食前の祈り)」が展示されています。

「結婚式」では村の人々の様子が生き生きと描かれています。

 

常設展には、このほかにも特別展に展示されている超写実の静物画、フェルメール作といわれる「聖プラクセディス」が展示されています。「聖プラクセディス」は残念ながら撮影NGです。

(これは2018年12月、上野の森美術館「フェルメール展」が開催されているときのポスターから)

 

III ヴァン・ダイクとイギリス肖像画 | Van Dyck and British Portraiture

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(ジャン=マルク・ナティエ「マリー=アンリエット・ベルトロ・ド・プレヌフ夫人の肖像」1739年 油彩 / カンヴァス)

こちらはイギリス、ではなくフランスの肖像画の巨匠・ジャン=マルク・ナティエ。同時期の肖像画ですが、イギリスとフランスを比べて見るのも面白いかもしれません。

 

IV グランド・ツアー | The Grand Tour

ここはチョッとスルーして・・・

 

V スペイン絵画の発見 | The Discover of Spain

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(エル・グレコ「十字架のキリスト」油彩 / カンヴァス)

本名ドメニコス・テオトコプロース。ギリシャ領クレタ島の出身。イタリアを経てスペインで活躍したので、グレコはイタリア語で「ギリシャ人」、エルはスペイン語の男性名詞の定冠詞、といった通称で呼ばれるようになったようです。

特別展でも「神殿から商人を追い払うキリスト」が展示されています。

 

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(バルトロメ・エステバン・ムリーリョ「聖フスタと聖ルフィーナ」1665-66 油彩 / カンヴァス)

スペインの巨匠・ムリーリョ。こちらも特別展での展示が。

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(バルトロメ・エステバン・ムリーリョ「幼い洗礼者聖ヨハネと子羊」1660-65 油彩 / カンヴァス 165.0×106.0cm 特別展の図録から)

加えて「窓枠に身を乗り出した農民の少年」の2作品が展示されています。

 

VI 風景画とピクチャレスク | Landscape and the Picturesque

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(ヤーコブ・ファン・ロイスダール「樫の森の道」 油彩 / カンヴァス)

 

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(ヤーコブ・ファン・ロイスダール「砂丘と小さな滝のある風景」 油彩 / カンヴァス)

 オランダの風景画の巨匠ヤーコブ・ファン・ロスダール。特別展でも「城の廃墟と教会のある風景」が展示されています。  

 

VII イギリスにおけるフランス近代美術受容 | French Modern Art in British

いよいよ19世紀絵画の部屋に。

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(アリ・シェフェール「戦いの中、聖母に加護を願うギリシャの乙女たち」1826年 油彩 / カンヴァス)

オランダ生まれ、フランスで活躍したロマン主義の画家。特別展ではこちらの作品が展示されています。

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(アリ・シェフェール「ロバート・ホロンド夫人」1851 油彩 × カンヴァス 81.9×60.3cm ロンドン・ナショナル・ギャラリー展の図録から)

シェフェールはドラクロワと同世代の画家。初期は情熱的な画風に接近したものの、のちに「冷たい古典主義」と呼ばれるように。個人的には結構好きです。

 

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(ヴィクトリア・デュプール(ファンタン=ラトゥール)「花」油彩 / カンヴァス)

特別展ではファンタン=ラトゥールの「ばらの籠」が展示されていますが、ファンタン=ラトゥールの妻でやはり静物画家であったヴィクトリア・デュプールとの共通性も指摘されています。確かにこの絵とよく似ています。実際に特別展を見て、比べてみてください。

 

  それでは、印象派の作品を続けて、どうぞ

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(クロード・モネ「睡蓮」1916 油彩 / カンヴァス)

西洋美のモネ部屋は、見ごたえ十分です。

 

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(ピエール=オーギュスト・ルノワール「アルジェリア風のパリの女たち(ハーレム)」1872 油彩 / カンヴァス)

フランス政府が日本に渡るのを渋った松方コレクションの一枚。

 

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(ポール・ゴーガン「海辺に立つブルターニュの少女たち」1889 油彩 / カンバス)

タヒチではなくフランスの町の少女

 

そして、ゴッホ。

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(フィンセント・ファン・ゴッホ「ばら」1889 油彩 / カンヴァス)

1888年末、憧れのゴーガンとのアルルでの共同生活に破れ、精神病を発症し、1889年に入院したサン=レミの精神療養院に咲くバラを描いています。さっきのゴーガンの作品も1889年。この二枚の絵。描いた頃の二人の気持ちを想像してしまいます。

 

ということで、展示はこの後もピカソ、ブラック、レジュ、藤田と20世紀絵画が続きますが、今回はこの辺で。ミュージアムショップには常設展のグッズもあります。

 

(4) さいごに

いかがでしたか?強引なところも多々あったかとは思いますが(^^;)、この時の気分ということで。

西洋美の常設展は本当に何回見ても、見飽きることがありません。展示作品も、少しずつ展示替えされていて。新しい発見が何かある、楽しい場所です。

なお、西洋美は2020/10/19(月)~2022年春まで長期の休館に入ります。

休館前に、また、見に行きたいと思います。

 

最後に関連リンクです。

 

現在開催中の特別展=ロンドン・ナショナル・ギャラリー展です。

www.suki-kore.tokyo

西洋美コレクションの礎です。

www.yorocon46.com

 

  今回のレポートは以上です。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

また、次のレポートもよろしくお願いいたします。

 

※ ご意見、ご感想、大歓迎です。是非コメントかメール(yorocon46@gmail.com)まで。ツィッターは@yorocon46です。

 

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(夜の上野・公園改札。スカイツリーの先っぽが)

 

【展覧会】ロンドン・ナショナル・ギャラリー展@上野・国立西洋美術館のレポート(2020/6/20訪問)

自称アート・リポーターこと、よろコンです。

 

本ブログでは既に終了した展覧会も含め、好きな展覧会をレポートしていきます。

 

今回は、いよいよ開幕しましたこちらの展覧会。早速行ってきました!

 

ロンドン・ナショナル・ギャラリー展 @ 上野・国立西洋美術館

 

のレポートです。

2020年度、もっとも注目の美術展の一つ。COVID-19の影響で開催が危ぶまれましたが、会期を変更しての開催です。最後まで、お読みいただけますと幸いです。

 

【目次】

 

※ 以下の記述は展覧会の解説、図録、パンフ、その他WEB上の資料を参照の上、記述しております。また、絵画の写真は購入した展覧会図録および絵ハガキを撮影しています。

 

1. 展覧会概要

(1) どんな展覧会か

ロンドン・ナショナル・ギャラリーはロンドン中心部、トラファルガー広場に面して建つ美術館です。

と言いつつ、ロンドン、これまで一度も行ったことがありません。

地図で見るとバッキンガム宮殿やビッグベンともそれほど遠くなさそうですね。

いつかの日か行ってみたい・・・

 

  さて、ロンドン・ナショナル・ギャラリーは1824年設立。ヨーロッパの他の美術館のように王室のコレクションを引き継いだものではなく、当時のイギリス議会が国民の「心を豊かにする喜び」のため、銀行家ジョン・ジュリアス・アンガースタインの邸宅と38点のコレクションを購入したことから始まっていきます。その後、日本でも2019年にコレクション展があったサミュエル・コートールドが印象派絵画の収集に貢献する等、多くの人の尽力により世界有数の美術館へと発展、現代にいたります。幅広く質の高いコレクションは「西洋絵画の教科書」とも評されます。

