自称アート・リポーターこと、よろコンです。
本ブログでは既に終了した展覧会も含め、好きな展覧会をレポートしていきます。
今回は、いよいよ開幕しましたこちらの展覧会。早速行ってきました!
ロンドン・ナショナル・ギャラリー展 @ 上野・国立西洋美術館
のレポートです。
2020年度、もっとも注目の美術展の一つ。COVID-19の影響で開催が危ぶまれましたが、会期を変更しての開催です。最後まで、お読みいただけますと幸いです。
【目次】
※ 以下の記述は展覧会の解説、図録、パンフ、その他WEB上の資料を参照の上、記述しております。また、絵画の写真は購入した展覧会図録および絵ハガキを撮影しています。
1. 展覧会概要
(1) どんな展覧会か
ロンドン・ナショナル・ギャラリーはロンドン中心部、トラファルガー広場に面して建つ美術館です。
と言いつつ、ロンドン、これまで一度も行ったことがありません。
地図で見るとバッキンガム宮殿やビッグベンともそれほど遠くなさそうですね。
いつかの日か行ってみたい・・・
さて、ロンドン・ナショナル・ギャラリーは1824年設立。ヨーロッパの他の美術館のように王室のコレクションを引き継いだものではなく、当時のイギリス議会が国民の「心を豊かにする喜び」のため、銀行家ジョン・ジュリアス・アンガースタインの邸宅と38点のコレクションを購入したことから始まっていきます。その後、日本でも2019年にコレクション展があったサミュエル・コートールドが印象派絵画の収集に貢献する等、多くの人の尽力により世界有数の美術館へと発展、現代にいたります。幅広く質の高いコレクションは「西洋絵画の教科書」とも評されます。
そんな、ロンドン・ナショナル・ギャラリーはこれまで、まとまった数の作品を貸し出すのは慎重だったとのことで、イギリス国外での展覧会は今回が世界初開催!そして全作品日本初公開!という、まさに「見逃せない」展覧会となっています。
(2) 開催概要
・期間:2020/6/18(木) - 10/18(日)
・時間:9:30 - 17:30 (金・土曜は21:00までのナイト・ミュージアム) ※ 入館は閉館30分前まで
・会場:国立西洋美術館(上野)
※ 上野駅公園口が鶯谷寄りになり、美術館に行くのに便利になりました。ecuteにも寄りやすいです。
・チケット:一般 1700円、大学生・高校生 1200円、中学 700円
・作品数:61点
・写真撮影:NGでした
・Webサイト:
(公式サイト)
artexhibition.jp見どころのページでは全61作品紹介の動画もあります。これを見るだけでも心躍ります。
(美術館サイト)
(美術館・外観)
久々の国立西洋美術館です。
チケット売り場のパネルです。(ただしチケットは販売所では売られていません。ネットで事前購入が必要です)
(3) パンフレット
(表面)
(裏面)
(4) 行くきっかけ
昨年(2019年)の「日経おとなのOFF」6月号で本展があることが特集されていましたので、見に行くことは即決。このとき、まさかCOVID-19が流行するとは夢にも思っていませんでしたが、展覧会開催されて、うれしく思います。
2. 展覧会の中へ
(1) 訪問日・混雑状況
訪問日:2020/6/20(土) 曇り。入場制限で17:45~18:00の回で入場。17:45から列に並び18:00少し前に会場内に入りました。
鑑賞時間:約90分
混雑状況:この日は無料招待券、前売券を持っている人のみが入れる期間(6/18-6/21)でしたので、人はいましたが混雑はしていませんでした。結構、ゆっくり見られました。6/23(火)からは日時指定券を購入しての入館なので、ある程度、人数は抑えられるでしょうが、会期末はチケット入手が困難になる、人が多くなるということも予想されますので、早めに見に行かれることをおススメします。
では美術館に入ります。
入口の写真撮影コーナー
ロンドン・ナショナル・ギャラリー
(2) 展覧会の構成
次のような構成でした
I イタリア・ルネッサンス絵画の収集 | Collecting the Italian Renaissance
II オランダ絵画の黄金時代 | Dutch Painting of the Golden Age
III ヴァン・ダイクとイギリス肖像画 | Van Dyck and British Portraiture
IV グランド・ツアー | The Grand Tour
