すきコレ

好きなものをコレクションする。そんなコンセプトのブログです。旅にアートに、それからそれから...

【展覧会】コートールド美術館展 魅惑の印象派@上野・東京都美術館のレポート(2019/11/1訪問。2020/3/29記述)

自称アート・リポーターこと、よろコンです。

 

※ 2020/3/29時点、東京は新型コロナウィルス(COVID-19)の感染拡大を防ぐため、外出自粛の状況にあります。今週末も多くの美術館が臨時閉館しています。今回は過去に訪問した展覧会について、レポートしたいと思います。

(本ブログでは今後も既に完了した展覧会も含め、好きな展覧会についてレポートしていく予定です)

 

今回は、昨年(2019年)11月1日に訪問した

 

コートールド美術館展 魅惑の印象派 @ 上野・東京都美術館

 

のレポートです。

既に東京展は終了していますが、2019年度、もっとも印象に残った美術展の一つですので、お読みいただけますと幸いです。

 

【目次】

 

※ 以下の記述は展覧会の解説、図録、パンフ、その他WEB上の資料を参照の上、記述しております。また、絵画の写真は購入した展覧会図録を撮影しています。

 

1. 展覧会概要

(1) どんな展覧会か

コートールド美術館は繊維業(人口絹=レーヨン)で財を成したイギリスの実業家サミュエル・コートールド(1876-1947)のコレクションをベースに設立された美術館です。 

f:id:YoroCon:20200329195725j:image

(サミュエル・コートールド)

 

サミュエル・コートールドは優れた実業家であるとともに優れた審美眼を持つコレクターでもありました。また、妻・エリザベスも芸術への情熱を分かち合い、コレクション形成に大きな影響を与えました。

コートールドは、まだイギリス国内で評価の定まっていない印象派・ポスト印象派の作品を収集します。そして、個人の楽しみのためだけではなく、自らのコレクションがすべての人々の共有する財産となることを望み、国の美術作品購入のための基金を設立したりします。それは、芸術にはすべての人々や国々を結びつける力があるという信念に基づくものでもありました。

美術館は1932年にロンドン大学付属のコートールド美術研究所の美術館として開館。1989年にロンドンの中心、サマセット・ハウスへと移り、現在に至ります。

f:id:YoroCon:20200329195713j:image

(ロンドンのサマセット・ハウス)

 

本展は、ロンドンの美術館改修工事のため実現した名作を直接日本で鑑賞できる貴重な機会となりました。

 

(2) 開催概要(東京展)

 ・期間:2019/9/10(火) - 12/15(日)

 ・会場:東京都美術館(上野)

 ・チケット:一般 1600円、大学生・専門学校生 1300円、高校生 800円、65歳以上 1000円

 ・写真撮影:NGでした 

 ・Webサイト:

courtauld.jp

f:id:YoroCon:20200329195518j:image

(上野公園内の案内)


f:id:YoroCon:20200329195512j:image

(美術館・外観)

 

(3) パンフレット

f:id:YoroCon:20200329195705j:image

(表面・見開き)

f:id:YoroCon:20200329195645j:image

(中・左面)

f:id:YoroCon:20200329195716j:image

(中・右面)

 

(4) 行くきっかけ

「日経おとなのOFF」1月号の2019年展覧会特集で展覧会を知り、印象派のコレクション展ということで、行くことは即決でした。

 

2. 展覧会の中へ

(1) 訪問日・混雑状況

訪問日:2019/11/1(金) 晴れ 14:40頃訪問。会社は午後半休を取って行きました。

鑑賞時間:約90分

作品数:60点+参考資料(手紙や当時世相を映す雑誌の図版など)

混雑状況:人は多かったですが、平日午後でしたので並ぶことはありませんでした。

f:id:YoroCon:20200329195505j:image

(会場入り口)

 

(2) 展覧会の構成

1. 画家の言葉から読み解く

  画家の手紙などに残された言葉から、画家が作品に込めた思いを読み解きます。展示会場内では「収集家の眼」として、コートールドのコレクションでもっとも多いポール・セザンヌの作品を集めたコーナーがあります。

 

