展覧会に行きたい!よろコンです。
本ブログでは既に終了した展覧会も含め、好きな展覧会をレポートしていきます。
今回は、2022年2月13日(日)に訪問した
「ドレスデン国立古典絵画館所蔵 フェルメールと17世紀オランダ絵画展」@東京都美術館
です。
COVID-19の影響で会期変更となった注目の展覧会がいよいよ開幕!
目玉はもちろんフェルメール初期の傑作「窓辺で手紙を読む女」
この絵には長年"謎"が秘められていました。
そして、数百年の時を経て今明かされる"真の姿"
所蔵館以外では世界初公開。このほかにもオランダ絵画の華で彩られた、今見逃せない展覧会のひとつです。
今回も最後までお読みいただけますと幸いです。
【目次】
※ 以下の記述は展覧会の解説、図録、パンフ、その他WEB上の資料等を参照の上、記述しております。また、絵画の写真は購入した展覧会図録を撮影しています。
1. 展覧会概要
(1) どんな展覧会か
ドレスデン国立古典絵画館
今回の展覧会には、この絵画館のコレクションからフェルメール、レンブラントに代表される17世紀オランダ絵画の数々の名品たちが来日しました。
まず、ドレスデンについてですが・・・
ドイツ・ザクセン州の州都。旧東ドイツの街。神聖ローマ帝国ザクセン選帝侯領首都。
「北のパリ」「エルベ川の真珠」とも称されるドレスデンは、ヨーロッパの交通の要衝であり、磁器で有名なマイセンからも近いことから、神聖ローマ帝国内では最も裕福な地域のひとつでした。
このドレスデンが最も栄えたのが、1694年ザクセン選帝侯となったフリードリヒ・アウグスト1世の時代。彼は1697年にはポーランド王アウグスト2世となり、その怪力から「アウグスト強王」とも呼ばれました。アウグスト強王時代、名作に絞った獲得方針の下、これまでのザクセン選帝侯のコレクションは質・量ともに充実が図られ、ヨーロッパのほかの王宮と比べても遜色のないコレクションが形成されます。
アウグスト強王の死後、1733年に息子であるフリードリヒ・アウグスト2世がザクセン選帝侯を引き継ぎ、さらに1734年にポーランド=リトアニア共和国の統治者となってアウグスト3世を名乗ります。アウグスト3世は生粋の絵画愛好家であり、18世紀を代表する美術品コレクターとしても知られる存在。そのコレクションはヨーロッパ随一のものへと発展していきます。
その後、戦争などを経て、多くの名品が消失するという悲劇を経験しますが、いまでもヨーロッパを代表するコレクションのひとつとして、ツヴィンガー宮殿の一角・ドレスデン国立古典絵画館に収められています。
そんなヨーロッパを代表するコレクションの至宝の展覧会です。
今回、注目のフェルメールの作品については、また後ほど
(2) 開催概要
・期間:2022/2/10(木) - 2022/4/3(日)
・時間:9:30~17:30(入館は閉館30分前まで。金曜日は20:00まで) 入場日時予約制
・会場:東京都美術館(上野駅)
・チケット:一般 2100円、大学生・専門学校生 1300円、65歳以上 1500円、高校生以下無料
・作品数:約70点(パンフから)
・写真撮影:NG
・Webサイト:
(展覧会サイト)
(10:00-10:30の入場予約で入りました。10:20頃ですかね)
(3) パンフレット
(表面)
(見開き)
(裏面)
2. 展覧会の中へ
(1) 訪問日・混雑状況
訪問日:2022/2/13(日) 10:20頃訪問(10:00-10:30の回で予約)
鑑賞時間:約90分
混雑状況:混んでいました。でも予約制だったので"ぎゅうぎゅう"ではありません。こういう人気の展覧会は絶対予約制が良いですね。
(2) 展覧会の構成
・レンブラントとオランダの肖像画 Rembrandt and Dutch Portrait Painting
・複製版画 Reproduction Prints of Gemaldegalerie
・レイデンの画家 - ザクセン選帝侯たちが愛した作品 Leiden Fine-Painters - Favorite Piece of the Electors of Saxony
・<<窓辺で手紙を読む女>>の調査と修復 Vermeer's Dresden Girl Reading a Letter at Open Window, Research and Restoration
・オランダの風景画 Dutch Landscape Painting
・聖書の登場人物と市井の人々 Biblical Characters and Ordinary People
(3) 気になる作品
それでは、会場に入って最初に出会う作品から
ミヒール・ファン・ミーレフェルト「女の肖像」制作年不詳
デルフトで最も人気があり、影響力のあった肖像画家。1607年以降、宮廷画家として貴族やブルジョワからの依頼を受けていたとのこと。
白く大きな襞(ひだ)の襟、黒く光沢のある洋服、端正な顔立ちに目を奪われる作品です。
レンブラント・ファン・レイン「若きサスキアの肖像」1633年
少し口を開き、笑みを浮かべる若い女性。この笑みは恋していることを意味しているとか。肖像画でモデルの感情の動きを描くことは当時珍しく、無作法でもあったようです。1633年はレンブラント婚約の年。そして、この一年後、この彼女と結婚をするのでした。婚約者をモデルにした何かの習作ではないかとのこと。だから笑っているのかぁ。
それでは、いよいよフェルメール「窓辺で手紙を読む女」(1657-59年)です。
この展示エリアでは、映像などを通じて、この絵の修復の過程、そこに秘められた謎についての説明があります。
この絵について、かいつまんで書きますと・・・(パンフの説明より。あんまりつまんでないかも)