V スペイン絵画の発見 | The Discover of Spain
VI 風景画とピクチャレスク | Landscape and the Picturesque
VII イギリスにおけるフランス近代美術受容 | French Modern Art in British
(目録の館内図)
それでは、作品を見て行きましょう。
(3) 気になる作品
まずは「I イタリア・ルネッサンス絵画~」です。
ボッティチェリの作品等がある中で、こちらをご紹介。
このコーナー、いちばん目を引かれた作品
(カルロ・クリヴェッリ「聖エミディウスを伴う受胎告知」1486 卵テンペラ、油彩 / カンヴァス 207.0×146.7cm)
聖母マリアが受胎告知の場面。こちらの絵は建物に施された彫刻等、非常に細密に描かれています。特に目を奪われたのは右上の孔雀の羽。輝く金がまぶしく感じるくらい。空からマリアに注ぐ光の輝き等、図録では伝わりにくいので、是非実際の会場で生の作品を見ていただきたい。
(ティツィアーノ・ヴェチェッリオ「ノリ・メ・タンゲレ」1514 油彩 / カンヴァス 110.5×91.9cm)
キリストが十字架の磔になって3日目。その死を見届け、埋葬の準備をした3人の婦人が夜明けごろ墓に向かうと墓は開けられキリストの亡骸も消失。正気を失った3人の婦人は亡骸を探しに。そのうちの一人、マグダラのマリアが出くわした庭師と思しき男。一緒に探すのを手伝ってほしいと衣をつかんで頼むと、身を引きながら「我に触れるな」(ラテン語で「ノリ・メ・タンゲレ」)と。その瞬間、彼女は彼がキリストであることに・・・というキリスト伝の一場面。ティツィアーノの柔らかな画面が神秘的な場面を優しく表現します。
次は「II オランダ絵画~」
こちらは、この2点。
(レンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レイン「34歳の自画像」1640 油彩 / カンヴァス 91.0×75.0cm)
ティツィアーノを特に高く評価していたレンブラント34歳の自画像。名声絶頂期の頃の作品とか。半身乗り出す姿は自信の賜物か。
服の表現の繊細さはティツィアーノにも通じるところがあるとのことです。
(ヨハネス・フェルメール「ヴァージナルの前に座る若い女性」1670-72 油彩 / カンヴァス 51.5×45.5cm)
鮮やかな青に黄色のドレス。美しいヴァージナル。背後の絵はリュートを弾く女の肩に手を回す男、そして、二人をひきあわせる「取り持ち女」。音楽はフェルメールの作品でも多く取り上げられる題材です。本作も静かな世界から、こちらを見やる女性に引き込まれていくようです。
続きまして
「III ヴァン・ダイクとイギリス肖像画」
(アンソニー・ヴァン・ダイク「レディ・エリザベス・シンベビーとアンドーヴァー子爵夫人ドロシー」1635頃 油彩 / カンヴァス 132.1×149.0cm)
画家ヴァン・ダイクはフランドル、今のベルギー・アントワープ出身。1632年にイギリス・チャールズ1世の宮廷画家となります。肖像画が高く評価されるイギリスで特に肖像画で人気を博したとのこと。二人は姉妹。右の妹・エリザベスの結婚に当時未婚だった姉・ドロシーは純潔を表す白いドレス。ドロシーの前にはキューピッド。
次は「IV グランド・ツアー」
「グランド・ツアー」とは富裕な若者がヨーロッパ中を旅して歩くこと。18世紀に盛んで、特にイギリスで確立した風習とか。名目上、偉大な芸術に触れ、古代遺跡を体験するということで古代世界を代表する場所としてイタリアが訪問地になることが多かったようです。
(カナレット「ヴェネツィア:大河のレガッタ」1735年頃 油彩 / カンヴァス 117.2×186.7cm)
カナレット(本名:ジョヴァンニ・アントニオ・カナル)はヴェネツィア生まれ。本作はヴェネツィアの重要な年中行事レガッタ・レースが執り行われているところ。画面から熱気と喧騒が伝わってきます。川の奥には見えないはずの橋が描かれ、画面の奥へと視線を誘導します。図録では橋まで確認できないので、ぜひ展覧会で確認してみてください。
続いては「V スペイン絵画~」
イギリスは早くからスペイン美術が受容されてきたとか。
ベラスケス、エル・グレコ、ムリーリョの作品が並ぶ中、こちらの作品を。
(フランシスコ・デ・ゴヤ「ウェリントン公爵」 1812-14 油彩 / 板(マホガニー) 64.3×52.4cm)
