すきコレ

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【展覧会】風景画のはじまり コローから印象派へ 展@新宿・SOMPO美術館のレポート(2021/7/22訪問)

ただの美術好き、よろコンです。

 

久々ですが、本ブログでは過去に見た展覧会も含め、気になる展覧会をレポートしていきます。

 

今回は、4連休の初日2021/7/22に訪問しましたこちらの展覧会から

 

ランス美術館コレクション 風景画のはじまり コローから印象派へ @ 新宿・SOMPO美術館

 

です。

 

コロー、バルビゾン、ブーダン、印象派

フランスの近代風景画は近代絵画の歴史を形作るほどに充実した発展を遂げました。

フランス・シャンパーニュ地方のランス美術館。あのルーヴルに次ぐコロー作品の収蔵数を誇るなど19世紀の風景画が充実。現在、改修のため長期休館中。だからこそ作品たちが世界を行脚。そんなランス美術館のコレクションから印象派をひとつの頂点としたフランス風景画の流れをたどる展覧会です。

夏の暑い日、涼しい美術館で素敵な風景画を見ながら、ちょっと贅沢な時間を過ごしませんか?

 

ということで、今回も、最後まで、お読みいただけますと幸いです。

 

【目次】

 

※ 以下の記述は展覧会内の説明、パンフ、図録、その他WEB上の資料などの説明を参照の上、記述しております。なお、作品の写真は購入した図録を撮影しています。

 

1. 展覧会概要

(1) どんな展覧会か

フランス近代風景画

そもそも風景画って、今では当たり前にあるジャンルですが、西洋絵画においてその存在が認められるようになるのは意外と新しいようで・・・

ルネッサンス以前、絵画のジャンルというものは明確ではなく宗教・神話・歴史的出来事を描くいわゆる「歴史画」が存在し、そのほかの絵は歴史画の構成要素でした。

それがルネッサンスになると教会や王侯貴族から注文の増えた「肖像画」、遠近表現技法の発達から発展した「風景画」、寓意的表現から独立していった「風俗画」、市民社会の現実や装飾への関心から生まれた「静物画」とそれぞれのジャンルに分かれていきます。

17~19世紀になると絵画・彫刻の振興を目的として設立したフランス王立絵画彫刻アカデミーが美の「ヒエラルキー」を設定します。それが次のものでした。

最高位=歴史画:聖書や神話等、画家の想像力の賜物

2位=肖像画:神の作りし人間の肖像

3位=風俗画:その人間の日常生活

4位=風景画:ただの風景

5位=静物画:ただのもの

※ 各ジャンルのコメントはいくつかの資料を参照して書きましたが、意訳が過ぎたらごめんなさい。

 

しかし時は流れ、産業革命はブルジョアを生み、そのブルジョアは鉄道を使って郊外に旅行をし、都市では失われた郊外の風景を求めます。絵画も、アカデミーの権威への反発の中、最新のチューブ式絵具を片手に画家たちがこれまた鉄道に乗って戸外へと出かけ、美しい風景をその場で描くようになります。

こうして風景画は人気のテーマとなり、その地位は向上し、やがて絵画史最大のエポックメイクな運動のひとつ「印象派」へとつながっていくのです。

 

そんな「風景画のはじまり」からその後をたどっていく展覧会です。

 

(2) 開催概要

 ・期間:2021/6/25(金) - 2021/9/12(日)

 ・休館日:月曜日(8/9は開館・・・もう過ぎましたが)

 ・時間:10:00 - 18:00(入館は17:30まで)

 ・会場:SOMPO美術館(新宿)

    ※ 西口の高層ビル群の中です。エルタワービルを抜けて地下を歩いて行きます。JR西口改札から10分弱。


 ・チケット:一般1500円、大学生1000円、高校生以下無料(日時予約制・アソビューのサイトで購入)

 ・作品数:71点+収蔵品(ゴーガンとゴッホのひまわり)

 ・写真撮影:NGでした。

 ・Webサイト:

www.sompo-museum.org

(美術館サイト)

SOMPO美術館(旧館名:東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館)ゴッホ《ひまわり》を収蔵。新宿駅 徒歩5分

 

(外から見た美術館。この日も暑かった)

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(入口のポスター)

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(3) パンフレット

(表面)

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(裏面)
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(4) 行くきっかけ

