よろコンです。
本ブログでは見て来た展覧会の個人的な感想を書いています。
今回は、2024年2月24日(土)に見て来た展覧会
特別展 本阿弥光悦の大宇宙
@上野・東京国立博物館(平成館)
です。
「始めようか、天才観測。」
マルチなタレント本阿弥光悦。教科書にも載っていました。でも、具体的に何をした人?正直、ほとんど知りませんでした。「天才観測」・・・はて??
そして、今回、まさにその宇宙にドはまりしてきました。まさに「天才観測」
皆さんも一緒に観測しに行きましょう!
今回も最後までお読みいただけますと幸いです。
【目次】
※ 以下の記述は展覧会の解説、パンフ、図録、その他WEB上の資料等を参照の上、記述しております。また、展覧会の撮影可能な箇所で撮影した写真および図録・絵はがきの写真を掲載しています。
1. 展覧会情報
(1) 開催概要
・会場:東京国立博物館・平成館@上野
・期間:開催中(2024/1/16(火)) - 2024/3/10(日) ※ あと一週間
※ 展示替えあり(8期にわたって部分的に展示替えあり)
・時間:9:30~17:00(入館は閉館30分前まで)
※ ナイトミュージアム:2/16(金)以降の金曜・土曜日は19:00まで。
・休館日:月曜日
・チケット:一般 2,100円、大学生1,300円、高校生900円、小・中学生以下無料
・作品数:のべ110点
・写真撮影:NGでした。(一部映像の部屋で撮影がOK)
・関連リンク:
1) 展覧会
2) 美術館
(この日は二月の三連休で唯一、天気の良い日でした)
(2) 訪問日・混雑状況
訪問日:2024/2/24(土) 16:00頃訪問
鑑賞時間:約120分
混雑状況:お客さんは多く混んではいましたが、ゆっくり見て来ました。
(3) どんな展覧会?
本阿弥 光悦(ほんあみ こうえつ・1558-1637)
刀剣を鑑定する本阿弥家に生まれた光悦。本阿弥家の刀剣の鑑定書「折紙」は「折紙付き」の語源にも。その審美眼が書、陶芸、蒔絵と様々な美へと広がっていきます。また、江戸幕府から京都鷹峯の地を与えられ職人や芸術家たちを集めた「光悦村」を築いた光悦。その活動の根底には日蓮宗への篤い信仰がありました。
「一生涯へつらい候事至てきらひの人」であり「異風者」(本阿弥行状記)
そんな天才・光悦の全貌に「刀」「信」「漆」「書」「陶」といったあらゆる角度から迫る展覧会です。
2. 会場へ
(1) 構成
第1章 本阿弥家の家職と法華信仰 -光悦芸術の源泉
第2章 謡本と光悦蒔絵 -炸裂する言葉とかたち
第3章 光悦の筆線と字姿 -二次元空間の妙技
第4章 光悦茶碗 -土の刀剣
(2) 気になる作品
光悦の「漆」の世界
会場に入るとまず目に飛び込んでくるのがこちらの蒔絵
本阿弥光悦「舟橋蒔絵硯箱」(国宝) 江戸時代17世紀(※ 図録より)
ふくらみを持った硯箱。硯箱をふくらませる必要はないのですが、敢えてこのフォルムを選んでいます。金箔に鉛。鉛は漆器ではあまり使われない素材とのこと。ですが、敢えて選んでいます。そして散らされた銀板の書。光悦の宇宙が詰まった作品
(展示会場の映像スペースから。こちらは撮影可能でした)
伝本阿弥光甫「本阿弥光悦坐像」江戸時代17世紀(※ 図録より)
光悦の孫が作成したと言われる像。光悦を知る人物による像はその姿を最も的確に捉えているのかもしれません。
最初の章は本阿弥家本職「刀」の世界
志津兼氏「短刀 銘 兼氏 金象嵌 花形見」 鎌倉~南北朝時代14世紀(※ 図録より)
光悦唯一の指料(自分が腰に差した刀)
花形見は想いの成就をテーマにした謡曲「花筐」に由来されるとのこと
続いては「信」の世界
本阿弥光悦「立正安国論」元和5年(1619年)(※ 図録より)
日蓮上人執筆の。時の執権、北条時頼に提出され、他宗派を批判し、幕府を諫める内容から日蓮迫害のきっかけともなった文書。書体は楷書・行書・草書が入り交じり、墨の濃淡、線の肥痩(太い・細い)など、ただの写経の枠を超えた作品。7月5日は母妙秀の忌日のため供養のため寄進されたとのこと。
さらに「書」の世界
本阿弥光悦筆/俵屋宗達下絵「鶴下絵三十六歌仙和歌巻」(重要文化財) 江戸時代17世紀(※ 図録より)
「鶴下絵三十六歌仙和歌巻(部分)」(※ 絵はがきより)
「鶴下絵三十六歌仙和歌巻(部分)」(※ 絵はがきより)
