すきコレ

好きなものをコレクションする。そんなコンセプトのブログです。旅にアートに、それからそれから...

【展覧会】「ポーラ美術館コレクション展 甘美なるフランス」@渋谷・Bunkamura ザ・ミュージアムのレポート(2021/9/26 鑑賞)

展覧会に行きたい!よろコンです。

 

本ブログでは既に完了した展覧会も含め、好きな展覧会をレポートしていきます。

 

今回は、2021年9月26日(日)に訪問した

 

「ポーラ美術館コレクション展 甘美なるフランス@Bunkamura ザ・ミュージアム

 

です。

 

ポーラ美術館にも何回か行きましたが、そのコレクションが東京でも見られる貴重なチャンスです。会期も残すところ少なくなりましたが、箱根から来た名品の数々をほんの少しご紹介します。

 

今回も最後までお読みいただけますと幸いです。

 

【目次】

 

※ 以下の記述は展覧会の解説、図録、パンフ、その他WEB上の資料等を参照の上、記述しております。また、絵画の写真は購入した展覧会図録を撮影しています。

 

1. 展覧会概要

(1) どんな展覧会か

 ポーラ美術館は神奈川県は箱根の森に囲まれた美しい美術館です。

www.polamuseum.or.jp

 

ポーラ創業家二代目の鈴木常司氏のコレクションを基盤に2002年に開館しました。19世紀フランス印象派、20世紀エコール・ド・パリの作品を中心にフォーヴ、キュビ、ガラス工芸に日本画までと幅広いコレクションの総数は約一万点。箱根では企画展・常設展と常時、豊富なコレクションを鑑賞できます。最近では現代美術の企画展も開催されています。

 

LA DOUCE FRANCE

今回の展覧会はコレクションの中から美しく穏やかで実り豊かなフランスとその文化を賛美する言葉「甘美なるフランス」の世界を表現した選りすぐりの作品で構成されています。甘く美しいフランスを堪能してください。

 

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中央はマティスの「襟巻の女」1936年

 

(2) 開催概要

・期間:2021/9/18(土) - 2021/11/23(火・祝)

・時間:10:00~18:00(入館は閉館30分前まで。11/19(金)、20(土)は21:00まで。11/15以降はオンラインによる入場日時予約制。まだ予約できそうです(11/18夜現在))

・会場:Bunkamura ザ・ミュージアム(渋谷)

・チケット:一般 1700円、大学生・高校生 1000円、中学生・小学生 700円

・作品数:74点+参考資料(目録から)

・写真撮影:NG

・Webサイト:

(展覧会サイト)

www.bunkamura.co.jp

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ラウル・デュフィの「パリ」1937年です。

 

(3) パンフレット

(表面)

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(見開き左面)
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(見開き右面)

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(裏面)

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2. 展覧会の中へ

(1) 訪問日・混雑状況

訪問日:2020/9/26(日) 15:00頃訪問。

鑑賞時間:約80分

混雑状況:この時でもすでに混んでいました。事前にチケットを購入していきましたので、特に並ぶことはありませんでした。

 

(2) 展覧会の構成

1. 都市と自然-モネ、ルノワールと印象派

The City and Nature : Monet, Renoir, and the Impressionists

※ いきなりモネ、ルノワールの作品が多数展示されていて、心掴まれました。入ってすぐクライマックスな気分でした。

 

2. 日常の輝き-セザンヌ、ゴッホとポスト印象派

The Radiance of Daily Life : Cezanne, Van Gogh, and th Post Impressionists

 

※ セザンヌ、点描、ゴーガン、ゴッホといろいろな画家の作品が展示されていますが、特にボナールの作品が印象的でした。

 

3. 新しさを求めて-マティス、ピカソと20世紀の画家たち

In Search of the New : Matisse, Picasso, and Other 20th-century Painters

 

※ ピカソ、ブラックらのキュビズム、マティス、ヴラマンクらのフォーヴの画家たちの作品が並びます。先ほどのラウル・デュフィのパリを描いた作品も印象的でした。

 

4. 芸術の都-ユトリロ、シャガールとエコール・ド・パリ

The City of Art : Utrillo, Chagall, and the Ecole du Paris

 

※ ユトリロ、シャガールのほかにもモディリアーニやローランサンの作品が並びますがドンゲンの作品に惹かれました。

 

(3) 気になる作品

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クロード・モネ「散歩」1875年

 

モネの作品は睡蓮もサン=ラザール駅もありましたが、今回はこの一枚

明るい戸外での幸せな家族の風景

 

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ピエール・オーギュスト・ルノワール「髪かざり」1888年

 

何気ない生活のワンシーンに優雅な幸福感が漂う一枚

 

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ポール・セザンヌ「4人の水浴の女たち」1877-1878年

 

セザンヌが過去の芸術の引用から模索した群像表現

 

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ピエール・ボナール「ミモザのある階段」1946年

 

画面いっぱいに広がるいろいろな黄色が鮮やかでした。

 

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ピエール・ラプラード「バラをもつ婦人」

 

ボナールとも親交のあったラプラードの婦人の絵。なんとなくメランコリー

 

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モーリス・ユトリロ「シャップ通り」1910年頃

 

モンマルトルの丘、奥に見えるは完成したてのサクレ=クール寺院

 

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キース・ヴァン・ドンゲン「灰色の服の女」1911年

 

ベル・エポックなファッションの女性

 

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マルク・シャガール「大きな花束」1978年

 

さいごは華やかにシャガールの「花束」を


ということで、この他にも、もっともっと紹介したいのですが、今回はこの辺で・・・

 

(4) ミュージアムショップ

図録です。2400円

 

(表紙)

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(裏表紙)

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3. さいごに

先日、我が家の奥さんとの何気ない会話で「今まで行った美術館で一番良かったところはどこ?」と聞かれました。よく行っているところでは都内の美術館が頭に浮かぶのですが、ふと「あっ、ポーラ美術館かも」なんてことを話していました。

もちろん、簡単に一番なんて言えないのですが、それでもポーラ美術館のコレクション、自然豊かな環境、必ずまた行きたい美術館でとても好きであることは間違いないです。このブログのアイコンもこちらの少女ですので。

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ピエール・オーギュスト・ルノワール「レースの帽子の少女」1891年

(注:こちらはポーラ美術館さんでは撮影可能だったので撮った写真です)

 

本展覧会も会期はあとわずかですが、もしよろしければこの機会に東京でもその良質なコレクションを味わってみてください。

 

さいごに関連リンクです。今回来ている作品もあります。

www.yorocon46.com

www.suki-kore.tokyo

 

  ということで、今回のレポートは以上です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

また、次のレポートもよろしくお願いいたします。

 

※ ご意見、ご感想、大歓迎です。是非コメントかメール(yorocon46@gmail.com)まで。ツィッターは@yorocon46です。

 

【展覧会】デミタスカップの愉しみ展@渋谷・渋谷区立松濤美術館のレポート(2021/9/11訪問)

ただの美術好き、よろコンです。

 

本ブログでは過去に見た展覧会も含め、気になる展覧会をレポートしていきます。

 

今回は、いつも魅力ある企画の展覧会が印象的なこちらの美術館さんから

 

デミタスカップの愉しみ  @ 渋谷・渋谷区立松濤美術館

 

です。

 

  渋谷駅からは少し離れたところにある美術館。渋谷の喧騒が嘘のような静かで瀟洒な美術館ですが、フランシス・ベーコン(COVID-19で途中閉幕)のように攻めた展覧会も開催されています。春先の南薫造展以来の訪問。小さなカップが宝石のような輝きを放つ展覧会。

あと一週間です。(10/2記述)

 

ということで、今回も、最後まで、お読みいただけますと幸いです。

 

【目次】

 

※ 以下の記述は展覧会内の説明、パンフ、その他WEB上の資料などの説明を参照の上、記述しております。なお、作品の写真はパンフレットおよび撮影可能な作品を撮影しています。

 

1. 展覧会概要

(1) どんな展覧会か

デミタス

フランス語で「demi=半分の」「tasse=コーヒーカップ」

デミタスとは「小さいコーヒーカップ」という意味。

デミタスコーヒーとか何気なく缶コーヒーを飲んでいましたが、そういう意味だったとは知りませんでした。デミタスに入れるコーヒーは少し濃いめ、苦めのエスプレッソなどが多いようです。

デミタスが登場した19世紀ヨーロッパでは中産階級が勃興、コーヒー文化が浸透する中でいろいろな焙煎・抽出技術が発展、多様なコーヒーの楽しみ方が生まれました。

また、ヨーロッパで憧れの東洋磁器。中国磁器や日本の伊万里に人気が集まるなか、18世紀初頭ついにドイツ・マイセンがヨーロッパ初の硬質磁器製作に成功。磁気製品の製作がヨーロッパでも盛んになります。

そんな歴史の結晶でもあるデミタスカップ。とにかく宝石のようなデミタスカップを堪能できる展覧会。2000点以上のデミタスカップを有するコレクターとして名高い村田和美さんのコレクションからです。

 

(2) 開催概要

 ・期間:2021/8/24(土) - 2021/10/10(日)

 ・休館日:月曜日

 ・時間:10:00 - 18:00(入館は17:30まで) ※ 土日、10/5以降は日時指定制

    ※ すでに埋まっている枠もありますので、予約はお早めに

ご予約内容の選択|渋谷区立松濤美術館

 ・会場:渋谷区立松濤美術館(渋谷・神泉)

※ JR渋谷駅から15分くらいでしょうか。東急Bunkamuraのさらに奥に歩いたところにある美術館です。白井晟一氏の設計の外観を見た時、住宅街に突然舞台が現れたような良い意味で驚きを覚えますが、とても周囲ともマッチしたきれいな美術館です。

 ・チケット:一般800円、大学生:640円、高校生・60歳以上:400円、小中学生100円

 ・作品数:388点(作品リストから)

 (作品リスト)

https://shoto-museum.jp/wp-content/user-data/exhibitions/193demitasse/list.pdf

 ・写真撮影:NGです。

 ・Webサイト: 

デミタスカップの愉しみ|渋谷区立松濤美術館 

 

(美術館サイト)

渋谷区立松濤美術館

 

東急Bunkamuraの前の坂を上って(これは帰りに取った写真ですが^^;)

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角を右に曲がると白井晟一氏設計の瀟洒な美術館
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(3) パンフレット

https://shoto-museum.jp/wp-content/user-data/exhibitions/193demitasse/leaflet.pdf

http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/wp-content/uploads/2021/08/kuniyoshi-flyer.pdf

 

いつもだと、パンフレットの写真を掲載するのですが、パンフレットの写真のデミタスカップがきれいなので、今回は気になる作品の方に。

 

(4) 行くきっかけ

デミタスカップの愉しみ展は京都、群馬と巡回していて、群馬展のときにたまたま見つけて「行きたい」と思いました。それで、よく見たら渋谷の松濤美術館に巡回するとのこと。渋谷に来るのを待っての訪問です。

 

2. 展覧会の中へ

(1) 訪問日・混雑状況

訪問日:2021/9/11(土) 晴れてはいるけど雲多し。原宿で国芳展を見た後に訪問。16:45頃訪問

鑑賞時間:60分弱

混雑状況:けっこう、人いました。デミタス、人気ですね。

 

では、いよいよ美術館の中に。

こちら、2階、地下1階に展示室があります。

 

(2) 展覧会の構成と気になる作品

構成は次の通りです。

 

第1部 デミタス、ジャポニスムの香り

1章 シノワズリの流行 ※ シノワズリ=中国趣味の美術様式

2章 ジャポニスム

       1節 花鳥

       2節 梅、桜

       3節 植物と昆虫

       4節 文様など

       5節 IMARI

3章 日本製のデミタス

4章 アール・ヌーヴォーへ

5章 アール・デコのデミタス

 

第2部 デミタス、デザインの大冒険

1章 ガラス製のデミタス

2章 機能のかたち

3章 装飾のかたち

4章 かたちのお花畑

5章 これなに?のかたち

6章 華やぐ技巧

7章 覗いて愉しむ

8章 デミ・デミ・パーティー

9章 デミタスの愉しみ、デミタスの喜び

+参考出品

です。

 

それでは、会場の中へ。

気になる作品ですが、今回はパンフレット、チケットに多くの作品が掲載されていますので、そちらをご覧ください。

 

(パンフ表面)

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(裏面)

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(チケット)

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そして、ミュージアムショップ前に撮影可能な作品が3点

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右のガラスの作品から

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サルヴィアーティ(Salviati) イタリア 1800年代

 

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カール・クノール(Karl Knoll) チェコ 1916-1918年頃

 

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コールポート(Coalport) イギリス 「金プラチナ彩菊花文 カップ&ソーサー 1881-1890年頃

 

  会場にはこのほかにもコップのフチ子さんを思い出させるような取っ手が小さな人の形にデザインされた作品。指で押しただけで割れてしまうのではないかと思わせるほどソーサーに穴が開けられていて、その影をも美しく愉しめる作品。本当に多様な作品がありました。私はパンフ表面右下の小さなマイセンのスノーボール等、目に留まりました。でも、これだと飲みにくいかなぁ(^^;)

 

  デミタスカップは小さいので、単眼鏡を持たれている方、単眼鏡を使うとよく見られます。(私も最近、買いました^^)

 

  自分の生活にもこんな宝石のようなカップ欲しいなぁ。カップでコーヒーを飲む朝をちょっと想像したくなる、そんな展覧会でした。

 

では、美術館の外に出ます。

 

(3) ミュージアムショップ

展示室入口にかなりのスペースで関連グッズが販売されています。今回は購入はしませんでしたが、図録や小さなカップなど、いろいろあって、見ていても楽しいです。

 

3. さいごに

コレクターの村田和美さんはこれらのデミタスカップを集めてしまっておくのではなく、実際に使われているということ。展覧会の解説に書かれていたと思います。

こういういわゆる「生活用品」って、やっぱり使うからこそ良いのだと思います。使うからこそ、生活が豊かになり、生活を豊かにしたいからこそ美しさを求めたい。だからこそ「美しさ」は生きるために必要であり、求められるのでしょうね。

ただ高いというだけではなく、「美しいもの」「好きなもの」に囲まれて生活を潤したいものです。

 

それでは、さいごに関連リンク

こちらはマイセンの動物です。

www.yorocon46.com

こちらはラリック

www.suki-kore.tokyo

デミタスの前に見ました

www.suki-kore.tokyo

   今回のレポートは以上です。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

また、次のレポートもよろしくお願いいたします。

 

※ ご意見、ご感想、大歓迎です。是非コメントかメール(yorocon46@gmail.com)まで。ツィッターは@yorocon46です。 

 

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(帰ったら、なぜか家の前で花火大会が。どこで上げていたんだろう^^;)

 

【展覧会】没後160周年記念 歌川国芳展@原宿・太田記念美術館のレポート(2021/9/11訪問)