SOMPO美術館で開催された一つ前のモンドリアン展で、次にこの展覧会があることを確認し、見に来ることを決めていました。

 

2. 展覧会の中へ

(1) 訪問日・混雑状況

訪問日:2021/7/22(木・祝) 晴れ。14:50頃

鑑賞時間:約60分

混雑状況:日時予約制のため混んではいませんでしたが、四連休初日、夏休みに入ったこともあり、学生さんも多くて、人はそれなりにいました。なるべく早めに見た方が良いかと思います。(日時予約なので最後の土日は直前では予約できないかも)

 

(展覧会場のコース)

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美術館で配布されていた地図
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では、いよいよ展覧会場に。

 

(2) 展覧会の構成と気になる作品

構成は次の通りです。

 

第1章  コローと19世紀風景画の先駆者たち

第2章  バルビゾン派

第3章  画家=版画家の誕生

第4章  ウジェーヌ・ブーダン

第5章  印象派の展開

 

展示作品は

https://www.sompo-museum.org/wp-content/uploads/2021/06/pdf_ex_musees-reims_list.pdf

からも確認できます。

 

 

第1章  コローと19世紀風景画の先駆者たち

これまでのアトリエの中で「理想化」した風景を描くアカデミックな描き方(=「歴史画」の描き方)から、戸外に出て「写実的」に描くことへ移り始めた頃の作品です。この革新を産業革命の産物である鉄道が、チューブ型絵具が、そして産業革命の結果失われた自然を求めるブルジョアたちが後押しします。

ここでは、コローをはじめとしたフランス風景画の先駆者たちの作品が展示されています。そんな中から・・・

 

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ギュスターヴ・クールベ 「レマン湖の岸辺(急流)」1875年頃 油彩/カンヴァス 61.5cm×50.1cm

 

「私は世界一傲慢な画家である」「私は目に見えるものしか描かぬ」

絵画の革命家・クールベの風景画。険しい岩肌に急流。「写実主義」を唱えたクールベも多くの風景画を残しています。この絵はパリ・コミューン後、莫大な賠償金の支払いを命じられスイス・レマン湖に亡命していた頃の作品。気力衰えていた頃と言いますが、絵には気迫を感じます。

 

次はコローから2作品

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ジャン=バティスト・カミーユ・コロー 「樹間の小道、春」1860-70年頃 油彩/キャンバス 55.2×42cm


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ジャン=バティスト・カミーユ・コロー 「イタリアのダンス」1865-70年頃 油彩/キャンバス 66.5×47.7cm

 

コローは最終的な制作はアトリエで行っていますが、イタリアやフランスなどの旅先の戸外でも制作をした初期の画家とのこと。

コローというと、森の高い木々の間に話をする人、休む人、そして踊る人(?!)といった自然に溶け込む形で土地の人が登場する絵が印象に残ります。

1つめの作品はコローがしばしば制作を行ったフランス・オワーズ県マリセルでの一枚、2つめの作品は定期的なイタリアの旅の思い出を描いた一枚とのこと。

 

第2章  バルビゾン派

ミレーで有名なバルビゾン派はパリ南東・フォンテーヌブローの森に位置するバルビゾン村に集まってきた画家たちのこと。住む者もいれば通いの画家も。いよいよ、素朴な村の風景とそこに住む普通の農民と動物たちが絵の主役になっていきます。

 

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テオドール・ルソー 「沼」 1842-43年 油彩/カンヴァス 41.1×63.3cm

 

テオドール・ルソーはバルビゾンを代表する画家で、村の住人。

風景の中、沼のほとりに座る羊飼いの女性の赤いドレスがアクセントの一枚。

 

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コンスタン・トロワイヨン 「ノルマンディー、牛と羊の群れの帰り道」 1856年 油彩/カンヴァス 46.2×60.8cm

 

バルビゾン派で最も有名な動物画家・トロワイヨン。牛、羊、その前を走る犬、そしてゆっくりとついてくる農民。のどかなバルビゾン村の風景

 

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アンリ=ジョゼフ・アルピニー 「ヨンヌの思い出、サン=プリヴェからブレノーへの道」 1885年 油彩/カンヴァス 55×72.2cm

 

コローのお友達アルピニー。この写真では伝わらないのですが、少しべた塗りの感もありながら明るい空の水色。そのほかの作品も含め、とても色が素敵な画家でした。

 

