よろコンです。
本ブログでは見て来た展覧会の個人的な感想を書いています。
今回は、2024年4月5日(金)に見て来た展覧会
マティス 自由なフォルム@乃木坂・国立新美術館
です。
鮮烈な色彩のフォーヴィスム(野獣派)の巨匠・マティス。
ダンス、赤を基調としたオリエンタルな部屋、ニースの光差し込む部屋にモデルや色々な調度を描いた絵画作品が思い起こされますが、その他にもテキスタイルや彫刻等、多彩な作品を残しています。
この展覧会ではその中でも特に「切り紙絵」に焦点を当てた珍しい展覧会、というか日本初の展覧会。どんな展覧会になるのだろう?と行ってみますと、そこに展開された世界は、それはそれは・・・
今回も最後までお読みいただけますと幸いです。
【目次】
※ 以下の記述は展覧会の解説、パンフ、図録、その他WEB上の資料等を参照の上、記述しております。また、撮影可能だった作品の写真を掲載しています。
1. 展覧会情報
(1) 開催概要
・会場:国立新美術館@乃木坂(六本木)
・期間:開催中(2024/2/14(水)) - 2024/5/27(月) ※ 月末まで
※ 展示替えなし
・時間:10:00~18:00(入館は閉館30分前まで)
※ ナイトミュージアム:あり、金・土曜日は20:00まで
・休館日:火曜日(4/30は開館)
・チケット:一般 2200円、大学生1400円、高校生1000円、中学生以下 無料
・作品数:約160点
・写真撮影:Section4途中(「花と果実」の部屋)以降OK、それ以外はNGです
・関連リンク:
1) 展覧会
マティス 自由なフォルム | 企画展 | 国立新美術館 THE NATIONAL ART CENTER, TOKYO
(展覧会チラシ)
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(作品リスト)
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2) 美術館
国立新美術館 THE NATIONAL ART CENTER, TOKYO (nact.jp)
今回は会社帰りにナイト・ミュージアム
それでは、展覧会場へ。
(2) 訪問日・混雑状況
訪問日:2024/4/5(金) 18:30頃
鑑賞時間:約75分くらい
混雑状況:夜だったこともあってか、混雑はしておらず、ゆっくり見られました。
(3) どんな展覧会?
アンリ・マティス(1869-1954)。フランス北部ノール県出身
フォーヴィスムのリーダー的存在、色彩の魔術師、ピカソらとともに20世紀最大の巨匠の一人と称されます。そんなマティスが人生の後半を過ごした南仏のニース。大病を患ったのち、絵画などに替わる新たな表現手法として取り組んだのが「切り紙絵」でした。「ハサミでデッサンする」この新しい手法でマティス芸術の到達点となる作品が制作されていきました。そして晩年、自らの芸術の集大成として南仏ヴァンスのロザリオ礼拝堂の内装をデザインします。
本展ではニース市マティス美術館の所蔵作品を中心に初期からフォーヴィスム、大型の舞台装置・装飾の制作と「切り紙絵」にたどり着くまで、そして「切り紙絵」、最後はヴァンス礼拝堂の再現空間と、絵画、彫刻等の様々な作品も含め、マティス芸術の集大成へと迫る展覧会です。
2. 会場へ
(1) 構成
Section 1 色彩の道 | Ways of Color
Section 2 アトリエ | The Studios
Section 3 舞台装置から大型装飾へ | From Decor to Large Decorations
Section 4 自由なフォルム | Forms in Freedom
Section 5 ヴァンスのロザリオ礼拝堂 | The Rosary Chapel in Vence
(2) 気になる作品
今回はSection4以降、撮影OKだったエリアの写真です。
Section 1では初期からフォーヴィスムまでの作品、Section 2では文字通りアトリエでモデルや調度、テキスタイルなどを描いた作品と彫刻の連作、Section 3ではバレエの舞台装置にデザインした衣装、建物の壁画など作品が展示されています。
そして、Section 4では「切り紙絵」を確立した「ジャズ」の展示に続き、切り紙絵の中でも最大級の作品が展示されています。
アンリ・マティス「花と果実」1952-1953年
ニース市マティス美術館蔵。今回の展覧会に合わせ2021年に大規模な修復が行われた日本初公開の作品です。
鮮やかな色彩。花も果実もそれぞれが自由なフォルムを取りながら整然と配置されています。この作品の前にいると明るく、なんだか幸せな気分になります。
紙を切るのは楽しかった!