ただの美術好き、よろコンです。

 

本ブログでは過去に見た展覧会も含め、気になる展覧会をレポートしていきます。

 

今回は、最近、特に好きになってきた浮世絵師・国芳の展覧会から

 

没後160周年 歌川国芳 @ 原宿・太田記念美術館

 

です。

 

「奇想」の絵師として注目を浴び、近年人気の高い国芳。その画力もさることながら、発想力、反骨心、ユーモア精神、こんな粋な絵師がほかにいるでしょうか。

猫好きでも有名な国芳。没後160年を記念した国芳特集のPART I(前期)を見てきました。国芳ワールド全開です。

 

ということで、今回も、最後まで、お読みいただけますと幸いです。

 

【目次】

 

※ 以下の記述は展覧会内の説明、パンフ、図録、その他WEB上の資料などの説明を参照の上、記述しております。なお、作品の写真は購入した図録を撮影しています。

 

1. 展覧会概要

(1) どんな展覧会か

歌川国芳(1797~1861)は日本橋生まれ。

十二の頃に鐘馗の絵を認められ歌川豊国の弟子に。

なかなかヒットには恵まれませんでしたが、三十の時から描いた「通俗水滸伝豪傑百八人之一個」シリーズで大ブレーク。その後は人気絵師の道を歩みます。

国芳と言えば、武者絵、美人画、風景画、多岐にわたる作品を残しています。

・確かな技:西洋絵画を思わせる大胆な陰影、緻密な描写

・大胆な構図:三枚組で一枚の絵を描くまさに大スペクタクルな作品も

・ユーモア:猫の当て字に猫の役者絵、雀の遊郭ととにかくユニーク

・反骨:猫の役者絵も雀の遊郭も庶民の愉しみを禁じた天保の改革・お上への当てつけ

腕があって、洒落てて、ぶれなくて、今の時代にこそ必要な絵師ですね

そんな国芳ワールド満喫の展覧会です。

 

(2) 開催概要

 ・期間:2021/9/4(土) - 2021/10/24(日)

    ただし、入れ替えあり(全点入れ替え)

    PART I:憂き世を笑いに!-戯画と世相:9/4(土)~9/26(日) ← 今回はこれ

    PART II:江戸っ子を驚かす!-武者と風景:10/1(金)~10/24(日)

 ・休館日:月曜日(ただし9/20(月・祝)は開館。9/21(火)休館)

 ・時間:10:30 - 17:30(入館は17:00まで)

 ・会場:太田記念美術館(原宿)

※ JR原宿駅から5分くらいでしょうか。東京メトロ千代田線だと明治神宮前駅から。表参道から少し入ったところです。

 ・チケット:一般1000円、大学・高校生700円、中学生以上 無料(日時予約ではありません。半券提示でリピーター割で200円割引。山種美術館「速水御舟と吉田善彦」展と本展は相互割引きで半券提示で100円割引)

 ・作品数:PART I 80点 + PART II 80点の計160点

 (作品リスト)

http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/wp-content/uploads/2021/09/kuniyoshi-list.pdf

 ・写真撮影:NGです。

 ・Webサイト:

没後160年記念 歌川国芳 | 太田記念美術館 Ota Memorial Museum of Art

 

(美術館サイト)

太田記念美術館 Ota Memorial Museum of Art

 

(原宿駅から表参道の坂をくだると見えてくる)

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(左に入ってすぐ。表参道の喧騒が嘘のよう。小さいながらも素敵な美術館です)

 

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(3) パンフレット

http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/wp-content/uploads/2021/08/kuniyoshi-flyer.pdf

(表面)

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(裏面)

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(4) 行くきっかけ

artscapeさんで展覧会をチェックしながら、この展覧会を見て、ふつふつと行きたい気持ちが湧いてきました。なぜでしょうか?こういう閉塞感の強い時期だからこそ、国芳に憂鬱を吹き飛ばしてもらいたかったのかもしれません。それに値する内容だったと思います。PART I、おすすめです。

 

2. 展覧会の中へ

(1) 訪問日・混雑状況

訪問日:2021/9/11(土) 晴れてはいるけど雲多し。ここ最近にしては熱かった。15:00過ぎ訪問

鑑賞時間:60分弱

混雑状況:けっこう、人いました。国芳、人気ですね。

 

では、いよいよ美術館の中に。

こちら、1階、2階と展示を見た後、地下1階へと回ります。

 

(2) 展覧会の構成と気になる作品

構成は次の通りです。

 

I. 笑いを描く

II. 世相と流行を描く

 

PART Iではここまで。

PART IIから

 

III 物語を描く

IV 風景を描く

V 市井を描く

VI 国芳の自画像

 

という構成のようです。(図録から)

 

では会場に。気になる作品を紹介

 

I 笑いを描くから

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「三段目」天保十二年(1841)頃

 

仮名手本忠臣蔵の三段目。高師直のご機嫌取りで賄賂を贈る場面

猫の顔は役者に似せて、賄賂はかつお節にまたたび、猫に小判

洒落の効いた一枚です。

 

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「猫の当字 かつを」天保十四年(1843)頃

 

「かつを」をめぐる猫の争い。猫もかつおも生き生きと。菓子袋をかぶった「か」の猫がユニーク

 

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「ほふづきづくし 八そふとび」天保十三年(1843)頃

 

源平合戦は源義経、八艘飛び。船から船へと渡る鬼灯(ほおずき)?!

鬼灯の実がいかにも人に見えるのがいとをかし

 

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「里すゞめねぐらの仮宿」(部分) 弘化三年(1846)閏五月

 

歌舞伎役者や吉原の芸者・遊女を描くことが禁じられた時代に堂々と吉原を描いた作品。でも、出てくるのはみんな雀。雀の花魁に群がる雀がぴーちく・ぱーちくときたら、そりゃ賑やかでしょう。エスプリの効いた作品

 

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「荷宝蔵壁のむだ書き(黄腰壁)」嘉永元年(1848)頃

 

天保の改革で規制された役者絵。その規制がとかれ始めた頃の作品とか。落書きを版画にするとは何とも秀逸。究極のヘタウマですね。真ん中の赤い猫(かな?!)とか、ニャロメの元ネタかと思っちゃいました。

 

II 世相と流行を描くからは

 

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「本朝水滸伝豪傑八百人一個 里見八犬子の内 犬塚信乃戌孝 犬飼見八信道」天保二年(1831)頃

 

スターダムにのった「通俗水滸伝豪傑百八人之一個」の続き。当時人気の南総里見八犬伝を題材にした作品。上下に人物を配した劇的な構図はまさに国芳スペクタクル。

 

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「東海道五拾三駅四宿名所 日本橋から神奈川まで四宿」天保五~六年(1834~35)頃

 

北斎の富嶽三十六景、広重の東海道五十三次がすでに世に出て人気を博す中で国芳が描いた東海道。でも普通には描きません。日本橋から神奈川まで一気に描いてしまうのは卓越した空間把握力のなせる業。この絵、「大正広重」こと吉田初三郎の鳥瞰図につながるような。国芳の斬新さが際立って見えます。

 

  こんなもんではありません。まだまだ国芳全開な作品ばかりなのですが、今回はこの辺で。

 

猫を愛した師匠・国芳を弟子の月岡芳年が描いた一枚。国芳ってこんな人

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粋な着物に小脇の猫が愛らしく。良いですねぇ。

 

では、美術館の外に出ます。

 

(3) ミュージアムショップ

図録などは1階の受付で購入します。現金のみです(チケットも)

今回はPART IIも一緒に収められた図録を購入。2500円(税込)

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表紙は日本一カッコいいトウモロコシ

 

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裏表紙は日本一芸達者な猫たち

 

さらに地下1階には手ぬぐいショップがあります。手ぬぐいだけではなく、いろいろなグッズがあります。ちなみになんて読むでしょう?

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正解は「かまわぬ」

浅草・丸の内・代官山 他にもあるようです。

そこで今回は思わずこの手ぬぐいを購入。1650円(税込)

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国芳「猫飼好五十三疋」から。猫の東海道五十三次

それぞれの判じ絵。どこだかわかりますか?

答えは・・・

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「重いぞ(大磯)」が好きかな。おあとがよろしいようで・・・

 

3. さいごに

パンフレットの言葉

表「憂き世に笑いと驚きを!」

裏「逆境を、ポジティブに乗り越えろ!」

これこそ国芳ワールドですね。それも粋にお洒落にぶれずに。

どんどん惹かれていくような気がします。国芳のように今を元気に闊歩していきたいものです。

 

ではまた、今度はPART IIに行ってきます。

 

それでは、さいごに関連リンク

さっき書いた吉田初三郎の作品はここで知りました。

www.suki-kore.tokyo

「奇想の系譜」に国芳も

www.yorocon46.com

   今回のレポートは以上です。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

また、次のレポートもよろしくお願いいたします。

 

※ ご意見、ご感想、大歓迎です。是非コメントかメール(yorocon46@gmail.com)まで。ツィッターは@yorocon46です。 

 

(猫好きの国芳さんですから、我が家の彼女も好きになるでしょう・・・)
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(ではでは)

 

【展覧会】ルネ・ラリック リミックス 時代の インスピレーションを もとめて 展@目黒・東京都庭園美術館のレポート(2021/8/12訪問)

ただの美術好き、よろコンです。

 

本ブログでは過去に見た展覧会も含め、気になる展覧会をレポートしていきます。

 

今回は、三連休もあったのにその直後に取った8月の夏休み。その初日(2021/8/12)に訪れましたこちらの展覧会から

 

ルネ・ラリック リミックス 時代の インスピレーションを もとめて @ 目黒・東京都庭園美術館

 

です。

 

RENE LALIQUE REMIX SEARCHING FOR INSPIRATION IN THE TIMES

@ TOKYO METROPOLITAN TEIEN ART MUSEUM

 

「ラリック展を開くならここでしょ」というくらい作品と美術館がマッチした展覧会。そもそも東京都庭園美術館は旧朝香宮邸。重要文化財にも指定された日本を代表するアール・デコ建築。建築当初からラリックの作品が飾られていました。

いろいろな美術館で見てきたラリックももちろん素晴らしいのですが、今回はこの美術館のためにあるような展覧会。作品と展示空間をトータルで楽しめる納得の展覧会です。

 

ということで、今回も、最後まで、お読みいただけますと幸いです。

 

【目次】

 

※ 以下の記述は展覧会内の説明、パンフ、図録、その他WEB上の資料などの説明を参照の上、記述しております。なお、本展は基本的に撮影可能でしたので、撮影可能な箇所を撮影しています。

 

1. 展覧会概要

(1) どんな展覧会か

ルネ・ラリック(1860-1945)はフランスのシャンパーニュ地方に生まれたジュエリー作家でガラス工芸家。

ジュエリー作家時代は宝石のためにデザインするのではなく、作品の一部に宝石を組み込むという独自のスタイルで一世を風靡。その後、作品は宝石からガラス工芸へと移り、香水瓶など生活に身近なところに芸術を浸透させていきます。

ラリックの活躍していた頃、パリでは植物や昆虫などの自然を曲線的に優雅に描いたアール・ヌーヴォー、その後の工業化による大量生産が進む中で直線的でシンプルなデザインを多用したアール・デコと美の潮流も移り変わっていきます。

生まれ故郷の豊かな自然、宝石からガラス、そしてアール・ヌーヴォーからアール・デコへ、ラリックがインスピレーションを得て、”REMIX"しながら作り上げた装飾芸術の世界に迫る展覧会です。

 

(2) 開催概要

 ・期間:2021/6/26(土) - 2021/9/5(日)

 ・休館日:月曜日(ただし7/26、8/2、8/9、8/30は開館)

 ・時間:10:00 - 18:00(入館は17:30まで)

 ・会場:東京都庭園美術館(目黒)

※ 目黒駅から5分ちょっとくらいでしょうか。山手線の内側の方、道路沿いのお店と展覧会のフラッグを見ながら少し大きめの交差点に出てくると森が見えます。この森の中に美術館があります。駐車場(1回1500円)もあるようですが、電車で来ました。

 ・チケット:一般1400円、大学生1120円、中学・高校生および65歳以上700円(日時予約制)

 ・作品数:127点(デザイン画、写真などを含む)+関連資料

 ・写真撮影:OKでした。

 ・Webサイト:

www.teien-art-museum.ne.jp※ ギャラリートークの動画のリンクもあります。

 

(美術館サイト)

東京都庭園美術館|TOKYO METROPOLITAN TEIEN ART MUSEUM

 

(目黒駅から美術館に行くまでの道でのフラッグ)

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(美術館入口の門。門を入ってすぐ左にチケット売り場もあります)

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(美術館=旧朝香宮邸)

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(左のテントは荷物検査です)

 

(3) パンフレット

(表面)

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(裏面)

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(4) 行くきっかけ

ルネ・ラリックとか、エミール・ガレとかヨーロッパの工芸の展覧会が好きで展覧会があると見に行っています。箱根のルネ・ラリック美術館も2回行きました。美術館のサイトで今後の開催予定を見たときにこの展覧会を見つけて、行こう!と決めました。なお東京都庭園美術館さんも大好きです。

 

2. 展覧会の中へ

(1) 訪問日・混雑状況

訪問日:2021/8/12(木) 曇り、雨が降ったり止んだり。16:00頃

鑑賞時間:約60分 + 庭を10分ほど散歩

混雑状況:平日、日時予約制のため混んではいませんでしたが、それでもそれなりに見に来ている人はいました。会期末に向けて混むかもしれません。

 

(展覧会場のコース)

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では、いよいよ美術館の中に。

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(入口にラリック。朝香宮邸正面玄関扉ガラス・レリーフ・パネル 1933)

 

(2) 展覧会の構成と気になる作品

構成は次の通りです。

 

1. イントロダクション:ルネ・ラリックと朝香宮邸

(INTRODUCTION:RENE LALIQUE AND THE RESIDENCE OF PRINCE AND PRINCESS ASAKA)

 

2. ルネ・ラリックのジュエリー

(JEWELRY BY RENE LALIQUE)

 

3. 複数の自然

(MULTIPLE FACETS OF NATURE)

 

4. 古典の再生

(THE REBIRTH OF ANTIQUITY)

 

5. エキゾティシズムとモダニティ

(EXOTICISM AND MODERNITY)

 

6. 女性たちのために

(FOR THE WOMEN OF THE WORLD)

 

7. 装飾の新しい視点を求めて

(TOWARD NEW RELATIONSHIPS WITH DECORATION)

 

では会場に。

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気になる作品ですが、

 

「2. ルネ・ラリックのジュエリー」から

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ペンダント「バラ」(オパール、透脂七宝、ダイヤモンド、金、ガラス)1900

 

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ネックレス「葉飾り」(金、ガラス、透脂七宝)1910

 