2. 時代背景から読み解く

  産業化が急速に進んだ19世紀フランスで新たな風景となった工場や鉄道、「パリ大改造」の結果、生み出されたパリの都市生活。そんな新しい時代を反映した絵画のコーナーです。「収集家の眼」はピエール=オーギュスト・ルノワールです。

 

3. 素材・技法から読み解く

  芸術家たちの用いた素材や技法。コートールド美術館ではX線、赤外線等での科学的調査も行われているとのこと。19世紀の画家たちが生み出した新しい表現を素材・技法を切り口に迫ります。ポスト印象派の作品が中心のコーナーです。「収集家の眼」はポール・ゴーガンです。

 

(3) 気になる作品

まずは「1. 画家の言葉から読み解く」からの作品です。

f:id:YoroCon:20200329195628j:image

(ジェームズ・アボット・マクニール・ホイッスラー「少女と桜」1867-1872 )

1855年にアメリカからパリに渡ったホイッスラーはのちにロンドンを主に活動します。桜や画面右端に描かれた和傘は日本美術からの影響でしょうか。可憐な作品だと思います。

 

f:id:YoroCon:20200329195648j:image

(フィンセント・ファン・ゴッホ「花咲く桃ノ木」1889)

アルルでのゴーガンとの共同生活は2か月で破綻。そして、耳切り事件に・・・

のちにサン=レミの療養院に入院しますが、その前にアルル郊外で最後に描いた風景とのこと。桃の花、右奥に見える雪を頂く山は富士山?!ゴッホの日本趣味をうかがわせる作品です。

 

f:id:YoroCon:20200329195659j:image

(クロード・モネ「アンティーブ」1888)

1888年1月半ばから滞在した南仏・アンティーブで手掛けた38作品のうちの1枚。近景の中央に大きく描かれた木に浮世絵の影響がありや、なしや。このとき、モネがロダンに宛てた手紙には「私は、太陽と刃を交え闘っています。この地の太陽は、なんて太陽だ!黄金と宝石で描かなければならないのです」という言葉が。画家の光との「格闘」がうかがえます。

 

f:id:YoroCon:20200329195710j:image

(クロード・モネ「花瓶」1881着手)

「制作したばかりの大きな花の絵を放棄した」

モネが制作後、画商に宛てた手紙の一節。この絵は制作・放棄が繰り返された作品のようで80歳になった1920年頃にようやくサインされたようです。個人的には明るく華やかで軽やかさ、みずみずしさのあるこの絵が好きです。

 

f:id:YoroCon:20200329195642j:image

(ポール・セザンヌ「カード遊びをする人」1892-1896頃)

コートールドはセザンヌが大好きだったようで、コレクション内でも、もっとも多くの作品を収集しているとのこと。本展でも60点中9点がセザンヌ。初めてセザンヌを見たときの言葉「その瞬間、私は魔術を感じ、それ以来ずっとこの画家の魔術にかかったように感じている」

展覧会場ではこの絵の細かい解説もあり、机が傾いている点、腿が長く描かれ正確性より画面全体の調和が優先されているようなことに気づかされます。

 

f:id:YoroCon:20200329195719j:image

(ポール・セザンヌ「キューピッドの石膏像のある静物」1894頃)

コートールドが最初に購入したセザンヌ作品とのこと。机の位置に対して極度に傾いた床、遠近感を無視した奥のリンゴ、テーブルクロスなのかキャンバスを覆っているのか分からない青い布。布に包まれたリンゴの位置も不自然。キャンバスから飛び出したようにも見えるキューピッド。よく見ると不自然、でもなんか微妙に調和したような静物画。コートールドは早くからセザンヌの魅力を理解していたようです。(私が理解するにはもう少し時間がかかるかも)

 

続いて「2. 時代背景から読み解く」から

f:id:YoroCon:20200329195625j:image

(ピエール=オーギュスト・ルノワール「桟敷席」1874年)

こちらも展覧会場では詳細な解説がなされています。男性はルノワールの弟・エドモン、女性は当時ルノワールのお気に入りのモデルであったニニ・ロペスとのこと。第1回印象派展に出品された作品です。劇場の桟敷席は正に新しい時代の風景。男は劇を見ずに何を見ているのでしょう。そして、女も劇を見ず、誰にポーズをとっているのでしょう。当時の桟敷席で繰り広げられるドラマがうかがえます。

