ただの美術好き、よろコンです。
本ブログでは過去に見た展覧会も含め、気になる展覧会をレポートしていきます。
今回は、最近、特に好きになってきた浮世絵師・国芳の展覧会から
没後160周年 歌川国芳 展 @ 原宿・太田記念美術館
です。
「奇想」の絵師として注目を浴び、近年人気の高い国芳。その画力もさることながら、発想力、反骨心、ユーモア精神、こんな粋な絵師がほかにいるでしょうか。
猫好きでも有名な国芳。没後160年を記念した国芳特集のPART I(前期)を見てきました。国芳ワールド全開です。
ということで、今回も、最後まで、お読みいただけますと幸いです。
【目次】
※ 以下の記述は展覧会内の説明、パンフ、図録、その他WEB上の資料などの説明を参照の上、記述しております。なお、作品の写真は購入した図録を撮影しています。
1. 展覧会概要
(1) どんな展覧会か
歌川国芳(1797~1861)は日本橋生まれ。
十二の頃に鐘馗の絵を認められ歌川豊国の弟子に。
なかなかヒットには恵まれませんでしたが、三十の時から描いた「通俗水滸伝豪傑百八人之一個」シリーズで大ブレーク。その後は人気絵師の道を歩みます。
国芳と言えば、武者絵、美人画、風景画、多岐にわたる作品を残しています。
・確かな技:西洋絵画を思わせる大胆な陰影、緻密な描写
・大胆な構図:三枚組で一枚の絵を描くまさに大スペクタクルな作品も
・ユーモア:猫の当て字に猫の役者絵、雀の遊郭ととにかくユニーク
・反骨:猫の役者絵も雀の遊郭も庶民の愉しみを禁じた天保の改革・お上への当てつけ
腕があって、洒落てて、ぶれなくて、今の時代にこそ必要な絵師ですね
そんな国芳ワールド満喫の展覧会です。
(2) 開催概要
・期間:2021/9/4(土) - 2021/10/24(日)
ただし、入れ替えあり(全点入れ替え)
PART I:憂き世を笑いに!-戯画と世相:9/4(土)~9/26(日) ← 今回はこれ
PART II:江戸っ子を驚かす!-武者と風景:10/1(金)~10/24(日)
・休館日:月曜日(ただし9/20(月・祝)は開館。9/21(火)休館)
・時間:10:30 - 17:30(入館は17:00まで)
・会場:太田記念美術館(原宿)
※ JR原宿駅から5分くらいでしょうか。東京メトロ千代田線だと明治神宮前駅から。表参道から少し入ったところです。
・チケット:一般1000円、大学・高校生700円、中学生以上 無料(日時予約ではありません。半券提示でリピーター割で200円割引。山種美術館「速水御舟と吉田善彦」展と本展は相互割引きで半券提示で100円割引)
・作品数:PART I 80点 + PART II 80点の計160点
(作品リスト)
http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/wp-content/uploads/2021/09/kuniyoshi-list.pdf
・写真撮影:NGです。
・Webサイト:
没後160年記念 歌川国芳 | 太田記念美術館 Ota Memorial Museum of Art
(美術館サイト)
太田記念美術館 Ota Memorial Museum of Art
(原宿駅から表参道の坂をくだると見えてくる)
(左に入ってすぐ。表参道の喧騒が嘘のよう。小さいながらも素敵な美術館です)
(3) パンフレット
http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/wp-content/uploads/2021/08/kuniyoshi-flyer.pdf
(表面)
(裏面)
(4) 行くきっかけ
artscapeさんで展覧会をチェックしながら、この展覧会を見て、ふつふつと行きたい気持ちが湧いてきました。なぜでしょうか?こういう閉塞感の強い時期だからこそ、国芳に憂鬱を吹き飛ばしてもらいたかったのかもしれません。それに値する内容だったと思います。PART I、おすすめです。
2. 展覧会の中へ
(1) 訪問日・混雑状況
訪問日:2021/9/11(土) 晴れてはいるけど雲多し。ここ最近にしては熱かった。15:00過ぎ訪問
鑑賞時間:60分弱
混雑状況:けっこう、人いました。国芳、人気ですね。
では、いよいよ美術館の中に。
こちら、1階、2階と展示を見た後、地下1階へと回ります。
(2) 展覧会の構成と気になる作品
構成は次の通りです。
I. 笑いを描く
II. 世相と流行を描く
PART Iではここまで。
PART IIから
III 物語を描く
IV 風景を描く
V 市井を描く
VI 国芳の自画像
という構成のようです。(図録から)
では会場に。気になる作品を紹介
I 笑いを描くから
「三段目」天保十二年(1841)頃
仮名手本忠臣蔵の三段目。高師直のご機嫌取りで賄賂を贈る場面
猫の顔は役者に似せて、賄賂はかつお節にまたたび、猫に小判
洒落の効いた一枚です。
「猫の当字 かつを」天保十四年(1843)頃
「かつを」をめぐる猫の争い。猫もかつおも生き生きと。菓子袋をかぶった「か」の猫がユニーク
「ほふづきづくし 八そふとび」天保十三年(1843)頃
源平合戦は源義経、八艘飛び。船から船へと渡る鬼灯(ほおずき)?!