「3. 複数の自然」から

こちらは食堂、シャンデリアは「パイナップルとザクロ」

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テーブルウェア「ニッポン」(透明ガラス、プレス成型、サチネ、ブロンズ台に照明内蔵)1930

 

※ サチネ=ガラスの表面が曇ったように加工することです。ラリック作品ではよく利用されています。


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テーブル・センターピース「三羽の孔雀」(透明ガラス、プレス成型、サチネ、ブロンズ台に照明内蔵)1920


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常夜灯「ツバメ」、ほや「つむじ風」(透明ガラス、型吹き成型、装飾板はプレス成型、サチネ、仮面文様のベークライト製照明台付)1919

 

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平鉢「金魚」(オパルセント・ガラス、プレス成型)1921

 

※ オパルセント・ガラス=オパールのような乳白色で半透明のガラス。これもラリック作品ではよく見られます。


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櫛/ティアラ「二色のヤナギ」(角、エナメル、トパーズ、金)1903

 

二階に上がって・・・

 

「4. 古典の再生」から

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花瓶「バッカスの巫女」(オパルセント・ガラス、プレス成型、パチネ)1927

 

※ パチネ=一般にアラビアゴムを主体とした液に顔料を溶かした物で、顔料を含んだ溶液を乾燥後ガラス素地の表面にしっかりと固着し、 浮彫装飾のディテールを際立たせるために使われます。こちらもラリックが得意にしていたとか。

 

「5. エキゾティシズムとモダニティ」から

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花瓶「オレンジ」(透明ガラス、型吹き成型、サチネ)1926

 

 「6. 女性たちのために」から

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シガレットケース「ねこ」(透明ガラス、プレス成型、サチネ、パチネ)

 

こんなシガレットケース、欲しいです。入れるならタバコじゃないもので。

 

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最後は新館に向かい

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「7. 装飾の新しい視点を求めて」から

 

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電灯式多枝型燭台「ロワトレ(キクイタダキ)」(透明ガラス、型吹きプレス成型、サチネ、電球)

 

  電灯の光がガラスに反射し、永遠と続いていくのが、ちょっとおもしろかったです。


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立像「噴水の女神、メリト・アリアンヌ・ガラテ(左から)」(透明ガラス、プレス成型、サチネ、パチネ)1924

 

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参考資料:雑誌「イリュストラシオン」現代装飾美術・産業美術国際博覧会特集号 1925

 

いわゆる「アール・デコ展」の特集号です。

 

そして最後は

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装飾パネル「泉」(透明ガラス、プレス成型、裏に銀引き加工、サチネ、パチネ)1912

 

パリ1区レ・アール地区にあるルネッサンスの彫刻家ジャン・ゲージョン作の高浮彫「イノサンの泉」の壺を抱えるニンフに着想を得た作品。フランス・ルネッサンスに特長的だったマニエリスムを代表するゲージョンの作品は後世の古典再来の潮流の中でたびたび参照されているそうです(作品解説より)

 

今回は、館内を回っている雰囲気も伝わればと思い、館内の途中の写真もはさんでみました。

 

では、美術館の外に出ます。

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館内の扉。アール・デコのデザイン。2種類のデザインを向き配置を変えて複雑に見せているのが大量生産から芸術を作り出すまさにアール・デコな感じです。

 

(3) ミュージアムショップ

ミュージアムショップは新館にあります。新館にはレストランもあります。

キレイなので、是非立ち寄ってみてください。(今回は見るだけでした)

 

3. さいごに

ラリック。いつ見ても良いです。

最初にラリックのジュエリーの作品を見た時、「ジュエリーのためのデザイン」ではなく、「デザインの中にあるジュエリー」という発想に強い衝撃を受けたのを覚えています。そして、制作はガラスへと移り、生活の中に芸術を取り込んだことにも関心を持ちました。これからもラリック展、追いかけたいと思います。

 

さて、こちらの美術館。「東京都庭園美術館」というくらいですから、もちろん庭園散を歩くのもおススメです。庭園の中に現代彫刻の作品もあったりして。ぜひ、美術館とあわせてこちらも行ってみてください。都会でマイナスイオンを。

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ではまた、展覧会、行ってきます。

 

それでは、さいごに関連リンク

 

こちらは練馬で見たのラリック。こちらは「エレガンス」

www.yorocon46.com

庭園美術館で開催されたパリつながりの展覧会です。

www.yorocon46.com  

   今回のレポートは以上です。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

また、次のレポートもよろしくお願いいたします。

 

※ ご意見、ご感想、大歓迎です。是非コメントかメール(yorocon46@gmail.com)まで。ツィッターは@yorocon46です。 

 

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(雨に濡れた庭園の花)

 

【展覧会】浮世絵風景画 広重・清親・巴水 三世代の眼@町田・町田市立国際版画美術館のレポート(2021/8/9訪問)

ただの美術好き、よろコンです。

 

本ブログでは過去に見た展覧会も含め、気になる展覧会をレポートしていきます。

 

今回は、8月の3連休の最終日2021/8/9(月)に訪問しましたこちらの展覧会から

 

浮世絵風景画  広重清親巴水 三世代の眼 @ 町田・町田市国際版画美術館

 

です。

 

今年は風景画の展覧会が多いように思います。

府中市美術館「映えるNIPPON~」、SOMPO美術館「風景画のはじまり」、そして今回。日本が誇る浮世絵、その中でも風景画で名をはせた絵師

江戸・歌川広重(1797-1858)、明治・小林清親(1847-1915)、大正~昭和・川瀬巴水(1883-1957)の三人「広重」にフォーカスした展覧会です。

町田国際版画美術館は世界的に見ても珍しい版画専門の美術館。同時開催のミニ企画展「浮世絵モダーン」にもさいごに少し触れたいと思います。

 

今回も、最後まで、お読みいただけますと幸いです。

 

【目次】

 

※ 以下の記述は展覧会内の説明、パンフ、図録、その他WEB上の資料などの説明を参照の上、記述しております。なお、作品の写真はすべてパンフと当日美術館で撮影可能だった作品を撮影しています。

 

1. 展覧会概要

(1) どんな展覧会か

さて、三人の「広重」ですが・・・

・江戸:歌川広重(1797-1858)

   一般の町民にまで旅行への関心が高まった江戸後期。天保年間(1830-1844)初頭に舶来の「ベロ藍」(プルシアン・ブルー)を駆使して葛飾北斎が「富嶽三十六景」を描くとこれが人気に。役者絵、美人画に続き「名所絵」というジャンルが流行していきます。そして、その名所絵の世界に参入してきたのが広重です。北斎同様、ベロ藍を駆使。最先端の透視図法に空気遠近法、色彩の遠近法を使いながら季節・天気も絵に織り交ぜ、名所絵の第一人者となっていきます。

 

・明治・小林清親(1847-1915)

  「明治の広重」こと清親。ガス灯、ランプ、洋風建築。幕末の動乱を経て、新しい文化が風景の中に取り込まれていった明治。清親はこの明治の風景を「光線画」と呼ばれる手法で描いていきます。浮世絵にはない近代性を求め、陰影に銅版画のクロスハッチング(縦横の線で陰影を表す技法)を参考にしたと思われる作品も。写真の登場により、メディアとしての役割を終えようとする浮世絵にあって絵師の視点から等身大の風景を描こうとした清親。そんな清親が最後、拠り所としたのは、広重の名所絵でした。

 

・大正~昭和:川瀬巴水(1883-1957)

「昭和の広重」こと巴水。歌川派の系列で日本画家の鏑木清方の弟子。その巴水が熱心に取り組んだのが、浮世絵商・渡邊庄三郎が版元となり、浮世絵の伝統を引き継ぎながら新しい時代の創作性を重視した「新版画

明治20年代から30年代、美的評価の定着した名所を描くのではなく、画家の主観で選ばれた無名の風景が描かれることが風景画の主流に。巴水もこの流れの中で自らが感銘を受けた風景を選び、描き続けました。そんな巴水は「昭和の広重」と評されたとき、自分は清親の方が好きと答えたとか。

 

一人一人は師弟関係などもなく、直接的につながりのない三人。でも、風景を切り取る眼にはどこか通じるものが。時を超え、場所を超え、三人の風景画の眼を通して東京中をそして日本中を旅して廻る。そんな展覧会です。

 

(2) 開催概要

 ・期間:2021/7/10(土) - 2021/9/12(日) ※8/9(月)まで前期。8/12(木)から後期展示で全点入替とのこと(目録から)

 ・時間:平日10:00 - 17:00、土日祝10:00 - 17:30 ※ 事前予約不要

 ・休館日:月曜日(8/9(月)は祝日のため開館。8/11(火)が休館に)

 ・会場:町田市立国際版画美術館(町田)

    ※ JR・小田急の町田駅から徒歩15分。会期中は土日祝+7/28、8/25のシルバーデーは町田駅から無料送迎バスあり。美術館の入口に有料の駐車場、歩いて5分くらいのところに無料の第二駐車場があります。私は家から車で行きました。

 ・チケット:一般900円、高校・大学生450円、中学生以下無料、シルバーデー(7/28、8/25)は65歳以上無料  ※ 半券提示でリピーター割適用、200円引き

 ・作品数:目録からですが、広重66点、清親60点、巴水62点の計188点(数え間違えてたらご容赦。これくらいの点数、展示されています)

 ・写真撮影:一部OKですが、大半はNGなので、撮影時は撮影可能か、よく確認してください。

 ・Webサイト

hanga-museum.jp

(美術館サイト)

町田市立国際版画美術館

 

(美術館の敷地に入っていきます)

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(奥には緑が広がります)

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(3) パンフレット

(表面)

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(裏面)
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(4) 行くきっかけ

アートスケープで展覧会のチェックをしているときに見つけました。

前回は昨年の秋に開催された浮世絵・美人画の展覧会の時に来ています。府中美術館で同じく広重・清親・巴水の作品を見ましたので、こちらの展覧会にも行こうと決めました。

artscape.jp 

2. 展覧会の中へ

(1) 訪問日・混雑状況

訪問日:2021/8/9(月) 晴れでしたが雲も多く、時おり天気雨。14:50頃入館

鑑賞時間:約90分+ミニ展示20分

混雑状況:人は多かったですが混雑まではしていませんでした。ゆっくり見られます。会期末は人が増えるかもしれませんね。

 

では、いよいよ展覧会場に。

 

f:id:YoroCon:20210815153941j:image(一階でチケットを買って二階の展示室へ)

 

(2) 展覧会の構成と気になる作品 

展覧会の構成は次のとおりです。

 

・1章 江戸から東京へ - 三世代の眼 -

 

・2章 歌川広重 - 江戸の名所絵 -

    2章1節 東海道の絵師、広重

    2章2節 さまざまな江戸名所絵

    2章3節 竪絵の新視覚

 

・3章 小林清親 - 明治の光線画 -

    3章1節 新しい風景、新しい暮らし

    3章2節 天候・時刻のうつろい

    3章3節 江戸浮世絵への回帰

 

・4章 川瀬巴水 -大正・昭和の新版画 -

    4章1節 東京風景 - 自然と伝統への同化

    4章2節 旅行と風景 - 浪漫への誘い

 

です。

 

ということで、気になる作品をご紹介。

 

最初は

「1章 江戸から東京へ - 三世代の眼 -」

 

  こちらは広重・清親・巴水が同じ場所を描いた作品を並べて展示しています。

それぞれの画家の「眼」を通じた風景を比べて見られる、粋な展示になっています。

このコーナーはすべて写真撮影OKでした。

 

その中からまず選んだのはこちら

「芝増上寺」

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歌川広重 「東都名所 芝増上寺雪中ノ図」 天保(1833-40)末期


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小林清親「武蔵百景之内 芝増上寺雪中」 明治17(1884)年


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川瀬巴水 「東京二十景 芝増上寺」 大正14(1925)年

 

  いずれも雪の増上寺を描いたもの。しんしんと降る広重の雪。清親は雪が上がったあとでしょうか。風雪に向かい歩く巴水の女性。同じ雪景色もそれぞれの絵師で雪の描き方の違いが、絵から伝わる印象の違いにつながっていきます。

 

  次は

「亀戸天神」

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歌川広重 「名所江戸百景 亀戸天神境内」 安政3(1856)年


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小林清親 「武蔵百景之内 亀井戸天満宮」 明治17(1884)年


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川瀬巴水 「亀戸の藤」 昭和7(1932)年

 

  こちらも3人が描いた亀戸天神の藤と太鼓橋。広重は水面をかすめる燕が印象的。清親は絡み合う藤の幹を含め、広重へのオマージュのような構図。そして巴水の藤はより華やかに。二人との違いが際立ちます。

 

  同じ舞台でも描く絵師により、こんなにも印象が異なる。三人の個性が際立つように見えます。でも、この場所を選んで描いたということは、清親も巴水も、きっと広重を意識したのではないでしょうか?そんな気がしました。

 

次は

「2章 歌川広重 - 江戸の名所絵 -」

から2点

 

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歌川広重「東都名所 吉原仲ノ町夜桜」 天保(1830-44)前期

 

二点透視図法でより立体的に描かれた作品


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歌川広重「名所江戸百景 深川万年橋」 安政3(1857)年

 

近景をどアップで描き、対象物の向こうに遠景を描く。錦絵揃物として画帖や冊子として売り出すのが流行った江戸末期。横絵から竪絵。ヨコからタテへとフレームが変わることで編み出された広重の遠近法。広重の代名詞ともいえる構図の革新です。

 

そして時は明治

「3章 小林清親 - 明治の光線画 -」

からも2点

 

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小林清親 「海運橋 第一銀行雪中」 明治9-10(1876-77)年

 

明治・洋風建築という新しい風景を描いた一枚。新しいものを絵に描き入れていくところがガス灯や鉄道などを積極的に描いた清親らしいところ思います。第一銀行は今年の大河ドラマのモデル・渋沢栄一創設。現みずほ銀行に合併する前の第一勧銀の前身です。

 

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小林清親(田口米治補筆) 「武蔵百景之内 両国花火」 明治17(1884)年

 

清親のそもそもの画業は浮世絵に倣った作品がスタートとのこと。その後、光線画を経て、また浮世絵へと戻っていきます。その時の拠り所が広重の名所絵。

この絵も近景の屋形船から空を見上げる婦人。川面に映る花火が涼し気です。

 

そして最後は

「4章 川瀬巴水 -大正・昭和の新版画 -」

から、こちらも2枚

 

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川瀬巴水 「旅みやげ 第二集 金沢下本多町」 大正10(1921)年

 

これを「金沢」と言われなければ、その場所は分からないでしょう。でも、旅先の金沢の路地できっとこの風景を発見したのでしょう。夏の空、降り注ぐ日差し、日傘と浴衣。強く印象に残る何気ないワンシーンを切り取った一枚。


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川瀬巴水 「旅みやげ 第三集 周防錦帯橋」 大正13(1924)年

 