第3章  画家=版画家の誕生

 

19世紀は版画技法も発達した世紀とか。特にエッチングはもっともよく使われた技法でバルビゾンの画家もデッサンなどの再現、雑誌の挿絵制作などに活用しています。

 

そんな版画をよく利用した画家のひとり
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シャルル=フランソワ・ドービニー 「柵の中の羊の群れ・朝」 1860年(刷り1862年) エッチング/紙 18.4×34.2cm

 

まだ寝ている羊。奥の羊は先の食事中でしょうか?飛び立つ鳥たち。こちらものどかな農村の風景。

 

第4章  ウジェーヌ・ブーダン

1824年7月12日、フランス西部ノルマンディーに生まれたブーダン。

見習い水夫、印刷工を経て画材屋を構えたブーダンの店にはミレーやトロワイヨンの作品が並んだとか。のちに画家となり、戸外制作の先駆者に。コローをして「空の王者」と言わさしめ、モネと出逢い、第一回印象派展にも出展。いよいよ印象派に上り詰める風景画の歴史の中、重要な位置を占める画家のコーナーです。

 

ブーダンと言えば海と空。なので、数ある展示の中からこの一枚

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ウジェーヌ・ブーダン 「上げ潮(サン=ヴァレリの入り江)」 1888年 油彩/カンヴァス 50×75.3cm

 

広い空、青い海。浜辺に遊ぶ人たち。「空の王者」にふさわしい一枚。

 

第5章  印象派の展開

そして、いよいよ印象派にたどり着きます。

アカデミーの厳しい規範から脱し、自由な制作を求めた画家たちは、戸外に飛び出し、ヒエラルキーの中でも下位に位置する風景画を描くことで光を描き、新しい時代を作ったのでした。風景画が起こした絵画の革命ではないでしょうか。


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カミーユ・ピサロ 「ルーヴル美術館」 1902年 油彩/カンヴァス 46.3×55.6cm

 

新たな風景である「街」を描いた作品。機関車、街、工場の煙突等、印象派の風景画は対象も新しい時代を反映しています。


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クロード・モネ 「べリールの岩礁」 1886年 油彩/カンヴァス 65.6×81.5cm

 

やはりモネのこの岩肌、この海の色。素晴らしいです。

フランス・ブルターニュのべリールでの一枚。


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マクシム・モーフラ 「日没の岩礁」 1899年 油彩/カンヴァス 54.1×73.1cm

 

フランスはブルターニュ、ポン・タヴェンにいたゴーガンに影響を受けたモーフラ。

同じブルターニュの海でもモネとくらべこちらはとても穏やかに感じます。比較しながら見ても面白い一枚。

 

 

  まだまだコローやブーダンのほかの作品、ルノワール、シスレーと、見どころは満載です。生の絵の色は鮮やか。ぜひぜひ機会があれば展覧会を見に行ってみてください。

 

   最後はSOMPO美術館が誇るゴーガンにゴッホのひまわりをみて展覧会場を出ます。

 

(3) ミュージアムショップ

今回もミュージアムショップで図録を購入です。


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図録 2,500円

 

モネとコローの表紙が良いです。

 

3. さいごに

西洋絵画での風景画。いろいろな変遷を経ています。

では日本はというより東洋の風景画と言えば「山水画」

むしろもともとの評価が高かったジャンルじゃないかなぁ思います。この辺は日本と西洋の宗教や歴史、文化の違いなのかもしれません。

日本でも旅行のブームが浮世絵の風景画ブーム(富嶽三十六景や東海道五十三次)をけん引しているところもあるので、人々の生活の変化がアートに及ぼす影響も見逃せないなぁと感じます。風景画、とても奥深いジャンルです。

 

ではまた、展覧会、行ってきます。

 

それでは、さいごに関連リンク

美術展ナビのトピックスで展覧会の雰囲気が伝わります。

artexhibition.jp

こちらは日本の風景画の展覧会です。

www.suki-kore.tokyo

SOMPO美術館の前回の展覧会

www.suki-kore.tokyo 

   今回のレポートは以上です。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

また、次のレポートもよろしくお願いいたします。

 

※ ご意見、ご感想、大歓迎です。是非コメントかメール(yorocon46@gmail.com)まで。ツィッターは@yorocon46です。

 

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家を出た時。こんな夏空でした。