そんな、ロンドン・ナショナル・ギャラリーはこれまで、まとまった数の作品を貸し出すのは慎重だったとのことで、イギリス国外での展覧会は今回が世界初開催!そして全作品日本初公開!という、まさに「見逃せない」展覧会となっています。

 

(2) 開催概要

 ・期間:2020/6/18(木) - 10/18(日)

 ・時間:9:30 - 17:30 (金・土曜は21:00までのナイト・ミュージアム) ※ 入館は閉館30分前まで

 ・会場:国立西洋美術館(上野)

    ※ 上野駅公園口が鶯谷寄りになり、美術館に行くのに便利になりました。ecuteにも寄りやすいです。

 ・チケット:一般 1700円、大学生・高校生 1200円、中学 700円

 ・作品数:61点

 ・写真撮影:NGでした 

 ・Webサイト:

(公式サイト)

artexhibition.jp見どころのページでは全61作品紹介の動画もあります。これを見るだけでも心躍ります。

みどころ - 【公式】ロンドン・ナショナル・ギャラリー展

 

(美術館サイト)

ロンドン・ナショナル・ギャラリー展|国立西洋美術館


(美術館・外観)

f:id:YoroCon:20200624012603j:image久々の国立西洋美術館です。

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チケット売り場のパネルです。(ただしチケットは販売所では売られていません。ネットで事前購入が必要です)

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(3) パンフレット

(表面)

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(裏面)

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(4) 行くきっかけ

昨年(2019年)の「日経おとなのOFF」6月号で本展があることが特集されていましたので、見に行くことは即決。このとき、まさかCOVID-19が流行するとは夢にも思っていませんでしたが、展覧会開催されて、うれしく思います。

 

2. 展覧会の中へ

(1) 訪問日・混雑状況

訪問日:2020/6/20(土) 曇り。入場制限で17:45~18:00の回で入場。17:45から列に並び18:00少し前に会場内に入りました。

鑑賞時間:約90分

混雑状況:この日は無料招待券、前売券を持っている人のみが入れる期間(6/18-6/21)でしたので、人はいましたが混雑はしていませんでした。結構、ゆっくり見られました。6/23(火)からは日時指定券を購入しての入館なので、ある程度、人数は抑えられるでしょうが、会期末はチケット入手が困難になる、人が多くなるということも予想されますので、早めに見に行かれることをおススメします。

 

では美術館に入ります。

 

入口の写真撮影コーナー 

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ロンドン・ナショナル・ギャラリー

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(2) 展覧会の構成

次のような構成でした

 

I イタリア・ルネッサンス絵画の収集 | Collecting the Italian Renaissance

II オランダ絵画の黄金時代 | Dutch Painting of the Golden Age

III ヴァン・ダイクとイギリス肖像画 | Van Dyck and British Portraiture

IV グランド・ツアー | The Grand Tour

V スペイン絵画の発見 | The Discover of Spain

VI 風景画とピクチャレスク | Landscape and the Picturesque

VII イギリスにおけるフランス近代美術受容 | French Modern Art in British

 

(目録の館内図)

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それでは、作品を見て行きましょう。

 

(3) 気になる作品

まずは「I イタリア・ルネッサンス絵画~」です。

ボッティチェリの作品等がある中で、こちらをご紹介。

 

このコーナー、いちばん目を引かれた作品

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(カルロ・クリヴェッリ「聖エミディウスを伴う受胎告知」1486 卵テンペラ、油彩 / カンヴァス 207.0×146.7cm)

聖母マリアが受胎告知の場面。こちらの絵は建物に施された彫刻等、非常に細密に描かれています。特に目を奪われたのは右上の孔雀の羽。輝く金がまぶしく感じるくらい。空からマリアに注ぐ光の輝き等、図録では伝わりにくいので、是非実際の会場で生の作品を見ていただきたい。

 

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(ティツィアーノ・ヴェチェッリオ「ノリ・メ・タンゲレ」1514 油彩 / カンヴァス 110.5×91.9cm)

キリストが十字架の磔になって3日目。その死を見届け、埋葬の準備をした3人の婦人が夜明けごろ墓に向かうと墓は開けられキリストの亡骸も消失。正気を失った3人の婦人は亡骸を探しに。そのうちの一人、マグダラのマリアが出くわした庭師と思しき男。一緒に探すのを手伝ってほしいと衣をつかんで頼むと、身を引きながら「我に触れるな」(ラテン語で「ノリ・メ・タンゲレ」)と。その瞬間、彼女は彼がキリストであることに・・・というキリスト伝の一場面。ティツィアーノの柔らかな画面が神秘的な場面を優しく表現します。

 

次は「II オランダ絵画~」

こちらは、この2点。

 

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(レンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レイン「34歳の自画像」1640 油彩 / カンヴァス 91.0×75.0cm)

ティツィアーノを特に高く評価していたレンブラント34歳の自画像。名声絶頂期の頃の作品とか。半身乗り出す姿は自信の賜物か。

服の表現の繊細さはティツィアーノにも通じるところがあるとのことです。

 

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(ヨハネス・フェルメール「ヴァージナルの前に座る若い女性」1670-72 油彩 / カンヴァス 51.5×45.5cm)

鮮やかな青に黄色のドレス。美しいヴァージナル。背後の絵はリュートを弾く女の肩に手を回す男、そして、二人をひきあわせる「取り持ち女」。音楽はフェルメールの作品でも多く取り上げられる題材です。本作も静かな世界から、こちらを見やる女性に引き込まれていくようです。

 

続きまして

「III ヴァン・ダイクとイギリス肖像画」

 

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(アンソニー・ヴァン・ダイク「レディ・エリザベス・シンベビーとアンドーヴァー子爵夫人ドロシー」1635頃 油彩 / カンヴァス 132.1×149.0cm)

画家ヴァン・ダイクはフランドル、今のベルギー・アントワープ出身。1632年にイギリス・チャールズ1世の宮廷画家となります。肖像画が高く評価されるイギリスで特に肖像画で人気を博したとのこと。二人は姉妹。右の妹・エリザベスの結婚に当時未婚だった姉・ドロシーは純潔を表す白いドレス。ドロシーの前にはキューピッド。

 

次は「IV グランド・ツアー」

 

「グランド・ツアー」とは富裕な若者がヨーロッパ中を旅して歩くこと。18世紀に盛んで、特にイギリスで確立した風習とか。名目上、偉大な芸術に触れ、古代遺跡を体験するということで古代世界を代表する場所としてイタリアが訪問地になることが多かったようです。


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(カナレット「ヴェネツィア:大河のレガッタ」1735年頃 油彩 / カンヴァス 117.2×186.7cm)

カナレット(本名:ジョヴァンニ・アントニオ・カナル)はヴェネツィア生まれ。本作はヴェネツィアの重要な年中行事レガッタ・レースが執り行われているところ。画面から熱気と喧騒が伝わってきます。川の奥には見えないはずの橋が描かれ、画面の奥へと視線を誘導します。図録では橋まで確認できないので、ぜひ展覧会で確認してみてください。

 

続いては「V スペイン絵画~」

イギリスは早くからスペイン美術が受容されてきたとか。

ベラスケス、エル・グレコ、ムリーリョの作品が並ぶ中、こちらの作品を。

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(フランシスコ・デ・ゴヤ「ウェリントン公爵」 1812-14 油彩 / 板(マホガニー) 64.3×52.4cm)

