すきコレ

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【展覧会】コレクションの異境 小貫政之助 展 ~ "永遠の不安"を描く ~@立川・たましん美術館のレポート(2023/2/12 鑑賞)

展覧会に行きたい!よろコンです。

 

本ブログでは見て来た展覧会を個人的にレポートします。

 

今回は、2023年2月12日(日)に見て来た

コレクションの異境 小貫政之助 ~ "永遠の不安"を描く ~ @立川・たましん美術館

です。

立川の小さな美術館に繰り広げられる不安と妖艶が渦巻き揺らめく世界。まさに異境な世界へと出かけていきましょう。

 

今回も最後までお読みいただけますと幸いです。

 

【目次】

 

※ 以下の記述は展覧会の解説、図録、パンフ、その他WEB上の資料等を参照の上、記述しております。また、作品は撮影可能でしたので、展覧会で撮影した写真を掲載しています。

 

1. 展覧会情報

(1) 開催概要

・期間:2022/12/3(土) - 2023/3/26(日)
   ※ 展示替えあり。1/31まで前期、2/4から後期

・時間:10:00~18:00(入館は閉館30分前まで)

・休館日:月曜日

・チケット:一般 500円、高校・大学生 300円、中学生以下無料

・作品数:約90点

・写真撮影:OK

・美術館:たましん美術館(JR立川駅・多摩モノレール立川北駅)

 

(2) 各種リンク等

・美術館サイト

www.tamashinmuseum.org

・パンフレット

美術館サイト内にリンクあり

 

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(たましん美術館。多摩信用金庫(たましん)の本店・本部棟移転にともない新本店・本部棟内に開館。多摩にゆかりのある作家の作品展等を開催。写真右下、この頃は東京にも雪が)

 

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(美術館に入ると)

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(ハチの巣)

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それでは中に入りましょう。

 

2. 鑑賞

(1) 訪問日・混雑状況

訪問日:2023/2/12(日) 14:30頃訪問

鑑賞時間:約70分

混雑状況:ゆっくり快適に見られました。

 

(2) 構成

・1940- 戦争体験 風景・自画像・家族の肖像

・1950- 福生に定住 初期の女性像

・1960- 自由美術協会時代 多様なる女性表現

・1970- 小貫政之助の女性像 様式の確立

・小説家・黒岩重吾と小貫政之助

・1980- 般若心経と女

 

(3) 展覧会風景

小貫政之助(1925-1988)

東京市京橋区生まれ。18歳で太平洋美術学校を卒業したのち、20歳の時、太平洋戦争に召集。終戦直後、21歳で結婚するも翌年、妻が結核のため死去。その後、父、兄も続けて失います。25歳で三番目の妻・妙子との結婚を機に福生に転居。翌年長男が生まれるもこの頃は生活に困窮。その後、読売アンデパンダン展や自由美術家協会展への出展を重ね、画家としての活動を本格化。独自の女性像や小説家・黒岩重吾の装画等、作品を発表していきます。画家として充実した日々と過ごす中、突然大きな"事件"に出くわすのです。

 

  波乱の人生を歩んだ小貫政之助の描く"不安"と"女性"を見ていきたいと思います。

 

それでは作品を

 

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「ひまわり」1948(昭和23)年

佐伯祐三、ブラマンクと言ったフォーヴィズムの画家やセザンヌに影響を受けていた小貫。この「ひまわり」はゴッホの影響が感じられる作品


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「父子像」1951(昭和26)年

 

福生に移り住み長男が生まれた頃。貧困にあえぐ中、子どもを抱く小貫の表情に喜びはなく明らかに"不安"が漂います。そして、この後、大きな"事件"へとつながっていきます。


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「闘鶏」1959(昭和34)年

 

小貫作としては稀有な内容だが、動物に自らの感情を仮託した1960年代の作品に類似しているとのこと。



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「肖像画」1965(昭和40)年

 

先ほどの26歳の父子像から14年、展覧会への出展や画廊での個展を重ね充実した「不惑」40歳を迎えた節目の作品。明らかに不安は消え、自信に満ちた姿です。

 

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「転」1965(昭和40)年

 

手・足・頭が様々な方向を向き、重なり合い、血のような赤が塗りたくられる。この絵を見てピカソの「ゲルニカ」を思い起こしました。(展覧会の解説にも同様の記載あり)
小貫は関東大震災の写真資料を保管していたことから、そのイメージを展開した可能性もあるとのこと

 

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(展覧会風景)

 

そして、ここからは女性像

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「ストッキングA」1967(昭和42)年

 

「ストッキング」と題された連作のひとつ。女性像のすべてを描かない、描くことで強調すべき発想時の目的が弱まることを恐れる、とは小貫の言葉。黒岩重吾「黒い巡礼」(1972年)の装画


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「おんなと花」1970(昭和45)年以降

作成年は分からないながら完成度から1970年以降の作品と目されています。女性の顔の前、闇の中で微かに光る炎のような一輪の花が作品の妖艶さをいっそう引き立てます


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「仮面」1970(昭和45)年

 

本展のパンフでも採用されているアイコン的作品。チラシミュージアムでこの絵を見て、この展覧会に来ることを決めました。

仮面の下の仮面の下の女性の顔。仮面に囲まれた女性の本性はいったいどこにあるのか・・・

 

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「花をさす女」1970(昭和45)年以降

 

黒と白。黒から浮かぶ女性の顔。白から浮かぶ花飾り。恍惚な世界


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「般若心経・女」1980(昭和55)年以降

 

充実した1970年代が過ぎ1980年。小貫にとって大きな"事件”が発生します。それは三島由紀夫に傾倒していた一人息子の自殺。そのショックと自責の念から筆を持てなくなった小貫。やがて般若心経を書き始めます。来る日も来る日も写経する中、やがて女性の姿が浮かび上がり、作品へと昇華していきます。小貫はほぼ毎日写経し、それは晩年まで続いたとか。

 

そして、昭和が終わる1988(昭和63)年紫陽花の頃、63年の生涯を閉じます。

 

 

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ということで、会期もあとわずかになりましたが、とても見ごたえのある展覧会でした。この展覧会で初めて小貫政之助作品と"出会い"ました。また、小貫政之助の展覧会があれば、行ってみたいと思います。

 

(4) ミュージアムショップ

立派なミュージアムショップもあります。今回は図録を購入

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図録:2000円(税込み)

 

3. さいごに

大正の終わり、この世に生を受け、昭和の終わり、この世を去る。戦争から高度成長、貧困から成功、そして大きな挫折、悲しみ。小貫政之助はまさに昭和とともに生きた画家だったと思います。その中には不安、葛藤、絶望、妖艶、官能、恍惚、挫折、恐れ、悲しみ・・・昭和の時代に渦巻いていたあらゆる感情が作品の中で今も鼓動している、その鼓動は令和の今でも鼓動し続け、それがこの展覧会の空気を作り出しているのだと思いました。

近くには昭和記念公園もあります。花の季節。是非、立川にいらしてみてはいかがでしょうか?

 

ちなみに、こちらの美術館さん。館内にトイレがないので、近くのGREEN SPRINGSのトイレなどをご利用ください。

 

それでは、さいごに関連リンクです。

 

3月の展覧会情報はこちら

www.suki-kore.tokyo 

小貫も傾倒した画家

www.suki-kore.tokyo

 

  ということで、今回のレポートは以上です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

また、次のレポートもよろしくお願いいたします。

 

※ ご意見、ご感想、大歓迎です。是非コメントかメール(yorocon46@gmail.com)まで。ツィッターは@yorocon46です。

 

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(立川の街、進化し続けます)