  山口県岩国市にある日本三奇橋のひとつ。今から11年前(2010年)のGWに実際に行きました。中央は三連のアーチ、両端を含め五連の長い橋です。天気が良かったこともあり、清らかな水の流れと美しい橋は本当に印象深い風景でした。

そこから巴水はアーチのつなぎ目一つとそこから抜ける遠くの風景を切り取りました。この切り取り方、すこし広重に通じるような。(巴水先生に怒られるかも)

 

三人の眼から見える風景。

三つの時代を超えて、三人の個性を通じて、いろいろな風景に出会えたと思います。

一言で「風景」と言っても、同じではない。だから、面白い。

そして自分も風景を作るその一人。自分の中の「風景」と比べながら見るのが、楽しい見方の一つではないでしょうか。自分の中の「風景」が変わるかも、しれません。

 

  ということで、いろいろなところを旅して会場をあとにします。

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(会場出口の撮影スポット。川瀬巴水「東京十二ヵ月 麻布二の橋の午後」大正10(1921)年)

 

(3) ミュージアムショップ

ミュージアムショップがあります。図録を購入です。

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図録 2,400円

 

なお、こちらの美術館さんはミュージアムショップのほかに軽食・喫茶コーナーもあり、お食事もできます。

 

3. さいごに

今回の最後は同時開催の

ミニ企画展 浮世絵モダーン 橋口五葉と伊藤深水を中心に

の紹介です。こちらは無料で見ることができます。

 

川瀬巴水と同じく新版画の絵師であった橋口五葉と伊藤深水。そのほか版元・絵師・彫師・摺師が共同で作成した多色刷り木版画である新版画の作品を展示。ここでは撮影可能だった作品のなかから三点、紹介します。

 

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橋口五葉(ごよう) 「髪梳ける女」 1920年


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山村耕花(こうか) 「十三世守田勘彌のジャン・バルジャン」 1921年


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小早川清 「近代時世粧ノ内 瞳」1930年

 

近代の版画もとても面白い作品が多くあります。これからも版画、見に来たいと思います。

 本展は8/12(木)から後期も開始。まったく新しい展覧会になっているようですので、とても興味深いでず。機会があれば見に行きたいところです。

 

  とういことで、関連リンクです。

 

日本の「映える」風景画です。

www.suki-kore.tokyo

フランスの風景画のはじまりです。

www.suki-kore.tokyo

東海道五十三次一気見なら

www.yamatane-museum.jp8/29(日)まで。

 

秋の川瀬巴水展です。

www.sompo-museum.org10/2(土)から。

 

8月の展覧会情報です。

www.yorocon46.com 

   今回のレポートは以上です。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

また、次のレポートもよろしくお願いいたします。

 

※ ご意見、ご感想、大歓迎です。是非コメントかメール(yorocon46@gmail.com)まで。ツィッターは@yorocon46です。


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(この犬、どこにいたかなぁ?)

 

【展覧会】風景画のはじまり コローから印象派へ 展@新宿・SOMPO美術館のレポート(2021/7/22訪問)

ただの美術好き、よろコンです。

 

久々ですが、本ブログでは過去に見た展覧会も含め、気になる展覧会をレポートしていきます。

 

今回は、4連休の初日2021/7/22に訪問しましたこちらの展覧会から

 

ランス美術館コレクション 風景画のはじまり コローから印象派へ @ 新宿・SOMPO美術館

 

です。

 

コロー、バルビゾン、ブーダン、印象派

フランスの近代風景画は近代絵画の歴史を形作るほどに充実した発展を遂げました。

フランス・シャンパーニュ地方のランス美術館。あのルーヴルに次ぐコロー作品の収蔵数を誇るなど19世紀の風景画が充実。現在、改修のため長期休館中。だからこそ作品たちが世界を行脚。そんなランス美術館のコレクションから印象派をひとつの頂点としたフランス風景画の流れをたどる展覧会です。

夏の暑い日、涼しい美術館で素敵な風景画を見ながら、ちょっと贅沢な時間を過ごしませんか?

 

ということで、今回も、最後まで、お読みいただけますと幸いです。

 

【目次】

 

※ 以下の記述は展覧会内の説明、パンフ、図録、その他WEB上の資料などの説明を参照の上、記述しております。なお、作品の写真は購入した図録を撮影しています。

 

1. 展覧会概要

(1) どんな展覧会か

フランス近代風景画

そもそも風景画って、今では当たり前にあるジャンルですが、西洋絵画においてその存在が認められるようになるのは意外と新しいようで・・・

ルネッサンス以前、絵画のジャンルというものは明確ではなく宗教・神話・歴史的出来事を描くいわゆる「歴史画」が存在し、そのほかの絵は歴史画の構成要素でした。

それがルネッサンスになると教会や王侯貴族から注文の増えた「肖像画」、遠近表現技法の発達から発展した「風景画」、寓意的表現から独立していった「風俗画」、市民社会の現実や装飾への関心から生まれた「静物画」とそれぞれのジャンルに分かれていきます。

17~19世紀になると絵画・彫刻の振興を目的として設立したフランス王立絵画彫刻アカデミーが美の「ヒエラルキー」を設定します。それが次のものでした。

最高位=歴史画:聖書や神話等、画家の想像力の賜物

2位=肖像画:神の作りし人間の肖像

3位=風俗画:その人間の日常生活

4位=風景画:ただの風景

5位=静物画:ただのもの

※ 各ジャンルのコメントはいくつかの資料を参照して書きましたが、意訳が過ぎたらごめんなさい。

 

しかし時は流れ、産業革命はブルジョアを生み、そのブルジョアは鉄道を使って郊外に旅行をし、都市では失われた郊外の風景を求めます。絵画も、アカデミーの権威への反発の中、最新のチューブ式絵具を片手に画家たちがこれまた鉄道に乗って戸外へと出かけ、美しい風景をその場で描くようになります。

こうして風景画は人気のテーマとなり、その地位は向上し、やがて絵画史最大のエポックメイクな運動のひとつ「印象派」へとつながっていくのです。

 

そんな「風景画のはじまり」からその後をたどっていく展覧会です。

 

(2) 開催概要

 ・期間:2021/6/25(金) - 2021/9/12(日)

 ・休館日:月曜日(8/9は開館・・・もう過ぎましたが)

 ・時間:10:00 - 18:00(入館は17:30まで)

 ・会場:SOMPO美術館(新宿)

    ※ 西口の高層ビル群の中です。エルタワービルを抜けて地下を歩いて行きます。JR西口改札から10分弱。


 ・チケット:一般1500円、大学生1000円、高校生以下無料(日時予約制・アソビューのサイトで購入)

 ・作品数:71点+収蔵品(ゴーガンとゴッホのひまわり)

 ・写真撮影:NGでした。

 ・Webサイト:

www.sompo-museum.org

(美術館サイト)

SOMPO美術館(旧館名:東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館)ゴッホ《ひまわり》を収蔵。新宿駅 徒歩5分

 

(外から見た美術館。この日も暑かった)

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(入口のポスター)

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(3) パンフレット

(表面)

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(裏面)
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(4) 行くきっかけ

SOMPO美術館で開催された一つ前のモンドリアン展で、次にこの展覧会があることを確認し、見に来ることを決めていました。

 

2. 展覧会の中へ

(1) 訪問日・混雑状況

訪問日:2021/7/22(木・祝) 晴れ。14:50頃

鑑賞時間:約60分

混雑状況:日時予約制のため混んではいませんでしたが、四連休初日、夏休みに入ったこともあり、学生さんも多くて、人はそれなりにいました。なるべく早めに見た方が良いかと思います。(日時予約なので最後の土日は直前では予約できないかも)

 

(展覧会場のコース)

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美術館で配布されていた地図
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では、いよいよ展覧会場に。

 

(2) 展覧会の構成と気になる作品

構成は次の通りです。

 

第1章  コローと19世紀風景画の先駆者たち

第2章  バルビゾン派

第3章  画家=版画家の誕生

第4章  ウジェーヌ・ブーダン

第5章  印象派の展開

 

展示作品は

https://www.sompo-museum.org/wp-content/uploads/2021/06/pdf_ex_musees-reims_list.pdf

からも確認できます。

 

 

第1章  コローと19世紀風景画の先駆者たち

これまでのアトリエの中で「理想化」した風景を描くアカデミックな描き方(=「歴史画」の描き方)から、戸外に出て「写実的」に描くことへ移り始めた頃の作品です。この革新を産業革命の産物である鉄道が、チューブ型絵具が、そして産業革命の結果失われた自然を求めるブルジョアたちが後押しします。

ここでは、コローをはじめとしたフランス風景画の先駆者たちの作品が展示されています。そんな中から・・・

 

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ギュスターヴ・クールベ 「レマン湖の岸辺(急流)」1875年頃 油彩/カンヴァス 61.5cm×50.1cm

 

「私は世界一傲慢な画家である」「私は目に見えるものしか描かぬ」

絵画の革命家・クールベの風景画。険しい岩肌に急流。「写実主義」を唱えたクールベも多くの風景画を残しています。この絵はパリ・コミューン後、莫大な賠償金の支払いを命じられスイス・レマン湖に亡命していた頃の作品。気力衰えていた頃と言いますが、絵には気迫を感じます。

 

次はコローから2作品

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ジャン=バティスト・カミーユ・コロー 「樹間の小道、春」1860-70年頃 油彩/キャンバス 55.2×42cm


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ジャン=バティスト・カミーユ・コロー 「イタリアのダンス」1865-70年頃 油彩/キャンバス 66.5×47.7cm

 

コローは最終的な制作はアトリエで行っていますが、イタリアやフランスなどの旅先の戸外でも制作をした初期の画家とのこと。

コローというと、森の高い木々の間に話をする人、休む人、そして踊る人(?!)といった自然に溶け込む形で土地の人が登場する絵が印象に残ります。

1つめの作品はコローがしばしば制作を行ったフランス・オワーズ県マリセルでの一枚、2つめの作品は定期的なイタリアの旅の思い出を描いた一枚とのこと。

 

第2章  バルビゾン派

ミレーで有名なバルビゾン派はパリ南東・フォンテーヌブローの森に位置するバルビゾン村に集まってきた画家たちのこと。住む者もいれば通いの画家も。いよいよ、素朴な村の風景とそこに住む普通の農民と動物たちが絵の主役になっていきます。

 

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テオドール・ルソー 「沼」 1842-43年 油彩/カンヴァス 41.1×63.3cm

 

テオドール・ルソーはバルビゾンを代表する画家で、村の住人。

風景の中、沼のほとりに座る羊飼いの女性の赤いドレスがアクセントの一枚。

 

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コンスタン・トロワイヨン 「ノルマンディー、牛と羊の群れの帰り道」 1856年 油彩/カンヴァス 46.2×60.8cm

 

バルビゾン派で最も有名な動物画家・トロワイヨン。牛、羊、その前を走る犬、そしてゆっくりとついてくる農民。のどかなバルビゾン村の風景

 

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アンリ=ジョゼフ・アルピニー 「ヨンヌの思い出、サン=プリヴェからブレノーへの道」 1885年 油彩/カンヴァス 55×72.2cm

 

コローのお友達アルピニー。この写真では伝わらないのですが、少しべた塗りの感もありながら明るい空の水色。そのほかの作品も含め、とても色が素敵な画家でした。

 

第3章  画家=版画家の誕生

 

19世紀は版画技法も発達した世紀とか。特にエッチングはもっともよく使われた技法でバルビゾンの画家もデッサンなどの再現、雑誌の挿絵制作などに活用しています。

 

そんな版画をよく利用した画家のひとり
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シャルル=フランソワ・ドービニー 「柵の中の羊の群れ・朝」 1860年(刷り1862年) エッチング/紙 18.4×34.2cm

 

まだ寝ている羊。奥の羊は先の食事中でしょうか?飛び立つ鳥たち。こちらものどかな農村の風景。

 

第4章  ウジェーヌ・ブーダン

1824年7月12日、フランス西部ノルマンディーに生まれたブーダン。

見習い水夫、印刷工を経て画材屋を構えたブーダンの店にはミレーやトロワイヨンの作品が並んだとか。のちに画家となり、戸外制作の先駆者に。コローをして「空の王者」と言わさしめ、モネと出逢い、第一回印象派展にも出展。いよいよ印象派に上り詰める風景画の歴史の中、重要な位置を占める画家のコーナーです。

 

ブーダンと言えば海と空。なので、数ある展示の中からこの一枚

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ウジェーヌ・ブーダン 「上げ潮(サン=ヴァレリの入り江)」 1888年 油彩/カンヴァス 50×75.3cm

 

広い空、青い海。浜辺に遊ぶ人たち。「空の王者」にふさわしい一枚。

 

第5章  印象派の展開

そして、いよいよ印象派にたどり着きます。

アカデミーの厳しい規範から脱し、自由な制作を求めた画家たちは、戸外に飛び出し、ヒエラルキーの中でも下位に位置する風景画を描くことで光を描き、新しい時代を作ったのでした。風景画が起こした絵画の革命ではないでしょうか。


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カミーユ・ピサロ 「ルーヴル美術館」 1902年 油彩/カンヴァス 46.3×55.6cm

 

新たな風景である「街」を描いた作品。機関車、街、工場の煙突等、印象派の風景画は対象も新しい時代を反映しています。


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クロード・モネ 「べリールの岩礁」 1886年 油彩/カンヴァス 65.6×81.5cm

 

やはりモネのこの岩肌、この海の色。素晴らしいです。

フランス・ブルターニュのべリールでの一枚。


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マクシム・モーフラ 「日没の岩礁」 1899年 油彩/カンヴァス 54.1×73.1cm

 

フランスはブルターニュ、ポン・タヴェンにいたゴーガンに影響を受けたモーフラ。

同じブルターニュの海でもモネとくらべこちらはとても穏やかに感じます。比較しながら見ても面白い一枚。

 

 

  まだまだコローやブーダンのほかの作品、ルノワール、シスレーと、見どころは満載です。生の絵の色は鮮やか。ぜひぜひ機会があれば展覧会を見に行ってみてください。

 

   最後はSOMPO美術館が誇るゴーガンにゴッホのひまわりをみて展覧会場を出ます。

 

(3) ミュージアムショップ

今回もミュージアムショップで図録を購入です。


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図録 2,500円

 

モネとコローの表紙が良いです。

 

3. さいごに

西洋絵画での風景画。いろいろな変遷を経ています。

では日本はというより東洋の風景画と言えば「山水画」

むしろもともとの評価が高かったジャンルじゃないかなぁ思います。この辺は日本と西洋の宗教や歴史、文化の違いなのかもしれません。

日本でも旅行のブームが浮世絵の風景画ブーム(富嶽三十六景や東海道五十三次)をけん引しているところもあるので、人々の生活の変化がアートに及ぼす影響も見逃せないなぁと感じます。風景画、とても奥深いジャンルです。

 