描かれているのはイギリス軍人の初代ウェリントン公爵ことアーサー・ウェルズリー。

1815年にワーテルローの戦いでナポレオンを打ち負かし、ナポレオン戦争に終止符を打った人物。1813年にスペインからフランス占領軍を駆逐した功労者として描かれています。

鮮やかな赤い服に輝く勲章。でも、顔は数々の戦いに疲れた様子。内面を描き出すゴヤが英雄の心の内まで描いた一枚。

 

次は

「VI 風景画と~」

 

  ここでは、ウィリアム・ターナーの作品がありますが、こちらを。

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(ジョン・コンスタブル「コルオートン・ホールのレノルズ記念碑」1833-36 油彩 / カンヴァス 132.0cm×108.5cm)

レノルズは本展にも作品が展示されているイギリスの肖像画の巨匠サー・ショシュア・レノルズ。彼を崇敬したジョージ・ボーモント准男爵が建立した記念碑の風景。ボーモント准男爵は絵画のコレクターでもあり、そのコレクションがロンドン・ナショナル・ギャラリーの礎にも。レノルズが絶賛したミケランジェロ(左)とラファエロ(右)の胸像が向き合います。

 

さて、階段を降りて地下の展示室に。最後は

「VII イギリスにおけるフランス近代美術の受容」

 

 印象派を中心としたフランス絵画です。

 それでは、続けて、3作品を。f:id:YoroCon:20200624012614j:image

(クロード・モネ「睡蓮の池」1899 油彩 / カンヴァス 88.3×93.1cm)

 

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(ピエール=オーギュスト・ルノワール「劇場にて(初めてのお出かけ)」1876-77 油彩 / カンヴァス 65.0×49.5cm)

題名の通り初々しさがあります。コートールドコレクションの「桟敷席」とあわせて見るのもおもしろそう。

 

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(ポール・ゴーガン「花瓶の花」1896 油彩 / カンヴァス 64.0×74.0cm)

ゴーガンの花はさまざま色溢れる華やかな感じ。

 

そして、いよいよ本展覧会、最後の作品

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(フィンセント・ファン・ゴッホ「ひまわり」1888 油彩 / カンヴァス 92.1×73.0cm)

こちらは溢れんばかりの黄色におおわれた太陽の花・ひまわり。

アルルで7枚描かれたひまわりの中で4作目。1888年8月に描かれた四連作の最後。

ゴッホの「ひまわり」を高く評価したゴーガン。敬愛するゴーガンとの共同生活でゴーガンの私室を飾るにふさわしいと認めたこの作品ともう一点のみ花瓶に「Vincent」のサインが。夢溢れる頃の作品です。

なお、今年開館予定の新宿・SOMPO美術館所蔵の作品はアルルでの5作目とのこと。

 

ということで、展覧会はここまで。

出口を抜けてミュージアムショップへ。

 

(4) ミュージアムショップ

今回は図録と絵ハガキを購入しました。

図録は2900円(税込)

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(帯はゴッホの「ひまわり」バージョンと最初に紹介したカルロ・クリヴェッリ「聖エミディウスを伴う受胎告知」バージョンが選べます)

f:id:YoroCon:20200624012550j:image(裏はフェルメール)

 

絵ハガキは一枚165円(税込)

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この5枚を買いました。


3. さいごに

ルネッサンスから印象派まで。イタリア、オランダ、スペイン、フランス、そしてイギリスといったヨーロッパ絵画が集結。まさに西洋絵画の教科書をそのまま見ているかのようです。COVID-19により、会期が変わりましたが、10月中旬まで、まだたっぷり時間があります(6/25現在)ので、是非とも見に行かれることをおススメします。

それと、是非、あわせて西洋美さんの常設展もご覧になってください。

本展でも出展されている何人かの画家の作品が展示されていて、比較してみるのも面白いですよ。そして、あらためて西洋美さん常設展のコレクション、そのもとになった松方コレクションが素晴らしいことも感じられると思います。

 

なお、本展覧会は以下のとおり巡回します。

大阪・国立国際美術館 2020/11/3(火・祝) ~ 2021/1/31(日)

 

最後に関連リンクです。

 

ロンドン・ナショナル・ギャラリーのコレクション構築にも影響の大きかったコートールド・コレクションの展覧会から

www.suki-kore.tokyo

フェルメールの他の作品も

www.yorocon46.com

今は常設展で見られます。

www.yorocon46.com

 

  今回のレポートは以上です。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

また、次のレポートもよろしくお願いいたします。

 

※ ご意見、ご感想、大歓迎です。是非コメントかメール(yorocon46@gmail.com)まで。ツィッターは@yorocon46です。

 

(西洋美前庭「考える人」の周りで咲いていた紫陽花。梅雨ですね)

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【展覧会】「ホキ美術館所蔵 超写実絵画の襲来」@渋谷・Bunkamura ザ・ミュージアムのレポート(2020/6/13 鑑賞)

自称アート・リポーターこと、よろコンです。

 

本ブログでは既に完了した展覧会も含め、好きな展覧会をレポートしていきます。

 

今回は、梅雨空の下、2020年6月13日(土)に訪問した

 

「ホキ美術館所蔵 超写実絵画の襲来@Bunkamura ザ・ミュージアム

 

です。2020/6/16現在、まだ開催中の展覧会です。(開催中の展覧会のブログを書くのは久しぶりです^^;)

 

これは写真なのか、絵画なのか。リアルなのかファンタジーなのか。写実絵画が向かう先に見えるものは。

普段、あまり目にする機会が少ない"超写実絵画"の世界。是非、驚いてみてください。

 

今回も最後までお読みいただけますと幸いです。

 

【目次】

 

※ 以下の記述は展覧会の解説、図録、パンフ、その他WEB上の資料等を参照の上、記述しております。また、絵画の写真は購入した展覧会図録・絵ハガキ、館内で撮影可能な作品を撮影しています。

 

1. 展覧会概要

(1) どんな展覧会か

 ホキ美術館は千葉県千葉市にある日本初の写実絵画専門美術館です。

今年で開館10年になりました。

www.hoki-museum.jp

 

ホキ美術館を創立された保木将夫氏は現在、医療用不織布製品等のメーカー・株式会社ホギメディカルの創業者。美術館は保木氏の写実絵画コレクション480点から成る「写実の殿堂」

また、美術館の建物は2011年の「日本建築大賞」にも選ばれています。

2019年の千葉県を襲った水害のため、現在は休館中ですが、その中から珠玉の作品達が渋谷の街を"襲来"しています。

 

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(2) 開催概要

 ・期間:2020/3/18(水) - 2020/5/11(月・休)

    ※ 新型コロナの影響で中断したため、2020/6/11(木)~6/29(月)再開

・時間:10:00~18:00(入館は閉館30分前まで)

・会場:Bunkamura ザ・ミュージアム(渋谷)

・チケット:一般 1600円、大学生・高校生 900円、中学生・小学生 600円

・作品数:68点

・写真撮影:入場口のパネルと出口前の小木曽 誠氏の作品一点のみ撮影可能でした。

・Webサイト:

(Bunkamura ザ・ミュージアムのページ)

www.bunkamura.co.jp

(3) パンフレット

(表面)

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(パンフの表紙は生島 浩「5:55」2007-2010 油彩/カンヴァス 130.3×80.3cm)

 

(見開き左面)
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(見開き右面)

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(裏面)

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(裏表紙の樹木は五味 文彦「いにしえの王は語る」2018 油彩/カンヴァス 162.1×112.1cm)

 

