よろコンです。
本ブログでは見て来た展覧会の個人的な感想を書いています。
今回は、2024年3月9日(土)に見て来た展覧会
「シュルレアリスム宣言」100年
シュルレアリスムと日本
@西高島平・板橋区立美術館
です。
シュルレアリスム=超現実主義
1924年、フランスのアンドレ・ブルトンの「シュルレアリスム宣言」が発表されてから100年目の今年。シュルレアリスムと言えば、ダリ、マグリット、マックス・エルンスト、キリコと言った名だたる画家が思い起こされますが、イタビでは日本におけるシュルレアリスムに焦点を当てた展覧会が開催されています。春・日本のシュルレアリスムも咲き誇っています。
今回も最後までお読みいただけますと幸いです。
【目次】
※ 以下の記述は展覧会の解説、パンフ、図録、その他WEB上の資料等を参照の上、記述しております。また、図録の写真を掲載しています。
1. 展覧会情報
(1) 開催概要
・会場:板橋区立美術館@西高島平
・期間:開催中(2024/3/2(土)) - 2024/4/14(日)
※ 展示替えあり(前期~3/24(日)、後期3/26(火)~)
・時間:9:30~17:00(入館は閉館30分前まで)
※ ナイトミュージアム:なし
・休館日:月曜日
・チケット:一般 650円、高校・大学生450円、小・中学生200円
(土曜日は小中高校生は無料。また支払いはすべて現金)
・作品数:前後期で115点+参考資料多数
・写真撮影:NGでした
・関連リンク:
1) 展覧会
(展覧会チラシ)
(作品リスト)
(ミニガイド)
杉全美帆子さんのイラストによるミニガイドです。イタビのミニガイドは分かりやすくておもしろくて予習・復習にもなります。
2) 美術館
(2) 訪問日・混雑状況
訪問日:2024/3/9(土) 11:00頃訪問
鑑賞時間:約120分
混雑状況:鑑賞されている方は多かったですが、絵はゆっくりと見られました。その後、3月末にEテレ・日曜美術館のアートシーンで紹介されていたので、今はもっと人が多いかもしれません。
(3) どんな展覧会?
「シュールレアリスム。男性名詞。心の純粋な自動現象(オートマティスム)であり、それにもとづいて口述、記述、その他あらゆる方法を用いつつ、思考の実際上の働きを表現しようとくわだてる。理性によって行使されるどんな統制もなく、美学上ないし道徳上のどんな気づかいからもはなれた思考の書きとり」
アンドレ・ブルトン「シュルレアリスム宣言」より(巌谷國士 訳)
思考の解放、自由を求めたシュルレアリスムは詩の世界からはじまり、絵画など幅広い芸術運動へと発展していきます。日本でも詩の世界から取り入れられ、そのほかの分野へと発展していきます。
戦時中、「危険思想」として監視対象にされるといった困難な時代がありましたが、様々な団体が立ち上がり、東京のみならず日本各地に展開していった日本のシュルレアリスムをその作品と豊富な資料でたどる展覧会です。
2. 会場へ
(1) 構成
序章 シュルレアリスムの導入
第1章 先駆者たち
第2章 衝撃から展開へ
第3章 拡張するシュルレアリスム
第4章 シュルレアリスムの最盛期から弾圧まで
第5章 写真のシュルレアリスム
第6章 戦後のシュルレアリスム
(2) 気になる作品
まずは日本のシュルレアリスムの先駆者の作品
東郷青児「超現実派の散歩」1929年 SOMPO美術館 第16回二科展
SOMPO美術館のアイコンにもなっている作品。当の東郷は自らの作品を「超現実派」と呼ばれることを嫌っていたとか
古賀春江「鳥籠」1929年 石橋財団アーティゾン美術館 第16回二科展
日本のシュルレアリスムのさきがけ、古賀春江の作品
シュルレアリスムの衝撃から展開の時代では
高井貞二「煙」1933年 和歌山県立近代美術館 第1回新油絵展
この頃は日本各地で前衛的絵画グループが展覧会を開催していきます。
三岸好太郎「海と射光」1934年 福岡市美術館 第4回独立展
31歳で夭折した天才画家の独立展最後の出品作品
展開から拡張したシュルレアリスムでは
福沢一郎「人」1936年 東京国立近代美術館 第7回独立展
