よろコンです。
本ブログでは見て来た展覧会の個人的な感想を書いています。
今回は、2024年4月21日(日)に見て来た展覧会
春の江戸絵画まつり ほとけの国の美術@府中・府中市美術館
です。
今年もこの季節がやってきました。府中市美術館、春の恒例・江戸絵画まつり!
「へたうま(ただ下手?!)」な徳川家光の絵が脚光を浴びた年も。奇想ならぬふつうの系譜という企画も。毎年その趣向で楽しませてくれる江戸絵画まつり。
今年のテーマは「ほとけの国の美術」
仏教美術と言えば奈良、京都。天平、平安、鎌倉時代。豪華絢爛、質実剛健、思い起こされる作品も様々かと思いますが、そこは「江戸絵画まつり」。一味も二味も違った切り口で今年も楽しませてくれます。さて、どんな作品が待っていますか・・・
今回も最後までお読みいただけますと幸いです。
【目次】
※ 以下の記述は展覧会の解説、パンフ、図録、その他WEB上の資料等を参照の上、記述しております。また、図録の写真を掲載しています。
1. 展覧会情報
(1) 開催概要
・会場:府中市美術館@府中
・期間:開催中(2024/3/9(土)) - 2024/5/6(日) ※ GW末まで
※ 展示替えあり(比較的大きい展示替え。後期は4/9(火)から)
・時間:10:00~17:00(入館は閉館30分前まで)
※ ナイトミュージアム:なし
・休館日:月曜日(4/29、5/6は開館)
・チケット:一般 1800円、高校・大学生1000円、中学生以下 無料
・作品数:前後期合わせ117点(後期は63点) ※ 作品リストから
・写真撮影:NGです
・関連リンク:
1) 展覧会
春の江戸絵画まつり ほとけの国の美術 東京都府中市ホームページ
(展覧会チラシ)
(作品リスト)
2) 美術館
府中の森公園に入って
すぐのところ
展示室は二階
いざ、ほとけの国へ
(2) 訪問日・混雑状況
訪問日:2024/4/19(火) 15:30頃
鑑賞時間:約90分くらい
混雑状況:盛況でしたが混雑まではしておらず、ゆっくり見られました。今は会期後半、GWはかなり混むのではないでしょうか。
(3) どんな展覧会?
仏教伝来以降、仏教で国を治めようとした奈良時代から日本人の政治、精神、生活に大きな影響を与えてきました。江戸時代もすべての家がいずれかの宗派の檀家になるという寺請制度がありました。美術でも東大寺の大仏、宇治平等院、運慶・快慶の仏像、曼荼羅等々。建築、彫刻、絵画等で日本文化の中心に位置する存在と言えます。
そして、江戸時代。多く画家たちが「ほとけ」の世界を取り上げ、それを人々が生活に受けいれてきました。それは子犬のような動物たちの絵にも通じるものでした。
「仏教美術?!」と肩肘を張らず、身近に「ほとけの国」の美術を感じられる展覧会です。
2. 会場へ
(1) 構成
1章 浄土と地獄
2章 禅が教えてくれること
3章 古典美としての仏画
4章 ほとけの国の人気キャラ
5章 涅槃図と動物絵画の時代
(2) 気になる作品
今回はすべて図録の写真です。
まず、仏教と言えば「極楽浄土」と「地獄」です。気になります。
こちらは京都市・二尊院、やまと絵・土佐派の画家・土佐行広の二十五菩薩来迎図から
南三番、四番の絵
実際には17幅の菩薩来迎図が両脇にならび本尊の釈迦如来、阿弥陀如来像へと続く。まさに阿弥陀如来の来迎を再現しているようとのこと。
次は金沢市にある浄土宗のお寺、照円寺の地獄極楽図から
地獄の中でもいちばん苦しい「阿鼻地獄」
二千年間落下してたどり着く地獄とか・・・
堕ちゆく人たち
一方、極楽は
「聖衆来迎楽」図の一部。穏やかで明るい世界
