すきコレ

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【展覧会】映えるNIPPON 江戸~昭和 名所を描く 展@府中・府中市美術館のレポート(2021/7/3訪問)

ただの美術好き、よろコンです。

 

本ブログでは過去に見た展覧会も含め、気になる展覧会をレポートしていきます。

 

今回は、先週2021/7/3(土)に訪問しましたこちらの展覧会から

 

映えるNIPPON 江戸~昭和 名所を描く @ 府中・府中市美術館

 

です。これを投稿する7/11本日、終了してしまいました・・・(^^;)

でも、良い展覧会だったと思いますのでご紹介。

 

「映えるNIPPON」今も昔もみんな映えポイント、狙ってますよね。画家もみんなの印象に残るような風景を探し求めて描く。それが今現在でも映えポイントとして多くの人のイメージに定着する。映えポイントって、ある意味、それを描いた画家の「発見」でもあると思います。そして、その映えポイントは描く画家の個性によっても違う。そんな様々な映える日本の風景が並ぶ展覧会です。

 

今回も、最後まで、お読みいただけますと幸いです。

 

【目次】

 

※ 以下の記述は展覧会内の説明、パンフ、図録、その他WEB上の資料などの説明を参照の上、記述しております。なお、作品の写真はすべてパンフ、購入した図録を撮影しています。

 

1. 展覧会概要

(1) どんな展覧会か

前半は江戸の本家・歌川広重から、高橋由一、五姓田義松といった日本における洋画の黎明期に活躍した画家の作品が、写真との関係性に関する考察も交えながら展示されます。そして明治・昭和の「広重」登場。

中盤は大正の「広重」が描いた鳥観図、さらに国立公園をテーマとした作品。観光とのつながりを通して、風景画を見て行きます。

そして最後は二人の風景画家。富士を描き続けた和田英作と民家を描いた向井潤吉。テーマにこそ違いはあれ、日本人の原風景を描き続けた二人の作品を見比べます。

時代、テーマ、画家の個性、いろいろな角度から日本の風景画(むしろそれは日本の「風景」そのものと言って良いかもしれません)にアプローチする展覧会です。

ちなみにこの展覧会に江戸・明治・大正・昭和と4人の「広重」が出てきます。(実は加えて5人目の広重も)どういうことかは、また後程・・・

 

(2) 開催概要

 ・期間:2021/5/22(土) - 2021/7/11(日) ※ 前後期で入れ替えがありました。本日終了です(^^;)

 ・時間:10:00 - 17:00 ※ 時間予約不要

 ・会場:府中市美術館(府中)

    ※ 東府中駅から歩いて17分ですが、府中駅、東府中駅、武蔵小金井駅からバスが出ています。少し離れたところに臨時(いつもあいてるような)駐車場もあります。今回は車で行きました。公園もあり、緑豊かな環境の中にある美術館です。

 ・チケット:一般700円、高校・大学生350円、小・中学生150円

 ・作品数:目録を見ると前後期合わせて110点、後期だけで約80点+参考資料の展示があります。

 ・写真撮影:NGです。

 ・Webサイト

www.city.fuchu.tokyo.jpこちらのサイト、作品も掲載されていますが、ダイジェストを紹介した動画のリンク(YouTube)もありますので、ご興味のある方は見てみてください。

 

(美術館サイト)

府中市美術館

 

(池の奥に美術館)

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(3) パンフレット

(表面)

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真ん中から見開きになる凝った作り。

 

(左ページ)
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(中央ページ)
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(右ページ)
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※ 4人の「広重」について書いてありますね(^^;)

 

(裏面)
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(4) 行くきっかけ

確か、アートスケープで展覧会のチェックをしているときに見つけました。

府中美術館は歩いても行けるので、おもしろそうな展覧会がないか、ちょこちょことチェックをしているのですが、自分の中のアンテナにヒットした感じです。

artscape.jp 

2. 展覧会の中へ

(1) 訪問日・混雑状況

訪問日:2021/7/3(土) 曇りときどき雨。15:30頃

鑑賞時間:約80分(常設展示も一緒に見たので、その時間を合わせています)

混雑状況:人はそれなりにいましたが混んでるほどではありません。ゆっくり見られます。なお、予約制ではありません。

 

では、いよいよ展覧会場に。

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(2) 展覧会の構成と気になる作品 

展覧会の構成は次のとおりです。

 

