すきコレ

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【展覧会】モネとマティス もうひとつの楽園@箱根・ポーラ美術館のレポート(2020/10/3訪問)

自称アート・レポーターこと、よろコンです。

 

本ブログでは過去に見た展覧会も含め、好きな展覧会をレポートしていきます。

 

今回は、ひさびさに訪問しましたこちら

 

モネマティス もうひとつ楽園 @ 箱根・ポーラ美術館

 

のレポートです。

 

ポーラ美術館のコレクションを中心に、モネのコレクションで有名なパリのマルモッタン・モネ美術館、吉野石膏やアーティゾン美術館、ひろしま美術館などのコレクションからも出展されています。

自然豊かな箱根の緑に包まれた美術館。そこで見る数々の名画。とっても清々しい気分になれます。

今回も、最後まで、お読みいただけますと幸いです。

 

【目次】

 

※ 以下の記述は展覧会、パンフ、図録、その他WEB上の資料などの説明を参照の上、記述しております。なお、作品の写真は購入した図録を撮影しています。

 

1. 展覧会概要

(1) どんな展覧会か

モネマティス もうひとつの楽園

 

クロード・モネ。1840年11月14日フランス・パリ生まれ。言わずと知れた印象派の創始者で代表する画家。後年は白内障で視力が低下する中でも意欲的に創作活動を続け、1926年12月5日、その生涯を閉じます。86歳。

 

このモネが作り出した"楽園”こそ、かの有名なジヴェルニーの庭。その生涯を閉じたのも楽園・ジヴェルニーでした。

 

このころのフランスは産業革命が進み、パリから郊外へと移動もしやすくなっていました。モネは1883年、このジベルニーの地に移り住み、モネの最高傑作ともいわれる庭を作り上げていきます。そしてその庭で生まれたのが睡蓮などの名作です。

 

さて、本展覧会のもう一人の主役

アンリ・マティス。モネが生まれた約30年後の1869年12月31日、北フランスのル・カトー=カンブレジ生まれ。言わずと知れたフォーヴィスム(野獣派)のリーダー。ただフォーヴィスムの活動は3年ほどで、その後、心地よい作品を目指し1954年11月3日、84歳でその生涯を閉じるまで創作活動を続けます。

 

そんなマティスが作った"楽園"は南仏のニースに。

北フランス出身のマティスが目にしたことのない光あふれる街、青い海。1917年に初めて訪れたニースで以降、アトリエを構え、その室内に自らの"楽園"を作り上げていきます。そして、晩年はやはりニースのヴィクトリア女王滞在のために建てられた建物で当時の高級アパルトマン「レジナ・ホテル」のアトリエで過ごします。

 

  作風はそれぞれ異なるように、作り上げた"楽園"もそれぞれですが、フランスを代表するふたりの巨匠の"楽園"をめぐる作品を展示した展覧会です。

 

(2) 開催概要

 ・期間:2020/4/23(木) - 11/3(火・祝)

 ・時間:9:00 - 17:00 ※ 入館は閉館30分前まで。時間指定制ではありませんが、入館時はマスクに、手の消毒も。美術館サイトで混雑情報も確認できます。

 ・会場:ポーラ美術館(箱根)

    ※ 車で行った場合、駐車場は一日500円です。箱根登山鉄道・強羅駅、箱根湯本駅そして小田原駅からもバスがあります。今回、車で行きました。

 ・チケット:一般1800円、シニア(65歳以上)1600円、大学・高校生1300円、中学生以下無料。コンビニで前売りが売られていたり、美術館では箱根ラリック美術館等、ほかの美術館との共通券等もあります。

 ・作品数:展示期間の違いはありますが、100点くらいです。

 ・写真撮影:NGです。(企画展とは別のコレクションの展示室はOKでした)

 ・Webサイト:

(展覧会サイト)

www.polamuseum.or.jp 

(美術館サイト)

www.polamuseum.or.jp

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(美術館・入口に向かって)

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(展示会場入口です)

 

(3) パンフレット

(表面)

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パンフレット下のマティス「トルコの椅子にもたれるオダリスク」(1928、パリ近代美術館)は出展中止でした。COVID-19の影響ですね。 残念。

 

(見開き・左面)
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(見開き・右面)
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(裏面)
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(4) 行くきっかけ

iPhoneの「チラシミュージアム」を見ていて、行きたくなりました。今年はCOVID-19の影響もあって西洋美術の展覧会が中止になったりして、無性にこの展覧会に行きたくなりました。感染対策(マスク・手洗い等)をして、ドライブもかねて行ってきました。久々に我が家の奥様も一緒でした。(あまり、展覧会とか行きたがらないのですが、レストランでご馳走するとかなんとかそそのかして(^^;)連れ出しました)

 

2. 展覧会の中へ

(1) 訪問日・混雑状況

訪問日:2020/10/3(土) 雲り。9:00到着

鑑賞時間:コレクション展と合わせて約100分くらい

混雑状況:開館と同時に入りましたので、最初は空いていましたが、次々と人が増えていく感じでした。食事をして12:00に美術館を出るころには駐車場は満杯に近い状態でした。ただ、展示室も広いので、混雑するように感じではありません。ゆっくり見られます。