ではまた、展覧会、行ってきます。

 

それでは、さいごに関連リンク

美術展ナビのトピックスで展覧会の雰囲気が伝わります。

artexhibition.jp

こちらは日本の風景画の展覧会です。

www.suki-kore.tokyo

SOMPO美術館の前回の展覧会

www.suki-kore.tokyo 

   今回のレポートは以上です。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

また、次のレポートもよろしくお願いいたします。

 

※ ご意見、ご感想、大歓迎です。是非コメントかメール(yorocon46@gmail.com)まで。ツィッターは@yorocon46です。

 

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家を出た時。こんな夏空でした。

 

【展覧会】 2021 イタリア・ボローニャ国際絵本原画展@西高島平・板橋区立美術館のレポート(2021/7/18訪問)

ただのアート好き、よろコンです。

 

本ブログでは過去に見た展覧会も含め、好きな展覧会をレポートしていきます。

 

今回は、板橋の夏恒例のこちら

 

2021イタリア・ボローニャ国際絵本原画展 @ 西高島平・板橋区立美術館

 

のレポートです。

 

板橋区立美術館の毎年恒例の展覧会。新人作家の登竜門。今年もCOVID-19の影響を受け、現地での開催は中止となりましたが、個性豊かな作品が集まりました。子どもも大人も絵本の世界に「入り浸る」、そんな展覧会です。

今年は最近、板橋区立美術館に寄贈された「スイミー」でおなじみのレオ・レオーニ作品の展示もあります。

今回も、最後まで、お読みいただけますと幸いです。

 

【目次】

 

※ 以下の記述は展覧会、パンフ、図録、その他WEB上の資料などの説明を参照の上、記述しております。なお、作品の写真は購入した図録を撮影しています。

 

1. 展覧会概要

(1) どんな展覧会か

イタリア・ボローニャ国際絵本原画展(ボローニャ展)

 

イタリア・ボローニャで毎年・春に開催される児童書専門の見本市

「ボローニャ・チルドレンズ・ブックフェア」

残念ながらブックフェアはCOVID-19の影響で2年連続の現地開催中止。オンラインでのイベント開催となりました。さらに、今年はコンクールも初のオンライン審査を実施。絵本の世界、いろいろと試行しながら今の時代の中、前に進んでいます。そして、毎年入れ替わる5つの国からの審査員の一人に板橋区立美術館・館長の松井希代子さんが選ばれました。

68か国3,235組の応募作品の中から、23か国76組の作品が展示されています。

 

(美術館内のボローニャの紹介。私はボロネーゼが大好きです。行ったことはないけど(^^;))

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(2) 開催概要

 ・期間:2021/7/17(土) - 8/15(日)

 ・時間:9:30 - 17:00 ※ 入館は閉館30分前まで。時間指定制ではありませんが、入館にマスクは必須、手の消毒も。

 ・会場:板橋区立美術館(西高島平)

    ※ 歩くなら都営三田線・西高島平から13分。東武東上線・成増、都営三田線・高島平からも1時間に1・2本バスも。私は今回も車で行きました。美術館前のリパーク(20分100円、入庫12時間500円、16台)利用。


 

 ・チケット:一般650円、高校・大学生450円、小・中学生200円

 ・作品数:76作品+レオ・レオーニ作品

 ・写真撮影:NGです。

 ・Webサイト:

(展覧会サイト)

2021イタリア・ボローニャ国際絵本原画展|板橋区立美術館

 

(美術館サイト)

www.city.itabashi.tokyo.jp

(美術館・外観)

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フラッグのコメント。それではこれから「入り浸り」ます。

 

(入口)

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(3) パンフレット

(表面)

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(見開き・左ページ)

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(見開き・右ページ)
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イベント多数です。

 

(裏面)

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(4) 行くきっかけ

毎年恒例なので、都合がつけば見に来ています。

今年は実家で母お手製のおはぎをもらうついでに来ました。

 

2. 展覧会の中へ

(1) 訪問日・混雑状況

訪問日:2021/7/18(日) 晴れ。暑い(^^;)。12:00前到着

鑑賞時間:約60分くらい

混雑状況:まだ、会期が始まったばかりでしたので、あまり多くはありませんでした。ゆっくり見られます。

 

では美術館に入ります。

 

(2) 展覧会の構成

会場の入口入ってすぐにレオ・レオーニ作品の展示室。

その後、絵本の展示へと続いていきます。

 
それでは、早速、作品を見て行きましょう。

 

(3) 気になる作品

気になる作品、どんどん掲載します。

すべて、購入した図録を撮影しました。写真はゆがんでいてごめんなさい。

絵本を見ている気分で見てください(^^;)

 

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アンナ・アパリシオ・カタラ(スペイン) 「ウーゴはねむれない」

デジタルメディア

 

明るく元気で勢いのある感じが好きです。


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ロレンツォ・バルトリッチ(イタリア)「紙人間」

ジオラマ、コラージュ、アクリル、写真

 

今年、こういういろいろな素材を使って作ったものを写真に撮るという手法の作品が何点かあったのが特徴的だなぁという印象を受けました。面白い表現ですよね。

 

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ガブリエラ・ブリン(アルゼンチン)「やさいはみんな」

デジタルメディア

 

上は左「豆はもんくばかり」 、右「豆はいうことをきくゾウがほしい」

下は「キュウリはいつも『いやだ!』という」

 

  絵といい、タイトルといい、とにかく今回の私の「気になる」ナンバー1でした。

読んでみたい。


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アンナ・デスニツカヤ(ロシア)「シベリア鉄道の町」

ペン、水彩、デジタルメディア


ここは「カンスク」。寒そうですが、町の感じが良いですね。

 

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マリー・ノエル・オルヴァット(フランス)「ぐるん ぐるん」

布、ドローイング、刺繍


きりんから猫、さらにほかの動物たちに毛糸がつながっていきます。

そして最後は

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いわさき 智沙(日本)「愛犬といっしょに」

粘土、アクリル、色鉛筆、デジタルメディア


粘土だからこそ出るこの「味」。良いですよね。


今回も本当にここでは紹介しきれない作品の数々。

今回は作品の中でも紹介した表現方法に工夫があるものが印象に残りました。あとイランの作家の作品が多かったようにも思います。私がそう思っただけかもしれませんが・・・(^^;)

 

さて、図録にあった審査員マリア・ルッソさんの言葉をここでご紹介。

「入選する作品の条件」として挙げられていたのが

 

・・・選ばれるべき作品には、驚きと喜びが必要です。そこには「本気の遊び」とでもいうべき感性があり、アーティストが心から制作を楽しんでいるのが分かります・・・

 

そして、それがアーティストの情熱となって、我々に伝わってきます。(これも、マリア・ルッソさんの言葉から。

 

「本気の遊び」でできた絵本。やっぱり絵本はいつ見ても良いですねぇ。

 

  それでは、展覧会場を出ます。

 

(4) ミュージアムショップ

  今回も、販売エリアがありました。展覧会に展示された作家の絵本の数々や絵ハガキなどのグッズもあります。今年も図録(2,500円)を購入です。

 

(図録表紙)

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/Y/YoroCon/20210725/20210725215117.jpg

 

(図録裏表紙)
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3. さいごに

今回はさいごに板橋区内で開催されているコラボ企画をご紹介。

(美術館内のポスター)

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(パンフ)

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美術館に置いてあったギャラリーの絵はがき

東武東上線ときわ台駅から

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オオノ・マユミ展「蝶々、日々花々」@杜のまちや  8/1~8/9

ときわ台駅すぐそばの天祖神社が設立した「町のいえ」とのこと。天祖神社も駅近ですが、緑の森が気持ちいいところです。


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渡辺美智雄展「ボローニャに会いに」@cafe arica  7/17~8/15

 

同じく東上線の下赤塚駅、地下鉄有楽町線だと地下鉄赤塚駅から。
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むらかみひとみ ちいさな版画展「サーカス」@イタリアごはんとおやつcurari  7/17~8/28

 

板橋からいちばん近い大都会・池袋駅(私の紹介がダサい^^;)
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名司生展「はなごよみ」@B-gallery 8/3~8/15

 

地元・上板橋に今年3月オープンの板橋区立中央図書館でも

「ボローニャ・ブックフェア in いたばし 世界の絵本展」  8/14~8/29

が開催されます。

ボローニャ・ブックフェアinいたばし|板橋区立図書館

 

  いたばし絵本プロジェクト(勝手に命名)、絵本でどんどん素敵なまちになってくれるとうれしいです。

 

 絵本展は板橋のあと、全国を巡回します。今年は静岡県浜松市にも巡回するようなので、近くにいらっしゃる方、是非、見てみてください。

 

【巡回先】

・兵庫県:西宮市大谷記念美術館 2021/8/21(土)~9/26(日)

・静岡県:浜松市美術館 2021/10/2(土)~10/31(日)

・石川県:石川県七尾美術館 2020/11/6(土)~12/12(日)

・群馬県:太田市美術館・図書館 2021/12/18(土)~2022/1/23(日)

 

それでは、関連リンクです。

 

過去のボローニャ展

www.suki-kore.tokyo

www.yorocon46.com 

板橋区立美術館の前の展覧会

www.yorocon46.com(ホキ美術館、千葉市美術館の展覧会と一緒に。板橋は「かけじく」でした)

 

  今回のレポートは以上です。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

また、次のレポートもよろしくお願いいたします。

 

※ ご意見、ご感想、大歓迎です。是非コメントかメール(yorocon46@gmail.com)まで。ツィッターは@yorocon46です。

 

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(外は暑い)

【展覧会】自然が彩る かたちとこころ 展@三越前・三井記念美術館のレポート(2021/7/13訪問)

ただの美術好き、よろコンです。

 

本ブログでは過去に見た展覧会も含め、気になる展覧会をレポートしていきます。

 

今回は、年休を取得した2021/7/13(月)に訪問しましたこちらの展覧会から

 

三井記念美術館コレクション名品展

自然が彩る かたちとこころ -絵画・茶道具・調度品・能装束など- @ 三越前・三井記念美術館

 

です。

 

お江戸・日本橋の三井記念美術館はその名のとおり三越、三井銀行、三井物産の三井家コレクション4,000点を有する美術館です。そんな数あるコレクションの中から、絵画、茶道具、調度品に工芸、能装束と、ジャンルを超えて「自然」にまつわる作品が集められた展覧会。8/23からリニューアル工事による約8か月におよぶ長期閉館前。もちろん、あの「松」も見られますよ・・・

 

今回も、最後まで、お読みいただけますと幸いです。

 

【目次】

 

※ 以下の記述は展覧会内の説明、パンフ、その他WEB上の資料などの説明を参照の上、記述しております。なお、作品の写真はすべてパンフ、購入した絵はがきを撮影しています。

 

1. 展覧会概要

(1) どんな展覧会か

以下、美術館サイトからまとめます・・・

 

三井家の家祖・三井高利(みつい たかとし) 1622~94

伊勢松坂から息子たちに指示を出し、延宝元年(1673)に江戸本町に「越後屋」を開店したのが三井グループの始まりとか。

呉服の反物を切り売り、現金取引したのが人気を博し、商売繁盛。京都・大阪・江戸で呉服と両替店を営み、朝廷・幕府の御用店に。三井財閥へと発展していきます。

三井家のコレクションは高利の子供たちの時代に11家となり、それぞれが美術品を収集したのが礎に。集めも集めた名品4,000点を所蔵するのが三井記念美術館。国宝6点、重要文化財75点と日本でも有数のコレクションの中から、今回は自然をテーマに展示する展覧会です。

 

(2) 開催概要

 ・期間:2021/7/10(土) - 2021/8/22(日) ※ 開催中

 ・時間:11:00 - 16:00(入館は15:30まで) ※ 事前予約不要ですが、時間が短いのでご注意を

 ・休館日:月曜日

 ・会場:三井記念美術館(三越前・日本橋)

    ※ 銀座線、半蔵門線の三越前駅からは直結です。東京、神田、新日本橋、日本橋駅からも歩けるというまさに東京の中心、アクセスのよい美術館です。今回は神田駅から歩きました。

 ・チケット:一般1300円、大学・高校生800円、中学生以下 無料

 ※ 半券提示でリピート割(大人で-200円)があります。また、美術館サイトに100円割引クーポンがあります。(使うの忘れました^^;)

http://www.mitsui-museum.jp/guide/index.html

 ・作品数:目録を見ると70点の作品。内、国宝2点、重要文化財9点。それ以外にも見どころ満載の展示です。

 ・写真撮影:NGです。

 ・Webサイト

www.mitsui-museum.jp

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(3) パンフレット

(表面)

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(裏面)

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(4) 行くきっかけ

これも、アートスケープで展覧会のチェックをしているときに見つけました。最近、ここから見つけることが多いですねぇ。重宝してます。

三井記念美術館さんは毎年年初にあの「松」の展示があり、他にも超絶技巧の明治工芸や浮世絵、ヨーロッパ陶器などなど、いろいろと面白い展覧会を開催されているので、ちょいちょい見に来ています。日本橋も好きな街ですし、界隈を歩くだけでも十分楽しいです。

artscape.jp 

2. 展覧会の中へ

(1) 訪問日・混雑状況

訪問日:2021/7/13(火) 晴れ間もあるけど雲も多めという感じでした。15:15頃

鑑賞時間:約40分(時間がなかったので、見たい作品に絞って時間を集中し、急いで見てきました)

混雑状況:平日昼の閉館まで残り少ない時間だったので、比較的空いていました。予約制ではありません。会期末に近づくと混みそうですが。

 

では、いよいよ展覧会場に。

 

(2) 展覧会の構成と気になる作品 

展覧会の構成は次のとおりです。

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・展示室1(茶道具) ※ 野々村仁清の作品等

・展示室2(茶道具) ※ 重要文化財 本阿弥光悦「黒楽茶碗 銘雨雲」

・展示室3(茶道具) ※ 国宝 志野茶碗「銘卯花墻」

・展示室4(絵画) ※ 国宝 円山応挙「雪松図屏風」等

・展示室5(工芸・絵画) ※ 安藤緑山の牙彫、自在置物、象彦の工芸等

・展示室6(工芸) ※ 印籠、根付等

・展示室7(絵画・能面・能装束) ※ 能面(重要文化財)、着物等

展示作品一覧はこちらからも

http://www.mitsui-museum.jp/pdf/mokuroku_210710.pdf

 

  さらに、こちらの展示では自然の表現の仕方から次の9つのテーマに基づいて分類していました。

 

(1) 理想化された自然を表す

(2) 自然をデフォルメして表す

(3) 銘を通して自然を愛でる

(4) 素材を活かして自然を表す

(5) 実在する風景を表す

(6) 文学(物語や詩歌)のなかの自然を表す

(7) 自然を造形化する

(8) 掌のなかの自然

(9) 自然を象徴するかたち

 