・0章 歌川広重の<<名所江戸百景>>

・1章 新たな視線、受け継がれる表現

   1-1 開化絵

   1-2 西洋画法と写真

   1-3 小林清親の光線画

・2章 名所を描く、名所を伝える

   2-1 川瀬巴水の新版画

   2-2 国立公園の絵画

   2-3 観光宣伝グラフィック

・3章 風景へのまなざし、画家たちのまなざし

   3-1 富士と和田英作

   3-2 民家と向井潤吉

 

です。

 

作品リストは

https://www.city.fuchu.tokyo.jp/art/tenrankai/kikakuten/haeru_NIPPON_TOKUSETSU.files/haeruten_tenji_mokuroku.pdf

からも確認できます。

 

ということで、見てきた順に気になる作品をご紹介。

 

それでは0章、本家本元「江戸の広重」から

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歌川広重 「名所江戸百景 深川洲崎十万坪」 安政4(1857)

 

手前に大きくモチーフを描き、遠景としてその風景を描く"広重スタイル"(勝手に呼んでます)な一枚。この描き方、発明ですね。空から鳥瞰する大胆な構成がとても好きな作品です。

 

1章1-2からは

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高橋由一 「墨水桜花輝耀の景」 明治7(1874)

 

教科書にも載っていた(今も載っている?)「鮭」の絵で有名な高橋由一。武家出身ながら日本最初の洋画家と呼ばれます。その由一の作品はやはり"広重スタイル"な一枚。桜の向こうに隅田川。江戸から好まれた風景とか。

 

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小杉未醒 「日光」 明治期

日光陽明門の前にいる人々はガイドと観光客でしょうか?日光は江戸時代からの観光名所。明治期はこのような水彩画が多く作られお土産として海外にまで。今で言う絵はがきですね。こうして描かれた風景は名所そのものを代表するイメージになっていきます。

 

1章 1-3から「明治の広重」こと

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小林清親 「梅若神社」 明治13~14(1880~1881)

 

「明治の広重」は光線画の小林清親。輪郭線を描かない手法、何刷りにも及ぶ緻密な表現、汽車や街灯など近代ならではのモチーフ。数多くの風景画を残しています。

梅若神社は京都で貴族の子として生まれ、その後、人買いにさらわれ、隅田川のほとりでなくなった「梅若丸」ゆかりの神社。雨の描き方は清親も影響を受けた江戸の広重の代表作「名所江戸百景 大はしあたけの夕立」と比較すると、同じように雨を線で表現しているものの「大はし~」が版の凸部による黒い線なのに対し、こちらは凹部を生かした白い線。逆の技法を用いているところが清親がいかに広重を意識していたか伝わるようで興味深いです。

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歌川広重 「名所江戸百景 大はしあたけの夕立」 安政4(1857)

この作品も展示されていました。(0章から)

 

  では、2章へ。2-1から今度は「昭和の広重」

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川瀬巴水 「小金井の夜桜」 昭和10(1935)

 

小金井の桜は有名ですが、この当時から夜桜見物があったんですね。玉川上水の小金井橋から貫井橋にかけてって、よく車で通るところなので、非常に親近感を覚えます。

「昭和の広重」こと川瀬巴水は「新版画」で有名。鏑木清方に入門後、同門の伊藤深水の影響で版画に。実際に各地を旅しながら名所絵を描いた画家です。

 

パンフレットの「東京十二景 芝増上寺」(大正14(1925))も川瀬巴水の作品。赤と白の鮮やかな対比、女性のすぼめた傘から「一瞬」の風、雪の冷たさまでをも感じさせるこの作品は当時、大変な好評を博したとのこと。納得。

 

続いて2章2-2の国立公園から

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画:杉浦非水  制作・発行:国立公園協会、三越  昭和4(1929)

昭和4(1929)に発足した国立公園協会が国立公園の候補地を紹介した展覧会のポスター。当時、三越図案部で勤めていた日本グラフィックデザインの先駆け杉浦非水が作成しています。山、森、湖と国立公園の要素を盛り込んだデザインに。

 

そして、画家たちは国立公園を代表するような風景を探しに。

描かれた作品は今でもその国立公園の"イメージ"として残ります。

そんな中から

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三栖右嗣(みす ゆうじ)「小笠原父島から南島・母島を望む」 昭和52(1977)

 