 

では美術館に入ります。

 

(2) 展覧会の構成

会場は1階、地下1階の会場に分かれています。

 

1階の会場に入ってすぐの部屋では資料映像が流れています。

 

それから

・モネ 1章 ツール・ド・フランス-モネのフランス周遊紀行 Monet 1 Monet's "Tour de France"

・マティス1章 東方からの啓示-マティスにおける異国趣味 Matisse 1 Revalations from the Orient

・モネ2章 ジヴェルニー-地上の楽園 Monet 2 Giverny: Earthly Paradise

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地下1階の展示室に移って

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・マティス2章 ニース-銀色の光 Matisse 2 Nice: Silver Light

・モネ3章 <睡蓮>-循環する自然 Monet 3 "Water Lilies": Cycle of Nature

・マティス3章 楽園の創出-絵画を越えて Matisse 3 Beyond Painting: New Visions of the Ideal

 

それでは、作品を見て行きましょう。

 

(3) 気になる作品

さて今回の気になる作品です。すべて、購入した図録を撮影しています。

 

まずは、

・モネ 1章 ツール・ド・フランス-モネのフランス周遊紀行 Monet 1 Monet's "Tour de France"

から

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クロード・モネ「サン=ラザール駅の線路」1877 油彩/カンヴァス 60.5×81.1cm ポーラ美術館

 

汽車や駅は産業革命が生み出した時代の「最先端」

それを印象派の「最先端」の画法がとらえます。

 

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クロード・モネ「花咲く堤、アルジャントゥイユ」1877 油彩/カンヴァス 53.8×65.1cm ポーラ美術館

 

近景のダリアと遠景に見える工場。この時代ならではの近代的モチーフ。ですが、都市や産業の喧騒から遠ざかろうとするモネのこのころ態度がうかがえる作品とのこと。個人的には、かなり好きな作品でした。

 

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クロード・モネ「セーヌ河の日没、冬」1880 油彩/カンヴァス 60.6×81.1cm ポーラ美術館

 

1879年は記録的な寒波でセーヌ河が凍結したとか。自然の見せる思いがけない表情に感銘を受けて描かれた作品。


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クロード・モネ「ポール=ドモワの洞窟」1886 油彩/カンヴァス 65.0×83.0cm 茨城県近代美術館

 

岩場の迫力がすごいですが、海の青さが鮮明で美しい。

 

さて、続いては

・マティス1章 東方からの啓示-マティスにおける異国趣味 Matisse 1 Revalations from the Orient

から

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アンリ・マティス「室内:二人の音楽家」1923 油彩/カンヴァス 61.3×73.2cm ポーラ美術館

 

マティスは「私には啓示が東方からやってきた」と言っていたようで、イスラム美術や日本などからも影響を受けています。この絵にも背景の文様やテーブルクロス、女性の服の柄など、オリエンタルの影響が色濃く表れています。

 

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アンリ・マティス「オダリスク」1926 油彩/カンヴァス 55.5×46.8cm アーティゾン美術館

 

マティスは1910年頃にはモロッコやアルジェリアにも訪れています。そこで実際に見たと言う「オダリスク」(トルコの後宮に仕える女奴隷)をモチーフにした絵を1920年代に集中して描いています。この絵は様々な布を用いて空間を演出していることから親交の深かったルノワールの影響を受けているとのこと。


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アンリ・マティス「石膏のある静物」1927 油彩/カンヴァス 52.0×64.0cm アーティゾン美術館

 

この絵は、どう見てもセザンヌの影響を受けた作品ですよね。ただ、背景や静物が置かれた布の柄などにマティスらしさがあるように感じます。

 

さて、次はモネに

・モネ2章 ジヴェルニー-地上の楽園 Monet 2 Giverny: Earthly Paradise

から

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クロード・モネ「ジヴェルニーの積みわら」1884 油彩/カンヴァス 66.1×81.3cm ポーラ美術館

 

このコーナーも雪化粧の風景画や朝のセーヌ河など、素晴らしい作品がそろっていますが、こちらをご紹介。モネの中でも有名な連作のモチーフ「積みわら」

この積みわらはとても明るく、背景の緑の木々とのコントラストも鮮やかに感じます。

 

さて、地下に移ってまたマティス

・マティス2章 ニース-銀色の光 Matisse 2 Nice: Silver Light

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アンリ・マティス「中国の花瓶」1922 油彩/カンヴァス 34.0×55.0cm ポーラ美術館

 

あまり大きくない絵ですが、色鮮やかながら、とてもくつろいだ雰囲気が伝わってくる好きな一枚です。オダリスクのモデルとして活躍したアンリエットがモデルとか。


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アンリ・マティス「窓辺の婦人」1935 パステル/厚紙 60.1×49.0cm ポーラ美術館

 