描かれているのはイギリス軍人の初代ウェリントン公爵ことアーサー・ウェルズリー。
1815年にワーテルローの戦いでナポレオンを打ち負かし、ナポレオン戦争に終止符を打った人物。1813年にスペインからフランス占領軍を駆逐した功労者として描かれています。
鮮やかな赤い服に輝く勲章。でも、顔は数々の戦いに疲れた様子。内面を描き出すゴヤが英雄の心の内まで描いた一枚。
次は
「VI 風景画と~」
ここでは、ウィリアム・ターナーの作品がありますが、こちらを。
(ジョン・コンスタブル「コルオートン・ホールのレノルズ記念碑」1833-36 油彩 / カンヴァス 132.0cm×108.5cm)
レノルズは本展にも作品が展示されているイギリスの肖像画の巨匠サー・ショシュア・レノルズ。彼を崇敬したジョージ・ボーモント准男爵が建立した記念碑の風景。ボーモント准男爵は絵画のコレクターでもあり、そのコレクションがロンドン・ナショナル・ギャラリーの礎にも。レノルズが絶賛したミケランジェロ(左)とラファエロ(右)の胸像が向き合います。
さて、階段を降りて地下の展示室に。最後は
「VII イギリスにおけるフランス近代美術の受容」
印象派を中心としたフランス絵画です。
それでは、続けて、3作品を。
(クロード・モネ「睡蓮の池」1899 油彩 / カンヴァス 88.3×93.1cm)
(ピエール=オーギュスト・ルノワール「劇場にて(初めてのお出かけ)」1876-77 油彩 / カンヴァス 65.0×49.5cm)
題名の通り初々しさがあります。コートールドコレクションの「桟敷席」とあわせて見るのもおもしろそう。
(ポール・ゴーガン「花瓶の花」1896 油彩 / カンヴァス 64.0×74.0cm)
ゴーガンの花はさまざま色溢れる華やかな感じ。
そして、いよいよ本展覧会、最後の作品
(フィンセント・ファン・ゴッホ「ひまわり」1888 油彩 / カンヴァス 92.1×73.0cm)
こちらは溢れんばかりの黄色におおわれた太陽の花・ひまわり。
アルルで7枚描かれたひまわりの中で4作目。1888年8月に描かれた四連作の最後。
ゴッホの「ひまわり」を高く評価したゴーガン。敬愛するゴーガンとの共同生活でゴーガンの私室を飾るにふさわしいと認めたこの作品ともう一点のみ花瓶に「Vincent」のサインが。夢溢れる頃の作品です。
なお、今年開館予定の新宿・SOMPO美術館所蔵の作品はアルルでの5作目とのこと。
ということで、展覧会はここまで。
出口を抜けてミュージアムショップへ。
(4) ミュージアムショップ
今回は図録と絵ハガキを購入しました。
図録は2900円(税込)
(帯はゴッホの「ひまわり」バージョンと最初に紹介したカルロ・クリヴェッリ「聖エミディウスを伴う受胎告知」バージョンが選べます)
(裏はフェルメール)
絵ハガキは一枚165円(税込)
この5枚を買いました。
3. さいごに
ルネッサンスから印象派まで。イタリア、オランダ、スペイン、フランス、そしてイギリスといったヨーロッパ絵画が集結。まさに西洋絵画の教科書をそのまま見ているかのようです。COVID-19により、会期が変わりましたが、10月中旬まで、まだたっぷり時間があります(6/25現在)ので、是非とも見に行かれることをおススメします。
それと、是非、あわせて西洋美さんの常設展もご覧になってください。
本展でも出展されている何人かの画家の作品が展示されていて、比較してみるのも面白いですよ。そして、あらためて西洋美さん常設展のコレクション、そのもとになった松方コレクションが素晴らしいことも感じられると思います。
なお、本展覧会は以下のとおり巡回します。
大阪・国立国際美術館 2020/11/3(火・祝) ~ 2021/1/31(日)
最後に関連リンクです。
ロンドン・ナショナル・ギャラリーのコレクション構築にも影響の大きかったコートールド・コレクションの展覧会から
フェルメールの他の作品も
今は常設展で見られます。
今回のレポートは以上です。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
また、次のレポートもよろしくお願いいたします。
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(西洋美前庭「考える人」の周りで咲いていた紫陽花。梅雨ですね)