  今回は気になる展示の中から絵はがきを買った3作品をご紹介。

まず最初はやはりこれです。

 

(右隻)

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(左隻)
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円山応挙「雪松図屏風」 江戸時代 18C

 

  展示室4(絵画)の奥に鎮座しています。

国宝「雪松図屏風」は三井コレクションを代表する一品。国宝の中でも長谷川等伯の松林図屏風や尾形光琳の紅白梅図屏風のように、目にすることが多い作品ではないでしょうか。

こちらはテーマ「(4) 素材を活かして自然を表す」

墨は松の葉の緑、茶色い幹に枝を、金は雪に輝く光、凛とした空気を描いています。そして、素材の「白」を活かした雪。描かないことで描き切る。写実派・応挙の真骨頂。応挙のいや日本画の最高傑作のひとつだと思います。

 

  さて次は
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酒井抱一「秋草に兎図屏風」 江戸時代 19C

 

展示室4(絵画)、「雪松図屏風」の左側に展示されています。

江戸琳派・酒井抱一の作品。

これもテーマ「(4) 素材を活かして自然を表す」の作品。

こちらは板を斜めに平行に張り合わせて木目を野分(=台風に伴う暴風。または、秋から初冬にかけての強風)に見立て、それに逆らうように駆けていく兎と吹き飛ばされそうな秋草を描きます。まず、趣向が粋で面白い。右下に向かって吹く風の木目と垂直に交わり左下に跳んでいく兎、右上に伸びるすすきなどの秋草。この構図がこの絵に躍動感を与えます。これも、まさに描かずして描いた作品。


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森狙仙「岩上郡猿図屏風」 江戸時代 18C~19C初頭

 

狩野派、円山応挙らに影響を受け「森派」の祖となった絵師。残された作品はほとんどが猿とのこと。

こちらはテーマ「(7)自然物を造形化する」の作品。

毛づくろいする猿たちの表情・雰囲気がとてもやさしくて、切り立つ岩の頂という緊張感のある場所に癒しを感じる猿たち。温かみ感じる作品でした。

 

  絵はがきはここまでですが、他にもパンフレット裏面の・・・

・本阿弥光悦 作「黒楽茶碗 銘雨雲」 江戸時代17C

    は重要文化財。茶碗の黒いにじみが「雨雲」の雰囲気を滲み出しています。

    「(3) 銘を通して自然を愛でる」というのも納得です。

 

・安藤緑山 作 「染象牙果菜置物」 明治~昭和初期

    は象牙の彫り物「牙彫」

    今では象牙は手に入りませんが、明治初期、外貨獲得にも一役買った超絶技巧の工芸。本当に本物にしか見えません。まさに「(7) 自然を造形化する」

 

が気になりました。

 

さらに写真はないですが、円山応挙の掛け軸「福禄寿・天保九如図」は淡い塗りに優しい福禄寿がかわいらしく、自在置物や各種工芸も目を見張る作品が並んでいます。

 

どんな作品かは、ぜひとも実際の作品を見て、確かめてみてください(^^)

 

  ということで、様々な自然を楽しみつつ会場を後にします。

 

(3) ミュージアムショップ

ミュージアムショップがあります。今回はこれまで紹介した絵はがき(4枚、1枚110円)を購入です。喫茶室もあります。

 

3. さいごに

日本橋って三井銀行、三越、三井不動産のビル群と三井のお膝元ですね。

 

「越後屋」で「高利」を「こうり」と読んだりすると、勝手に時代劇の「おぬしも悪よのぉ・・・」なんてシーンを思い出しちゃいますが(悪い想像ですみません^^;)、実際は、日本橋から日本の発展へとつながり、現在の美術館にもつながっているのですねぇ。江戸から明治、そして現在と肌で歴史を感じられる場所です。日本橋は。

 

  それでは、最後に関連リンクです。

この日の散歩コースは

www.yorocon46.com

だいぶ前になりますが

www.yorocon46.com

7月の展覧会情報です。

www.yorocon46.com

   今回のレポートは以上です。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

また、次のレポートもよろしくお願いいたします。

 

※ ご意見、ご感想、大歓迎です。是非コメントかメール(yorocon46@gmail.com)まで。ツィッターは@yorocon46です。


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(三井のビルと日銀の間の木。この木なんの木?)

【展覧会】映えるNIPPON 江戸~昭和 名所を描く 展@府中・府中市美術館のレポート(2021/7/3訪問)

ただの美術好き、よろコンです。

 

本ブログでは過去に見た展覧会も含め、気になる展覧会をレポートしていきます。

 

今回は、先週2021/7/3(土)に訪問しましたこちらの展覧会から

 

映えるNIPPON 江戸~昭和 名所を描く @ 府中・府中市美術館

 

です。これを投稿する7/11本日、終了してしまいました・・・(^^;)

でも、良い展覧会だったと思いますのでご紹介。

 

「映えるNIPPON」今も昔もみんな映えポイント、狙ってますよね。画家もみんなの印象に残るような風景を探し求めて描く。それが今現在でも映えポイントとして多くの人のイメージに定着する。映えポイントって、ある意味、それを描いた画家の「発見」でもあると思います。そして、その映えポイントは描く画家の個性によっても違う。そんな様々な映える日本の風景が並ぶ展覧会です。

 

今回も、最後まで、お読みいただけますと幸いです。

 

【目次】

 

※ 以下の記述は展覧会内の説明、パンフ、図録、その他WEB上の資料などの説明を参照の上、記述しております。なお、作品の写真はすべてパンフ、購入した図録を撮影しています。

 

1. 展覧会概要

(1) どんな展覧会か

前半は江戸の本家・歌川広重から、高橋由一、五姓田義松といった日本における洋画の黎明期に活躍した画家の作品が、写真との関係性に関する考察も交えながら展示されます。そして明治・昭和の「広重」登場。

中盤は大正の「広重」が描いた鳥観図、さらに国立公園をテーマとした作品。観光とのつながりを通して、風景画を見て行きます。

そして最後は二人の風景画家。富士を描き続けた和田英作と民家を描いた向井潤吉。テーマにこそ違いはあれ、日本人の原風景を描き続けた二人の作品を見比べます。

時代、テーマ、画家の個性、いろいろな角度から日本の風景画(むしろそれは日本の「風景」そのものと言って良いかもしれません)にアプローチする展覧会です。

ちなみにこの展覧会に江戸・明治・大正・昭和と4人の「広重」が出てきます。(実は加えて5人目の広重も)どういうことかは、また後程・・・

 

(2) 開催概要

 ・期間:2021/5/22(土) - 2021/7/11(日) ※ 前後期で入れ替えがありました。本日終了です(^^;)

 ・時間:10:00 - 17:00 ※ 時間予約不要

 ・会場:府中市美術館(府中)

    ※ 東府中駅から歩いて17分ですが、府中駅、東府中駅、武蔵小金井駅からバスが出ています。少し離れたところに臨時(いつもあいてるような)駐車場もあります。今回は車で行きました。公園もあり、緑豊かな環境の中にある美術館です。

 ・チケット:一般700円、高校・大学生350円、小・中学生150円

 ・作品数:目録を見ると前後期合わせて110点、後期だけで約80点+参考資料の展示があります。

 ・写真撮影:NGです。

 ・Webサイト

www.city.fuchu.tokyo.jpこちらのサイト、作品も掲載されていますが、ダイジェストを紹介した動画のリンク(YouTube)もありますので、ご興味のある方は見てみてください。

 

(美術館サイト)

府中市美術館

 

(池の奥に美術館)

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(3) パンフレット

(表面)

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真ん中から見開きになる凝った作り。

 

(左ページ)
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(中央ページ)
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(右ページ)
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※ 4人の「広重」について書いてありますね(^^;)

 

(裏面)
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(4) 行くきっかけ

確か、アートスケープで展覧会のチェックをしているときに見つけました。

府中美術館は歩いても行けるので、おもしろそうな展覧会がないか、ちょこちょことチェックをしているのですが、自分の中のアンテナにヒットした感じです。

artscape.jp 

2. 展覧会の中へ

(1) 訪問日・混雑状況

訪問日:2021/7/3(土) 曇りときどき雨。15:30頃

鑑賞時間:約80分(常設展示も一緒に見たので、その時間を合わせています)

混雑状況:人はそれなりにいましたが混んでるほどではありません。ゆっくり見られます。なお、予約制ではありません。

 

では、いよいよ展覧会場に。

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(2) 展覧会の構成と気になる作品 

展覧会の構成は次のとおりです。

 

・0章 歌川広重の<<名所江戸百景>>

・1章 新たな視線、受け継がれる表現

   1-1 開化絵

   1-2 西洋画法と写真

   1-3 小林清親の光線画

・2章 名所を描く、名所を伝える

   2-1 川瀬巴水の新版画

   2-2 国立公園の絵画

   2-3 観光宣伝グラフィック

・3章 風景へのまなざし、画家たちのまなざし

   3-1 富士と和田英作

   3-2 民家と向井潤吉

 

です。

 

作品リストは

https://www.city.fuchu.tokyo.jp/art/tenrankai/kikakuten/haeru_NIPPON_TOKUSETSU.files/haeruten_tenji_mokuroku.pdf

からも確認できます。

 

ということで、見てきた順に気になる作品をご紹介。

 

それでは0章、本家本元「江戸の広重」から

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歌川広重 「名所江戸百景 深川洲崎十万坪」 安政4(1857)

 

手前に大きくモチーフを描き、遠景としてその風景を描く"広重スタイル"(勝手に呼んでます)な一枚。この描き方、発明ですね。空から鳥瞰する大胆な構成がとても好きな作品です。

 

1章1-2からは

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高橋由一 「墨水桜花輝耀の景」 明治7(1874)

 

教科書にも載っていた(今も載っている?)「鮭」の絵で有名な高橋由一。武家出身ながら日本最初の洋画家と呼ばれます。その由一の作品はやはり"広重スタイル"な一枚。桜の向こうに隅田川。江戸から好まれた風景とか。

 

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小杉未醒 「日光」 明治期

日光陽明門の前にいる人々はガイドと観光客でしょうか?日光は江戸時代からの観光名所。明治期はこのような水彩画が多く作られお土産として海外にまで。今で言う絵はがきですね。こうして描かれた風景は名所そのものを代表するイメージになっていきます。

 

1章 1-3から「明治の広重」こと

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小林清親 「梅若神社」 明治13~14(1880~1881)

 

「明治の広重」は光線画の小林清親。輪郭線を描かない手法、何刷りにも及ぶ緻密な表現、汽車や街灯など近代ならではのモチーフ。数多くの風景画を残しています。

梅若神社は京都で貴族の子として生まれ、その後、人買いにさらわれ、隅田川のほとりでなくなった「梅若丸」ゆかりの神社。雨の描き方は清親も影響を受けた江戸の広重の代表作「名所江戸百景 大はしあたけの夕立」と比較すると、同じように雨を線で表現しているものの「大はし~」が版の凸部による黒い線なのに対し、こちらは凹部を生かした白い線。逆の技法を用いているところが清親がいかに広重を意識していたか伝わるようで興味深いです。

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歌川広重 「名所江戸百景 大はしあたけの夕立」 安政4(1857)

この作品も展示されていました。(0章から)

 

  では、2章へ。2-1から今度は「昭和の広重」

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川瀬巴水 「小金井の夜桜」 昭和10(1935)

 

小金井の桜は有名ですが、この当時から夜桜見物があったんですね。玉川上水の小金井橋から貫井橋にかけてって、よく車で通るところなので、非常に親近感を覚えます。

「昭和の広重」こと川瀬巴水は「新版画」で有名。鏑木清方に入門後、同門の伊藤深水の影響で版画に。実際に各地を旅しながら名所絵を描いた画家です。

 

パンフレットの「東京十二景 芝増上寺」(大正14(1925))も川瀬巴水の作品。赤と白の鮮やかな対比、女性のすぼめた傘から「一瞬」の風、雪の冷たさまでをも感じさせるこの作品は当時、大変な好評を博したとのこと。納得。

 

続いて2章2-2の国立公園から

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画:杉浦非水  制作・発行:国立公園協会、三越  昭和4(1929)

昭和4(1929)に発足した国立公園協会が国立公園の候補地を紹介した展覧会のポスター。当時、三越図案部で勤めていた日本グラフィックデザインの先駆け杉浦非水が作成しています。山、森、湖と国立公園の要素を盛り込んだデザインに。

 

そして、画家たちは国立公園を代表するような風景を探しに。

描かれた作品は今でもその国立公園の"イメージ"として残ります。

そんな中から

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三栖右嗣(みす ゆうじ)「小笠原父島から南島・母島を望む」 昭和52(1977)

 

南国の代表的なイメージであるハイビスカスにアダンの実。そこから望む海の向こうの島々。ある意味"広重スタイル"のような。(無理矢理^^;)

アダンと言えば奄美に生きた画家・田中一村の絵を思い出しますが、こちらのアダンもまぶしい日差しを浴びて鮮やかで魅力的。この実にはどこか人を惹きつける力があるんでしょうね。

 

さて、今度は「大正広重」登場

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吉田初三郎 「神奈川県鳥瞰図」 昭和7(1932)


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画:吉田初三郎  制作・発行:小田原急行鉄道株式会社「小田原急行電車開通記念」 昭和2(1927)

 

「大正広重」とは鳥瞰図の吉田初三郎です。それにしても、よくこんな鳥瞰図が描けると思って感心します。どういう頭の構造だと、こんなに正確に描けるのだろう?鳥瞰図というとおり「鳥の眼」が備わっているのでしょうか。

時刻表の地図を見ながら旅行をした気分を味わっていた子供の頃(暗いですかね^^;)

「いつか行けるかも」といったその時のワクワク感を思い出させてくれました。

 

  それでは最後の3章。二人の巨匠の作品を。

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和田英作 「富士」 大正7(1918)頃

 

東京国立近代美術館の「南風」が有名かと。

薔薇と富士の絵をたくさん描いたので「富士薔薇太郎」とも呼ばれていたとか。これは初めて知りました。富士吉田の刑部旅館を定宿に富士を描き続けた和田は富士のあるがままの姿を写し取ることに専念したとか。和田が「一番気高く美しい」と語った雪を頂いた富士の一枚です。

 

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向井潤吉 「微雨」 昭和49(1974)

 

高度経済成長期に民家を描き続けた向井潤吉。民家が失われゆくこの時代、民家とそれを取り巻く風景を描くことで確かにそこに存在したものを残す。民家のある風景に魅せられた向井の作品です。対象をあるがままに描き続けた和田にくらべ向井は絵の中の調和を考え、実際にあるものにアレンジを加えて描いたとのこと。題材も違えば、描き方も違う二人の画家の個性を見比べることができます。

個人的に向井の作品はパンフ裏面にもあるように青い空、緑の草木、その中の民家のイメージが強いのですが、この絵は微かな雨が含む湿気までも感じられる作品だと思います。

 