 

f:id:YoroCon:20200329195652j:image

(エドガード・ドガ「舞台上の二人の踊り子」1874年)

ドガの作品から上演作がわかるものは少ないようですが、こちらは衣装などからモーツァルトのオペラ「ドン・ジョヴァンニ」の幕間に上演される「バラの踊り」ではないかとのこと。果たして本番なのかリハーサルなのか。踊り子を下から照らす人工照明がこの時代の新しさを表現しています。

 

f:id:YoroCon:20200329195721j:image

(エドゥアール・マネ「フォーリー=ベルジェールのバー」1882)

96×130cmと比較的大きな絵です。マネ晩年の大作。こちらも展覧会場では詳細な解説があります。

手前の静物は緻密に、奥の鏡に映った人々は荒いタッチで描かれています。右寄りに描かれた鏡の中の彼女の姿と霞むように見える向き合う男。

こちらに向かった彼女の表情は精緻に、そして無表情で悲しげにも・・・

いろいろなことを考えさせられる、美しく、ドラマ性のある一枚。今回の展覧会の目玉であり、いちばん魅了された絵でした。

 

最後は「3. 素材・技法から読み解く」から

f:id:YoroCon:20200329195620j:image

(アメデオ・モディリアーニ「裸婦」1916)

モディリアーニの裸婦像は最近、特に人気があるようです。本作はX線などの調査で顔の描き方、体の描き方が異なり、体はうろこのような筆を押し付けた筆致で、顔は細い筆で滑らかに、髪はひっかいて線を描くといった描き分けがなされているとのこと。画家のさまざまな試みが結実した一枚です。

 

f:id:YoroCon:20200329195702j:image

(ポール・ゴーガン「ネヴァーモア」1897年)

こちらも、展覧会場では詳細な解説があります。タイトルは「二度とない」の意味の英語でエドガー・アラン・ポーの詩「大鴉」から着想されているとのこと。恋人を失った主人公のもとに姿を現した大カラスが「ネヴァーモア」と繰り返す詩。ただし、ゴーガンは窓辺の鳥をカラスではなく「悪魔の鳥」と呼び、詩との関係を否定していたようです。

 

・・・そして、出口に。そこには写真撮影エリアも。

f:id:YoroCon:20200329195500j:image

 

(4) ミュージアムショップ

今回は、迷わずに図録を購入しました。 f:id:YoroCon:20200329195639j:image

展覧会の作品の詳細な解説は、本図録内にも収められています。透明なフィルムの解説ページを作品に重ねることで、展覧会でみた解説を上手に再現しています。お薦めの一冊。

この他、絵ハガキもありますので、気に入った作品の絵ハガキを購入されてはいかがでしょうか。私は「桟敷席」「フォーリー=ベルジェールのバー」を購入しました。

 

3. さいごに

これまでご紹介した作品のほかにも

ブーダン、シスレー、ロートレック、ボナール、ルソー 等々

全体の作品数は多くないものの、名作ぞろいで、どれをとっても見に来てよかったと思えます。中でも、私にとっては 「フォーリー=ベルジェールのバー」は、生で見たからこそ、その絵の持つ力に魅了される、そんな素敵な経験ができたと思います。また、いつかロンドンに行くことがあったら、是非とも訪れたい美術館だと思います。

 

それでは最後に巡回情報です。

・愛知展@愛知県美術館:2020/1/3-3/15 ※ ただし3/1にて終了

・神戸展@神戸市立美術館:2020/3/28-6/21 ※ ただし開始時期延期中(3/29時点)

※ 新型コロナウィルスの影響によるものです。早く終息して、また展覧会を楽しめる日が来るのが楽しみにしています。そのためにも、今は我慢の時期。みんなで乗り切りましょう。

 

  今回のレポートは以上です。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

また、次のレポートもよろしくお願いいたします。

 

※ ご意見、ご感想、大歓迎です。是非コメントかメール(yorocon46@gmail.com)まで。