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【展覧会】 近代日本画の華@虎ノ門・大倉集古館のレポート(2020/8/10、9/19訪問)

自称アート・リポーターこと、よろコンです。

 

本ブログでは過去に見た展覧会も含め、好きな展覧会をレポートしていきます。

 

今回は、8月、9月と2回行きましたこちらの展覧会から

 

1930ローマ展開催90年 近代日本画の華ローマ開催日本美術展覧会を中心に @ 虎ノ門・大倉集古館

 

のレポートです。

 

90年前、日本美術の素晴らしさを世界に知らしめんとする画家たちの気概と、それを後押しする実業家の気持ちが実現させたローマでの展覧会。その出品作を中心に展示されています。今回も、最後まで、お読みいただけますと幸いです。

 

【目次】

 

※ 以下の記述はパンフレット、展覧会の解説、今回購入した大倉集古館の図録、その他WEB上の資料を参照の上、記述しております。また、絵画の写真も大倉集古館の図録を撮影しています。

 

1. 展覧会概要

(1) どんな展覧会か

1930年(昭和5)年にローマで開催された「日本美術展覧会」(通称:ローマ展)

岡倉天心を中心に結成された日本美術院。一度、経営に行き詰まりますが、天心の死後、大正3年、横山大観が中心となって再興します。この大観が団長となり、日本美術院でともに研鑽を積んだ菱田春草、下村観山、さらには官展系の川合玉堂、竹内栖鳳らの画家たちを含む総勢80名が参加した日本画壇の一大プロジェクトがこのローマ展です。

ローマ展はヨーロッパの各地から開催期間の1か月で7万6千人以上が来場。開会式にはイタリア首相のムッソリーニも出席しました。

そして、この事業に惜しみない支援を提供したのが大観のパトロンでもあったホテルオークラそして大倉集古館の創始者・大倉喜七郎です。現代の金額で100億円ともいわれる私財を投じたとのこと。(桁が違います)

 

そんな、日本美術が世界へ飛び立とうとする熱い思いが詰まった展覧会です。

 

(2) 開催概要

 ・期間:2020/8/1(土) - 9/27(日) ※ まもなく終了です。

 ・時間:10:30 - 16:30 ※ 入館は閉館30分前まで。時間指定制ではありませんが、入館にマスクは必須、手の消毒も。

 ・会場:大倉集古館

    ※ 歩くなら銀座線の虎ノ門、溜池山王、日比谷線の虎ノ門ヒルズからでしょうか。ホテルオークラのビルを目指してください。私は溜池山王13番出口から桜坂を上がっていきますが、どこの駅からも、けっこうな坂は上りますね(^^;)

 ・チケット:一般1000円(リピートの方は前回チケットを見せると800円のようです)、大学生・高校生 800円、中学生以下無料

 ・展示数:32点(1点、入れ替えのため期間中33点)

 ・写真撮影:NGです。

 ・Webサイト:

(美術館サイト)

公益財団法人大倉文化財団

 

(展覧会チラシ)

https://www.shukokan.org/Portals/0/images/exhibition/history/2020/20200801_kindai_flyer.pdf


(美術館・外観)

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溜池山王から坂を上がってアメリカ大使館前から見た大倉集古館

 

(入口です)

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(3) パンフレット

(表面)

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(裏面)

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(4) 行くきっかけ

今回は、アートスケープさんの展覧会スケジュールで「東京」を検索して見つけました。パンフのPDFや出品作をみて面白そうと思っていきました。

artscape.jp

 

2. 展覧会の中へ

(1) 訪問日・混雑状況

訪問日:1回目は2020/8/10(月・祝) この日は基本的に曇りで蒸し暑かったです。訪問時刻は14:30過ぎ。2回目は9/19(土) この日も曇りで、涼しくなっていました。訪問時刻は11:00頃

鑑賞時間:8/10は約60分。そこまで人は多くなかったです。9/19は40分くらいでしょうか。NHK日曜美術館アートシーンでも紹介された後だったので、8月より人は多かったです。ただ、混雑というまでではありません。

 

では美術館に入ります。

 

(2) 展覧会の構成

会場は建物中央の入口から入り、チケットを買ってから建物の右半分の展示を見ます。

その後、2階に上がり会場全体の展示を見ていきます。さらに1階にもどり、入口から入って建物の左半分の展示を見ます。

なお、地下1階は、中国の仏像や器などの展示が数点とミュージアムショップ、トイレなどがあります。ここは直接企画展に関連した展示はありませんでした。

 

展覧会の構成は

・描かれた山景I :1階 入口からみた右半分の展示会場。川合玉堂たちが描いた山の光景、それと展覧会関連資料の展示。大観がデザインしたローマ展ポスターの富士山は華やかな富士でした。

 

・描かれた山景II:2階会場に上がって前半部。玉堂や大観の水墨画で山を描いた作品が中心に。

 

・美の競演:2階会場の後半部。花卉や美人画。大観の「夜桜」もここに。

 

・動物たちの姿:竹内栖鳳や小林古径らの描く動物画。


それでは、作品を見て行きましょう。

 

(3) 気になる作品

今回、企画展の図録はありませんでしたの「大倉集古館所蔵 名品図録百選」の中から展覧会で展示されていた作品をご紹介します。

 

入口を入って

描かれた山景I

を見た後、2階に上がります。

 

描かれた山景IIからは

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川合玉堂「高嶺の雲」六曲一双 絹本墨画 各151.5×343.6cm 1909(明治42)