日本のシュルレアリスムの兄貴的存在・福沢は自宅で絵画研究所を開き、多くの後進を育てます。
さらにシュルレアリスムの最盛期、そして弾圧の時代へ
寺田政明「生物の創造」1939年 北九州市立美術館 第9回独立展
先日、亡くなられた俳優・寺田農さんのお父さん。池袋モンパルナスに参加し、板橋区にも在住していた板橋とも所縁ある画家です。
浅原清隆「多感な地上」1939年 東京国立近代美術館 第9回独立展
この展覧会のチラシの作品です。画学生たちの前衛運動が活発化した時代の中心的、象徴的存在だったとのこと。残念ながら戦地でその短い生涯を終えます。
渡辺武「風化」1939年 板橋区立美術館 第4回ジュンヌ・オム展
帝国美術学校最後の前衛グループの作品
靉光「眼のある風景」1938年 東京国立近代美術館 第8回独立展
画面中央のリアルな眼とそれを取り巻く得体の知れない塊は木の根?獅子?それとも・・・
描いては削り作り上げた唯一無二の世界
※ この写真は以前、東京国立近代美術館の常設展の展示(撮影可能)を撮りました。
これまで日本各地に展開し、様々なグループが展覧会を開催してきた日本のシュルレアリスムは戦争へと突き進む軍事政権から危険思想と捉えられ1941年、治安維持法の疑いで日本シュルレアリスムの「兄貴」福沢一郎と詩人で評論家の瀧口修三が逮捕・監禁されることに。この後、軍部への協力を余儀なくされ、影を潜めます。
そして、戦後。再び活動を再開
岡本太郎「憂鬱」1947年 一般財団法人草月会(東京都現代美術館帰寄託) 第32回二科展
フランスでのシュルレアリスム活動に参加した唯一の日本人、岡本太郎の作品
日本のシュルレアリスムは世界の衝撃を受け止め、全国的な広がりを見せ、若い画家たちの前衛的な挑戦の場となりましたが、戦争の抑圧を受け、その影を潜めるしかありませんでした。それでもその精神の自由を求める活動は戦後へと受け継がれていくのでした。
普段、そこまで目にしない日本のシュルレアリスムの確かな歩みを見ることができる興味深い展覧会でした。
ということで、充実感を持って展覧会場を出ました。
チケット販売受付で図録・書籍なども売っていますので、今回は図録を買いました。
こちらも現金のみなのでご注意を
3. さいごに
個性的、独創的な作品にあふれていた日本のシュルレアリスムは、あの戦争がなかったら、どのように展開し、発展していったのだろうか?そんなことも思わせます。
自由な芸術活動がいつまでも続く世界であること、平和がいちばんということも併せて考えさせられました。それでも「シュルレアリスムは終わらないっ!」ですね。
ここでは、今回の展覧会では展示されていませんが、過去に見た関連作品を少しご紹介。いずれも撮影可能な作品でした。
日本シュルレアリスムのさきがけ、古賀春江の作品から
古賀春江「海」1929年 東京国立近代美術館
古賀春江「素朴な月夜」1929年 アーティゾン美術館
日本シュルレアリスムの「兄貴」福沢一郎の作品から
福沢一郎「牛」1936年 東京国立近代美術館
最後は花の季節、シュルレアリスム的日本画
船田玉樹「花の夕」1938年 東京国立美術館
本展の巡回情報は次の通りです。
【巡回情報】
・三重県立美術館 2024/4/27~6/30
※ 京都文化博物館では2023/12/16~2024/2/4まで開催されていました
関連リンクです。
今月末は東京都美術館で世界的シュールの巨匠の展覧会が
2024年の展覧会情報はこちら
ということで、今回は以上です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
また、次もよろしくお願いいたします。
※ ご意見、ご感想、大歓迎です。是非コメントかメール(yorocon46@gmail.com)まで。ツィッターは@yorocon46です。
(展覧会を見た頃はまだ3月上旬。梅が早く咲き、いよいよ桜か?という時期でした。でも、今年の桜はここからが長かった・・・ということで、まだ少し残っていたイタビ前の板橋区立赤塚溜池公園の梅です。
今は桜ですね)