展覧会に行きたい!よろコンです。
本ブログでは既に完了した展覧会も含め、好きな展覧会をレポートしていきます。
今回は、2021年11月7日(日)に訪問した
「ゴッホ展 響きあう魂 ヘレーネとフィンセント」@東京都美術館
です。
今では展覧会はいつも満杯。オークションでは高額落札。誰もが認める人気画家のゴッホ。
それでも生前は絵がまったく売れなかったというのは有名な話
そんなゴッホにある女性が出逢いました。そして彼女はゴッホへとのめり込んでいきます。もし、彼女がいなかったら、今の私たちはゴッホをこれほどまでに知らずに生きていたかもしれません。そんな彼女とは・・・
ゴッホとゴッホを追いかけ続けた"彼女"の展覧会です。
今回も最後までお読みいただけますと幸いです。
【目次】
※ 以下の記述は展覧会の解説、図録、パンフ、その他WEB上の資料等を参照の上、記述しております。また、絵画の写真は購入した展覧会図録を撮影しています。
1. 展覧会概要
(1) どんな展覧会か
フィンセント・ファン・ゴッホ(Vincent van Gogh)
1853年3月30日生まれ。言わずと知れたオランダが誇る大画家
展覧会サイトの説明等を基に少しまとめてみます。
ゴッホが画家になると決めたのは1880年8月。人物画家を目指し、素描を始めます。その後、バルビゾン派、ハーグ派の画家に倣い暗い色調で農民の生活などを描きます。
1886年2月末、フランス・パリに移ったゴッホは印象派・新印象派の作品、日本の浮世絵などと出会います。そこから明るく力強い作風へと変わっていくのです。
その後、南仏・アルルに移り、ついに迎えたゴーガンとの憧れの共同生活、夢の実現・・・
その生活は儚くも2か月で破綻
ゴッホは病による突然の発作に襲われます。アルルを離れ療養生活を送りながらも作品を描き続けますが、1890年7月27日、自らに銃口を向けるとその二日後、帰らぬ人となりました。享年37歳。画家としてはわずか10年の活動でした。
さて、ゴッホの死後18年。ある夫人がゴッホの絵を購入します。
夫人の名前はヘレーネ・クレラー=ミュラー
夫は実業家として成功。1907年から少しずつ美術品を買い集め始め、翌1908年、ゴッホを高く評価する美術教師ブレマーの勧めを受けてゴッホの絵を初購入します。それから彼女はゴッホの絵に流れる精神性に深く共鳴し、その作品を買い集めていきます。そしてファン・ゴッホ家に次ぐゴッホ・コレクションを形成。1938年にはクレラー=ミュラー美術館を開館して初代館長に。しかしながら夢の美術館が実現した翌年、この世を去ってしまいます。享年70歳
フローリス・フェルステル「ヘレーネ・クレラー=ミュラーの肖像」1910年
ヘレーネ41歳の肖像。夫と子どもは気に入ったのに、当の本人は気に入らなかったとか
フローリス・フェルステル「H.Pブレマーの肖像」1921年
こちらが早くからゴッホを高く評価した美術の先生です。
油彩画90点以上、素描・版画180点以上。現在でも世界"第2位"を誇るゴッホ・コレクションの展覧会です。
(2) 開催概要
・期間:2021/9/18(土) - 2021/12/12(日) ※ 明日終了(12/11記述時点)
・時間:9:30~17:30(入館は閉館30分前まで。金曜日は20:00まで。入場日時予約制
・会場:東京都美術館(上野駅)
・チケット:一般 2000円、大学生・専門学校生 1300円、65歳以上 1200円、高校生以下無料
・作品数:68点(目録から)
・写真撮影:NG
・Webサイト:
(展覧会サイト)
(この時でも、この混雑でした)
(3) パンフレット
(表面)
(見開き左)
(見開き右)
(裏面)
2. 展覧会の中へ
(1) 訪問日・混雑状況
訪問日:2021/11/7(日) 11:00頃訪問。
鑑賞時間:約80分
混雑状況:混んでいましたが予約制のため"ぎゅうぎゅう"ではありませんでした。
(2) 展覧会の構成
1 芸術に魅せられて:ヘレーネ・クレラー=ミュラー、収集家、クレラー=ミュラー美術館の創立者
2 ヘレーネの愛した芸術家たち:写実主義からキュビズムまで
※ ヘレーネがコレクションしたゴッホ以外の画家の作品です。印象派・新印象派・キュビズムにデ・ステイルと幅広い分野の作品が集められています。
3 ファン・ゴッホを収集する
3-1 素描家ファン・ゴッホ、オランダ時代
3-2 画家ファン・ゴッホ、オランダ時代
3-3 画家ファン・ゴッホ、フランス時代
3-3-1 パリ
特別出品 ファン・ゴッホ美術館のファン・ゴッホ家コレクション:オランダにあるもう一つの素晴らしいコレクション
3-3-2 アルル
3-3-3 サン=レミとオーヴェール=シュル=オワーズ
※ 素描を描き続けた時代、バルビゾン派・ハーグ派のスタイルであったオランダ時代、印象派・ポスト印象派へと展開したフランス時代と時代を追って展示されています。