  江戸から昭和、時代の変遷とともに変化した風景画の世界。

様々な作品に触れることで、ただそこにあるものだと思っていた風景が、ひとつひとつ誰かによって見つけ出され、作られてきたものでもあるんだなぁ、そんな新しい発見のある展覧会でした。

 

  ということで、映えポイントをいっぱい見つけて会場を出ます。

 

(3) ミュージアムショップ

ミュージアムショップがあります。今回は図録を購入です。
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図録 2,200円

大正広重の鳥瞰図が表紙カバーです。

 

3. さいごに

江戸の本家「広重」は歌川広重。「明治の広重」は小林清親。「大正広重」は吉田初三郎。「昭和の広重」は川瀬巴水。さて、この展覧会のもう一人の広重は・・・

作品は載せていませんが「開化絵」に三代目歌川広重の作品が。どの作品も、個性の光、独自スタイルを持った"広重作品"でした。

 

ところで「平成の広重」はいないのか。Google先生に問い合わせてみましたが、残念ながら期待する回答はありませんでした。これまでとは違った形で、また新たな風景画が生まれていくのでしょう。新しい風景画の誕生を楽しみに待っています。

 

  とういことで、いつもの最後の関連リンクです。

 

町田市立国際版画美術館

 現在開催中なのが「浮世絵風景画ー広重・清親・巴水 三世代の眼ー」

こちらでも各世代の浮世絵風景画を楽しめそうです。

 

日本画の専門美術館 山種美術館(Yamatane Museum of Art)

現在開催中なのは「山種美術館所蔵 浮世絵・江戸絵画名品選 - 写楽・北斎から琳派まで-」

こちらは歌川広重の代表作「東海道五十三次」を全点一挙公開とのこと。こちらも面白そう。

 

これら含め7月の展覧会情報です。

www.yorocon46.com

 

   今回のレポートは以上です。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

また、次のレポートもよろしくお願いいたします。

 

※ ご意見、ご感想、大歓迎です。是非コメントかメール(yorocon46@gmail.com)まで。ツィッターは@yorocon46です。

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美術館の中から見える公園の緑。この後は調布の方に・・・

 

【展覧会】ミネアポリス美術館 日本絵画の名品展@六本木・サントリー美術館のレポート(2021/6/6訪問)

ただの美術好き、よろコンです。

 

本ブログでは過去に見た展覧会も含め、気になる展覧会をレポートしていきます。

 

今回は、先週2021/6/6(日)、モンドリアン展を見た後に訪問しましたこちらの展覧会から

 

開館60周年記念展 ミネアポリス美術館 日本絵画の名品 展 @ 六本木・サントリー美術館

 

です。

 

パンフの言葉「あなたの推し絵師きっといる!」

います、います。いっぱいいます(^^)

なんなら、ここに新たな出会いが。そんなバラエティに富んだ日本絵画がみんなで里帰り。きっと推し絵師がここにいる(はず)、そんな展覧会です。

 

今回も、最後まで、お読みいただけますと幸いです。

 

【目次】

 

※ 以下の記述は展覧会内の説明、パンフ、図録、その他WEB上の資料などの説明を参照の上、記述しております。なお、作品の写真はすべて撮影OKのため美術館で撮影しています。

 

1. 展覧会概要

(1) どんな展覧会か

ミネアポリス美術館

アメリカ中西部ミネソタ州最大の都市ミネアポリスの美術館。1883年創立

通称Mia(=ミア、Minneapolis Institute of Art)

ミネアポリスは五大湖の近く(地図の見た感じですが^^;)

なお、公式サイトはこちら

Minneapolis Institute of Art

 

全所蔵9万点、そのうち日本美術は約9,500点。

今回の展覧会では、琳派、狩野派、やまと絵、浮世絵、さらには奇想の絵師たち。

中世から近代にいたるまでの様々な絵師の作品が集まり、これを見るだけも日本美術史を通覧できる、そんな気になる展覧会です。

 

(2) 開催概要

 ・期間:2021/4/14(水) - 2021/6/27(日) ※ 6/2から再開しています

 ・時間:10:00 - 18:00 ※ 時間予約不要(6/6訪問時点)

 ・会場:サントリー美術館(六本木)

    ※ 地下鉄・六本木駅から直結。東京ミッドタウンのガレリア3階にある、きれいな美術館。展示フロアは4階、3階に分かれています。

 ・チケット:一般1500円、大学・高校生1000円

 ・作品数:全92点ですが期間内で浮世絵に展示替えがあり約80点

 ・写真撮影:すべてOKでした。(フラッシュなどはNG。注意事項は要確認)

 ・Webサイト:

www.suntory.co.jp

(美術館サイト)

サントリー美術館 
 

(美術館入口)

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(3) パンフレット

(表面)

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(裏面)
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(4) 行くきっかけ

確か、アートスケープで展覧会のチェックをしているときに見つけました。

展覧会の情報を見て、数多くの絵師の作品、それも、まだCOVID-19の影響のあるこの時期に日本に来られるんだぁ。これは行かなければと思い、行くことにしました。

(そうしたら、日本こそ展覧会が開けなかった^^;)

artscape.jp 

2. 展覧会の中へ

(1) 訪問日・混雑状況

訪問日:2021/6/6(日) 曇りときどき雨。14:00頃

鑑賞時間:約70分

混雑状況:人はいましたが混んでません。ゆっくり見られて良かったです。

 

では、いよいよ展覧会場に。

 

(2) 展覧会の構成と気になる作品

展示作品は

https://www.suntory.com/sma/exhibition/visual/2021_1/list.pdf?_ga=2.231842328.620500528.1623422974-1932893949.1612710710

からも確認できます。

 

美術館内の展示は次のような感じです。(写真がゆがんでいてすみません)

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/Y/YoroCon/20210612/20210612003859.jpg

 

展示のテーマは展示の順に

・水墨画

・狩野派の時代

・やまと絵 -景物画と物語絵-

・琳派

・画壇の革新者たち

・浮世絵

・日本の文人画<南画>

・幕末から近代へ

です。

 

ということで、見てきた順に気になる作品をご紹介。

なお、今回は全作品撮影OKだったので実際の作品を掲載します。

(展示のガラスの反射で見ずらいところ など多々ありますがご容赦ください)

 

それでは早速「水墨画」から

 

展示室に入るといきなりこの六曲一双の屏風に圧倒されます。

(左隻)

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(右隻)
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雪村周継 「花鳥図屏風」 室町時代 16C

 

雪村周継は「せっそんしゅうけい」

作品は残るも、その生没年もはっきりしない謎の画家。1492年頃、常陸国、大名佐竹氏の出身だが禅僧となり絵を描いたと言われます。1589年頃没。

奇想の元祖。琳派の尾形光琳がこよなく愛し、あの紅白梅図屏風は雪村の絵を参考にしたと言われるほど。2017年春に東京藝術大学大学美術館で展覧会があり、この作品も来ていました。(見に行ってないですが^^;)

 

左隻の燕に白鷺
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と思うといきなり右隻に巨大な鯉二匹
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圧巻の奇想な展開に即"推し絵師"決定です。

 

続いても水墨画の屏風絵

(右隻)
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(左隻)
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山田道安「龍虎図屏風」室町時代 16C

 

波が海から伸びてきた手の指のようで、何かをつかもうとしているのではないかという迫力。山田道安(やまだどうあん)は武人画家で松永久秀が焼き払った東大寺大仏の修理の指揮を執ったとか。

 

  お次は「狩野派」

探幽、山雪の素晴らしい屏風の大作がありましたが、この展示エリアではこちらの作品を。


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清原雪信「飛天図」江戸時代 17C

 

「きよはらゆきのぶ」は国宝「納涼図屏風」の作者・久隅守景(くすみもりかげ)の娘、狩野探幽は大叔父。狩野派随一の女性絵師です。優美な天女が軽やかに天を舞います。

 

  続いて「琳派」からは


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酒井 抱一「楸に鷦鷯図」江戸時代 19C

 

作品は「きささぎ に みそさざい ず」と読みます。画面中央の木は楸、画面下の鳥が鷦鷯。花は山茶花。趣ある花鳥画です。江戸琳派・抱一の優品

 

さて4階から3階に降りていきますと

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ここは「画壇の革新者たち」

奇想が競う・・・(- -)

 

(右隻)
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(左隻)
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伊藤 若冲「鶏図押絵貼屏風」江戸時代 18C

もう若冲の代名詞ともいえる鶏の絵。鶏一羽一羽に人のような個性が宿って、その動き、いつまでも見ていられるようです。

 

さて、わたしは、どこにいるでしょう?
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そして、こちらも奇想の旗頭

(右隻)
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(左隻)
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曽我蕭白「群鶴図屏風」江戸時代 18C

 

こちらは鶴。穏やかな親子鶴の戯れに、荒れ狂う波に毅然と対峙する鶴。同じ屏風に描かれる緊張と緩和。


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迫力の波と鬼気迫る鶴の眼。

 

そして、こちらは昔忘れられていた絵師
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横山華山「蘭亭曲水図屏風」江戸時代 19C

 

迫力ある岩肌とそこに集まる人々の穏やかな雰囲気の対比が妙。

横山華山も私の"推し絵師"です。
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蘭亭曲水(らんていきょくすい)は永和九年(353)三月三日、浙江省の蘭亭に王羲之が文士41人を集めて禊を行ったという故事によるもの。王羲之の「蘭亭序」(らんていじょ)はこの時に読まれた詩集の序文で書道史に残る最高傑作と言われます。

 

さて、ここから「浮世絵」

 

浮世絵は北斎、広重、写楽の市川蝦蔵と名品並ぶ中で、この一枚
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喜多川 歌麿「青樓六家選 大文字屋 人もと」江戸時代 1801~2頃

 

六人の名高い遊女を描いた揃物。煙管片手にどことなくくつろいだ感じが好きです。

 

さて、最後は「幕末から近代へ」

 

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柴田是真「漆絵画帖」1887

 

「しばたぜしん」

漆工家でもあり、絵師でもある。画面中央に笹にかぶる雪の奥から覗く虎。小さいながらも非常に精緻な作品だと思います。この方、2018年にホノルル美術館に行ったときに作品が多く展示されていて、そこで初めて知りました。芸大コレクション展で柴田是真の明治宮殿天井画下図修復完成披露をやっていて、これも見に行きました。今確認すると、この2つの出来事はともに2018年11月の一週間程度の間に起きた出来事のよう。そこまでは覚えていなかったですねぇ(^^;)

隠れ”推し絵師"なので、これからもっと出てくるのではと期待しています。

 

そして、最後は、今年注目の絵師
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渡辺省亭「紫式部図」明治時代 19-20C

 

  芸大美術館での展覧会は残念ながら会期途中で臨時休館に入ったまま終わってしまいましたが、ここ数年では注目の絵師です。灰色の風景に手前には濃淡の違う緑。そして鮮やかな赤い袴が際立つ紫式部。何か物思いにふけるところでしょうか。

 

  ということで、日本絵画を総ざらいした気分で会場を出ます。

 

(3) ミュージアムショップ

ミュージアムショップがあります。今回は図録を購入です。
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図録 2,500円

 

これだけバラエティに富んだ展覧会の図録ですから、中身も充実した内容です。

 

 3. さいごに

このほかにも・・・

狩野探幽のかわいい笛吹地蔵、三畠上龍のちょいグロ覗き見浮世絵、細川林谷のヘタウマ文人画、暁斎のオモシロ絵に青木年雄のロックな鐘馗図。(私の勝手な解釈ですが)

驚きもあり、ユーモアもあり、勇壮でもあり、そして美しくもありといった作品が集結。大変、見ごたえある日本絵画の展覧会でした。ぜひ、生で見に行かれることをお勧めします。

 

それでは、関連リンクです。

 

奇想の絵師

www.yorocon46.com

横山華山

www.yorocon46.com

本展でも作品のあった狩野芳崖

www.yorocon46.com

少しですが柴田是真の作品も

www.yorocon46.com

最後はこの展覧会の前に見た展覧会

www.suki-kore.tokyo

   今回のレポートは以上です。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

また、次のレポートもよろしくお願いいたします。

 

※ ご意見、ご感想、大歓迎です。是非コメントかメール(yorocon46@gmail.com)まで。ツィッターは@yorocon46です。


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東京ミッドタウン、明るく光が差し込んで居心地良いです。

 

【展覧会】モンドリアン展@新宿・SOMPO美術館のレポート(2021/6/6訪問)

ただの美術好き、よろコンです。

 

久々ですが、本ブログでは過去に見た展覧会も含め、気になる展覧会をレポートしていきます。

 

今回は、最終日(2021/6/6)に訪問しましたこちらの展覧会から

 

生誕150年記念 モンドリアン展 @ 新宿・SOMPO美術館

 

です。

 

パンフの言葉「純粋な絵画をもとめて」そして「自由か。束縛か」

モンドリアンと言えば格子に原色のマスで構成された「コンポジション」シリーズ。でも、そこに至るまでには様々なものに影響を受け、繰り返される変転。そして、モンドリアンにとって純粋な絵画とは。

故郷オランダはデン・ハーグ美術館からの50点を含むモンドリアン作品の軌跡をたどる展覧会です。

 

今回も、最後まで、お読みいただけますと幸いです。

 

【目次】

 

※ 以下の記述は展覧会内の説明、パンフ、図録、その他WEB上の資料などの説明を参照の上、記述しております。なお、作品の写真は購入した図録を撮影しています。

 

1. 展覧会概要

(1) どんな展覧会か

ピート・モンドリアン。1872年3月7日、オランダ中部のアメルスフォルトに生まれます。お父さんはプロテスタント系小学校の校長でした。叔父さんから油彩を習い画家を志し始めます。

初期のころは印象派やオランダ・ハーグ派からも影響を受けたような風景画を描きます。その後は神智学、ゲーテの色彩理論、点描、キュビズムと影響を受けながら、あの水平垂直線と原色平面のコンポジションに行きつきます。そして、画家の提唱した「新造形主義」の理念のもと、集まってきた芸術家集団「デ・ステイル」

活躍の場も故郷オランダ・アムステルダムからパリ、ニューヨークへと変転していきます。

そんなモンドリアンの変転の過程と行きついた到着地をたどる展覧会でした。

 

(2) 開催概要

 ・期間:2021/3/23(火) - 2021/6/6(日) ※ 途中、長期臨時休館あり

 ・時間:10:00 - 18:00

 ・会場:SOMPO美術館(新宿)

    ※ 西口の高層ビル群の中です。エルタワービルを目指すと近くの横断歩道まで地下を通って歩いて行けます。JR西口改札から10分しないくらいでしょうか。


 ・チケット:一般1500円、大学生1100円(オンラインチケット。当日窓口は+200円)

 ・作品数:65点+参考資料

 ・写真撮影:NGでした。(一か所撮影コーナーあり)