(4) 行くきっかけ

かねてより関心のあった写実絵画専門のホキ美術館さんを初めて訪ねて千葉まで行ってきたのが2016年5月1日。その時の衝撃は忘れられないものがありました。あまりにリアル。まさに"超写実"

あれから4年。その衝撃が渋谷でも見ることができる。「日経おとなのOFF」で情報を得て、見に行こう!と決めて前売券も買っていましたが、このコロナ禍で展覧会は中止に。また、いずれ千葉に行こうと思っていたところ、たまたま展覧会再開の情報をBunkamuraさんのWebで発見。見に行くことにしました。ほんとう、偶然だったのですが、行けて良かったです。

 

2. 展覧会の中へ

(1) 訪問日・混雑状況

訪問日:2020/6/13(土) 16:15頃訪問。

鑑賞時間:約60分

混雑状況:人はいますが、混んではいませんでした。入館時、検温、名前・連絡先(電話orメールアドレス)等を書いて提出してチケット購入へ。この時は十分に感覚を取りながら見ることができました。

 

  それでは美術館に入ります。

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(入り口では島村 信之「幻想ロブスター」2013 油彩/カンヴァス 原寸100.0×220.0cm

の大きなパネルが迎えてくれます)

 

(2) 展覧会の構成

画家毎にまとまって展示が行われています。作品には一つ一つ説明があります。そこには画家の超写実への思いが込められた文章も。

(ちなみに図録には説明はあまりありませんでした)

 

今回、展示されていた画家の方は以下のとおりです。(目録から。敬称略)

(1) 森本 草介(もりもと そうすけ)

(2) 青木 敏郎(あおき としろう)

(3) 中山 忠彦(なかやま ただひこ)

(4) 羽田 裕(はだ ひろし)

(5) 野田 弘志(のだ ひろし)

(6) 生島 浩(いくしま ひろし)

(7) 礒江 毅(いそえ つよし)

(8) 石黒 賢一郎(いしぐろ けんいちろう)

(9) 五味 文彦(ごみ ふみひこ)

(10) 島村 信之(しまむら のぶゆき)

(11) 大矢 英雄(おおや ひでお)

(12) 小尾 修(おび おさむ)

(13) 大畑 稔浩(おおはた としひろ)

(14) 原 雅幸(はら まさゆき)

(15) 安彦 文平(あびこ ふみひら)

(16) 冨所 龍人(とみどころ たつひと)

(17) 諏訪 敦(すわ あつし)

(18) 藤原 秀一(ふじわら しゅういち)

(19) 塩谷 亮(しおたに りょう)

(20) 廣戸 絵美(ひろと えみ)

(21) 松田 一聡(まつだ かずとし)

(22) 渡抜 亮(わたぬき りょう)

(23) 藤田 貴也(ふじた たかや)

(24) 三重野 慶(みえの けい)

(25) 山本 大貴(やまもと ひろき)

(26) 松村 卓志(まつむら たくじ)

(27) 鶴 友那(つる ゆうな)

(28) 小木曽 誠(おぎそ まこと)

 

目録にはそれぞれの画家についても説明があります。

 

  それでは、さっそく作品を見ていきましょう。

 

(3) 気になる作品

 

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(森本草介「横になるポーズ」1998 油彩/カンヴァス 65.1×65.5cm)

セピアがかった画面と温か味のある肌。体温を感じられそう。アングルの「グランド・オダリスク」を少し思い出します。ホキ美術館コレクション第1号の記念碑的作品。

 

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(青木 敏郎「レモンのコンフィチュール、芍薬、染付と白地の焼物」2013 油彩/カンヴァス 72.7×145.5cm)

「写実画とは、そのモチーフを如何にリアルに表現するかというよりも、画面のそこここに美意識が浮遊し滲み出てくるものでなければ、美の術、つまりは美術的表現になりません。そうでなければ、それは単なる図像でしかないと思うのです」(図録より画家のことば)

ここにも写実絵画への一つの思いが。

 


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(野田 弘志「聖なるもの THE-I」2009 油彩/パネル/カンヴァス 200.0×150.0cm)

現上皇、上皇后両陛下の肖像画を描き宮内庁に奉納された日本写実画会の牽引者。

「写実絵画で要になるのは「存在」ということです。あくまでも「存在」が描けなければ芸術になりえない。」とは作者の言葉。ここにも写実絵画への一つの思いが。

(ホキ美術館サイトから

野田弘志|収蔵作家と作品|ホキ美術館 HOKI MUSEUM )

 

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(五味 文彦「UTSUSEMI」2014 油彩/パネル/カンヴァス 162.1×162.1cm)

動物の剥製の毛並み等、非常に精緻に描かれています。この絵を見ながら思ったのは、この動物たちが「剥製」=「生きていない」ということ。この絵から感じた「死」。それを「生」と分けるものは何か・・・

 

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(生島 浩「card」2005 油彩/カンヴァス 116.7×90.9cm)

左のオブジェと光の差し込み方がフェルメールの「天文学者」を思わせる一枚。

 

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(原 雅幸「ドイル家のメールボックス」2012 油彩/パネル 80.4×60.7cm)

木の肌、茂る木々の葉、羊のいる牧場ものどかに。

 

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(藤原 秀一「ひまわり畑」2006 油彩/カンヴァス 60.6×72.7cm)

この溢れんばかりのひまわりの花。ひまわり畑の中を歩いているかのよう。

 

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(藤原 秀一「萩と猫」2009 油彩/カンヴァス 72.7×60.6cm)

こちらは絵ハガキから。クリアファイルも買いました。美しい花と何かを見据える猫の表情が愛らしく。

 

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(三重野 慶「信じてる」2016 油彩/パネル/カンヴァス 116.5×116.5)

絵の前に立つと、"彼女"は今にも動き出して、何か言い出しそう。写真では客観的過ぎてこういう気持ちにならないかもしれません。絵画の持つ「リアル」

 

そして最後に、この作品のみ撮影可能でした。


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(小木曽 誠「森へ還る」2017 油彩/テンペラ/カンヴァス 193.9×193.9cm)


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この少女たちは森の妖精のよう。会場の解説から

「自然災害を通じて、画家は人生の生死を考え制作することが多くなったという。」

巨木は佐賀と福岡の県境、佐賀市富士町にある樹齢千年の「下合瀬(しもおうせ)の桂」とのこと。「・・・巨木はいつも様々な表情を見せ、「生かされている」ことを画家に実感させてくれる。」(同じく解説から)


ということで、展覧会はここまで。

この他にも、もっともっと紹介したいのですが、今回はこの辺で・・・

 

出口を抜けてミュージアムショップへ。

 

(4) ミュージアムショップ

図録です。1980円。

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(表表紙)

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(裏表紙)

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絵ハガキは一枚132円。「萩と猫」はクリアファイルも買って495円。いずれも税込みです。

ちなみに、コロナ対策のため、展覧会のミュージアムショップ は出口を出てからエスカレータを昇った1Fにあります。

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3. さいごに

19世紀フランス。ギュスターヴ・クールベが「現実に見たものを描く」として始めた写実主義運動。そして、それは見たものを描くだけにとどまらず、その"存在"をも写し取り"再現"しています。ただ正確、ただ緻密だけにとどまらない"何か"が、われわれにただものを見る以上の"リアル"をつきつけてくるのかもしれません。そして"写実"であればあるほど、現実世界を軽々と飛び越える力を持ち得るのかもしれません。

 

超写実絵画。ヨーロッパではスペインでも盛んなようですが、また、日本とも成り立ちが違うようで、今度はこちらの方も見てみたいと思います。

 