このような絵で、人々は極楽浄土、地獄に思い巡らせていたのでしょう。
さて、いろいろと見ているうちに、ちょっと興味が湧いてきたので「地獄」について図録の記述をまとめてみました。もし興味のある方がいましたら、どうぞ。
まず、源信というお坊さんが極楽浄土に往生するための方法を「往生要集」という本にまとめました。その中には六道を輪廻するという話があり、この輪廻を逃れると極楽浄土に往生します。
では六道を輪廻するとは・・・
「死んだら生まれ変わる」という仏教の考え。
人は死ぬと「十王」の裁きを受け、次にどの世界に生まれるか(=輪廻)が決まります。この生まれ変わる世界が6つあって「六道」です。ちなみに十王の一人にあの閻魔様がいます。
そして、六道はこんなところ
(1) 天道:六道の最上位。次の人道、阿修羅道とあわせて「三善道」とも言われます。苦しみが少なく、喜びの多い世界ですが、死は免れず、生・老があります。
(2) 人道:人間の世界。快楽もありますが生老病死の苦もあり「四苦八苦」の世界
(3) 阿修羅道:戦いの神・阿修羅の世界。須弥山の帝釈天を相手に勝つことのない戦いを続ける世界
(4) 畜生道:鳥、動物、虫の生きる弱肉強食の世界。次の「餓鬼道」「地獄道」とあわせて「三悪道」と呼ばれます。
(5) 餓鬼道:餓鬼として飢えと渇きに苦しみ続ける世界
(6) 地獄道:悪行をはたらいた者が堕ちるあの「地獄」の世界
そして、地獄に落ちる罪はこの8つ
① (生きとし生けるあらゆるものに対する)殺生、② 盗み、③ 邪淫、④ 飲酒、⑤ 妄語(=嘘)、⑥ 邪見(間違った考えを抱く)、⑦ 犯持戒人(尼僧をだまして汚す)、⑧ 親・阿鼻漢殺害(親や徳のある僧を殺す)
さらに、犯した罪のレベルで地獄のレベルも八段階
(1) 等活地獄:①の罪で堕ちる地獄。罪人同士が骨になるまで傷つけあう地獄
(2) 黒縄地獄:①②の罪で堕ちる地獄。熱鉄の縄で体に線を引かれ、線に合わせて熱鉄の斧で身体を切り刻まれる地獄。等活地獄の10倍苦しい
(3) 衆合地獄:①~③の罪で堕ちる地獄。鉄の山が崩れ落ちて、押しつぶされ粉々にされる地獄。黒縄地獄の10倍苦しい
(4) 叫喚地獄:①~④の罪で堕ちる地獄。矢を射る鬼に追い立てられ、鉄棒で頭を殴られ、熱鉄の地を走らされ、釜で煮られる地獄。衆合地獄の10倍苦しい
(5) 大叫喚地獄:①~⑤の罪で堕ちる地獄。熱鉄の鋭い針で口や舌を刺され、熱鉄の金ばさみで舌を抜かれるが、また生えるため何度も抜かれる地獄。叫喚地獄の10倍苦しい
(6) 焦熱地獄:①~⑥の罪で堕ちる地獄。熱した鉄鍋で炎に炙られる、または鉄の串で身体から頭まで串刺しにされ炙られる地獄。大叫喚地獄の10倍苦しい
(7) 大焦熱地獄:①~⑦の罪で堕ちる地獄。悪行の縄で縛られ、巨大な火柱が何本も立つ炎に落とされ焼かれる地獄。焦熱地獄の10倍苦しい
(8) 阿鼻地獄:①~⑧の罪で堕ちる地獄。二千年間、落下した末にたどり着き、煮えた銅が湧きあがり、大蛇が毒や火を吐き、虫から流れ出た火が雨のように降る地獄。これまでの7つの地獄の千倍苦しい
ということで、単純に計算すると阿鼻地獄は等活地獄に対して
阿鼻地獄=等活地獄×10×10×10×10×10×10×1,000=等活地獄×1,000,000,000
と10億倍苦しい。恐ろしい・・・(私はもう④飲酒の罪で叫喚地獄確定ですT_T)
(展覧会図録から)
次は「禅の教え」から
左は敬愛する仙厓義梵和尚の虎。右は風外本高和尚のネコ
左の「虎が嘯(うそぶ)けば風が生じる」と書かれ、右は「人が間違えてこれを虎だと言わなければ良いのだけれど」と書かれています。はて、虎とネコの違いとはいかに。