 ・Webサイト:

www.sompo-museum.org

(美術館サイト)

SOMPO美術館(旧館名:東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館)ゴッホ《ひまわり》を収蔵。新宿駅 徒歩5分

(外から見た美術館)

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(入口のポスター)

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(モンドリアンってこんな人) 

 

(3) パンフレット

(表面)

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(裏面)
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(4) 行くきっかけ

もともと年初の日経おとなのOFFの展覧会特集を見たときから行こうと思っていました。GWの楽しみで。その後、度重なる臨時休館延長でどうなるかと思っていましたが、何とか展覧会が再開され最後の最後に見に行くことができました。

 

2. 展覧会の中へ

(1) 訪問日・混雑状況

訪問日:2021/6/6(日) 曇りときどき雨。11:20頃

鑑賞時間:約60分

混雑状況:日時予約制のため混んではいませんでした。ただ、前日にはチケットは売り切れていました。人も程良い感じで、ゆっくり見られました。(全然、密ではないのでご安心を)

 

では、いよいよ展覧会場に。

 

(2) 展覧会の構成と気になる作品

展示作品は

https://www.sompo-museum.org/wp-content/uploads/2021/03/pdf_ex_mondrian_list.pdf

からも確認できます。

美術館内の展示は次のような感じです。

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なお、展示の壁には絵が描かれたころにモンドリアンが活躍していた地名を書いていたのですが・・・メモするの忘れていました(^^;)、残念。

 

  ということで、見てきた順に気になる作品をご紹介。今回は美術館の配置図もあるので、No.(=配置場所)も記載します。

 

No.2

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ピート・モンドリアン「干し物のある農家」1897年頃 油彩、厚紙 31.5×37.5cm

 

印象派、オランダ・ハーグ派の影響を受けていた初期のころの作品。

〇オランダ・ハーグ派:バルビゾン派に影響を受けた写実主義のオランダ・ハーグで活躍した画家たち。ゴッホも影響を受ける。

干し物がリズミカルな感じ描かれているのがこの頃の作品の特徴とか。

 

No. 7
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ピート・モンドリアン「幼子」1900-01年 油彩、カンヴァス 53×44cm

 

とても可愛らしい少女。純真無垢なその瞳。

この頃のモンドリアンは神智学に関心を寄せていたようです。

〇神智学=すべての精神の動きは一つの普遍的な協議に統合するものとして霊的な高揚を求めた、神秘的な世界の見方(図録説明文より)

画面下部に描かれたアネモネは少女の無垢な若い生命力の象徴かもしれないとか。

 

No. 28
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ピート・モンドリアン「枯れゆくひまわりII」1908年 油彩、厚紙 65×34cm

 

こちらも神智学の影響を受けた作品。変身と進化の主題に取り組んでいたとか。

枯れゆく姿にとても存在感があり、何か人間がどこかに向かって歩いているかのような強烈なインパクトを受けました。

 

No. 30
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ピート・モンドリアン「少女の肖像」1908年 油彩、カンヴァス、パネル

 

先ほどの少女の絵と比べて、普段、人の肌の色として使われない水色などが顔を描くのに使われています。これは詩人でもあるあのゲーテの色彩理論の影響を受けています。

〇ゲーテの色彩理論=光や色に接すると、目は無意識に反対の、すなわち補色的な作用を引き起こす。

補色の効果で少女の顔が明るく見えますか?

 

No. 33
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ピート・モンドリアン「砂丘 I」1909年 油彩、厚紙 30×40cm

 

こちらも色彩理論を試みた作品。こちらは筆致が大きくフォーヴのような感じもしますが、並んでいた同じく「砂丘」を描いた作品は点描のようです。(パンフの裏面左上の方の作品)

いろいろな理論を取り入れ、試行錯誤を繰り返す中、作品のスタイルがどんどんと変わっていきます。

 

No. 42
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ピート・モンドリアン「コンポジション 木々 2」1912-13年 油彩、カンヴァス 98×65cm

 

1912年1月にパリに来て、すっかりキュビズムに傾倒していた頃の作品。

木はこの頃お気に入りのモチーフだったようです。

 

No. 49
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ピート・モンドリアン「自画像」1918年 油彩、カンヴァス 88×71cm

 

収入を必要としているモンドリアンが依頼主の好みをくみ取り描いた作品。しかし、本当の関心は抽象表現「新造形主義」

〇新造形主義=モンドリアン提唱の抽象表現の理論。水平・垂直の線、三原色と無彩色の平面の構成で生命力の根源を暗示する秩序と均衡のある構成を生もうとした。究極のキュビ

 

そうです。モンドリアンの奥に「新造形主義」が密かに忍ばされているのです。

 

No. 58

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テオ・ファン・ドゥースブルフ「コンポジション XXII」1922年 油彩、カンヴァス 45.5×43.3cm

 

新構造主義の提唱のもと、モンドリアンと「デ・ステイル」を立ち上げたドゥースブルフの作品

〇デ・ステイル=モンドリアンとドゥースブルフを中心とした造形運動。1917年、雑誌「デ・ステイル」を刊行。直線や原色の幾何学図形などを使い、単純性を追求することで客観的で普遍的な表現を目指す。絵画、彫刻のほかデザイン、建築などのメンバーも参画

後にはバウハウスにも影響を与える運動なのですが、離合集散も激しくモンドリアンも1925年にドゥースブルフと仲違いして脱退したとか(^^;)

 

No.54
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ピート・モンドリアン「線と色のコンポジション III」1937年 油彩、カンヴァス 80×77cm

ちょっと写真はゆがみましたが、直線と三原色・無彩色の平面から構成される「これぞモンドリアン」という作品。ただ、ここに至るまで数々の変転を経て、そして「新造形主義」が求める姿にたどり着いたのだということが、今回の展覧会を通じて少し理解できたような気がします。

 

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出口の撮影コーナー。

椅子はデ・スタイルに参加したヘリット・トーマス・リートフェルトの作品

特徴的な形の左の椅子は「ジグザグ・チェア」(1932-33年頃)

座ってみたいです。あまり、座り心地はよくなさそうですが。

ちなみに写真はヘリット・トーマス・リートフェルトの「シュレーダー邸」の内観

 

   最後はSOMPO美術館が誇るゴッホのひまわりをみて展覧会場を出ます。

 

(3) ミュージアムショップ

  今回の企画展のみならずコレクションに関連するグッズなどを販売しているミュージアムショップがあります。今回はクリアファイルと図録を購入です。

 

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クリアファイル 440円

モンドリアンの作品はクリアファイルのデザインとか、よく合います。

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図録 3,000円

 

このほかNo.54をデザインしたマスク(1,200円)があって、とっても欲しかったのですが、奥様にみつかったら怒られそうだったので、断念しました。でも、やっぱり買っておけばよかったぁ(後悔^^;)

 

3. さいごに

バウハウスのほかダダ、ポップアート、現在のデザインまで、幅広い分野で影響を与え続けるモンドリアン。あらためて、すごい芸術家です。そして、私の思い描いていたモンドリアンはほんの一部に過ぎず、そこまでに至るまで膨大な試行錯誤があったのだなぁ、ということがよく分かりました。あの格子の絵、これから見る目が変わります。奥深い。

 

また、ゆっくりと展覧会に見に来たいものです。

 

それでは、関連リンクですが・・・今回は「なし」で(^^;)

 

   今回のレポートは以上です。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

また、次のレポートもよろしくお願いいたします。

 

※ ご意見、ご感想、大歓迎です。是非コメントかメール(yorocon46@gmail.com)まで。ツィッターは@yorocon46です。

 

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アンドレ・ケルステ「モンドリアンのアトリエ、パリ」 1926年

画家の気配を感じながら・・・

【展覧会】特別展 東山魁夷と四季の日本画@恵比寿(広尾)・山種美術館のレポート(2020/12/27訪問)

自称アート・レポーターこと、よろコンです。

 

大変遅ればせながらですが2021年も何卒よろしくお願いいたします

 

今年はもう少し間をあけずにブログを書いていきたいです

(新年の抱負です・・・すでにあいてしまいましたが^^;)

 

ということで、本ブログでは今年も過去に見た展覧会も含め、好きな展覧会をレポートしていきます。

 

今回は、昨年末にひさびさに訪問しましたこちら

 

特別展 東山魁夷と四季の日本画 @ 恵比寿(広尾)・山種美術館

 

のレポートです。

 

国内初の近代日本画常設展示の美術館である山種美術館。特に「国民的画家」こと東山魁夷の連作「京洛四季」から4作品が4年ぶりに一挙公開されているのが注目されます。

今回も、最後まで、お読みいただけますと幸いです。

 

【目次】

 

※ 以下の記述は展覧会内の説明、パンフ、その他WEB上の資料などの説明を参照の上、記述しております。なお、作品の写真は購入した絵はがきを撮影しています。

 

1. 展覧会概要

(1) どんな展覧会か

特別展 東山魁夷と四季の日本画

 

東山魁夷。1908年7月8日神奈川県・横浜市生まれ。太平洋戦争の前後で次々と病で家族を失った画家は人生のどん底を味わいます。そして、その悲しみを乗り越え、日本国内、ヨーロッパ、中国と各地を旅し、風景画の第一人者に。「国民的画家」と呼ばれるまでになりました。

そんな画家は、ある時、親交が深い文豪・川端康成からこう言われます。

「京都は今描いといていただかないとなくなります。京都のあるうちに描いておいて下さい」

そう請われ、描いたのが「京洛四季」シリーズ。いずれの絵も京都の美しさを今に伝えます。

このほかにも、山種の誇る日本画コレクションが堪能できる展覧会です。

 

(2) 開催概要

 ・期間:2020/11/21(土) - 2021/1/24(日)

 ・時間:平日10:00 - 16:00、休日10:00 - 17:00 ※ 入館は閉館30分前まで。COVID-19の影響で変則開催です。窓口でもチケットを購入できますが、時間指定制も導入されていて、混雑時は事前予約者が優先です。

 ・会場:山種美術館(恵比寿・広尾)

    ※ 私はいつものとおりJR恵比寿駅を出て広尾方面に歩いて坂を上がっていきました。10分程度です。

 

 ・チケット:一般1300円、大学・高校生1000円、中学生以下無料。きもの特典できもので来られた方は一般200円、大学・高校生は100円お得になります。

 ・作品数:約60点

 ・写真撮影:NGです。

 ・Webサイト:

 

(美術館サイト)

www.yamatane-museum.jp


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(外から見た喫茶コーナー)

 

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(入口の案内) 

 

(3) パンフレット

今回は、すでにすべて配布されていて、入手できませんでした。残念(T_T)

 

(4) 行くきっかけ

この日は、年末。午後からはベートーヴェンの第九を聞きに行く予定でした。音楽で年末を感じるのであれば、絵でも年末を感じよう!と思い、頭に浮かんだのが東山魁夷の「年暮る」

4作品一挙公開ということもあり、この日を選んで、見に行きました。

 

2. 展覧会の中へ

(1) 訪問日・混雑状況

訪問日:2020/12/27(日) 晴れ。11:30頃

鑑賞時間:約60分

混雑状況:混んではいませんが、それなりに人はいました。ただ、日時予約制もとっていますので、密というわけではありません。ゆっくり見られます。

 

では美術館に入ります。

 

(2) 展覧会の構成

展示作品は

https://www.yamatane-museum.jp/exh/upload/list201118.pdf

からも確認できます。また、展覧会のページではいくつかの作品も紹介されています。

 

第1章 日本の四季を描いた系譜

 

東山魁夷の「京洛四季」のほか、魁夷の師である結城素明の作品、竹内栖鳳の四季短冊、魁夷の義理の父・川崎小虎の作品などが目を引きます。

 

第2章 皇室新宮殿ゆかりの絵画

 

こちらでは東山魁夷の大作「満ち来る潮」とそのスケッチのほか、山口蓬春や杉山寧など皇室新宮殿に絵を収めた画家の作品が並びます。

 

第3章 風景画に見る日本の四季

 

東山魁夷作品のほかに東山魁夷、杉山寧とともに日本画三山と呼ばれた高山辰雄の哲学的な作品や奥田元宋の作品が並びます。

 

それでは、作品を見て行きましょう。

 

(3) 気になる作品

今回は図録がありませんでしたので、絵はがきを購入した作品をご紹介します。

 

まずは、早速、第一章の東山魁夷の「京洛四季」から

 

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東山魁夷「春静」1968年


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東山魁夷「緑潤う」1976年


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東山魁夷「秋彩」1986年

 

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東山魁夷「年暮る」1968年

 

  いずれも詩情豊かな絵が京都の趣を伝えます。

「年暮る」は京都ホテル(現・京都ホテルオークラ)から見た景色とのこと。

 

  そして第二章からは東山魁夷の大作

 
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東山魁夷「満ち来る潮」1969-70年

 

「みちくるうしお」と読みます。

山種美術館の創始者で山種証券(現SMBC日興証券)の創業者でもある山﨑種二が皇居宮殿の壁画「朝明の潮」を見て感銘し、みんなが見られるようにと東山魁夷にお願いをして書いてもらったという作品。

壁一面に展開される海は静と動を併せ持つ存在として、厳かにそこにあります。

(絵はがきの写真では伝わりにくいですが、青が鮮やかな作品です)

 

最後、第三章からは

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山口蓬春「錦秋」1963年

 

  こちらは先ほどの海の「青」とは対照的に「赤」が鮮やかな作品。その赤が鳥の白や黒や黄色の羽やそのフォルムを際立たせます。

 

  このほかにも高山辰雄の作品は好きでしたが絵はがきはありませんでした。

 

 いろいろとあった年。その年の瀬に、日本画の名品を堪能して、展覧会場を後にします。

 

(4) ミュージアムショップ

  今回の企画展のみならずコレクションに関連するグッズなどを販売しているミュージアムショップがあります。今回は紹介しました絵はがきを購入です。

 

3. さいごに

久々の山種美術館。画家と文豪、画家と美術愛好家、さまざまなつながりが多くの名品を生み出すきっかけになっていんだなぁと感じました。人と人とのつながりが新たな創作のヒントを与え、意欲を湧かせ、名作が誕生する。多くの日本画の名品を有する山種美術館であらためて作品誕生の物語を感じることができたと思います。

また、ゆっくりと展覧会に見に来たいものです。

 

それでは、関連リンクです。

 

2018年、国立新美術館での東山魁夷展です。

www.yorocon46.com

本展でも作品が展示されていた高山辰雄の2018年世田谷美術館の展覧会です。

www.yorocon46.com

 

   今回のレポートは以上です。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

また、次のレポートもよろしくお願いいたします。

 

※ ご意見、ご感想、大歓迎です。是非コメントかメール(yorocon46@gmail.com)まで。ツィッターは@yorocon46です。

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(恵比寿・明治通り渋谷橋交差点の歩道橋から。いい天気でした)