  さて、最初に書きましたとおり、ホキ美術館は現在、昨年の水害の影響で休館中。

しかしながら2020/8/1~再開という、うれしい知らせが飛び込んできました。

最初の企画展はこちら

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森本草介さんの展覧会です。

是非とも千葉にも行きたいものです。

 

  ということで、今回のレポートは以上です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

また、次のレポートもよろしくお願いいたします。

 

※ ご意見、ご感想、大歓迎です。是非コメントかメール(yorocon46@gmail.com)まで。ツィッターは@yorocon46です。

 

【おまけ】

会場にあったホキ美術館さんの紹介パンフレットです。建物の感じが分かります。もちろんカブトムシやクワガタムシは写真ではなく絵です。

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【展覧会】「至上の印象派展 ビュールレ・コレクション」展@乃木坂・国立新美術館のレポート(2018/3/18 鑑賞)

自称アート・リポーターこと、よろコンです。

 

今回も過去に訪問した展覧会について、レポートします。

(本ブログでは既に完了した展覧会も含め、好きな展覧会をレポートしていきます)

 

今回は、少し(だいぶ?)前、2018年3月18日(日)に訪問した

 

「至上の印象派展 ビュールレ・コレクション@国立新美術館

 

 です。

 

印象派の名品を中心とした、見ごたえのある素晴らしい展覧会でした。

もちろんお目当てはルノワールの"あの女の子"

 

今回も最後までお読みいただけますと幸いです。

 

【目次】

 

※ 以下の記述は展覧会の解説、図録、パンフ、その他WEB上の資料等を参照の上、記述しております。また、絵画の写真は購入した展覧会図録・絵ハガキを撮影しています。

 

1. 展覧会概要

(1) どんな展覧会か

  ビュールレ・コレクションを構築したエミール・ゲオルグ・ビュールレは1890年8月31日、ドイツ南西のシュトゥットガルト近くのプフォルツハイムに生まれます。お父さんは公務員、中学の頃から美術・文学に興味を持つ少年だったようです。

  第一次世界大戦では招集されマシンガン部隊の指揮官として前線に。この駐留地で縁あって結婚、銀行家であった義理のお父さんが株主のマクデブルグ工作機械社の一員となります。このことが、ビュールレのこれから道を大きく決定づけます。

この会社は、のちにスイスの工作機械社エルリコーンを買収。その代表としてビュールレは派遣されます。エルリコーン社は武器を製造し、1938年に親会社からも独立。エルリコーン・ビュールレ社となり、ビュールレは社長として成功を収めます。

  コレクションの方は1936年、ルノワールの静物、ドガの踊り子の素描を含む4点の購入を皮切りに、収集がスタート。1937年にスイス国籍を取得、チューリッヒに移住してからは、さらに絵画収集が本格化します。

第二次世界大戦下では76もの作品を購入。あのナチスが「退廃美術」とした作品もオークションで購入。コレクションを拡大していきます。

  やがて、戦争は終わりに・・・

1944年スイスは軍需関係製品の輸出を完全禁止。エルリコーン・ビュールレ社は武器製造から民生品の製造にシフト。コレクションも第二次世界大戦後、ドイツの略奪品として没収されるものも。紆余曲折ありながらも、その後も、ビュールレ・コレクションは発展を続けていきます。

 

  生涯で入手した美術品633点。手元に残った作品550点。印象派を中心に一大コレクションを形成したビュールレは1956年11月28日、チューリッヒにてその生涯を閉じます。享年66歳。

ビュールレの死後、E.Gビュールレ・コレクション財団が設立され、コレクションの展示など管理してきましたが、2020年チューリッヒ美術館に移管されることが決定。

2018年の展覧会は、日本で27年ぶりであり、最後の大規模展示となりました。

 

(2) 開催概要

 ・期間:2018/2/14(水) - 2018/5/7(月・休)

 ・会場:国立新美術館(乃木坂・六本木)

 ・チケット:一般 1600円、大学生 1200円、高校生 800円

 ・作品数:64点

 ・写真撮影:一点のみ撮影可能でした。(最後のモネの睡蓮の大作のみOKでした)

 ・Webサイト:

(国立新美術館のページ)

至上の印象派展 ビュールレ・コレクション|企画展|展覧会|国立新美術館 THE NATIONAL ART CENTER, TOKYO

 

専用ページはもうリンク先が無いようです。

巡回先の名古屋市美術館、九州国立博物館のページが、今でも作品の画像を比較的多めに掲載されていましたので、あわせてリンクを載せておきます。

九州国立博物館 | 特別展『至上の印象派展 ビュールレ・コレクション』

展示作品紹介 – 名古屋市美術館

 

(展示会場入り口)

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(3) パンフレット

(表面)

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(パンフの表紙は

ピエール=オーギュスト・ルノワール「イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢(可愛いイレーヌ)」(部分) 1880 油彩/カンヴァス 65.0×54.0cm)

 

(見開き面)f:id:YoroCon:20200531223851j:image

(裏面)

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(ポール・セザンヌ「赤いチョッキの少年」(部分) 1888-90 油彩/カンヴァス 79.5×64.0cm こちらも有名な少年です)

 

(4) 行くきっかけ

当時「日経おとなのOFF」でも見ましたし、チラシミュージアムでも見ましたし、日曜美術館でも見ましたし、とにかく、この年の前半の目玉の展覧会でした。2018年の秋はあの「フェルメール展」もあって、本当に素晴らしい展覧会が多かったですね。

(2020年も十分、素晴らしい展覧会が多いのですが、いかんせん新型コロナ(COVID-19)の影響が残念です)

 

2. 展覧会の中へ

(1) 訪問日・混雑状況

訪問日:2018/3/18(日) 16:15頃訪問。

鑑賞時間:多分、90分くらいだったと思います。

混雑状況:混んでいましたが、まだ会期前半だったので、ゆっくり見られました。

 

  それでは美術館に入ります。

 

(2) 展覧会の構成

第1章 肖像画 / Section 1 Portrait Gallery

第2章 ヨーロッパの都市 / Section 2 European Cities

第3章 19世紀フランス絵画 / Section 3 French 19th Century Paintings

第4章 印象派の風景 - マネ、モネ、ピサロ、シスレー/ Section 4 Impressionist Landscape - Manet, Monet, Pissarro, Sisley

第5章 印象派の人物 - ドガとルノワール / Section 5 Impressionist Figures - Degas and Renoir

第6章 ポール・セザンヌ / Section 6 Paul Cezanne

第7章 フィンセント・ファン・ゴッホ / Section 7 Vincent van Gogh

第8章 20世紀初頭のフランス絵画 / Section 8 French Early 20th Century Paintings

第9章 モダン・アート / Section 9 Modern Paintings

第10章 新たなる絵画の地平 / Section 10 A New Dimension in Painting

 

(目録の館内図)

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  それでは、さっそく作品を見ていきましょう。

 

(3) 気になる作品

  まずは「第1章 肖像画」の作品から。肖像画です。

肖像画はヨーロッパ芸術において重要な位置を占めています。

本展でも、数多くの作品が展示されていました。


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(ジャン=オーギュスト=ドミニク・アングル「アングル夫人の肖像」1814 油彩/カンヴァス 70.0×57.0cm)

結婚後、間もない頃の作品とか。アングルがサロンの出品でも注文でもなく愛する妻を描いた作品。二人の気持ち、表情に現れています。

 

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(エドガー・ドガ「ピアノの前のカミュ夫人」1869 油彩/カンヴァス 139.0×94.0cm)