南国の代表的なイメージであるハイビスカスにアダンの実。そこから望む海の向こうの島々。ある意味"広重スタイル"のような。(無理矢理^^;)

アダンと言えば奄美に生きた画家・田中一村の絵を思い出しますが、こちらのアダンもまぶしい日差しを浴びて鮮やかで魅力的。この実にはどこか人を惹きつける力があるんでしょうね。

 

さて、今度は「大正広重」登場

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吉田初三郎 「神奈川県鳥瞰図」 昭和7(1932)


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画:吉田初三郎  制作・発行:小田原急行鉄道株式会社「小田原急行電車開通記念」 昭和2(1927)

 

「大正広重」とは鳥瞰図の吉田初三郎です。それにしても、よくこんな鳥瞰図が描けると思って感心します。どういう頭の構造だと、こんなに正確に描けるのだろう?鳥瞰図というとおり「鳥の眼」が備わっているのでしょうか。

時刻表の地図を見ながら旅行をした気分を味わっていた子供の頃(暗いですかね^^;)

「いつか行けるかも」といったその時のワクワク感を思い出させてくれました。

 

  それでは最後の3章。二人の巨匠の作品を。

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和田英作 「富士」 大正7(1918)頃

 

東京国立近代美術館の「南風」が有名かと。

薔薇と富士の絵をたくさん描いたので「富士薔薇太郎」とも呼ばれていたとか。これは初めて知りました。富士吉田の刑部旅館を定宿に富士を描き続けた和田は富士のあるがままの姿を写し取ることに専念したとか。和田が「一番気高く美しい」と語った雪を頂いた富士の一枚です。

 

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向井潤吉 「微雨」 昭和49(1974)

 

高度経済成長期に民家を描き続けた向井潤吉。民家が失われゆくこの時代、民家とそれを取り巻く風景を描くことで確かにそこに存在したものを残す。民家のある風景に魅せられた向井の作品です。対象をあるがままに描き続けた和田にくらべ向井は絵の中の調和を考え、実際にあるものにアレンジを加えて描いたとのこと。題材も違えば、描き方も違う二人の画家の個性を見比べることができます。

個人的に向井の作品はパンフ裏面にもあるように青い空、緑の草木、その中の民家のイメージが強いのですが、この絵は微かな雨が含む湿気までも感じられる作品だと思います。

 

  江戸から昭和、時代の変遷とともに変化した風景画の世界。

様々な作品に触れることで、ただそこにあるものだと思っていた風景が、ひとつひとつ誰かによって見つけ出され、作られてきたものでもあるんだなぁ、そんな新しい発見のある展覧会でした。

 

  ということで、映えポイントをいっぱい見つけて会場を出ます。

 

(3) ミュージアムショップ

ミュージアムショップがあります。今回は図録を購入です。
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図録 2,200円

大正広重の鳥瞰図が表紙カバーです。

 

3. さいごに

江戸の本家「広重」は歌川広重。「明治の広重」は小林清親。「大正広重」は吉田初三郎。「昭和の広重」は川瀬巴水。さて、この展覧会のもう一人の広重は・・・

作品は載せていませんが「開化絵」に三代目歌川広重の作品が。どの作品も、個性の光、独自スタイルを持った"広重作品"でした。

 

ところで「平成の広重」はいないのか。Google先生に問い合わせてみましたが、残念ながら期待する回答はありませんでした。これまでとは違った形で、また新たな風景画が生まれていくのでしょう。新しい風景画の誕生を楽しみに待っています。

 

  とういことで、いつもの最後の関連リンクです。

 

町田市立国際版画美術館

 現在開催中なのが「浮世絵風景画ー広重・清親・巴水 三世代の眼ー」

こちらでも各世代の浮世絵風景画を楽しめそうです。

 

日本画の専門美術館 山種美術館(Yamatane Museum of Art)

現在開催中なのは「山種美術館所蔵 浮世絵・江戸絵画名品選 - 写楽・北斎から琳派まで-」

こちらは歌川広重の代表作「東海道五十三次」を全点一挙公開とのこと。こちらも面白そう。

 

これら含め7月の展覧会情報です。

www.yorocon46.com

 

   今回のレポートは以上です。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

また、次のレポートもよろしくお願いいたします。

 

※ ご意見、ご感想、大歓迎です。是非コメントかメール(yorocon46@gmail.com)まで。ツィッターは@yorocon46です。

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美術館の中から見える公園の緑。この後は調布の方に・・・