窓の向こうに広がるのはニースの海。婦人の青い服に青い壁。観葉植物の緑。そしてカーテンと机の黄色。それぞれの色がさわやかな光に包まれた世界を構成しています。窓はマティスにとって異なる空間をいかにひとつの画面に再構成するかという課題に向き合うための格好の主題だったとのこと。

 

続いてはいよいよモネのあの連作が。

・モネ3章 <睡蓮>-循環する自然 Monet 3 "Water Lilies": Cycle of Nature

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クロード・モネ「睡蓮」1906 油彩/カンヴァス 81.0×92.0cm 吉野石膏株式会社(山形美術館に寄託)


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クロード・モネ「睡蓮」1907 油彩/カンヴァス 90.0×93.0cm アサヒビール大山崎山荘美術館

 

ポーラ美術館所蔵の作品も展示されていますが、こちらの二点をご紹介。

定点観測をするように同じ場所から同じモチーフを描いたモネ。その連作の中で、移ろう時間、移ろう季節、移ろう光をとらえ続けていきます。この2枚の絵も、同じ場所から同じ睡蓮を描いたのでしょう。それぞれに水面の光の鮮やかさ、睡蓮の輪郭の明瞭さ等に違いがあり、モネが挑み続けた"実験"が分かるような展示でした。

 

この2枚。それぞれ、昨年訪問した京都は山崎のアサヒビール大山崎山荘美術館、今年の年始に訪問した三菱一号館美術館の吉野石膏コレクション展で見た作品。それをここ箱根の地で並べて見ることができるなんて、とても嬉しくなりました。

 

そして展覧会の最後はマティス

・マティス3章 楽園の創出-絵画を越えて Matisse 3 Beyond Painting: New Visions of the Ideal

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上:原画=アンリ・マティス、テキスタイル制作=アッシャー社「オセアニア 空」1946 シルクスクリーン/リネン 165.0×355.0cm 滋賀県立近代美術館

下:原画=アンリ・マティス、テキスタイル制作=アッシャー社「オセアニア 海」1946 シルクスクリーン/リネン 165.0×376.5cm 滋賀県立近代美術館

 

1940年以降、体調を崩したマティスは切り絵を制作。終生、その創作意欲は衰えることがなかったとのこと。この作品は1930年のタヒチ旅行がモチーフに。図録を写したのでページがまたがっていますが、実際は大きな壁紙が並んで展示されています。うちの奥様がとても気に入った作品。


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アンリ・マティス「リュート」1943 油彩/カンヴァス 60.0×81.5cm ポーラ美術館

 

最後はこちら。この絵に描かれている服の展示もあります。また、この絵を基にモーリス・コシが1947~1949年に170.0×213.0cmのサイズで、J.コシェリが1949-1950に158.5×212.0cmのサイズでそれぞれタペストリーを制作しています。そのタペストリの展示もありました。

J.コシェリの作品は原画の報酬としてマティスに贈られ、現在はマティスの故郷ル・カトー=カンブレジのマティス美術館に収蔵されているとのこと。タペストリの色は絵画の色とも少し異なり、比較して見るのも、とても面白かったです。

 

  モネとマティス。それぞれの巨匠のそれぞれの作品。それを生み出す源泉となった

 "楽園"

とても面白い企画の展覧会でした。

 

  そして、展覧会場を後にします。

  

(4) ミュージアムショップ

  今回の企画展のみならずコレクションに関連するグッズなどを販売しているミュージアムショップがあります。今回は図録(2,500円)とコレクション展で展示されていた作品の絵ハガキを購入です。

 

(図録表紙)

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(図録裏表紙)

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作品の写真はこちらの図録に掲載されているものを写しました。

 

3. さいごに

マティスの言葉です。

「私は人を癒す肘掛け椅子のような絵を描きたい」

 

フォーヴのリーダー・マティスが最後まで目指した絵は「肘掛け椅子」のような癒しを与える絵でした。そのような理想の絵を描くために作り上げたアトリエという楽園。

 

そして、モネも都会の喧騒を離れたジヴェルニーで理想の芸術を生み出すために作り上げた庭という楽園。

それぞれの楽園は違いますが、そこから生み出された数々の作品はこれからも私たちを楽園の世界へと誘いつづけるのでしょう。これからも二人の楽園の世界を味わいたいと思います。

 

なお、ポーラ美術館の次の展覧会は

「コネクションズ - 海を越える憧れ、日本とフランスの150年」2020/11/14(土)~2021/4/4(日)

また、来たいですねぇ。箱根。

 

それでは、関連リンクです。

 

去年のポーラ美術館

www.yorocon46.com

オルセー美術館のサン=ラザール

www.suki-kore.tokyo

 

   今回のレポートは以上です。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

また、次のレポートもよろしくお願いいたします。

 

※ ご意見、ご感想、大歓迎です。是非コメントかメール(yorocon46@gmail.com)まで。ツィッターは@yorocon46です。

 

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(ポーラ美術館の遊歩道。絵画鑑賞の後は森林浴です)