鬼灯の実がいかにも人に見えるのがいとをかし
「里すゞめねぐらの仮宿」(部分) 弘化三年(1846)閏五月
歌舞伎役者や吉原の芸者・遊女を描くことが禁じられた時代に堂々と吉原を描いた作品。でも、出てくるのはみんな雀。雀の花魁に群がる雀がぴーちく・ぱーちくときたら、そりゃ賑やかでしょう。エスプリの効いた作品
「荷宝蔵壁のむだ書き(黄腰壁)」嘉永元年(1848)頃
天保の改革で規制された役者絵。その規制がとかれ始めた頃の作品とか。落書きを版画にするとは何とも秀逸。究極のヘタウマですね。真ん中の赤い猫(かな?!)とか、ニャロメの元ネタかと思っちゃいました。
II 世相と流行を描くからは
「本朝水滸伝豪傑八百人一個 里見八犬子の内 犬塚信乃戌孝 犬飼見八信道」天保二年(1831)頃
スターダムにのった「通俗水滸伝豪傑百八人之一個」の続き。当時人気の南総里見八犬伝を題材にした作品。上下に人物を配した劇的な構図はまさに国芳スペクタクル。
「東海道五拾三駅四宿名所 日本橋から神奈川まで四宿」天保五~六年(1834~35)頃
北斎の富嶽三十六景、広重の東海道五十三次がすでに世に出て人気を博す中で国芳が描いた東海道。でも普通には描きません。日本橋から神奈川まで一気に描いてしまうのは卓越した空間把握力のなせる業。この絵、「大正広重」こと吉田初三郎の鳥瞰図につながるような。国芳の斬新さが際立って見えます。
こんなもんではありません。まだまだ国芳全開な作品ばかりなのですが、今回はこの辺で。
猫を愛した師匠・国芳を弟子の月岡芳年が描いた一枚。国芳ってこんな人
粋な着物に小脇の猫が愛らしく。良いですねぇ。
では、美術館の外に出ます。
(3) ミュージアムショップ
図録などは1階の受付で購入します。現金のみです(チケットも)
今回はPART IIも一緒に収められた図録を購入。2500円(税込)
表紙は日本一カッコいいトウモロコシ
裏表紙は日本一芸達者な猫たち
さらに地下1階には手ぬぐいショップがあります。手ぬぐいだけではなく、いろいろなグッズがあります。ちなみになんて読むでしょう?
正解は「かまわぬ」
浅草・丸の内・代官山 他にもあるようです。
そこで今回は思わずこの手ぬぐいを購入。1650円(税込)
国芳「猫飼好五十三疋」から。猫の東海道五十三次
それぞれの判じ絵。どこだかわかりますか?
答えは・・・
「重いぞ(大磯)」が好きかな。おあとがよろしいようで・・・
3. さいごに
パンフレットの言葉
表「憂き世に笑いと驚きを!」
裏「逆境を、ポジティブに乗り越えろ!」
これこそ国芳ワールドですね。それも粋にお洒落にぶれずに。
どんどん惹かれていくような気がします。国芳のように今を元気に闊歩していきたいものです。
ではまた、今度はPART IIに行ってきます。
それでは、さいごに関連リンク
さっき書いた吉田初三郎の作品はここで知りました。
「奇想の系譜」に国芳も
今回のレポートは以上です。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
また、次のレポートもよろしくお願いいたします。
※ ご意見、ご感想、大歓迎です。是非コメントかメール(yorocon46@gmail.com)まで。ツィッターは@yorocon46です。
(猫好きの国芳さんですから、我が家の彼女も好きになるでしょう・・・)
(ではでは)