 

淡いタッチで理想郷の世界が描かれそうな水墨画で、上の右隻に描かれた切り立つ峰はとてもリアルに描かれています。一方、下の左隻では白く広く広がる雲海が下界を覆い隠します。この対照が実際に高嶺に立っているかのような臨場感を与えてくれます。このリアリティ、これまでの水墨のイメージを覆すようで斬新な作品だと感じました。

 

続いて2階の後半部、美の競演では

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伊藤深水「小雨」一幅 絹本著色 80.0×99.0cm 1929(昭和4)

 

ローマ展出品のために描かれた作品です。外は小雨、一人、三味線の稽古にいそしむ娘。どこか物憂げな感じ。着物、帯などは細部まで描写されています。背景のはらはらと落ちる花びらも風情があって良い感じです。

 

再び、1階に降りる手前、こちら本展のハイライトのコーナー

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(右隻)

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(左隻)

鏑木清方「七夕」六曲一双 絹本著色 各171.0×378.0cm 1929(昭和4)

 

右隻の髪を梳く女性、針に糸を通そうとする女性、左隻の歌舞伎の団扇を持ちながら左上の天の川を見上げます。着物の色や柄もとても繊細で美しく、七夕の風情が伝わる作品です。

 

そして、8月のお目当てで見に行った清方の作品と入れ替わりで9月に展示された作品がこちら。

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横山大観「夜桜」六曲一双 紙本著色 各177.5×376.8cm 1929(昭和4)

 

ローマ展の団長・大観がこの展覧会のために描いた渾身の一作。

こちらは、私のもう一つのブログでも紹介したので、そのまま、抜粋してご紹介。

 

(以下、【東京・町歩き】虎ノ門そして銀座~京橋。シルバーウィーク初日は歩いて歩いて(2020/9/19) - よろこんで!**してみました。 から)

東京国立近代美術館(竹橋)の2018年の横山大観展でも展示されていたかと思いますが、間近にこの対策を見ることができます。大変、華やかで幻想的な作品です。解説に「右隻の松林の連続が左隻の夜桜をより一層際立たせる大観が作り出したイリュージョン」という趣旨のことが描かれていました。(記述は、原文通りではなく記憶に任せて書いてます)

そこで右隻から左隻に向けて山の夜道、桜を鑑賞するつもりで屏風の前を歩いてみると、確かに確かに。右隻の桜を後にし、松林に入り、そこを抜けると一気に周囲が明るくなり、満開の夜桜が輝くように咲き誇る、そんな風に見えました。まるで、本当にそこに光が満ちあふれているかのよう。

屏風の全体を見渡すだけではなく絵の世界観に入り込み、歩くという体験を通じて鑑賞するのも、とても面白いなぁと思った次第です。

(抜粋、以上)

 

・・・本当に、良い作品でした。

 

さて、1階に降りて展覧会の最終コーナー

 

動物たちの姿

 

ここからは、3点。

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竹内栖鳳「蹴合」一幅 絹本著色 114.7×132.2cm 1929(昭和4)

 

二羽の軍鶏が戦う闘鶏のワンシーン。一瞬を切り出した緊張感と躍動感にあふれた作品です。

 

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橋本関雪「暖日」一幅 絹本著色 54.0×72.0cm 1929(昭和4)

 

ペルシャ猫の白い毛並みがとても柔らかそうですが、凛々しい顔に気品を感じます。存在感たっぷり。作者の橋本関雪は兵庫生まれで栖鳳の画塾に入り四条派風の写実的動物画を多く描いたとのこと。

 

そして会場で最後に目にする作品

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小林古径「木菟図」一幅 紙本著色 69.5×106.5cm 1929(昭和4)

 

こちら、古径がローマ展のために制作した作品。背景は金泥に薄墨。みみずくのふんわりとした羽の色と桃色の紅梅の色が対照的、また、きりりとはっきり描かれたみみずくの目がとても印象的な作品です。

昭和4年の古径は形態の単純化、色彩の平面化を進め、新古典様式を確立しようとしていた頃。その後、写実と装飾の融合による象徴的画面を作り上げてゆくようになったとのことで、まさに、その岐路に立った作品のようです。(図録解説より)

 

   「古径の色遣いが印象的だったなぁ・・・」

なんてことを思いながら、展覧会場を後にします。

 

(4) ミュージアムショップ

地下1階です。8/10訪問時「大倉集古館所蔵 名品図録百選」(3,300円)を購入しました。このほかにも絵ハガキや、ほかの図録、関連グッズなどいろいろとあります。カード利用可能でした。(なお、入館料はカード利用不可です)

購入した図録です。

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3. さいごに

展示作品数は多くはないのですが、優品ぞろいです。今、展示されている「夜桜」は、まさに大観の気迫あふれる作品です。

そして、当時から日本画壇発展のため惜しみない支援をした大倉喜七郎の先見の明とその偉大さを感じます。今では絶対に真似できないよなぁ、と思います。

大倉集古館、図録を見ると、このほかにも数多の優品がコレクションされています。また、見に来ようと思います。

 

  今回のレポートは以上です。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

また、次のレポートもよろしくお願いいたします。

 

※ ご意見、ご感想、大歓迎です。是非コメントかメール(yorocon46@gmail.com)まで。ツィッターは@yorocon46です。

 

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(大倉集古館2階バルコニーから)