眼科医の妻でピアニストでもあったカミュ夫人。その姿とともに、ピアノや鏡などの調度にも目がひかれます。

 

続いて「第2章 ヨーロッパの都市」からは・・・


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(アントーニオ・カナール(カナレット)「サンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂、ヴェネツィア」1738-42 油彩/カンヴァス 121.0×152.0cm)

イタリア地中海の澄んだ日差しを感じさせる風景画です。


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(アンリ・マティス「雪のサン=ミシェル橋、パリ」1897 油彩/カンヴァス 60.0×73.0cm)

フォーヴのマティスの色遣いとは少し異なる感じですが、雪の白と川の灰色のような青と対照的な色が印象に残ります。

 

「第3章 19世紀のフランス絵画」です。

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(カミーユ・コロー「読書する少女」1845-50 油彩/カンヴァス 42.5×32.5cm)

コローといえば風景画を思い出しますが、体調を崩した後半生は人物画を積極的に描いたとか。物静かに読書に耽る。赤い服も印象的です。

 

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(エドゥアール・マネ「燕」1873 油彩/カンヴァス 65.0×81.0cm)

マネの描く草原と二人の女性。遠景の風車に牧場の牛。近くを燕が舞う。のどかさが伝わってきます。

 

「第4章 印象派の風景 - マネ、モネ、ピサロ、シスレー」から

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(カミーユ・ピサロ「ルーヴシエンヌの雪」1870頃 油彩/カンヴァス 43.5×65.5cm)

雪が輝き、空気の冷たさが伝わってきそう。


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(アルフレッド・シスレー「ブージヴァルの夏」1876 油彩/カンヴァス 47.0×62.0cm)

今度は夏。シスレーの広い空。夏の雲。光る川面。


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(クロード・モネ「ヴェトゥイユ近郊のヒナゲシ畑」1879頃 油彩/カンヴァス 73.0×92.0cm)

モネは赤いヒナゲシの花が一面に広がるこの絵を選んでみました。純粋に華やかできれい。

 

「第5章 印象派の人物 - ドガとルノワール」から


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(ピエール=オーギュスト・ルノワール「イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢(可愛いイレーヌ)」1880 油彩/カンヴァス 65.0×54.0cm)

 

いよいよ、"彼女"の登場です。

美しく流れる髪、清楚な白いドレス、あどけなさも大人っぽさも秘めたその表情。

ルノワールの少女像でも最高傑作のひとつでしょう。

この絵は、ルノワールが依頼を受けて描かれましたが、当初は依頼者から気に入られず、飾られないまま家の片隅で眠っていたとか。

その後の世界大戦。この絵も描かれたイレーヌも過酷な運命へと巻き込んでいきます。そして、戦争が終わり、ようやく絵はイレーヌ本人の手元に戻ります。でも、彼女はこの絵を手放してしまいます。そして、現在。ビュールレ・コレクションの一作品として目の前に。いろいろ、考えさせられます。

(上記はNHK・Eテレ「日曜美術館」で取り上げられた内容を記憶に基づき書いてみました)


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(ピエール=オーギュスト・ルノワール「夏の帽子」1893 油彩/カンヴァス 65.0×54.0cm)

ルノワールからもう一点。こちらも美しく、愛らしく。

 

「第6章 ポール・セザンヌ」から


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(ポール・セザンヌ「パレットを持つ自画像」1890頃 油彩/カンヴァス 92.0×73.0cm)

セザンヌも多数の作品が来ていました。セザンヌとカンヴァスとパレットの位置関係はなんだか奥行きのなさを感じますが、絶妙に成立しているのすごい。

ビュールレをはじめとするコレクター達は本当にセザンヌを重要視していると感じます。(コートールドも好きでしたねぇ)

 

「第7章 フィンセント・ファン・ゴッホ」から


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(フィンセント・ファン・ゴッホ「アニエールのセーヌ川にかかる橋」1887 油彩/カンヴァス 53.5×67.0cm)

ビュールレがセザンヌ同様に重要視した画家・ゴッホ。自画像、種をまく人等の作品が来ていましたが、こちらの一枚。青、茶色、黄色、オレンジといろいろな色が溢れています。

 

「第8章 20世紀初頭のフランス絵画」から


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(ポール・ゴーギャン「肘掛け椅子の上のひまわり」1901 油彩/カンヴァス 68.0×75.5cm)

ひまわりはゴッホではなくゴーギャンから。ひまわりだけを描いたゴッホとひまわりの周りも描いたゴーギャン。同じ花でも二人の違いが出ているように思います。


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(ピエール・ボナール「室内」1905頃 油彩/カンヴァス 59.5×40.5cm)

恋人マルトと扉の向こうの部屋、窓。アンニュイな感じ。

 

「第9章 モダン・アート」から


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(パブロ・ピカソ「イタリアの女」1917 油彩/カンヴァス 149.0×101.5cm)

赤いドレスと幾何学的形態の組み合わせが目を引く、この作品を。

 

そして最後は

「第10章 新たなる絵画の地平」

 

ここはモネのこの作品のみ
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(クロード・モネ「睡蓮の池、緑の反映」1920-26頃 油彩/カンヴァス 200.0×425.0cm)

4mを越える大作。もゆる緑の中、赤い睡蓮の花が浮遊します。

この作品のみ撮影可能でした。


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ということで、展覧会はここまで。

この他にもシニャック、ブラック、ロートレック。また、モネ、ドガ、セザンヌ、ゴッホの他の作品も、もっと紹介したいのですが、今回はこの辺で・・・

 

出口を抜けてミュージアムショップへ。

 

(4) ミュージアムショップ

図録です。

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 絵ハガキです。

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(イレーヌ嬢、何回登場しましたかねぇ・・・)

 

3. さいごに

ビュールレ・コレクション。数々の名品、美しい作品の宝庫です。ただ、このコレクションを語る上で忘れてならないのは、二回におよぶ世界大戦が大きな影響を与えているということです。ビュールレ自身が武器製造で得た資金で作品を購入しています。ナチスのかかわりもあります。そして、イレーヌ嬢本人も作品も、戦争に翻弄され、今に至ります。素晴らしいコレクションですが、その成り立ちには考えさせられるものがあります。そして、この先、イレーヌ嬢をはじめとしたこのコレクションが平和な世界の中で私たちの前にあり続けることを願ってやみません。

 

なお、本展覧会は国立新美術館の後、以下の通り巡回しました。

・九州国立博物館:2018/5/19(土)-7/16(月・休)

・名古屋市美術館:2018/7/28(土)-9/24(月・休)

(リンクは最初の方をご覧ください)

 

  今回のレポートは以上です。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

また、次のレポートもよろしくお願いいたします。

 

※ ご意見、ご感想、大歓迎です。是非コメントかメール(yorocon46@gmail.com)まで。ツィッターは@yorocon46です。

 

【作品・その5】藤島武二「黒扇」(1908-1909) 東京・アーティゾン美術館(2020/5/24記述)

自称アート・リポーターこと、よろコンです。

 

  さて、今まで見てきた美術作品の中から、好きな作品をレポートしてcollectするブログシリーズ。また、お付き合いただけますと幸いです。

 

  それでは、本日の作品はこちら。

 

藤島武二

「黒扇」(1908-09)

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(以前、買った絵ハガキを撮影)

 

「こくせん」と読みます。油彩/カンヴァス、63.7cm×42.7cm

流れるような素早い筆致。白いベールに黒い髪、白い服の婦人が持つのは黒扇。白と黒の対比。少し微笑みを浮かべ、こちらを見つめる美しい女性。粗いタッチが、この絵により一層のみずみずしさを与えているように感じます。