マティスはそう語っています。さて、その楽しみとは・・・
そして切り紙絵のもう一つの代表作
アンリ・マティス「ブルー・ヌード IV」
数多くのデッサンの痕跡。ただ一つの青だけではない、いくつもの青の紙片を切り合わせ重ね合わせて形作られたブルー・ヌード。丹念に制作されたことが分かります。
ちなみにマティスの切り紙絵は
・まず、グアッシュと呼ばれる水性絵具でアシスタントが紙に色付けする。
・床に並べられた色紙からマティスが一枚を選びハサミで形を切る抜く。
・切り紙絵を配置し固定するためピン留めする。
・ピン留めした配置が分かるようにトレースし、重複した箇所は紙に番号を振る。
・実際に作品を飾る場所に取り付ける
という手順で作成されたようです。
(展覧会サイト
マティスと切り紙絵-展覧会紹介-│マティス 自由なフォルム (matisse2024.jp)
から)
そしてSection 5 ヴァンスのロザリオ礼拝堂です。
切り紙絵と通ずるステンドグラスやカズラ(上祭服)のデザイン。マティス芸術の集大成がそこにあります。
マティスがデッサンしたヴァンス礼拝堂の外観のマケット(模型)です。
アンリ・マティス ステンドグラス「生命の木」のための習作 1950年
アンリ・マティス「聖ドミニクス」1949年
アンリ・マティス「星形のある背景の聖母子」1949年
ここからはカズラのためのマケットをいくつか。
そしてロザリオ礼拝堂の再現空間。夜から朝へ
そして昼から夕方、また夜へ
光が移り変わります。
色彩は鮮明、形状はポップ。その組み合わせの結果、そこに繰り広げられたはとても穏やかで居心地の良い空間でした。
見る人にとって「肘掛椅子」のような絵を描きたい、人々に癒しを与える作品を作りたいと言ったマティス。「切り紙絵」に焦点を当てることで、そんなマティスの集大成へと導いてくれる、とても穏やかで癒される展覧会でした。
ということで、展覧会場を後にしました。
ミュージアムショップでは今回は図録を買いました。
3. さいごに
切り紙絵を楽しいと語っていたマティスにはこんな思いがありました。
「批評家にせよ仲間の芸術家にせよ、中にはこんなふうに言う者もいることでしょう。マティスの老いぼれめ、生涯の終わりに紙なんか切り抜いて遊んでいるぞ。子ども返りしたんだな、と。ええ、そうですとも、紙を切るのは楽しかった!ただしこれ以上ないほど真面目に過去の私の経験の重み、たゆみない探求に規定された一生の重みをまるごと自分の仕事に担わせつつ、楽しんだのです」
(図録解説より。Cite dans Andre Verdet, Entretiens, notes et ecrits sur la peinture: Braque, Leger, Matisse ,Picasso ,Chagall, Nantres, Editions du Petit Vehicule, 2000, p.127)
切り紙絵に込めたマティスの想い、正に集大成だったのでしょう。そして、マティスの切り紙絵に焦点を当てた展覧会。新しいマティスを感じる展覧会でした。あらためてマティスはすごい。ぜひとも展覧会でマティスに包まれる空間を味わってください。
本展の巡回情報は次の通りです。
【巡回情報】
本展の巡回はありません。
関連リンクです。
2024年の展覧会情報はこちら
ということで、今回は以上です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
また、次もよろしくお願いいたします。
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(美術館パブリックスペースの展示。和田礼治郎「FORBIDDEN FRUIT」2023年と
桜です。ではまた)