途中、特別出品としてファン・ゴッホ家のコレクションから構成されるアムステルダムのゴッホ美術館の作品も。「黄色い家(通り)」はゴッホ美術館から。
(3) 気になる作品
まずは、ヘレーネの集めたゴッホ以外の作品から
パウル・ヨセフ・コンスタンティン・ハブリエル「それは遠くからやって来る」1887年
ハーグ派の画家。遠くから蒸気機関車がこちらに迫って来る感じが良いですね。
ハーグ派は画面右にあるような素朴な農村を絵の題材に好んだので、汽車が描かれるのは珍しいとか。そう考えると意味ありげなタイトルです。
アンリ・ファンタン=ラトゥール「静物(プリムローズ、洋梨、ザクロ)」1866年
ヘレーネは最初ラトゥールをゴッホより"格上"とみていたらしく、ゴッホを至高の画家ととらえていた美術教師ブレマーがそれを諭していたとか
次からはゴッホ作品。まずはオランダの素描時代から
「ジャガイモを食べる人々」1885年4月
アントン・ファン・ラッパルトから「奥にいる女性の手が薄っぺらで真実味がない」などと酷評され二人の友情が終わったという作品。ただ、批評は受け止め、さらに素描に精進したとか
バルビゾン、ハーグに倣ったオランダ時代の作品からは
「白い帽子を被った女の顔」1884年11月-1885年5月
この頃は素朴な農民の顔を選んで描いていました。
そして、フランスに来てから
パリ時代
「青い花瓶の花」1887年6月頃
「レストランの内部」1887年夏
パリでの二作品。一気に華やいだ感じがします。ちょっと写真は暗めですが「レストランの内部」はとても明るい新印象派風の作品でした。
特別出品のアムステルダムのゴッホ美術館から
「サンと=マリー=ド=ラ=メールの海景」1888年6月
あまり海の絵を描いていた印象がないのですが、遠景の明るく穏やかそうな海と空、近景の力強い波のコントラスト。
「黄色い家(通り)」1888年9月
南仏の芸術家の共同体を夢見た家。この年の10月23日にゴーガンが到着。
しかしながら、あまりに異なる二人の芸術観は相いれないまま、ゴーガンは去っていきます。夢の終焉・・・
さて、ヘレーネのコレクションに戻って
強烈な色彩のアルル時代から
「緑のブドウ園」1888年10月3日頃
「種まく人」の輝く太陽もとても印象的ですが、このブドウ園のうねるような枝ぶりも印象的です。この絵はゴーガンの到着を待つ間、黄色い家の装飾のため描いた作品
ちなみにゴッホは写実を重視、ゴーガンは想像を通して描くことを重視。これが二人の決定的な違いで埋められない溝でした。
そして、共同生活が終わり移り住んだサン=レミ、オーヴェール=シュル=オワーズでの作品
「悲しむ老人(「永遠の門にて」)」1890年5月
夫アントンが1913年5月15日25回目の25回目の結婚記念日でヘレーネに贈った作品。
どんな贈り物よりこの絵がうれしいとはヘレーネの言葉。
「夜のプロヴァンスの田舎道」1890年5月12-15日頃
太陽のような星、細い三日月。おそらくゴッホのサン=レミ最後の作品とのこと
記憶を頼りに描いたこの絵は想像で描くことを重視してゴッホの下を去ったゴーガンへの挑戦状でもあったとか。
いずれにしても、この絵の輝きに魅せられました。
ということで、この他にも、もっともっと紹介したい素敵な展覧会でしたが、今回はこの辺で・・・
(4) ミュージアムショップ
図録と絵はがき購入です。
図録は2400円(税込み)
(表紙)
(裏表紙)
絵はがきは一枚150円(税込み)でした。
3. さいごに
もしヘレーネのような人とゴッホが直接出会っていたら・・・
きっとゴッホの人生は全く変わったものになったのではないか
そして、ゴッホの作品はもっと多く残されたのではないか
ただ、今のようなゴッホの作品とは違ったテーストになっていたかもしれない
"たられば"を言っても仕方ないのですが、想像するとおもしろくなります。
ただ、ヘレーネがいたからこそ、今こうしてゴッホの作品を見ることができるのは間違いないように思います。
クレラー=ミュラー美術館。是非一度は行きたいものです。
どんな季節でもユニーク – Kröller-Müller Museum
この展覧会は東京展は明日2021/12/12(日)で終わりますが
・福岡市美術館:2021/12/23(木)~2022/2/13(日)
・名古屋市美術館:2022/2/23(水・祝)~4/10(日)
と巡回します。是非、見に行ってみてください。
それでは、さいごに関連リンクです。ゴッホもあります。
ということで、今回のレポートは以上です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
また、次のレポートもよろしくお願いいたします。
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