 

  こちらの作品は2015年5月からの改築のため休館していた旧・ブリヂストン美術館、2020年1月にリニューアルオープンした現在のアーティゾン美術館所蔵です。

 

(東京メトロ銀座線京橋駅が近いですが、東京駅からも十分に歩けます)

 

リニューアル後の1月19日に訪問し、久々にこの絵と対面してきました。

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(リニューアルしたアーティゾン美術館)

 

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(館内は、こんなオブジェも)

 

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アーティゾン美術館は多くの作品が撮影可能です。この「黒扇」の写真は訪問時に撮影しました。

 

  さて、作者の藤島武二(ふじしまたけじ)は1867年10月15日、薩摩藩士の家に生まれます。(1943年3月19日没)

最初、日本画を学びますが24歳の時、洋画に転向。同じ鹿児島の先輩・黒田清輝の推薦を受けて東京美術学校(現・東京藝大)の助教授となり、黒田主宰の白馬会にも参加します。(ただ、黒田との芸術的性格の違いは認識していたとのこと)

また、藤島は与謝野晶子「みだれ髪」など、本の装丁も手掛けています。

 

  1905年(明治38)から4年間、文部省の命を受けて渡欧。フランス、イタリアで絵画を学びます。この「黒扇」は、藤島の芸術が花開くヨーロッパ時代、イタリア滞在時に描かれたものです。モデルを用いて描いたこの絵画は最晩年まで藤島のアトリエに保管されていたことから、藤島が強い愛着をもっていた作品のようです。藤島が愛した絵は1969年6月、国の重要文化財指定を受けました。

 

  数多くの婦人画を手掛けた藤島が最後まで手元に残した作品。藤島の代表作であり、イタリアでの思い出を伝える作品なのかもしれません。

 

  なお、「黒扇」はこちらのサイトでも見ることができます。

 

所蔵しているアーティゾン美術館

日本近代洋画 | アーティゾン美術館

文化庁運営の文化遺産オンライン

黒扇〈藤島武二筆/油絵 麻布〉 文化遺産オンライン


ということで、ここまで、お読みいただき、ありがとうございました。

いかがでしたか?次の作品もお付き合いください。

 

  以上です。ではでは。

 

【展覧会】「印象派からその先へ- 世界に誇る 吉野石膏コレクション」展@東京丸の内・三菱一号館美術館のレポート(2020/1/10 鑑賞)

自称アート・リポーターこと、よろコンです。

 

※ 2020/5/3時点、重大事態宣言により東京は新型コロナウィルス(COVID-19)の感染拡大を防ぐため、外出自粛の状況にあり、多くの美術館が臨時閉館となっています。今回も過去に訪問した展覧会について、レポートします。

(本ブログでは既に完了した展覧会も含め、好きな展覧会をレポートしていきます)

 

今回は、今年(2020年)1月10日(金)に訪問した

 

「印象派からその先へ-世界に誇る 吉野石膏コレクション展@三菱一号館美術館

 

 です。

 

金曜日夜のナイト・ミュージアムに最初訪れて、さらに2回見に行きました。なぜ、何度も見に行ったのかと言いますと・・・

近代から現代にかけたヨーロッパ絵画の流れを丁寧に押さえつつ、穏やかで優しい気持ちになれる展覧会でした。 今回も最後までお読みいただけますと幸いです。

 

【目次】

 

※ 以下の記述は展覧会の解説、図録、パンフ、その他WEB上の資料やBS日テレ「ぶらぶら美術・博物館」等を参照の上、記述しております。また、絵画の写真は購入した展覧会図録を撮影しています。

 

1. 展覧会概要

(1) どんな展覧会か

コレクションの所有者である吉野石膏株式会社さんは1901年に山形県吉野村(現・南陽市)で石膏原石の採掘を開始したことを起源とし、以来、石膏ボードを中心とした建材の製造販売・研究開発をされている会社です。

1970年代から日本近代絵画、1980年代後半からフランス近代絵画の蒐集を開始されているとのこと。コレクションの歴史は長くありませんが、印象派から、キュビズム、フォーヴ、抽象絵画、エコール・ド・パリと近代絵画の流れを押さえた秀逸な作品が集まっています。特にシャガールのコレクションは日本でも有数。

一部作品は山形美術館・天童市美術館に委託され、定期的に展示されています。

 

(2) 開催概要

 ・期間:2019/10/30(水) - 2020/1/20(月)

 ・会場:三菱一号館美術館(東京丸の内)

 ・チケット:一般 1700円、大学生・高校生 1000円、小・中学生 500円

 ・作品数:72点

 ・写真撮影:NGでした 

 ・Webサイト:

(三菱一号館美術館のページ)

www.artagenda.jp

(美術館外観)

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(入り口のパネル)
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(まだイルミネーションがキレイな季節でした)

 

(3) パンフレット

(表面)

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(パンフの表紙は

ピエール=オーギュスト・ルノワール「シュザンヌ・アダン嬢の肖像」1887 パステル/紙 61.0×49.2cm

パステル画というところが、またやさしい感じで良いです)

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(裏面)
 

(4) 行くきっかけ

「日経おとなのOFF」の1月号を見て知っていましたが、日本の企業が蒐集したコレクションということで、興味を持ち、見に行こうと思いました。印象派中心ということもさらに行く動機になったと思います。

 

2. 展覧会の中へ

(1) 訪問日・混雑状況

訪問日:2019/1/10(金) 晴れ 18:40頃訪問。

鑑賞時間:約70分

混雑状況:1/10に訪問した時も、結構、混んでいましたが、まだ、ゆっくり見ることができました。

そして、ここで私は4000円で年間サポーターになりました。サポーターになると1年間、何回でも展覧会を見に行けます。なので、この後、会期末までに2回(計3回)足を運んでいます。やはり、会期中最後の日曜日はかなり混んでいて、ゆっくり見られる感じではなかったです。ゆっくり見るには早めに行くことは大事ですね。

サポーター制度についてはこちらを。いろいろな特典もあります。

サポーター制度とは? | 新しい私に出会う、三菱一号館美術館

好きな時に絵を見られる贅沢。何度も行くなら、とてもおススメです。

 

  それでは美術館に入ります。

 

(2) 展覧会の構成

シンプルに時代を追いながらコレクションが展示されていました。そして最後はシャガール部屋に。

 

1章 印象派、誕生 ~革新へと向かう絵画~

2章 フォーヴから抽象へ ~モダン・アートの諸相~

3章 エコール・ド・パリ ~前衛と伝統のはざまで~

 

(目録の館内図)

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  印象派中心ですが、それ以降の時代の作品も多く、幅広い時代にまたがる充実した内容だったと思います。それでは、作品を見ていきましょう。

 

(3) 気になる作品

  まずは「1章 印象派~」の作品から。

 

最初は印象派前の作品

 

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(ジャン=フランソワ・ミレー「バターづくりの女」1870 油彩/カンヴァス 98.4×62.2cm)

1870年サロン出展作。右下のタイルにはミレーのサインも。

 

そして、印象派へ

「モレの巨匠」シスレー
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(アルフレッド・シスレー「ロワン川沿いの小屋、夕べ」1896 油彩/カンヴァス 65.0×81.0cm)