書体の変化、墨の濃淡、線の肥痩は言うまでもなく、字の塊が三角形⊿でリズムを刻んだ散し書き。宗達の下絵とも相まって豪華で革新的な作品です。
ちょっと前、音楽の話で「書に共通するなぁ」と思いながら聞いた話があります。
Eテレの「クラシックTV」でバイオリニスト・松田理奈さんがカンニング竹山さんにバイオリンのレッスンをしているとき「息を吐くときに音を出す」と言われていました。その時の竹山さんは息を止めて音を出していたようです。
これ、書道とまったく同じです。書道も息を吐きながら線を書く。呼吸が大切と教えられます。(私も趣味で書道を習っていますが息が止まっているとよく言われます^^;)
そうすると音楽は音で、書道は線で演奏者・作者の呼吸が感じられることになります。そこには早い、遅いもあり、息継ぎもある。書道の場合、太く濃い線は比較的、運筆が遅くなり、流れるような線は早くなります。これが呼吸で生み出される。また、筆に墨を付けると墨色が濃く出ますが、これは息継ぎにも似た作業になります。さらに光悦の散し書きはリズムも刻まれる。この書は、絵に書の組み合わせですが、そこに音楽をも重ねた総合芸術だと思いました。
書を介して作者本人と対峙する、そこに本人がいるかのような感覚を覚えます。
本阿弥光悦「書状 ちゃわん吉左殿宛」江戸時代17世紀(※ 図録より)
京都の陶芸で有名な樂家二代吉左衛門常慶に宛てに茶碗四つ分の土を持ってきてほしいと頼んだ手紙。最初の行の真ん中の「四」の位置が少し右にずれています。
手紙を書き始めて右の余白が大きいのが気になって自然とバランスをとったのではないか、「間抜け」にならないように配慮されているとのこと(Eテレ「日曜美術館」より)
正にその通りだと思いました。こういうバランス感覚は意図してできるものではなく、自然と生み出された美なのだと感じます。
後年、光悦は筋気(筋肉が痙攣して痛む病気)や中風(脳血管疾患による後遺症)による腕の震えに悩まされたと言われます。書にも小刻みな震えの跡が残っています。そのような状態でも、おおらかな書の作品を残しています。天才の新境地。
最後は「陶」の世界
先ほどの手紙のとおり親交のあった京都・樂茶碗の樂家とのつながりの中から鷹峯を拝領した人生の後半に陶芸を本格化させます。
本阿弥光悦「黒楽茶碗 銘 雨雲」江戸時代17世紀(※図録より)
茶碗の淵のあたりは薄く、刀剣のよう。ひびを入れた意匠。
岩をも思わせる質感。その光沢は宇宙に輝く星をも思わせます。
陶芸の革新となる作品
ということで、本阿弥光悦の宇宙探索を終え、展覧会場を出ました。
特設ミュージアムショップで今回はいろいろと買いました。
・図録
・特製筆ペン(御筆・あかしや。とても書きやすいです)
・書道練習用のマット(水で書くと黒い線が現れ、乾くと消える優れもの)
・手ぬぐい
(こちらは手ぬぐいです)
色々な作品に出会い、とっても楽しい展覧会でした。
3. さいごに
マルチな才能の本阿弥光悦。最初に書いたようにあまり知らずこの展覧会、スルーしようとしていました。が、書の作品が多いようだったので見てみようと思ったことがここに来るきっかけでした。危うく見逃すところでした。
今回の展覧会で、かなりその実像をうかがい知ることができたと思います。特に個人的にも趣味でやっている書道については、その変幻自在、自由な発想、美しい線に墨色の変化、もう「すごい」と言うよりほかないと思いました。楷書・行書・草書を混ぜて書くこと自体、あまりないことです。書はその人の息遣いであり、音楽であり、リズムである。その人そのものがそこにいた証である。と思って光悦の作品を見ると、これほどまでに躍動感のある書は無いのではないでしょうか?
天才観測、これからも続けていきます。
【巡回情報】
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ということで関連リンクです。
トーハクさんの昔の書の展覧会です。
2024年の展覧会情報はこちら
ということで、今回は以上です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
また、次もよろしくお願いいたします。
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(帰りの月夜、西洋美前。右奥に見えるはスカイツリー。木の葉が覆い茂ったらここからは見えないですね)