続いて「古典美の仏画」から
江戸琳派、酒井抱一の文殊菩薩像
仏画は依頼があって描かれるものですが、そこには信仰はもちろん古来からの「美しいもの」に惹かれるという気持ちがあったからこそ、江戸時代でも多くの画家が本気で取り組んだ画題であった、ようです。
さてさて、次は「ほとけの国の人気キャラ」
本当に人気キャラ、多いですよね。戦隊もののヒーローだったり、ダークヒーローだったり、もちろん正義の味方も。「ほとけの国」の魅力の一つはこの人気キャラが支えていると思います。
横尾忠則さんが新型コロナ渦中に連作で描いた「寒山拾得」
五代将軍綱吉の寒山拾得
日本の昔話には欠かせない「鬼」
曽我蕭白「雪山童子図」(せっさんどうじず)
釈迦は前世、雪山で修業をしたから「雪山童子」と呼ばれています。帝釈天が雪山童子の心を試すべく人食い鬼に化けて「雪山偈」(せつせんげ)というありがたい詩句の前半だけ唱えます。すると、童子は鬼に自分を食べることと引き換えに後半の句を教えるよう、自分の身を投げ出します。鬼であった帝釈天は童子を受け止め、地に下ろし、敬礼したというお話しの正に童子が身を投げ出しているところ。
蕭白らしいユーモアとグロさがある作品
再び、先ほどの禅画で出て来た風外さんと仙厓さん
風外さんの「鍾馗」様
仙厓さんの「十六羅漢」
眼からはビーム!
どちらもゆるい感じが良いです。
本展では円空さんの仏像の展示もあります。
そして、最後は「涅槃図と動物絵画」
釈迦の入滅の時を描いた涅槃図。そこには仏、人、動物たちが釈迦を囲んで悲しんでいる姿が。
このように動物にも気持ちがあり、それを描いているのが「ほとけの国」の美術なのです。
出家までした若冲は涅槃図に描かれるほとけの国の「白象」を。背景の黒とのコントラストが際立っています。
「猿の画家」森狙先。親子が一緒にいる温かみを感じます。
そして、最後は芦雪の子犬
枯木狗子図
狗児図
このほか、子犬を描いた屏風絵もあります。
芦雪の子犬はちょっと崩したところがかわいらしいと言われます。寄り添う子犬はもう人が寄り添うよう。じゃれ合う子犬の"笑顔"は子供のよう。芦雪は子犬に心を見出し、それが「ほとけの国」ならではの作品になったのでしょう。
なんだか「ほとけの国」テーマパークでも回ってきたようなワクワク、ドキドキを感じられる展覧会でした。
このあとは常設展も見て帰りました。
ということで、今回はこの辺で。
実際の作品は是非、展覧会でご覧いただければと思います。
ということで、展覧会場を後にしました。
ミュージアムショップでは絵はがきや図録なども売っています。今回も図録を買いました。
3. さいごに
「ほとけ」をテーマにこれだけのいろいろな切り口があって、とても楽しかったです。画家もいろいろ、テーマもいろいろ、でもどこか通じている。そして、今の時代にもつながっている。極楽、地獄、禅、鬼・・・みんな現代でも現役です。もうすぐ端午の節句。こちらでも鍾馗様がいます。
GWの府中は「くらやみ祭」もあります。美術館からお祭りへ、散策するのも良いのではないでしょか。そして、来年の江戸絵画まつりも楽しみです。
本展の巡回情報は次の通りです。
【巡回情報】
本展の巡回はありません。
関連リンクです。
2024年の展覧会情報はこちら
ということで、今回は以上です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
また、次もよろしくお願いいたします。
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