1899年1月末、喉頭がんにて亡くなったシスレー。シスレーとモネとルノワールは同じ画塾の友人。生前、経済的に困窮していたシスレーを思い、モネが中心となり、シスレーの残された子供たちのため、展覧会兼オークションが開催されます。そのとき、9000フランと高額で売れた作品とのことです。

 

次はルノアール
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(ピエール=オーギュスト・ルノワール「箒をもつ女」1889 油彩/カンヴァス 65.0×46.0cm)

先程のシスレー追悼の展覧会兼オークションに出品された作品。4000フランの値を付けたとか。シスレーのための展覧会だったのでシスレー作品がいかに高額だったかが分かります。


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(ピエール=オーギュスト・ルノワール「幼年期(ジャック・ガリマールの肖像)」1891 油彩/カンヴァス 64.0×50.3cm)

見た目は女の子のようですが、男の子です。当時のヨーロッパでは女の子の方が健康で生存率が高いことから男の子も子どもの頃は女の子の格好をさせたとか。口の中央に黒い点があるのですが、歯が生えそろっていないことを表現したとか。子どもらしさ溢れる作品です。

 

 そして、モネ。

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(クロード・モネ「サン=ジェルマンの森の中で」1882 油彩/カンヴァス 81.0×65.0cm)

赤、黄、緑といろいろな色に彩られた木々の葉が包む森の道。その奥に吸い込まれていくようです。道を囲む森は大きな瞳のようにも見えますが、いかがでしょう?

 

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(クロード・モネ「テムズ河のチャリング・クロス橋」1902 油彩/カンヴァス 73.0×100.0cm)

ロンドンの霧に河を渡る機関車の煙が混ざり合い、幻想的な光景を作り出しています。

モネ曰く「もしも霧がなかったら、ロンドンは美しい街ではなかっただろう。霧こそが荘厳な美を街に与えているのである」


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(クロード・モネ「睡蓮」1906 油彩/カンヴァス 81.0×92.0cm)

モネの睡蓮です。こちらは、2年前に横浜美術館で開催されたモネ展にも展示されていました。

美術展:「モネ それからの100年」展@横浜美術館に行ってきました。 - よろこんで!**してみました。

 

最後、ピサロです。
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(カミーユ・ピサロ「暖をとる農婦」1883 油彩/カンヴァス 73.2×60.0cm)

ピサロが人だけを大きくとらえた絵は、比較的、珍しいように思います。右に赤く見えるのが暖炉、足元には犬でしょうか?こちらはゴーガンが所持していた絵とのこと。株取引の仕事から専業の画家になった年の作品で、ピサロはゴーガンとともに暮らして絵の手ほどきをしたこともあるようです。

 

  このほかセザンヌ、ゴッホ、ドガにカサットと多数の作品が展示されていました。

 

  つづきましては「2章 フォーヴから抽象へ~」です。

 
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(ジョルジュ・ルオー「バラの髪飾りの女」1939 油彩/カンヴァス 71.0×61.0cm)

暗い背景から聖母が浮かび上がるかのよう。


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(アンリ・マティス「静物、花とコーヒーカップ」1924 油彩/カンヴァス 61.6×50.8cm)

フォーヴの代表、マティスの花。画面左は赤が中心の花々。画面右のコーヒーカップや花は黄色が主体。装飾的な背景の緑とそれぞれの色がそれぞれを引き立てるかのようです。


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(モーリス・ド・ヴラマンク「大きな花瓶の花」1906-1906頃 油彩/カンヴァス 104.3×52.5cm)

もう一人フォーヴから。ブラマンクの花。こちらも黄色の背景、緑の葉、赤い花に花瓶がそれぞれを鮮烈な色に引き立てています。


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(ワリシー・カンディンスキー「結びつける緑」1926 油彩/カンヴァス 84.0×57.5cm)

形を解放したキュビ、色を解放したフォーヴ、そして絵画はついに抽象画へ。こちらの絵はヴァイオリンの低音の響きを表現しているとか。よく見るとバイオリンやその弦が見えてくるかも・・・

 

  ここでは他にピカソ、マルケ、ボナール等の作品も。

 

最後は「3章 エコール・ド・パリ~」です。


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(マリー・ローランサン「五人の奏者」1935 油彩/カンヴァス 81.0×100.0cm)

ローランサンの作品は幻想的で柔らかなイメージです。こちらも音楽の調和を表現したとか。同じ音でもいろいろな表現があります。

 

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(モイーズ・キスリング「背中を向けた裸婦」1949 油彩/カンヴァス 73.5×54.5cm)

こちらは、ドミニク・アングルの「ヴァルパンソンの浴女」

浴女 - Wikipedia

さらにはダダイズムの巨匠、マン・レイ「アングルのヴァイオリン」へのオマージュ。モデルはマン・レイと同じくモンパルナスのキキ。今回の展覧会ではいちばんの好きな作品でした。

 

そして、最後はシャガール部屋へ。シャガールの作品が多数展示されています。

その中から・・・
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(マルク・シャガール「夢」1939-44 油彩/カンヴァス 78.7×78.1cm)

最愛の妻・ベラが急逝した年の作品。5年に渡り作品を描き続け、ベラが亡くなった直後は筆も持てなかったシャガールが立ち直る過程で完成させた作品。浮遊する花嫁はベラなのでしょうか。悲しくも優しい一枚


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(マルク・シャガール「グランド・パレード」1979 油彩/カンヴァス 120.0×132.0cm)

 

マルク・シャガール92歳の作品。シャガールの大好きなサーカスを描いた大作。鮮やかな色遣い、 シャガール作品によく登場するヴァイオリン弾きや馬など。まさにファンファーレ鳴り響く人生のグランド・パレードとして描かれたようです。

 

さて、展覧会の途中ではレンガの部屋で撮影コーナーも(全部、模写です)

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ドガの描くバレリーナ。パステル画です。


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パンフ表面に掲載のルノアールの描いた少女


f:id:YoroCon:20200502190457j:image 先程のモネの睡蓮

 

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近づいてみると、モネの森の道に実際に入り込んだかのよう

 

ということで、展覧会はここまで。

出口を抜けてミュージアムショップへ。

 

(4) ミュージアムショップ

図録です。  

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 絵ハガキです。

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あと、フランスのバジルのマスタードやあんずジャムを買って家で食べてました。美味しかったです。特にバジルのマスタードはあまり辛くなくて酸味も良く、野菜につけて良し、肉につけてもさっぱりと美味しくいただけました。

 

3. さいごに

吉野石膏コレクションは2001年11月10日~12月24日の渋谷・東急Bunkamuraのコーポレートアート展でも今回展示されたのと同じ多くの作品が来ていました。また、どこかで見ることがきっとあるでしょう。ますますコレクションが成長し、さらに目にする機会が増えればと今後に期待したいと思います。

 

  それでは、関連リンクです。

コレクションが寄託された山形美術館

山形美術館 -

と、天童市美術館

天童市美術館

それと、吉野石膏コレクション。作品検索もできます。

吉野石膏コレクション – 公益財団法人吉野石膏美術振興財団

 

なお、本展覧会は以下の通り巡回していました。最後が東京・三菱一号館美術館での展覧会でした。

・名古屋市美術館:2019/4/9(火)-5/26(日)

・兵庫県立美術館:2019/6/1(土)-7/21(日)

 

  今回のレポートは以上です。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

また、次のレポートもよろしくお願いいたします。

 

※ ご意見、ご感想、大歓迎です。是非コメントかメール(yorocon46@gmail.com)まで。ツィッターは@yorocon46です。

 
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(帰りの東京駅。この頃は多くの人がいらっしゃいました)