・1979年のX線調査で女性の背後の壁に天使の絵(絵の中の絵。画中画)が描かれていたことが分かりました
・でも、長い間この絵はフェルメール自身が塗りつぶしたものだと思われていました
・2017年3月に保存計画作成、表面の古いニスを取り除き、汚れを落とすことに
・ところが、天使の部分とそれ以外の部分で汚れを落とす溶媒への反応が違う・・・
・実はこの天使、フェルメールの死後、何者かによって塗りつぶされたことが判明
・2018年2月、それまでの調査結果を踏まえ、天使を塗りつぶしていた上塗りの除去を決定
・2021年9月、除去作業が完了し、ドレスデンでお披露目に
そして今年、東京にやってきました。
修復前の絵が複製画で展示されています。
この絵はこの絵で良かったのですが、修復後は・・・
ヨハネス・フェルメール「窓辺で手紙を読む女」1657-59年
修復後の作品は色が大変鮮やかに感じました。復元されたキューピッドも保存状態が良かったとか。
この画中画。天使と弓と仮面は「誠実な愛は嘘や偽善に打ち勝つ」
手紙の内容、気になります。そういう内容なのでしょうか。窓に映る姿、女性の心がその手紙の真意を突き止めようと覗き込んでるかのようにも見えます。(個人の感想です)
修復後「360年ぶりの新作」とも言われる、この絵画
では一体、誰がなぜこんなことを・・・
ことの真相は分かっていないようですが、当時、フェルメールの人気は今のように高くなく、むしろ当時から人気のあったレンブラントの作品として売り込もうとしていたのではないかという説が。よりレンブラントらしく見せるため塗りつぶしたとか。事実、この絵は最初、レンブラントの作品として持ち込まれたようです。
真相はさておき、この作品が"本来"の姿を取り戻して、私たちの前に現れてくれたことは、大きな喜びです。
なお、この絵の複製版画のひとつ
ヒューゴ・ビュルクナー「窓辺で手紙を読む女(フェルメールの原画に基づく)」1893年
壁に天使はいません。
ドレスデンに来たときにはすでに塗りつぶされていたんでしょうね。
さて、また至宝のオランダ絵画に戻ります。
ワルラン・ヴァイヤン「手紙・ペンナイフ・羽根ペンを留めた赤いリボンの状差し」1658年
展覧会で見た時、ギョッとしました。最初、本物の板に手紙が差されているように見えたからです。トロンプ・ルイユ(だまし絵)は17世紀のフランス、オランダでは信じられないほどの人気だったようです。確かに欲しくなります。描いた年をチョークの文字のようにさりげなく入れるのも、シャレた感じで。
ヤン・ファン・ホイエン「冬の川景色」1643年
冬季オリンピックは終わりましたが、当時からスケートとかウィンタースポーツは楽しまれていたようです。作者はオランダ黄金時代、1200点以上の作品を描いたもっとも多作な風景画家のひとり。この絵、第二次世界大戦の後、行方が分からなくなりますが、再び美術館に戻ります。それまで、この絵を所有していたのは古物商の未亡人。なんと、お風呂のフタに使っていたようです。いずれにしても無事戻ってきて良かったです。
ヤン・デ・ヘーム「花瓶と果物」1670-72年
静物画も人気のあったオランダ。黒の中に映える花は圧倒的です。17世紀初頭に大人気であったチューリップも二輪描かれてます。
ヤーコプ・ファン・ライスダール「城山の前の滝」1665-67年
ファン・ライスダールの作品の中でもこの急流や滝を題材にした風景画が最も多く描かれたとのこと。勢いが伝わります。
ヤン・ステーン「カナの婚礼」1674-78年
カナという町で行われた婚礼に聖母マリアや弟子たちとともに招かれたイエス・キリスト。ワインがなくなると水をワインに変えるというキリストが最初に起こした奇跡の場面が描かれる「カナの婚礼」
風俗絵画を数多く描いたヤン・ステーンはカナの婚礼を6度描いたとか。
画面中央のワイングラスを持つ恰幅の良いおじさんがキリスト?ですね。ここでは(^^;)
(それを覗く女性がマリア様です)
ということで、この他にも、もちろん、もっともっと紹介したい素晴らしい作品にあふれた展覧会でしたが、今回はこの辺で・・・
(4) ミュージアムショップ
図録購入です。図録は2900円(税込み)
絵は図録の帯です。
なお、グッズの情報はこちら
図録・グッズ|ドレスデン国立古典絵画館所蔵 フェルメールと17世紀オランダ絵画展
3. さいごに
フェルメールの絵の修復を説明する映像の中で修復の前後を比較して
「修復前は思索をめぐらす壁でしたが、そこは天使がいたのです」
といった趣旨の説明をされている場面がありました。
(記憶をたどってなので、正確でなかったらごめんなさい)
確かに天使がいない壁はこの手紙を読んでいる女性の気持ちに我々が思いを馳せるステージだったのかもしれません。それはそれで作品としておもしろいなぁ、なんて思いながら前後の絵を見比べていました。
それにしても、この絵を直接見られる貴重な展覧会。これを見るだけでもここに来る価値は十分あると思います。
この展覧会は東京展がまだまだ開催中ですが
・北海道立近代美術館:2022/4/22~6/26
・大阪市立美術館:2022/7/16~9/25
と巡回します。是非、見に行ってみてください。
それでは、さいごに関連リンクです。
上野の森のフェルメール展です。
ここにもフェルメールが
ということで、今回のレポートは以上です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
また、次のレポートもよろしくお願いいたします。
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(雨に濡れる上野の寒桜。春近し?まだまだ寒い^^;)